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経営

2016年2月26日 (金)

お金の使い方と、適材適所ーNHKの関連会社の2億円横領事件にみるNHKのお金の使い方ー

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1 子会社の横領事件

 昨年27年、NHKの子会社「NHKアイテック」社で、従業員2名が、工事の架空発注といった古典的な手法で、約2億円を横領していたという事件が報道されました。

 なぜ発覚したのか?

 国税局による税務調査で、だったようです。

2 お金の使い方

 その後。昨日平成28年2月、次のような報道を見かけました。毎日新聞です。good job です。

 衆院予算委員会での会長の話。

 平成26年実施した関連団体の2種類の不正調査に、計約1億0550万円を支出していたとのこと。

 「約5600万円を支払った外部の弁護士による調査委員会の報告書が、約4950万円をかけて監査法人に委託した調査結果を参考にまとめられたことを明らかにした。奥野総一郎委員(民主党)の質問に答えた。

 弁護士などによる調査、監査法人による調査では、子会社であったアイテック2億円にものぼる工事の架空発注は見抜けていないということです。

 「不正調査」。

3 不正調査

 もちろん、「不正」についてもいろいろな種類があります。調査の依頼を受ける方も、最初に、どこまでのことをするのかについて枠を決めます。

 たまたま、弁護士も、監査法人の場合も、その対象からアイテックの経費は外れていただけなのかもしれません。

 にしても。

 やはり、国税による税務調査は優秀なんだと思います。

 民間との決定的な違いは、情報量と権限です。国家権力として、税務調査を行います。金融機関や、仕入先等でも、問い合わせをすれば、回答、協力を拒まれるとはまずないかと思います。

 

 とはいえ。

 弁護士はともかく、「アドバイザリー業務」の名目で、約5000万円を受け取っていた監査法人。その監査法人による監査の「質」が問われるかと思います。

 また。

 弁護士については。そもそも、仕事が「監査」や「調査」といった仕事ではない業種かと思います。にもかかわらず、「監査」や「調査」の仕事を受任する時点で、本当にその能力があるのか、立ち止まって考えた方がいいのではないかと思います。万能ではありえないのだから。

4 そして,マンション

 何よりも。依頼する方のお金の使い方。

 所詮人のお金といった感覚と、どんどん現金を使っても潰れることはないといった他人ごと感覚がないと、このNHKのようなお金の使い方はできないと思います。

 

 こうしたことが起こりがちな身近な団体。

 そうです。マンション管理組合です。そして、理事会をそそのかす管理会社。

 国税局による税務調査のような、適切なお金の使われ方がしているかについてのチェック機関が必要です。

 

 現在、同じ思いを共有する他の弁護士らとともに、動き出しています。管理組合の「味方」、として、受け皿団体を作っています。

 ある程度、形が整ったら発表したいと思います。

 管理組合のお金の使い方、大丈夫でしょうか。

(以上)

マンション管理組合への「アドバイザリー業務」の夜明け前。経験と情報量が違います。

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2016年1月10日 (日)

最低賃金法ー医療法人の窮状と本屋さんの窮状、そして弁護士ー

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*堀川戎に行ってきました。1円、1秒にこだわろうと、お賽銭は1円にしました。

 28年1月9日土曜日の夕刊に小さく掲載されていた記事。

 「大阪の医療法人 賃金不払い容疑」「理事長を書類送検」。

 たった13行の記事です。

 医療法人が歯科医院を経営していたところ、勤務する歯科医師に賃金をし払わなかったとして、大阪中央労働基準監督署がその医療法人と70歳になる理事長を最低賃金法と労働基準法違反の容疑で書類送検したというものでした。

 最低賃金法という法律があり、地域別の最低賃金が決められ、これ以下の賃金は合意しても無効とされています。

 また、最低賃金額以下の賃金を支払う使用者には罰則規定があります。

 さらに、この法律を執行する労働基準監督官などには、司法警察職員の職務を行う権限が認められています(法33条)。

 ちなみに大阪府内の事業場で働くすべての労働者の最低賃金は、平成27年10月1日以降は、時間あたり858円とされています。

 

 この歯科医院での歯科医の賃金は一体いくらだったのか。しかも、それすらも払われていなかったのでしょう。

 新聞報道では、「理事長は『資金繰りがつかなかったと』と容疑を認めている。」と書かれています。

 歯科医の経営がうまくいっていなかった、つまり、患者が来なかっただけなのでしょう。法人の場所は、天王寺区のようです。

 歯科医院の経営難の話は昔からよく耳にします。ただ、もちろん近隣から多くの患者を集め、経営としてはうまくいっているところもあるかと思います。

 土日営業、夜は10時まで診療を受け付けいてる、当たり前ですが、技術は確か、さらに、親切に親身に説明してくれる、スタッフや医院内は明るく、清潔などなど。

 つまり。差別化、選ばれるための努力をしている、それが功を奏しているということです。

 そのような中、こうしたことを全く考えず、実行することなく、漫然と開店しているだけでは、患者は他の医院へと離れていき、「資金繰り」に窮することになるのはある意味、目に見えています。

 70歳の医療法人の理事長。おそらく医師かとは思いますが、医師の資格はあっても、残念ながら、経営の才覚がなかっただけだと思います。

 昔でしたら、それでも十分に経営して行けたのでしょうけど。

 どこかで聞いた話です。

 そう。弁護士業界も同じだと思います。

 司法試験に合格すれば、なりたい弁護士になれて、就職し、数年の経験を経れば、独立し、普通に従前どおりに働いていれば、「事務所経営」ができました。

 しかし。司法試験の合格者数が、私の頃の1997年、700人から、2015年、約2000人と倍増しています。

 そのような状況で、弁護士を利用する人には、選択肢が多く用意されることになりました。

 会社として顧問契約をしていても、さらにより親切で、サービスが良いと思え、しかもより安い弁護士が登場すれば、当然、乗り換えます。

 弁護士の品質をどのようにして測るのかという問題はありますが、それはさておき。

 医師が経営に失敗することが珍しくないように、弁護士、法律事務所の経営の失敗ケースが普通に出てくる日も近いと思います。あるいはもう出ているのか。

 

 変われる者だけが、生き残れる。

5 

 とある雑誌を買って読みたい思い、どこで買おうかと考えた時、選択肢は、Amazon、あるいは梅田でポイントのつくジュンク堂が思い浮かびます。近所の本屋さんは、思い浮かんでも、他社と比較した時、わざわざその店に買いに行く理由が思い当たらず。

 もっと自店舗に来てもらう理由が思いつく努力をしたらいいのになと、残念とつくづく思いました。

 街の本屋を応援したいけど、そこで何も変わらずぼーっと佇んでいるだけの人を応援する気力は湧きません。

 頑張っている人を応援したいというのが人の気持ちです。

 

 弁護士としても。

 頑張っている人、成長しよう、自分が変わろうとしている企業、人を応援しています。

 周りの環境が悪い、相手が悪いと人のせいにしているだけの人には共感しません。嘆いて、悪態をついているだけの人からは運も離れていきます。

 ただ、そういう人にはそういう人が集まってきます。

 弁護士と依頼者の関係も。類は友を呼ぶの法則が当てはまると思うこの頃。

 弁護士を17年近くしてきて。依頼者の方々にはつくづく恵まれてきたと、自分のこれまでの幸運に感謝しています。

 これから。今までの依頼者の方、未来の依頼者の方にどのような貢献ができるのか。

 2016年、今年。

 仕組みを作り出していきたい、さらに変わり続けたいと思います。もがきながら。

(以上)

 

 

 年末年始の休みを利用して、日本海側のカニのお宿へ。値段とサービスについて、考えさせられしまた。中途半端な料金を出すなら、いっそのこと高めの金額を出して、揺るぎない満足を得たい。しかし、高すぎるようでもダメ。
 このお金を出しても満足と納得いくサービス。飲食店へ行くといつも、心揺れます。
 500円もらっても食べたくない店もあれば、5000円で大満足を感じる、5万円だすと5万円でこれかと不満足を感じたり。難しいですね。
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2016年1月 8日 (金)

日次決算の心意気

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 正月明け、日経の朝刊。

 上場企業の2015年4月~12月期の決算発表が4日から始まった、と。

 そして、「一番乗り」は、午前7時30分に決算短信を開示した焼肉チェーンのあみみき亭との報。

 

 「あみやき亭」。

 国税不服審判所の名古屋支部で働くこととなったとき、大阪から名古屋に引っ越しをしました。

 その時、結局2年数ヶ月にわたり暮らしたのは、新大阪駅から名古屋駅に向かう際、名古屋駅の手前を流れる川、庄内川の近くの名古屋市中村区というところでした。「アイコ16歳」を書いた作家の出身高校、中村高校の近くです。

 そして、近くには、でかでかと赤く、名古屋にしては派手な看板が目立つ、1階は駐車場で2階が店舗という郊外型の飲食店、「あみやき亭」がありました。

 名古屋で暮らす間に、何回か行きました。

 しかし、大阪に戻ると、あたりで「あみやき亭」を見かけることはありません。

 大阪で焼肉といえば、リーズナブルに美味しい肉を食べれる、京橋の「松井」、あるいは道頓堀の「岡本」、あるいは南森町の「万両」が真っ先に思い浮かびます。

 あみやき亭。

 

 すっかり忘れていました。

 それが、年明け、正月明け早々、「一番乗り」で午前7時30分に決算を開示する会社。

 あみやき亭、の文字。

 上場企業ということも知りませんでした。

 しかも。名古屋市の春日井市が発祥の地で本社がある会社。

 それが。なんと。

 日次決算、とは!

 飲食店でそのような財務管理をしているのはすごいことではないでしょうか。

 社長の方針があってのことだと想像します。

 経営管理。

 「原価率などを毎日計算し、日々のデータを集計しているという

 第3四半期決算短信は8頁ものです。

 すごいです。

 サイトをみると、愛知・岐阜・三重のほか、東京、神奈川、埼玉、千葉と店舗があるようで、229店舗を有するようです。

 いったいどのようなシステムを導入しているのか見てみたいです。

 

 2016年。

 20代の頃は、「結果がすべて」という言葉に対して違和感を覚え、いやいや経過が大事だし、経過が楽しいのではないかと思っていました。

 40代も半ばとなると。

 やはり、結果がすべてだし、数字が大事と実感として思えるようになりました。

 1分1秒、1円にこだわっていこうと新年、気持ちも新たにしていたところ、「あみやき亭」の日次決算の報。

 経営の姿勢が行動に出ていて清々しい思いとなりました。

 

 1分1秒、1円にこだわる、執着するという思いをどこでどう行動に表すか。

 「丸い数字で」というのを禁句にするか。


 1秒、1日にこだわろうとする中、相手の動きが遅いとイライラしますが、相手のいることなので急かして首根っこを掴み動かすこともできず。

 そうした経緯は、すべて事件のカルテに記録して、工程管理ではありませんが、何が原因で進捗が遅いのか後で分かるように管理しています。基本的にはメモ魔の方です。

 

(おわり) 



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* 

 1分、1秒にこだわろう!というのは、あまりこだわりきれていなかったから。ちなみにこれは心拍。健康にもこだわります。

 40歳過ぎて。いつ、ある日突然、死んでしまったり、あるいは病気になって健康を失うか明日をもしれないという思いを実感できるようになったから。

 睡眠第一で、毎日100mダッシュの思いで時間を過ごしいる気がします。

 でも、緩めるのも大事。ハード、イージー、イージー、ハード。

 


2015年11月18日 (水)

管理会社にコケにされる管理組合の話 ーお金の意味の判断の仕方ー

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*宮古島の青い海と空。癒されました。限られた時間の過ごし方、これでいいのだろうかと考えました。


1 

 久しぶりのブログです。今年は本当に目まぐるしい日々で、毎日毎日100米ダッシュをして1日を終えるというような感じの日々でした。去年もある意味そうでしたが。

 そもそも40歳を過ぎたら人間、時間の感覚はそのようなものかもしれませんが。

2 

 今年度、大阪弁護士協同組合では財務委員会の委員長をさせていただき、また大阪弁護士会では財務委員会の一員として、それぞれ団体組織のお金の流れを目にする機会が増えています。

 また、プライベートでは、暮らす分譲マンションでの年に1度の総会や月1回の理事会の報告書などをとおして、マンションのお金の動きを注意してみています。

 各団体、それぞれ維持費となる会費、出資金等を自身が出している集まりです。

 それぞれのお金の活かされ方をみていて思うのは。

 なににしろ、我がことと思って、過去はどうたったのか、現状はどうなのか、それを過去と比較してどう評価するのか、その上で、将来、どのような数字である必要があるのか、どうありたいのかを想定するのが本当に大事だということです。

 

 これが組織としてできていないと、その場その場の現状を確認するだけで、その結果が何にも活かされない、「風まかせ財務」になってしまう、下手をすると暗礁に乗り上げ、座礁してしまう危険が大きいということです。

 具体的な数字を日々確認するのは大前提として、その数字がいったい何を意味するのか、OKなのか、あるいはNGノーグッドなのか、どう評価するのかは、その時点の収入、支出の全体をみつつ、さらには自社の過去の数字をみつつ、さらには同業他社の数字をみつつ、そして、将来の支出の予測をして、必要額を出し、その獲得見込みをたてないとどうしようもない、何の意味もないということです。

 先日、マンションの年に1度の総会が開催されました。

 議題として、マンションの時限爆弾といわれる機械式駐車場の保守部品交換工事の費用支出が図られていました。300万円程度のものです。

 しかし、うちのマンションはたかだか50戸程度の小規模マンションです。この程度の管理組合の修繕積立金の規模で、この300万円ょ支出が何を意味するのかを検討しようと思ったら、現在の修繕積立金の金額だけではなく、過去の修繕の内容と金額、経過年数をみて、今後、何年以内にどのような支出が必要とされるのかといった、いわゆる新たな大規模修繕の見積書がなければ、今時点の300万円支出が何を意味するのかなんて判断ができません。

 その総会では、2年前に大規模修繕がされたのちの新たな大規模修繕の計画書は、未だに作成、提出されていませんでした。

 管理会社との管理委託契約を確認すると、管理会社が提供すべきサービスの中には、大規模修繕の計画書の作成は明記されています。

 こうした修繕計画がないままに、昨年度は、管理会社主導のまま、うちのマンションの規模と機種からは相場が800万円の全戸インターフォン取替工事について、管理組合は1000万円あまりもの支出をしてしまっていました。

 総会で反対意見を述べ、今一度数字の総チェックをしてから再審議すべきではないかとの意見を述べましたが、理事長に目配せをしたフロントの指示により、理事長一任での採決となり、可決してしまった結果です。

 それから1年。未だに、総会前に、大規模修繕の計画書は住人に提示されていません。あろことか、1000万円の工事につき、業者との契約書も作成されていませんでした。

 総会では、管理会社に対する牽制球として、この点を指摘しつつ、結果としては、300万円の支出は生命身体の安全に関わるものであることは間違いないので、採決の際は賛成に票を投じました。

 このような財務のあり方、総会決議のあり方は、同じような組織ともいえる協同組合や弁護士会ではあり得ません。

 なぜなら。

 仮に、執行部がこのようなやり方で、支出の決議を求めた場合、情報不足であって審理不十分として、どこからか異議が出るからです。

 そのことが分かっているため、支出や収入減に関する事柄は、情報公開を前提にオープンに協議され、慎重に進められているというのが実感です。

 しかし、なぜそれが分譲マンションではできないのか。

 大阪弁護士協同組合や大阪弁護士会と比べた場合、分譲マンションでは何が違うのか。

 簡単です。

 理事者や組合員は弁護士ではない、からです。ごく普通の責任感をもったよい方々です。しかし、財務に関する知識や、手続き等の進め方については経験、知識がたまたまあまりない方がほとんどであったというだけのことです。それぞれ別の分野で活躍されている方々です。

 しかし、マンション運営に必要なそうした専門的知識と経験の不足を補うために、国土交通省が所管する登録制の制度のもと、マンション管理業者にサポートを依頼し、その対価として、管理組合は、管理業者に対して管理委託手数料を毎月毎月、相当額を支払っています。

 しかし。

 結局、マンション管理業者のレベルと倫理観がいかなる意味でも低いのが実態なのだろうと思います。

 弁護士は悪しき隣人、といったフレーズがイギリスだったかにはあると言われていますが名言です。

 財務に関しては、口やかましく言う悪しき隣人が必要です。

 理事をやってもらっているから、この数字は何だろうかと思うけど、まあ、いっか。管理会社の担当の人が、我々の利益を損ねて、自社の工事紹介手数料収入を図るようなことはまさかしまい、といった善人だけでは、結局、あとから騙されたといった泣き言を言うだけになります。

 人に任せたお金を見る目は、シビアであるべきでしょう。

 また、倫理観の欠如した業者に対しては、損害の結果の責任を負ってもらうという執念深さが大事だと思います。

 今年から。財務委員会で組織運営の数字を見るようになり、またその報告を受けたり、するようになってから。

 マンション管理における財務のあり方について、ますます厳しい目を向けるようになりつつ、マンション管理は財務にあり、というのを確信しつつ、自分のマンションだけでなくおそらく、この管理会社が管理担当しているマンションはどこも似たり寄ったりに違いない、そうした現状をなんとかしたいと考えています。

 

 パリのテロの後のライブ会場でのマドンナのスピーチ。

 自分が行動をとっていくことが大事。自分が変わること。


 何事につけても言えることだと思います。

 自分の周りの景色について、他人を責めているだけの人は結局、何も変えられず、自らますます不幸になるだけの人です。

 まず、自分が変わることです。

 これは、何かにつけてやることなすこと裏目に出る人、ドツボにはまっている人に伝えたいことです。相手を責めているだけではたぶん死ぬまで幸せにはならない。

 マドンナのメッセージが腑に落ちたとき、光が見えるかと思います。

 お金は増やせるけど、時間は増やせません。流れていく時間のなか、後ろを見るだけでなく、その後ろの時間を前に向けて活かして、皆が幸せになって欲しいものです。

http://www.rollingstone.com/music/news/watch-madonnas-powerful-speech-about-paris-attacks-at-stockholm-concert-20151115

(おわり)

*11月開催された淀川マラソンでの前日の高橋直子さんのトークショー。大阪の青い空も捨てたものではありません。

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2015年7月19日 (日)

企業内の犯罪 ー従業員による横領・窃盗ー

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1

 企業内での不正、特に、法人化していても実際にはオーナー経営者一人で従業員を何人も抱えているといった企業からの従業員による横領・窃盗の相談がなぜか増えています。

 

 例えば、法律事務所もそうですが、医療機関です。

 トップは、弁護士あるいは医師といった資格者であってプロフェッショナルです。

 何人か従業員を抱えていて、組織的には経営のトップにあったとしても、経営そのものが仕事なわけではないプロフェッショナルですので、経理的な経営上の実務は、担当者に任せがちです。

 まさに医療機関に多いのが家族経営だと思います。

 

 医療機関に限らず、企業がある程度の大きさとなり、家族経営からの脱却を図るとなると、事務局長・経理部長を外部からの職員に任せることになります。

2

 外部の人に会社の経理を委ねる時、不正を防止する「システム」を必ず構築しておく必要があります。

 自分が逆の立場のとき、自分は職務を全うするだけであって、間違っても人のお金、会社のお金を盗むようなことはしないと自分は考えていたとしても、他の人が、しかも、信頼して任せていた、まさかこの人がという人が、なんらかの事情で会社のお金に手をつけてしまうのです。

 

 税理士がみているから大丈夫というのは大きな間違いです。税理士は通常は、記帳指導と申告業務しか依頼を受けていない立場です。

 「監査」の仕事は、通常の税理士業務とは異なります

 このことを分かっていない弁護士や裁判官が少なくはないのも事実です。

 

 また、監査法人の監査が必須の上場企業であっても、本年の東芝をめぐる報道のように、内部職員が偽の会計書類を作っていたら、それを見抜くのはやはり大会計監査法人によるナン億円もかけた監査業務であっても困難であったということが明らかになってしまいました。

 東芝の場合はトップからして不正に関与していた疑いが濃厚なようですが、そのような場合は別にしても、従業員による犯罪、不正に関しては、これを未然に防ぐ体制・システムを作るのがもっとも効果的であり、唯一の被害防止策ではないかと思います。

3

 ではどのようなシステムを作るのか。

 それは、医療機関の場合が典型ですが、各企業の業務における独特の金銭の流れがあります。それを熟知した者によるシステム設計をする必要があります。

 監視・管理システムを作ったつもりが、実は、その当該担当者に大きな権限を与えた結果、かえってその責任者による不正・犯罪を誘発してしまったというケースも稀ではありません。

 

 再発防止策がまさに重要になります。世界的大手監査法人のKPMGが出している、企業内不正に関する書籍でも、統計データから、不正対応に対する初期の対応ミスによってさらなる不正を誘発してしまったという例が少ないことが示されています。

 
    この本は、データに基づいた実例豊富な実践的書籍であって、従業員横領等の問題を検討する際には今、一番使える本だと思います。

 

 企業内で一度、不正が発覚した場合は、当該問題を熟知した専門家への相談をお勧めします。

4

 時々読みかえす本に、稲盛和夫さんの「稲盛和夫の実学 経営と会計」(日経ビジネス文庫)があります。

 読みかえす度に新たな発見を得る本ですが、今回、目にとまった記述を紹介しておきます。

 103頁

 「『ダブルチェック』とは、経理のみならず、あらゆる分野で、人と組織の健全性を守る『保護メカニズム』である。

 仕事が、公明正大にガラス張りの中で進められているということは、その仕事に従事する人を、不測の事態から守ることになる。それは同時に、業務そのものの信頼性と、会社の組織の健全性を守ることになるのである。」

 「ダブルチェックとは、人に罪を作らせないための原則である」

 

 そうした上で、次の項目について具体例を挙げて論じています。

 □ 入出金の取り扱い

 □ 現金の取扱い

 □ 会社印鑑の取扱い

 □ 金庫の管理

 □ 購入手続

 □ 売掛金、買掛金の管理

 □ 作業屑の処分

 □ 自動販売機、公衆電話の現金回収

 そしてこう述べています。

 「トップ自らが、本当に守られているのかを現場に出向き、時々チェックしなくてはならないのである。」

 「その根底には、社員に決して罪をつくらせないという思いやりが、経営者の心の中になくてはならないのである。」

 

 これはプロの経営者、経営が仕事である社長にとっては当然のことです。

 

 しかし、本当に難しいのは、大きなお金を扱う機関でありながら、トップの仕事が他のプロフェッショナルであって、経営そのものがプロフェッショナルとは限らない医療機関が一般的に抱える問題ではないかと思います。

 信頼できるその道のプロフェッショナルをどうやってみつけるのか。

 医療機関相手のコンサルティング業者が多い理由もこのあたりにあるかと思います。

 二次被害に遭うことのないようにだけ気をつけて欲しいと思います。もちろん他利の姿勢で有益な助言をするプロフェッショナル コンサルティングというものが存在するという前提です。

(おわり)

 

2015年1月29日 (木)

理念と数字 〜経営・組織運営に必要なもの〜

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*京都の湯葉料理のお店「こ豆や」
 ロースクールに入って弁護士を目指すと宣言し、無事に司法修習生になられた方との食事会でした。目指すと宣言されたときに、その方の文章等を知っていたので、絶対に合格すると確信していました。そして無事に合格。不思議な気持ちです。法律の世界に向いている人とそうで無い人は、すぐにわかります。言葉に対する感性。
 そして。16年ほど前。修習生のときに、当時、森総合法律事務所にいらっしゃった久保井弁護士が修習生に向けた言葉。「君たちはただ司法試験に合格したにすぎない。営業の試験に受かったわけではない。」。
 つまり。試験に合格した、ただそれだけのこと。1999年、弁護士1年目から噛みしめている言葉です。
 
1   
 先日、ある組織運営に携わる上の地位の方とお話しをしていて、ふと実感として頭に浮かんだことを文字にしておきます。

2  
 経営もまさにそうですし、会社経営に限らず、2名以上の人間が集まってなにかをしようというとき、一番大事なのは、「理念」と「数字」だということです。  
 この二つがあって初めて、目的とするところへと前へと動きだせます。
 
 「理念」だけでは、具体的な行動が見えてきません。また、見えて実行できても、前へ前へと進みません。  
 しかし、「理念」がないと、すぐに皆、てんでばらばらの方向へ向かいはじめ、いったいなぜその者達がそこに集まっているのかわからなくなり、空中分解します。  だから「理念」は不可欠。  
 
 そして、もう一つは「数字」。
 皆が、今、どこにいるのか、これからどれだけどのように進めばいいのかの進路を指し示す距離計です。  
 これがないと、気力が持ちません。これがあれば、マラソンと同じで、今20キロ地点、あと20キロちょっと、今40キロ地点、よし、あと2キロ、走りぬくぞ!と気力が維持できます。  
 今、自分がいったどこを走っているのか、まずの目的地まであとどれくらいか、それがわからないと、気力が萎えてリタイア、コースアウトします。
 この距離感、「数字」を皆で共有できれば、皆で励ましあい、あと4キロ、あと2キロと踏ん張りがきいて、頑張りぬくことができます。  

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 この「理念」と「数字」の共有ができていない組織、会社は、その場その場での風まかせの判断、運営となります。  
 いったい皆で何を目指しているのか。文字どおり、場当たり的な運営になります。  
 誰の責任か。
 
 トップでしょう。  
 組織の皆に対して、なぜそこに皆がつどっているのか。  
 「理念」と「数字」を提示する。  
 そうしさえすれば、皆、一致団結して、その場その場での行動指針を得て、より合理的かつ適切な組織運営となると思います。  
 
 約500人の組織でしたが、5万人の国税庁の組織運営の一環としての組織運営も垣間見ました。  
 「理念」と「数字」の組織運営でした。  
 もちろん、それによる弊害、あるいは限界のようなものも見ました。巨大組織であるが故に、個々人の力のばらつき、そこまでの意識の共有には限界があるのだろうとは思います。  
 しかし、かなり有効な組織運営手法だというのを肌身で感じました。  
 組織文化の形成です。  

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 自身を振り返り。  
 周りに対して、自身の「理念」と「数字」を提示し共有できる力があるのか否か。  それが、リーダーシップであり、人を巻き込む力であり、経営者の責任なのだと思います。    
 
 非常に抽象的な話しで恐縮です。
(おわり)

*大阪市北区の天満にある「ライオン飯店」。友人に教えてもらい、行きました。丁寧に作られた中華料理。どれも美味しかった。しかも、圧倒的な安さ。店員の方も感じよく。久々にとてもいいお店でした。
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