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労務

2015年7月19日 (日)

企業内の犯罪 ー従業員による横領・窃盗ー

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 企業内での不正、特に、法人化していても実際にはオーナー経営者一人で従業員を何人も抱えているといった企業からの従業員による横領・窃盗の相談がなぜか増えています。

 

 例えば、法律事務所もそうですが、医療機関です。

 トップは、弁護士あるいは医師といった資格者であってプロフェッショナルです。

 何人か従業員を抱えていて、組織的には経営のトップにあったとしても、経営そのものが仕事なわけではないプロフェッショナルですので、経理的な経営上の実務は、担当者に任せがちです。

 まさに医療機関に多いのが家族経営だと思います。

 

 医療機関に限らず、企業がある程度の大きさとなり、家族経営からの脱却を図るとなると、事務局長・経理部長を外部からの職員に任せることになります。

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 外部の人に会社の経理を委ねる時、不正を防止する「システム」を必ず構築しておく必要があります。

 自分が逆の立場のとき、自分は職務を全うするだけであって、間違っても人のお金、会社のお金を盗むようなことはしないと自分は考えていたとしても、他の人が、しかも、信頼して任せていた、まさかこの人がという人が、なんらかの事情で会社のお金に手をつけてしまうのです。

 

 税理士がみているから大丈夫というのは大きな間違いです。税理士は通常は、記帳指導と申告業務しか依頼を受けていない立場です。

 「監査」の仕事は、通常の税理士業務とは異なります

 このことを分かっていない弁護士や裁判官が少なくはないのも事実です。

 

 また、監査法人の監査が必須の上場企業であっても、本年の東芝をめぐる報道のように、内部職員が偽の会計書類を作っていたら、それを見抜くのはやはり大会計監査法人によるナン億円もかけた監査業務であっても困難であったということが明らかになってしまいました。

 東芝の場合はトップからして不正に関与していた疑いが濃厚なようですが、そのような場合は別にしても、従業員による犯罪、不正に関しては、これを未然に防ぐ体制・システムを作るのがもっとも効果的であり、唯一の被害防止策ではないかと思います。

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 ではどのようなシステムを作るのか。

 それは、医療機関の場合が典型ですが、各企業の業務における独特の金銭の流れがあります。それを熟知した者によるシステム設計をする必要があります。

 監視・管理システムを作ったつもりが、実は、その当該担当者に大きな権限を与えた結果、かえってその責任者による不正・犯罪を誘発してしまったというケースも稀ではありません。

 

 再発防止策がまさに重要になります。世界的大手監査法人のKPMGが出している、企業内不正に関する書籍でも、統計データから、不正対応に対する初期の対応ミスによってさらなる不正を誘発してしまったという例が少ないことが示されています。

 
    この本は、データに基づいた実例豊富な実践的書籍であって、従業員横領等の問題を検討する際には今、一番使える本だと思います。

 

 企業内で一度、不正が発覚した場合は、当該問題を熟知した専門家への相談をお勧めします。

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 時々読みかえす本に、稲盛和夫さんの「稲盛和夫の実学 経営と会計」(日経ビジネス文庫)があります。

 読みかえす度に新たな発見を得る本ですが、今回、目にとまった記述を紹介しておきます。

 103頁

 「『ダブルチェック』とは、経理のみならず、あらゆる分野で、人と組織の健全性を守る『保護メカニズム』である。

 仕事が、公明正大にガラス張りの中で進められているということは、その仕事に従事する人を、不測の事態から守ることになる。それは同時に、業務そのものの信頼性と、会社の組織の健全性を守ることになるのである。」

 「ダブルチェックとは、人に罪を作らせないための原則である」

 

 そうした上で、次の項目について具体例を挙げて論じています。

 □ 入出金の取り扱い

 □ 現金の取扱い

 □ 会社印鑑の取扱い

 □ 金庫の管理

 □ 購入手続

 □ 売掛金、買掛金の管理

 □ 作業屑の処分

 □ 自動販売機、公衆電話の現金回収

 そしてこう述べています。

 「トップ自らが、本当に守られているのかを現場に出向き、時々チェックしなくてはならないのである。」

 「その根底には、社員に決して罪をつくらせないという思いやりが、経営者の心の中になくてはならないのである。」

 

 これはプロの経営者、経営が仕事である社長にとっては当然のことです。

 

 しかし、本当に難しいのは、大きなお金を扱う機関でありながら、トップの仕事が他のプロフェッショナルであって、経営そのものがプロフェッショナルとは限らない医療機関が一般的に抱える問題ではないかと思います。

 信頼できるその道のプロフェッショナルをどうやってみつけるのか。

 医療機関相手のコンサルティング業者が多い理由もこのあたりにあるかと思います。

 二次被害に遭うことのないようにだけ気をつけて欲しいと思います。もちろん他利の姿勢で有益な助言をするプロフェッショナル コンサルティングというものが存在するという前提です。

(おわり)

 

2014年11月25日 (火)

GOOD OLD BOYS SOCIETY と LGBT と。

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 平成26年11月25日の日経新聞の朝刊。

 「LGBT就活支援の輪」「国内企業も意識的改革」「大阪ガス パンフに『応援』明記」といった特集記事が掲載されていました。

 http://www.osakagas.co.jp/company/csr/beginning/diversity_policy.html

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 また、ちょうど社会面には、厚生労働省等の広告が掲載されていました。

 「公正な採用選考を行いましょう」

 その趣旨としては、「採用にあたり身元調査を行うことは、就職差別につながるおそれがあり」というものです。

 本人ではどうしようもできない事柄を基準に、民間企業であっても、採用基準としてはいけないということです。

 例えば。性別、年齢、人種といった事柄。

 憲法は、国家権力を縛るためのものですが、14条に次の通り書かれています。

 「人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、・・・差別されない。」

 では、性的志向では、どうでしょうか。

 そもそも個人的には、性的志向、つまり、同性愛、異性愛、両性愛、性同一性障害などなど、そのようなことで誰かに何か具体的な迷惑をかけることでもない以上、なぜ問題になるのか本当は、さっぱり理解できないのですが、これまでの最近の日本の世の中、特に、当事者の利害が著しい勤務先などでは、そもそも性的少数者であることがわかると採用してもらえない、あるいは、採用されても、例えば、ゲイだとわかると職場で上司あるいは同僚、あるいは後輩からの、他の人に対するのとは異なる対応をとられて居づらくなって辞めざるを得ない、といったことが少なくはなくて、問題になっていると思わまれす。

 「LGBT」、いわゆる性的少数者と言われる人が、なぜこのような目に遭わないといけないのかさっぱり理解できませんが、多数派の人の少数者に対する、異端の目、不快感、傲慢さ、いじめたくなるといった人間の醜い性質が吹き出てしまうのだろうと思います。

 生きていくにはお金が要る、稼ぐには、雇われるか、自分で営業して稼ぐしかない。

 その「仕事」という面において、この性的少数者であるがゆえの差別をまず、なくしていこうというのは、「多様性」「ダイバーシティ」といった言葉に連なる面もあるようです。

 具体的理由のない差別・区別をなくしていくことと、多様性の確保・尊重。

 日本IBMで取締役執行役員を務められた内永ゆか子さんの著書を読んだことがあります。

 そこでは、東京大学を卒業後、日本IBMに入社したが、男性社会で、女子は超少数派で、その中でどのように生き抜いていったのかが記されていました。

 「日本企業が欲しがる『グローバル人材』の必須スキル」

 *この本は、本当にタイトルの付け方に失敗した本です。もっと違うタイトルをつけたら、もっと多くの人に読まれるのにと残念。

 

 内永ゆか子さん

 https://www.j-win.jp/guide/comment.html

 *いま、まさに「ダイバーシティマネジメント支援」の活動をされています。

 

 その著者の中で表されていた言葉。

 「GOOD OLD BOYS SOCIETY」

 当時、なるほどと膝を打ちました。

 23歳かそこらで大学を卒業し、ひとつの会社だけで、10年、20年、30年と勤務する、またその際、会社の中の人とばかり付き合い、その他の世界の人と付き合わない。

 そんな、多数派の男性ばかりで50代となり、そんな人ばかりで構成されている会社の役員会。

 まさに、古き良き男性社会?「GOOD OLD BOYS SOCIETY」

 同じような経験を積み、同じような価値観の中で、少数派は奇異の目でみられて、軽く扱われたのではないかと想像されます。

 そのよう中、内永ゆか子さんは、どのようにコミュニケーションをとっていったのか。そのようなことが書かれていました。

 会社法が改正されます。

 社外取締役を入れろ、入れないなら入れない理由を説明しろ。

 

 また、多様性という名のもと、日本の企業の中でも、LGBT等に対する偏見差別の解消の動き、これらは同じ根っこをもつように思います。

 いいのか悪いのかはわかりませんが、「GOOD OLD BOYS SOCIETY」の行き詰まり感からのものだと思います。

 

 立場が変わればものの見方が変わる、ものの見方が変われば、気づかなかったことに気づく、視野が広がる。

 平成11年に弁護士登録をして、平成22年まで、ひたすら弁護士業をしてきました。

 そこから。

 5万6000人を擁する、日本の巨大行政組織の一端を担う国税不服審判所で4年間、働きました。

 

 得たものは、税法の知識と経験というにとどまらず、国の視点、国税庁の視点、司法とは異なる行政の視点、国家公務員の視点、男性社会、まさに「GOOD OLD BOYS SOCIETY」における少数者としての視点、異なる企業文化の中での少数者の視点などなどなど、貴重な視点です。

 文字通り、少数派です。女性であり、弁護士であること、途中入社組。

 当初、頭の中でグルグルしていた言葉は、STINGの歌でした。

 I'm an Englishman in New York .

 そこは、ニューヨークでもなければ、私はイギリス人でもく、そこは名古屋で、私は大阪から来た三重県人でしたが。その中での少数派で、異文化圏からの異邦人でした。

 

 その自分の経験に照らしても、日本の大きな企業の「GOOD OLD BOYS SOCIETY」からの離脱は、とても可能性を秘めたことだと思います。

 

 4年間の任期付国家公務員の生活の中で、自分も、弁護士業の中にいて、ある意味、限られた価値観の中で生きてきたことを実感しました。

 一度、離れて、高い視点をもって、それまで見ていたものを見るのは、新たな可能性に気づくとても良い成長の機会です。

 企業の、風を見る傾向とLGBTへの差別解消とを結びつけることに賛否は別れるのでしょうけど。

(おわり)

R1028438*なぜ、15人の最高裁判事だけは、15人全員が職業裁判官だけで構成されていないのか。

 立つ位置を変えて、高い視点をもつと見えなかったものが見えてきます。それに対応できる人と、拒絶反応を示す人に分かれるとは思いますが。


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