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相続

2015年8月18日 (火)

弁護士と相続と税務

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1 2人の元国税審判官によるクロストーク

 

 国税不服審判所において、同じく平成22年7月に任期付国税審判官として採用された佐藤善恵税理士のもと、中央経済社発刊の「税務弘報」という税理士向けの月刊誌にて連載記事を掲載していただいています。

 その名も「視点スイッチで裁決研究ー2人の元国税審判官によるクロストーク」というものです。

 9月号にて連載第6回となりました。

2 小規模宅地の特例

 弁護士が遺言作成や、遺産分割協議に関わる場合、相続税法上、納税者に有利な制度として、小規模宅地の特例があるといったことは比較的よく知られています。不動産の評価に関する特例です。

 しかし、実際に、これを適用するためにはどのような手続きが必要なのかといったことまで考えて、プランを立てる弁護士はまずいないのではないでしょうか。

 

 先日、連載の原稿の打ち合わせをしている中で佐藤税理士から教わった、まさかの手続きがあります。

 小規模宅地の特例の適用対象となる土地が複数あった場合に特例適用に必要な手続きです。

 

 相続税額の計算方法は、いったん遺産総額での税額を計算したうえで、各取得者の取得に応じて、相続税額を割り付けるといったたてつけになります。

 相続人は、相続税法上、相続税の申告は一人一人で当然できますが、たいていは共同での申告です(相続税法27条5項)。

 なぜか。

 申告の書類で、遺産の内容や評価がバラバラとなっていたら、調査の対象となりやすく、誰かか修正申告、あるいは減額更正をせねばならないといったことになりやすいといえるからです。

 相続人の利害が一般的に共通するのが、共同申告です。

 では、小規模宅地の特例適用できる土地が複数あった場合、どれを適用して相続税の申告をするのか

 このときもやはり、原則、各人で申告できるわけですから、各人がバラバラの選択をして申告する可能性が出てくるわけです。

 

 しかし、それではやはり適正な相続税額の計算を税務署の方ではできない状態となってしまいます。そうです、遺産総額でまず税額計算をする必要があるからです。

 そこで、このような場合は、相続人ら全員がこの土地を選んで適用をするといった書類が申告時に必要とされています。

 つまり、この同意がなければ、適用要件を満たさないということです。

3 適用要件を意識した分割協議、遺言書作成

 では、遺言の効力をめぐり争っている相続人間や、あるいは遺産分割協議で争っている相続人間の場合はどうなるか。

 小規模宅地の特例の適用のための手続上、必要なこの同意に協力してくれない可能性が高まります。

 小規模宅地の特例が適用できるか否か、不動産評価額が倍以上も違ってきます。

 このような税法上の特例措置に気をつけるのは当然として、それが本当に適用されるための手続についてまで、相続人らの置かれた心情を想像して、協力を得るためにはどうしておくべきかまで考えて、分割協議、あるいは遺言書作成に関わる弁護士、専門家はプランを練り上げるべきなのでしょう。

 

 相続が専門です、遺言作成をします、遺産分割協議の代理人をしますといったサイトは弁護士のものでも増えてきていますが、本当に相続に関するプランニング、アドバイス、代理人活動をしようと思ったら、弁護士においても手続規定を含めた税法の理解があってこそ、専門家として価値があるのではないかと思います。

 弁護士として税理士の先生方とは、信託税制についての研究会もご一緒させていただいており、相続に関して、民法だけではない、所得税法、相続税法、さらには法人税法といった実務のお話が聞けることが非常に勉強になります。

 こうした知識と経験は、いつも依頼者・相談者の方への利益としてフィードバックし、発展させていただいています。

 相続は深い、突き詰めようと思っても尽きない、だから私は弁護士1年目の時から相続事件にはまり、相続事件が大好きなままなのだと思います。

 税務とともにこれを専門の一つとできていて、本当に幸せだとつくづく思います。

 数々の出会い、神様に日々感謝しています。

                          (おわり)

*阿波座のトマトラーメン信濃路。

 真似できそうで真似できない唯一無二の味。

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2015年7月22日 (水)

遺産隠しに対する武器 ー依頼者の利益を守る武器ー

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* 大阪、大川を行く水陸両用車でのダックツアーのバスです。これは沈みませんが。
沈みゆく船には乗らないことが大事。気づいたら、脱出。自分の利益を守る行為を誰も責めることはできません。



 弁護士法23条の2というものがあります。

(報告の請求)

第23条の2  弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。申出があつた場合において、当該弁護士会は、その申出が適当でないと認めるときは、これを拒絶することができる。

2  弁護士会は、前項の規定による申出に基き、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

 弁護士会長名で、「公務所又は公私の団体に照会し」、「必要な事項の報告を求めること」ができるのです。

 私の場合、これまで一番多く利用したのは、被相続人名義の資産の有無と履歴等に関する金融機関への調査です。

 相続人となる依頼者から遺産分割協議、あるいは遺留分減殺請求の依頼を受けて、その事件に関するものとして、そもそも遺産が少なすぎるのではないか、他の相続人によって遺産隠しが行われているのではないかといった場合です。

 これは、23条の2による弁護士照会でなくても、相続人ということであれば、被相続人名義のものは調査をその相続人自身でもちろんできます。

 しかし、そもそも弁護士に依頼されている時点で、ご自身でそのような煩雑な手続きをやり遂げるのは時間的にも労力的にも困難という方がほとんどです。

 また、弁護士の方で、一相続人の代理人として照会するくらいなら、弁護士会への手数料が一件当たり5000数百円を要しますが、一斉に同じ書式で照会でき、また迅速な回答を得られますので、23条照会を利用しています。

 23条照会を利用するとして、どこに照会をかけるのか

 必須なのが、被相続人が利用していたであろう郵便局管轄のゆうちょ銀行です。

 ゆうちょ銀行の場合、他の金融機関とは異なり、各支店ごとの管理ではないため、照会先も、○○支店などではなく、センターになります。

 そのため、口座がある場合、一番ひっかかりやすいといえるものです。

 また、たいていの人はゆうちょ銀行を利用しているともいえます。

 弁護士が、遺産調査の業務を行う際、ゆうちょ銀行への照会なしで調査をしたということはあり得ない金融機関となります。

 相続事案に不慣れな弁護士の場合、こうした観点がないこともあり得るので注意する必要があります。

 そして次に検討すべきなのは、住居、それも過去も含めての住居、あるいは職場、通勤経路周辺の金融機関です。

 人が金融機関に口座をもつ場合、こうした自身が立ち寄りがちな場所に口座を設けていることが多いからです。

 ただ住所・職場については、転々としいてる人は要注意です。現住所近辺とは限らないからです。

 さらにポイントなのが、口座の存在、さらには取引履歴を取り寄せたとして、次の問題として明るみになるのが、被相続人が亡くなる直前、あるいは直後の解約です。

 いったい誰が解約したのか。

 またその現金はどこへ消えたのか。

 こうした金融機関の解約手続きに関しては、痕跡が残ります。

 そこで、金融機関に提出された資料、また金融機関が確認した資料を収集することも可能です。

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 こうした業務を経て、遺産分割協議、あるいは遺留分減殺請求事件においては、ザクザクと、当初ないといわれていた遺産が見つかることが多々あります。

 

 その場合、次にどのように対応するのか。

 不法行為に基づく損害賠償請求訴訟、不当利得返還請求権といったことが問題となります。あるいは、特別受益として計算上、取り込んでしまうのか。

 このあたりについても、相続関連については、不慣れな弁護士とそうでない弁護士の差がつくところとなります。

 既に10数年前から、裁判所の裁判官が研修の際に言っていましたが、自分である程度、Excelの使える弁護士に依頼すべきでしょう。

 要は、本当に、依頼者に有利となる法律上の計算式を知っているか否かということが試されています。

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 23条照会の適切、効果的な利用法を知っていることは、依頼者の利益を守るために必要不可欠な知識と経験です。

 弁護士会でも、多くの研修が実施されており、多数の書籍が出版されています。常に、勉強をし続け、情報知識をアップトゥーデイトしている代理人に依頼するのが重要です。そしてExcelの使える弁護士

 武器のない人には、守ってもらえませんから。

 功を奏しなかった場合、裁判官のせいにする代理人は最悪です。自分の能力不足を顧みずにやってき人である可能性が高いからです。

 裁判官にあたり外れはあって当たり前、その中で事案に応じてどう活動するかが弁護士として問われていると思います。失敗した時、そこから何を学びとってどう対応するか、生き様が問われていると思います。

 23条照会を使い、その人の権限なき解約を確認し、主張したら、「プライバシー侵害だ!」と言われ、弁護士会に懲戒請求する、と言われていたといったことがありました。法律上根拠のない懲戒請求、提訴行為、場合によっては、違法行為として損害賠償の対象となります。

                            (おわり)

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*B&Dに直面し、げんなりする時でも。
  夏の木漏れ日。爽やかな気持ちになります。

2014年12月 3日 (水)

遺産分割・相続と弁護士と、そして税務。

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 6月、大阪弁護士会で実施された研修のDVD研修があり、受講してきました。

 6月当時は、まだ公務員だったため、この研修の存在は大阪弁護士会からの会報で知ってはいたけど、受けられず、残念な思いでいたところ、録画DVDで見ることができました。 

 講師は、国税庁 課税部 資産課税課長です。

 つまり、大阪国税局の方ではなく、さらに上部機関であり、相続税の課税実務に関する本丸のところから人がいらっしゃって、弁護士向けに、「相続税の基礎と課税の現状」というテーマで2時間30分にわたり、研修をしてくれくのです。

 楽しみにして、受講しました。そして、実際。

 正直なところ、私自身は、確認にとどまる事柄が多かったのですが、改めて確認できたということで、非常に有益でした。

 その場では理解できなくても、心のどこかにひっかかっていれば、後日、今回の研修のために用意していただいた詳細なレジュメを取り出して、相続に絡む税務で弁護士が失敗することは少なくなるのではないかと思われます。

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 なぜ、想像以上に有益に思えたのか。

 それは、「国税庁課税部資産課税課長」が、法律家だった、つまり、検事であり、2年前に当該部局に出向されてきたからだったからというのが大きかったと思います。

 講師の方が最初におっしゃられたことに大きくうなづきました。

 曰く。

 当初、検察庁から、課税部の資産税課に出向し、相続税などちんぷんかんぷんで、実務家等による相続税、資産税に関する本はたくさんあったのでいろいろい読んだ、しかし、分かりづらかった。

 なぜわかりづらかったのか。

 それは、既存の本の多くは、条文や通達を引き写しただけのような本が多く、なぜそういう制度があるのか、なぜそのような条文があるのかといった、相続税法について条文の趣旨から書かれている本がほとんどなかったことによる、とおっしゃっていました。

 そうなんです!!

 他の法律をいろいろ学んできた法律実務家の思考は、条文の趣旨解釈を出発点、理解のよりどころとします。

 しかし、税務の実務家が書かれた本には、なぜかそのような視点から書かれているものが少ないのです。通達を表にしただけのようなものもあったりします。特に、相続税分野。

 講師の方は、こういった、弁護士にとっての分かりにくさを理解していただいた上で、趣旨から骨太に論じるという視点から、オリジナルなレジュメを作ってくださっていました。

 そうですよね、そうですよねと、うんうんうなづきながら2時間30分、集中して聞くことができました。

 相続問題といえば、賃貸業を営んでいなくても、自宅不動産くらいは不動産が登場してくることがほとんどだと思います。

 いよいよ平成27年1月1日、改正相続税法が施行されます。

 

 弁護士に相談する際、その弁護士が相続税務、譲渡所得課税といったことがらに知識と経験があるかどうか、連携できる税理士さんがいらっしゃるかどうか、よく見極めることが相続人、納税者にも求められると思います。

 遺産分割協議が終わった、遺留分減殺請求事件が片付いた!やった!と思い、せいせいしたと忘れた頃にやってくるのが、資産税調査です。

 今回の講師の方もやはりおっしゃっていました。税務調査て税務職員が来たら、どこの部署からきているか確認しろ、と。

 そうです、そうです。「リョウチョウ」の職員であれば、ちょっと覚悟が必要です。 

 ただ、肝心なのは、先の先の先を見据えた、相続事案の解決です。

 先の先の先。

 それは、税金です。相続事案の終わりは、調停成立の時、和解成立の時、判決確定の時、合意成立の時、ではありません。

 税務署による更正期間が経過したときです。そこまでいって、おわりです。

 メモがわりに。気をつける勘所。

 ・小規模宅地

 ・配偶者

 ・譲渡課税

 ・限定承認

 ・みなし贈与

 ・代償分割

  などなど

                           (おわり)

*福知山マラソン、5時間22分。

 福知山の子どたちからの手書きの応援メッセージのカードです。

 マラソンを走るようになって、人からの「応援の力」を実感するようよなりました。誰も困るわけではないし、ここで歩こうかなと思っても、沿道から、「痛いのは気のせい!」「あと20キロ、がんばれっ!」と応援の掛け声、プラカードなどを耳にし目にすると、いやいや最後まで頑張って走りつづけよう!と本当に「力」になります!

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2014年11月18日 (火)

遺産の調査 ~隠された遺産を探す~

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 遠く離れたところにいる親御さんが亡くなったというとき、その人自身は親御さんの財産状態についてては、生前、全く知らないというのがよくある状態です。

 近くにいた兄弟などが、親御さんの入院時の世話、あるいは亡くなった後の諸手続き等をして、その中で、その近くにいた兄弟が亡くなった親御さんの預貯金口座がどこにあるのか、株式はどこの証券会社て取引していたのかといったことを把握しています。


 この近くにいた兄弟等が、仮装隠ぺいすることなく、亡くなった父親の遺産は、こことここの口座にこれくらいあったよ、不動産もここに賃貸物件があったよ、賃料はこの口座に振り込まれているよ、といっことを正直に教えてくれたら、相続、なんの問題も生じません。

 相続税も課税されない金額の遺産について、相続人もたった二人の兄弟だけ、といった場合でも、遺産分割の協議が当事者間でつかずに、ご相談にこられて、代理人として依頼を受けることが稀ではありません。

 

 なぜ、もめて、弁護士のところまでくるのか。

 遺産を隠す、嘘をつく相続人がいるからです。

 生前、離れていたとはいえ、おおよその状況は分かっているものです。

 仮装隠ぺい、嘘の説明をされたときは、直感で不信感を持ちます。

 そして、不審に思う点を問いただすど。

 仮装隠ぺい、嘘をついている人は、怒りだします。

 怒って、相手を黙らせようとするのです。

 

 そのため、他の相続人は弁護士のところへ行くのです。

 「遺産はこれだけしかありません。」

 その説明を真に受けて、それをベースに遺産分割協議を開始するようでは、弁護過誤ともいえるでしょう。

 弁護士は、警察官や国税職員のような強力な調査権限はありません。

 しかし、弁護士にも、一般の人にはない調査権限が認められています。

 それがいわゆる「23条照会」、各弁護士会の会長名義ての照会制度です。

 

 例えば。

 金融機関によっては、相続人ということで、相続した者としての権利によって、相続人本人からの照会によっても、その支店等での、被相続人名義の口座の有無から、過去5年分ほどの口座の取引履歴について開示してくれるところもあるとは思いますが、弁護士会の会長名義でこれらを照会し、回答を得ることができます。

 どこに照会をかけるのか。

 よくあるのが、住居の最寄駅の金融機関、あるいは勤務先近辺の金融機関です。また、「ゆうちょ銀行」は各地区でのセンター管理になりますので、センター宛に照会をすれば、回答を得られます。

 こうして、照会をかけて、口座の有無と同時に、不審な動きはないかを確認します。

 

 そして、これまたよくあるのが。

 被相続人が亡くなる直前、直後の解約、出し入れです。

 やった本人は、残高証明書だけだせば、バレないと思っているのかもしれません。しかし、痕跡は残ります。

 そして。

 さらには。

 解約等をしている場合、金融機関等に対して提出した書類についても、23条照会によって提出を金融機関に求めることが可能です。

 被相続人の署名を偽造していたような場合。

 アウトです。

 ここで、さらによくある言い分は。

 父に頼まれて、代わって解約して現金の払い戻しを受けただけで、お金は父にそのまま渡したので、あとのことは知らない、という言い分です。

 そのような言い分が、例えば、税務調査において通用するでしょうか。

 それを認めていたら、相続税の適正な徴収はままなりません。直前の払い戻しについては、皆が皆、そのような言い分をのべて現金を現金のままどこかにほとぼりがさめるまで保管して終わりでしょう。

 

 相続人間での「返還請求訴訟」においても同じです。

 払戻の時期その当時の被相続人の身体的状況相続時の他の遺産の状況等がポイントとなります。

 その他種々のファクターから考えて、経験則上、その払い戻しを受けた金員は、被相続人ではなく、他の相続人が取得しているとの認定がなされ得ます。

 場合によっては、違法行為である、不法行為責任が問われます。

 

 遺産を隠してしまったら。

 早晩、それは必ずばれます。

 さっさと、全てをテーブルに並べて、相続分に応じた遺産分割協議をさっさとして自由に使える財産を確保するというのが、一番懸命な対応です。

 遺産分割でもめて、長引き、得する人はいません。相続人は皆、一緒に沈んでいくだけです。

 弁護士も実際のところ、もめればもめるほど得するわけでは決してありません。飲食店が、回転が速い方が実入りがいいのと同じです。ざっくばらんに言えば。

 

 相続事件において、もっとも経済的に合理的な行動は、

 さっさとすべてをオープンにして、協議を成立させることです。

 欲を出すと、結局、損をすると思います。損している人を見ていて、心からそう思います。

(おわり)


*真っ直ぐ王道を歩むのが、最も得をする道。

 ズルして脇道を通り抜けようとすると結局は痛い目に遭うだけです。

 やってしまったら。あとは往生際よく。

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2014年10月22日 (水)

遺言〜特に、自筆証書遺言に関する2005年のメモ〜

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 過去のデータを整理していたら、2005年に出演した、日本テレビの「おもいっきりテレビ」出演にあたってのディレクターさんとの打ち合わせをした後の自分用のメモがでてきました。

 自分でも、なぜここまでまとめていたのかまったく思い出せないのですが、自分で読み返して、興味深い点もあったので、備忘録的にここに載せておきます。

 時は、相撲取りの若貴のお父さんが亡くなり、若貴の相続でもめるか?とワイドショーの話題が華やかなりし頃のことで、みのもんたさん司会の昼間の全国放送の番組「おもいっきりテレビ」の特集は、ずばり、相続紛争でした。

 当時の松井のブログをみたディレクターさんからお声をかけていただきました。

*なお、参照される場合は、個人の責任でお願いします。個別の相談等を目的としたメモではありません。当職は、一切の責任を負いません。

*自筆証書遺言でも、本当に確実に法的な問題が生じるのを回避しようとするなら、遺言・相続業務に本当に経験のある通じた弁護士にご相談ください。弁護士が関与し作成された遺言書でも、争いになっている事案は少なくありません。

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おもいっきりテレビ 遺言・遺産分割協議 メモ

 

弁護士 松

 

■7月6日水曜日午後2時~午後3時30分

 打合せをもとに

 

 

遺言・遺産分割協議について気をつけること   

~主に、遺言・しかも自筆証書遺言について~

 

★公正証書遺言なら、公証人に相談段階で法的チェックが入るので問題となることは少ない。

★自筆証書遺言の場合、死後、無効となるリスクが大きい。

真剣に遺言書を作成するならやはり一度、専門家に相談し、チェックしてもらうのがベスト。

・各弁護士会での法律相談 30分 5250円。

・死後、遺言が無効か否か争いとなったら、裁判となり弁護士費用がかかる。それに比べれば安い。

 

 

■ 遺言について、結論としていえること ~紛争予防策~

 作ればよいというものではない。作っても、子供達の間でもめるときはもめる。遺言無効確認の裁判などになる。脅迫されて書かされたものだと言われたりする。

一番よいのは、生前から、皆の前で方針・意向を伝えるなりしておくこと。あるいは、期待させ誤解を招くような言動はとらないこと。

子供達に対して、理由のない不平等な取扱いはしないこと。不平等に理由があるなら、その理由を明らかにしておくこと。例えば、前妻の子で、離れて暮らしていたからちょっと少なめとか、あるいは、生前、三男には他の子と比べ十分なことをして上げていないから、ちょっと多めなど。

また、孫の一人を養子に入れていたなら、そのことも他の子にいっておくこと。なぜその子だけを養子にしたのか。争いになると考え言わなかったとしても、後から分かれば結局、争いとなってしまうから。

ありがちなのは、年老いた親が、長男にはおまえに家をやると言い、長女にもお前に家をやるなどといい、子どもそれぞれに対して良い顔をして、矛盾することを言っている。相続がおこったとたん、兄弟間で疑心暗鬼となり、もめるもと。

 

 もっとも、生前からあまり財産のことを言うと、皆、さぐり合いのようになりかえって空々しい状態になることもある。最悪は、遺言書の書きあい(書かせあい)合戦のような状態に。

 

 

■ 遺言をのこす意味

 

 遺言がないと、法定相続人が法定相続分に応じた権利をもち、遺産をどうするかについて、全員で遺産分割協議を行わないといけない。誰が何を取得するのか。当事者だけで話しがまとまらないと、家庭裁判所に調停申立を行い、そこで話し合い。それでもまとまらないと、審判といって裁判所が分け方を決めてしまう。

 結局、争いが何年にもわたり、その間、不動産の管理が行き届かず、さらには不動産・株等の価値が下落してしまい、みんなが損をすることにもなりがち。

 

 そこで、遺言。主に、自分が亡くなる前に、自分の財産について、自分の死後の分け方、誰に何を取得させるのかを決めておく方法。

 また、法定相続人ではない者、特別にお世話になった恩人・愛人などに、自分の死後に財産を遺したいと思ったら、相続人ではないので遺言で遺贈するしかない(生前に贈与することも出来るが、贈与税の問題。)

 また、自分の財産をこの相続人には相続させたくない、というときも。虐待を受けたりということであれば、遺言で相続人から「排除」ということも出来る。

 

 

■ 遺言作成の好適日

 

・ 民法961条 満15歳に達した者は、遺言することが出来る。

 

・ 大前提は、まず、遺言を作成する能力のある、精神的にも・肉体的にも、

 元気なときに。

  例えば、認知症の症状が出てからでは、後日、遺言作成能力がなかった、わけがわからずに書いているとして、遺言の効力が認められないこともある(遺言無効確認の裁判というので、相続人間で争いになる。)。

 

・ ただ実際に多いのは、自分が入院したときや、健康が弱ったときに、改めて自分の死後を考え、遺言を書く人が多い。

 そのまま健康を回復できないと、弱っていくなかで遺言書の作成の段取りをすることは困難なこともある。例えば、公正証書遺言では、出張サービスもあるが、公証人役場に行かねばならないのでままならない等々。

 

・ 儀式のように、毎年、年始に書くという人もいるようである。

 

★ 認知障害から成年後見を付されているとき

ときどき正常な判断を示すことが出来る時機があるが、認知障害により成年後見に付されている。遺言をしたいがどうしたらよいか。

医師二人の立ち会いが必要(民法973条)。

 

 

■ 遺言作成の準備

 

・ まず、自分のこれまでの人生を振り返る。

・ 財産については、不動産・預貯金・株式・自動車など、目録を作ってみる(遺産目録)。

・ また、自分の法定相続人は誰か、相続分はいくらかを確認する(遺留分の問題も出てくるので)(相続人目録)。実は、妻はじめ子どもも知らない、若いときに認知した子がいるといった場合は、その子も相続人として登場してくる。

・ 相続人に限らず、自分の財産を、誰に、何を取得させたいかを考える。

・ また遺言では、自分を虐待した相続人を相続人から排除したりすることもできる。

  中身の注意点は、後述。

 

 

■ 遺言の方式

 

 紙に書けばよいというものではない。民法で、きっちりと方式が決まっている。この定められた要件をはずすと、無効とされてしまう。遺言者の真意を確保するため。ただ、紙やペンなどはなんでもよく、横書きでも縦書きでもよい。

 

決められた要件とは、基本的に次の3つのどれかであること。

普通方式

 ・自筆証書遺言

 ・公正証書遺言

 ・秘密証書遺言

 

 その他、特別方式4種類がある。死亡応急者遺言、伝染病隔離者遺言、在船者遺言、船舶遭難者遺言。

 

 よく利用されているであろうものは、自筆証書遺言と公正証書遺言。

 もっとも、自筆証書遺言よりは、公正証書遺言の方が5倍以上多い。

 

★ 公正証書遺言(法務省民事局HP) 

  遺言公正証書    平成元年 約4万件 

平成11年 約5万8000件

            (約41%増)

 

★ 信託銀行の遺言保管件数 (信託協会HP 遺言関連業務取扱状況)

   平成6年 約1万7000件

   平成11年 約2万7000件

   平成16年 約4万8000件

 

★ ちなみに、家庭裁判所での自筆証書遺言の検認件数(法務省HP

   平成6年    7349件

   平成15年 1万1364件 

 

 

★録音テープや録画テープでは駄目なのか?

 

 外国ではOKなところもあるが、現在の日本の民法では認められない。

 録音テープは本人が吹き込んだものか否かを判定することが困難であり、また偽造や変造の危険が高いから。ビデオについても、同様の理由。

 

 仮に、遺言が有効か無効かの裁判で証拠として提出されたとしても、逆に、撮影者・録音者に言わされているのではないか、という疑いをもたれるだけのこともある。良し悪し。

 

 

■ 公正証書遺言

 

公正証書は公証人が基本的に公証人役場で作成してくれるもの。

二人以上の証人の立会いを得て遺言者が公証人に遺言の趣旨を口述し、公証人がこれを筆記して遺言者及び証人に読み聞かせ、遺言者及び証人が筆記の正確なことを承認した後、各自署名押印し、公証人が方式に従って作成された旨を付記して署名押印する方式(民法969条)。

原本は公証人役場に付属する倉庫等に保管される(公証則26条)。原本について、紛失、偽造、変造のおそれはないので、検認手続きは必要とされていない(民法1004条2項)。

 公証人という信頼性の高い第三者が、遺言者の意思に間違いないと公証してくれるので、後日、無効といった問題が生じにくい。

 ただ、公証人手数料が必要。

 これは、遺産の総額に応じて。

 ちなみに、1億円までは10万円以下。

 

★ 公証人はどこにいる?

 

 全国各地にある公証人役場にいる。元裁判官や元検事だった人が主に、公証人を務めている。法務省民事局HPによれば、平成12年9月1日現在、公証人役場全国に299箇所、公証人は543名。

 

*なお、公正証書遺言でも、裁判上、無効とされることはある。

遺言能力が認められない等。

 

 

 

■ 自筆証書遺言

 

 費用があまりかからず、誰にも知られずに作成できるのは、自筆証書遺言。

 遺言の内容を全部自分で書いて、日付を入れて、署名押印するだけ。

 

★ デメリット

自筆証書遺言は、後日、有効性が争いになりやすいというデメリットが大。民法の約束事、まず形式をしっかりと守っておかないと無効とされる。なぜなら、どのような形式でもよいとなると、それが本当に本人の真意だったのかどうか争いのもとになるから。

法律上、効力があるとするために民法は厳格な要件を付している。

 これが一つでも欠けると、無効となる。また、明らかに無効とまではいえないが、書き方が曖昧、作成経緯について怪しい点などがあると、結局、遺言無効確認の裁判などが起こってしまい、相続人間にかえって紛争を残すおそれがある。

 その他、遺言書が発見されない危険、偽造・変造される危険。紛失、破棄・隠匿の危険。家庭裁判所での検認手続きが必要、視覚障害者にとって利用しづらい。

 

基本 ①全文自書、②日付自書、③氏名自書、④押印。

 

 

事例

・日付: 

 「昭和四拾壱年七月 吉日」は有効か?

 日付の記載を欠くものとして、無効。いつ書いたのか、特定できない。

 ただ、「平成8年遺言者の誕生日」はOK。特定できるから。

 

 平成17年4月5日に作成したのに、平成18年1月1日と記載した場合

 わざと遺言作成日と異なる日付を記載した場合は、無効。

 もっとも、実際に遺言を書いた日と遺言書に記載した日付が違っていても、特段の事情がない限り、日付が記載された日に成立した遺言として有効。日付は、遺言の成立時期を明確にするために要求されているものだから。

 

・自書: 

 ワープロは、駄目。

 手が震えて字が書きづらく、他人の添え手による補助を受けた場合は自書といえるか?

 他人の意思が介入した形跡がなければ自書といえる。

 財産目録がタイプうちの場合、目録と照合しなければ遺贈物件の特定が出来ない場合、自書の要件を欠き、全部無効(東京高判昭和59年3月22日。判タ527.103)

 

・氏名:

 特定できれば、ペンネームでもOK。

 

・押印:

 実印じゃないと駄目なのか。指印ではどうなのか。

 実印でなくてもよい。指印もOK。但し、遺言者の同一性、真意の確保、文書の完成を担保する意味があるので、実印がベター。

 

*「一通の遺言書と確認されれば、その一部に日付・署名・押印が適法になされてい」ればよい(最判昭和36.6.22、民集15.6.1622)。

 一通の遺言書と確認されるために、契印があればベター。

 

■ 訂正方法も法律で決められている(民法968条2項)

自筆証書の加除、訂正

遺言者がその場所を指示し、これを変更した旨を付記して、特にこれに署名し、かつ、変更の場所に印を押さないと、効力がない。

例えば、500万円の「五」を「九」と訂正して、900万円とした場合、①訂正した「五」の所に押印し、②その遺言書の欄外に「この行一字加入一字削除」と付記して、その次に署名、あるいは、遺言書の末尾に、「この遺言書の第○行中『五』とあるのを『九』と訂正した」旨付記して、署名しなければならない。

 

★ 方式違反の訂正

訂正変更が無効となり、訂正変更はなかったものとして、訂正変更前の記載が遺言として扱われる。

しかし、訂正変更前の文字が塗抹等によって判読し得ないとき、当初から記載されていなかったものとして、結果、遺言全部が無効となることもある。

 

■ 遺言の内容 

 

★ 遺産処分の遺言(民法964条)

「遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。但し、遺留分に関する規定に違反することができない。」

ベターなのは、特定の相続人に特定の遺産を帰属させる旨の遺言。

「相続人XA土地を相続させる。」

その他、相続分の指定(902条)、遺産分割方法の指定(908条)、現物分割、代償分割、金銭分割もあるが、遺産分割協議が行われることが前提とされているので、紛争予防としてはあまり意味がないともいえる。

 

★ 条件付き、負担付きもOK。

 例えば、

 「遺産中の土地甲を長男Aに与える。そのかわり、長男Aは三男Cが大学を出るまで経済的な面倒をみること」(負担付遺贈)。

 「自分の死亡時に長男Aに子どもが出来ていれば、長男Aに土地甲を与える」(条件付遺贈)。

 

* 負担した義務を履行しないとき。

 相続人は、相当の期間を定めて履行を催告し、期間内に履行がなければ、遺言の取消を家庭裁判所に請求できる(民法1027条。取消請求権)

 

 

★ 表現方法 ~解釈、真意が争いになる~

 何を、誰に取得させるのかの特定をしっかりと。

遺言書の記載内容が不明確であると、真意が分からないとしてかえって争いに。

 

*遺言が有効か無効か、遺言の効力として当然に権利移転を生ずるか(遺贈、相続させる遺言)、あるいは、遺産分割手続きを要するか(分割方法の指定、相続分の指定)など、遺言の解釈は、遺産分割の前提問題として大きな影響。

 

 

★事例

 

・「自宅を長男にまかせます」

与えるという意味を含まず、遺贈とは認められないとされた(東京高裁昭和61年6月18日判タ621.141)。

・「遺産相続については、一切妻にまかせる」

争いになった。包括遺贈という解釈の余地もある。一見明白に無効とは言い難い(東京高裁平成9年8月6日判タ1005.170)。

 

*いずれにしても、「取得させる」「遺贈する」「相続させる」などと明記すべき。

 

 

・「青桐の木より南方の地所」をAに取得させる。

 争いとなり、裁判にまでなった。

 裁判所は、作成当時の事情、遺言者の置かれたい状況などを考慮して、遺言者の真意を探求し、遺言が出来るだけ有効となるように解釈して、特定ありとした(東京地判平成3年9月13日)。

 

・「住居表示」により特定された遺贈

遺贈の目的物として「不動産である東京都○区○丁目○番○号をXに遺贈する」と記載。

不動産は、法律上、土地と建物を区別している。法律上、住居表示は建物の表示である。建物のみを遺贈する真意なのか、建物ののみならずその敷地たる土地も贈与する意思なのかが判然としないとして、裁判に(最判第三平成13年3月13日)。なお、決着するまでに3年以上要している。

 

*不動産については、特定をしっかりとするべき。

不動産登記簿謄本の表記にしたがって。これは「住居表示」とは異なるもの。

不動産登記簿謄本を取得、確認しないといけない。

*また、実務的には、不動産の共有取得は避けた方がよい。売却、使い方等について合意が必要であり、紛争の種。

*その他、預貯金、株式についても、金融機関名、口座番号等の特定をしっかりとする。

*遺産目録を作っておくのがベター。

 

判例の態度

・遺言の解釈にあたっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探求すべきものであり、遺言書が多数の条項からなる場合にそのうちの特定の条項を解釈するにあたっても、単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出しその文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者のおかれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探求し当該条項の趣旨を確定すべきもの(最判昭和58年3月18日)。

・遺言書に表明されている遺言者の意思を表明して合理的にその趣旨を解釈すべきであるが、可能な限りこれを有効となるように解釈することが右趣旨に沿うゆえんであり、そのためには、遺言書の文言を前提にしながらも、遺言者が遺言書作成に至った経緯及びその置かれた状況等を考慮することも許される(最判平成5年1月19日)

 

 

■ 公序良俗に反して、無効。

愛人に全財産を遺贈する、遺言。

判例:無効となるときと、有効となるとき。ケース・バイ・ケース。

   遺言者と愛人との親密度と遺贈との関係、遺言者と妻及び愛人の関係の態様、夫婦としての実態の産む、破綻の原因、両当事者の資力、遺贈の内容

   ⇒遺贈が不倫関係の維持継続を目的としたものか否か、

    遺贈が相続人(特に、妻)の生活を脅かすものであるかどうか。

 

 

■ 法定相続人の遺留分。

 遺留分権利者は、配偶者、子、親。兄弟にはない。

 相続人が親だけ場合は、全財産の3分の1の遺留分がある。

 その他の場合は、2分の1の遺留分が定められている。

 

 例えば、父が愛人に6億の全財産を取得させると遺言しても、妻と子供は、2分の1、3億円は取り戻せる。

また、場合によっては、遺言そのものが無効となる。

 

 

■ 相続税

 

★ 遺言で遺産をもらったら税金はどうなるの?

  相続税を払う必要が出てくるかも。

 

  【4.5%】 (国税庁HP 発表資料)

  もっとも、平成14年1月から平成14年12月、死者約98万人に対して、相続税の申告対象となった被相続人は約4万4000人。課税割合は、4.5%という少数。

  ほとんどの人は、相続税を払うことはなく無縁で相続する。

 

★ 相続税

  基礎控除の制度

 

  5000万円×(1000万円×法定相続人の人数)

 

   例えば、遺産は自宅の土地建物と預貯金で合計5000万円、相続人は妻と子ども二人なら、財産が8000万円(5000万円×(1000万円×3名)未満の5000万円であるから、5000万円をどうわけようが、相続税を納める必要はない。  

 

   但し、注意点。 生命保険金は民法上は、原則的には遺産には入らないが、相続税法上は「みなし相続財産」として計上される。その他にもみなし相続財産があるので注意。

 

★ 配偶者控除といった制度

  その他、配偶者は、相続で財産を取得しても、すべての財産の2分の1か、1億6000万円のうち、どちらか多い金額に達するまでは、相続税が課税されない。

 

 

■ 生前に贈与しておいたら

 

★ 贈与税

 基礎控除額110万円。

 

 もっとも、住居について

 ・配偶者に贈与。20年以上婚姻。済んでいる家。2000万円の特別控除。

 ・親から子へ。住宅取得資金を贈与。550万円まで控除(110万円×5年分を先にという発想。)。

 

 

★ 相続時精算課税制度/生前贈与の際

 65歳以上の親が、20歳以上の子に生前贈与。

 特別控除2500万円。限度を超えた金額に20%の税率。贈与を受けた分につき、相続のときに、精算して納税することを選択。相続税、贈与税が免除されるわけではない。

 メリット 相続税が基礎控除の範囲内のとき、相続税もかからないのでメリット。

 

 

■ その他

 

★ 夫婦が子供達のためにと一緒に同じ書面で遺言をすることは出来るか。

NO。

民法上、一人一人の意思確認をするべきとされている(民法975条 共同遺言の禁止)。

 

 

■ 遺言執行者の指定

 

執行を必要とする遺言内容、すなわち、遺贈の実現、認知や相続人の廃除のときなど、執行人が執行。親族を指定したり、弁護士を指定したり、あるいは信託銀行を指定したり。

遺言書に指定しておいてもよいが、指定していなくて執行者が必要な場合は死後、家庭裁判所が選任してくれる(民法1010条)。 

 

  

■ 遺言の撤回

 遺言の撤回はいつでもできる。但し、遺言の方式によらないといけない(民法1022条)。

撤回しても、その前の日付の遺言は原則、復活はしない(民法1025条)。

 

例えば、次男に2000万円を取得させる遺言を作成したが、入院中、次男が一度も見舞いに来ないなどといったことから、取得させたくないとき撤回の書面作成。あるいは、異なる内容の遺言書を作成すればOK。

 

前の遺言と後の遺言の内容が矛盾するとき、後の遺言が有効。

民法1023条「前の遺言と後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を取り消したものとみなす。」

 

 

■ その他 ~封入、契印~

封筒に入れる必要はない。しかし、入れて封緘したほうがよい。封筒には「これを発見したものは家庭裁判所で検認の手続きを取るように」と書いておく。

遺言書が数枚にわたるとき、契印は要らないが、一体のものと分かるようにしておいた方がよい。

 

 

■ 保管方法

 

 遺言を作ったはいいけど、死後、見つけてもらえなかったら無意味。

 そこで。

まず、封筒に入れ、「遺言書」と記載し、「この遺言書を相続開始後家庭裁判所に提出して検認を受けること」と付記。

 

 自宅の金庫。

 銀行の貸金庫。*預けている貸金庫名を相続人や受遺者などに知らせておく。

 弁護士に預ける。弁護士会の遺言センター。

 

★ 自宅保管

発見者が一人で見て、都合が悪いとき、破り捨てるなどの恐れ。

 

★ 遺言書を破り捨てるとどんな問題が起こるのか。

 遺言者自身が、破り捨てたら、遺言はなかったことになる。破棄による撤回。(民法1024)

 では、遺言者以外の人が死後、発見してから破ったら?

 

★ 長女が父の遺言書を死後、仏壇のところから発見したが封をあけて中身を見たところ、妻に3分の2、次女に3分の1を相続させる内容だったため、破り捨てた。ところが、次女がゴミ袋の中から破り捨てられたこの自筆遺言を見つけ、テープでつぎはぎし、皆に見せた。

・遺言を破り捨てた長女:自己が利益を得ようとして、遺言書を破棄したもの。相続欠格。(民法891条5号)。

・遺言書の効力は?:無効なら、相続人は配偶者妻と子であって、2分の1宛になる。

 内容を判読でき、自筆証書遺言としての形式(全文自書、日付、署名、押印)があれば、一体のものとして、有効。

 

 

★ 複数の遺言書が出てきた

  日付が3日しか異ならない二つの自筆証書遺言が出てきたが、内容が全く正反対だった。例えば、長女に全てを相続させるとあった(A遺言)のが、長女を相続人として廃除をもとめる内容(B遺言)だった。

 

 複数の遺言がある場合、日付の新しいものが有効。ただ、本件では2通とも、遺言者の真意に基づいて作成されたものか否か、争いとなる可能性が大きい。書かされた可能性が高い、遺言能力に欠けていたとみられる。裁判になったら、2通とも無効とされてしまう可能性が高い。

 しかし、この2通の前に、甲遺言として、A遺言と同じ内容の遺言があったら、

B遺言について他の相続人から、書くように強制されて書かされた可能性が高いと判断。

 

 

■ 遺言の保管者、発見者

家庭裁判所で、遺言書の検認の手続きをしないといけない。

封印のある遺言書も、家庭裁判所でないと開封できない。

 違反者は、5万円以下の過料(行政罰)に処せられる(民法1005条)

 

 

■ 検認手続き

「遺言には、常に偽造・変造の危険がつきまとう。そこで、民法は、遺言制度を公正に運用するために、後日の紛争に備えて、遺言書の現状を保全する手続きを用意した。それが、家庭裁判所による遺言書の検認である(1004条以下)」

 どのような用紙何枚に、どのような筆記具で、どのようなことが書かれ、日付・署名・印はどのようになっているか等々を記録して検認調書に記載。

 

★検認を受けたか否かは、遺言の効力とは無関係。検認を受けたからといって、遺言の有効性が確認されるわけではない。また、真正に成立したと推定されるわけでもない。

 現状の確認手続き。

 

 

■ 891条5号 相続欠格事由

相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者は、相続人となることができない。

 遺言に関し著しく不当な干渉行為をした相続人に対して相続人となる資格を失わせるという民事上の制裁を課そうとするもの。もっとも、遺言書の破棄隠匿が相続に関し不当な利益を目的とするものでなかったときは、不当な干渉行為ということはできない。自己に有利に遺産を貴族させようとする意思が必要。

 

 

★ 遺産分割協議後に発見された遺言

 

父の遺言書が発見されず、相続人(母と子3名)らで遺産分割協議が成立した。内容は、全てを妻Aが相続するというもの。しかし、その後、土地を子ども3名にという内容の父の遺言が発見された。

自分たちに土地を取得させるという内容であり、その遺言書の存在が分かっていれば、全てAにという遺産分割協議の意思表示をしなかった蓋然性が極めて高いので、遺産分割協議は錯誤により無効(参考判例最判第1平成5・12・16)

 

 

★ 日付が欠けて無効な自筆証書遺言に日付を書き加えた相続人

 

遺言書の偽造又は変造に当たる。しかし、遺言者の意思を実現させるためにその法形式を整える趣旨でされたにすぎないものであるときは、偽造・変造した相続人は、相続欠格者に当たらない(最判昭和56年4月3日 民集35.3.431)。

 

 

■ 自筆証書遺言書作成を弁護士に頼んだら費用はいかに。

 

弁護士 自筆証書遺言あるいは公正証書遺言作成の援助アドバイス料

    だいたい10万円以上。

 

 

以上

2014年10月20日 (月)

親亡あとの田舎の不動産問題

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*クリス=ボッティ。トランペット奏者。なんと、52歳。年をとるなら、男女問わず、美しくとりたいと思いました。内面でしょうね。20代、美しかった人も、40代、50代、いろいろな問題を抱えるからか、変容する人もいるようで。。。哀しいかな。

 改正相続税法、しかも改正の内容が基礎控除減額といった課税強化の方向であるため、いよいよ来年施行ということで、なにかと巷の一般向け雑誌でも相続特集が組まれています。

日経ビジネス「どうする田舎の実家や不動産〜節税対策のアパートも裏目に」

http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20131216/257089/?rt=nocnt


 いわゆる「相続対策」とは少し観点は違うのですが、雑誌でもテーマとして取り上げられるようになってきた、親が亡くなった後の残された田舎の土地・建物問題について、私が考える指針をここに記しておきます。

 先日、ピンチヒッターで某市の市役所が主催の市民向けの法律相談の担当をしてきたのですが、そこでもやはりこの手の問題のご相談が少なくはないようです。

 よくありがちな状況としては、次のような状況が問題状況となります。

 人口が減少していく一方の地方都市に、父母が暮らす。しかも、住宅は賃貸住宅ではなく、土地付き一戸建て。土地建物の所有名義は、父のみ、あるいは父と母の共有名義。

 子供達は、一名は地元で暮らすが、世帯をもっており住居もあり。他の子供は、他の都市に出ており、田舎に帰る意思はなく、その地で生活の基盤を築いている。

 そこで、父が亡くなる、母が亡くなる。父が亡くなった時には、母が同所で暮らしており、そのまま母はそこを終の住処とする。

 そして母が亡くなったとき。。。

 遺産として、預貯金等の資産は、換価して処分が可能です。

 問題なのは、不動産、母が終の住処とした自宅の土地と建物です。

 そこで暮らす子、相続人かいれば、その人が取得を希望するので、引取先という点では問題にはなりにくいでしょう。

 問題なのは、2の状況のように、相続人は誰も、当該土地・建物の取得を希望しないという場合です。

 この点、大都市の物件ならそれほど問題になりません。売れるからです。

 しかし。人口が減少していくのみの地方都市、田舎の物件の場合。。。売れません。買い手はいません。隣の土地所有者に声をかけても、そもそもそこも相続人が売りに出していて買い手がついていないという可能性が大です。

 そこで、親亡き後の田舎の不動産問題が生じます。

 この土地、建物、どないすんの?という問題です。

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 問題を先送りしても、リスクが消えるわけではなく、むしろ時の経過とともに、問題はより複雑になります。

 ですので、次の策を次善の策としておすすめします。

 まず、リスクとは。

(1)無人建物の老朽化リスクです。

 建物は、不思議なことに、そこに人が暮らすがどうかで傷み方が違ってきます。無人の建物、特に、このような場合、おそらく父と母が昭和の時代に購入した不動産でしょうから、ただでさえ相当老朽化が進んでいると思われます。

 そのような建物が、無人となって荒廃していくと、どういう問題がおこりうるか。  

 犯罪の温床となったり、他人が勝手に住み着いたり、あるいは、崩壊によって通行人を傷つけることが考えられます。全て、所有者としての管理責任が問われる可能性かあります。

 

(2)登記名義変更が困難となるリスクが、次に生じます。

 建物は、次に述べるように、とりあえず撤去したとしても、土地はどうしようもできません。

 そこで放っておくとどういう事態となるか。

 いざ、買い手がついたり引き取り手が見つかった場合、不動産登記名義を変更する必要かあるのですが、そのためには父と母の相続人全員からの押印が必要になります。

 しかし年月が経つと、相続人の子どもの一人も亡くなり、その配偶者や子どもが、父母の相続分を相続していることがあります。兄弟の配偶者や子どもからの印鑑をもらう必要がでてきます。

 また、さらには、行方知れず、さらには海外在住となると、登記のための必要書類取得のためにさらに種々の面倒な手続きが増えてきます。

 

   そのため、問題を先送りしても、何もいいことはありえません。

   買い手がないとしても、次善の策を打っておくべきです。

 売れない時の次善の策とは何か。

 父・母名義の土地建物につき、とりあえず、今いる相続人の誰か一人の名義に変えておくことです。

 つまり、「不動産の共有状態」を解消しておくということです。

 要は、売れない土地建物について、誰かひとりにババを引いてもらうというこです。

 そのためには、他の相続人もそれなりに協力する必要があります。

 

 例えば、建物の解体費用を多めに負担するなど。

 あるいは、固定資産税については、応分に負担し続けるものとして、金額を先に渡しておくなど(田舎の固定資産税ですからしれていると思います。建物を撤去しても、しれています。。。)。

 不動産の共有状態というのが、その後、この不動産を動かそうとした時に一番ネックになります。

 処分については、全員の合意が必要だからです。

 そのため、売れない土地建物でも、とりあえずは、相続人の誰か一人の名義としておくことを強くお勧めします。

 皆がそんな不動産は要らないというものを引き取ってくれるというわけですから、単純に、資産評価して時価がつくから、その分をキャッシュで代償金とうし支払えとういのは、欲を出してかえって損をするというパターンになります。

 そういった、大きな視点からの損得勘定ができない人をたまにみかけますが、そういう人には言いたい。

 損して得取れと。

 売れない不動産なんて、お荷物以外のなにものでもありません。

 固定資産税評価額は、「時価」ではありませんから。

(おわり)

*大阪市の北税務署の建物です。重厚な地震対策。このまま100年は使う計画でしょうか。 

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2014年10月15日 (水)

遺産分割協議と代償金債権と相続税

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 前回、「相続と税法」ということで、ざっくりとした記事を書きました。

 国税審判官としての任期付公務員の4年間、日々、気づいたこと、考えたことは自身のノートにメモはしていましたが、以前のようにブログ記事ということでまとめることまではしていなかったので、なかなか具体的にまとめずらく。

 でも、以前のときのように、気づいたこと、考えたことは具体的にここに書いて、オープンにアウトプットしていくようにします。

 前回の「相続と税法」では、大阪地裁平成26年2月20日判決について触れました。

 ネットで裁判所がオープンにしているものも検索したのですが、全文はなぜかヒットしません。ただ、前回の記事を見て頂いた方から、幸いにも、判例検索ソフト ウェストローではヒットするということで、全文を確認できました。ありがとうございました。「出典裁判所ウェブサイト」となっているのですが、これはなぜか見付けられません。

3 

 大阪地方裁判所平成26年2月20日判決(平24年(行ウ)183号)

 事件自体は、「更正の請求」をして、「理由はない」とした八尾税務署長、国を相手に納税者が、当該処分の取消しを求めた訴訟です。

 自身、4年間の公務員の間、ブログこそ書いていませんでしたが、経験をアウトプットし、ミス回避のために人の役に立てばと、退職後の平成26年7月22日、日本加除出版社さんから「税理士・弁護士のための税務調査の後の不服申立手続ガイド」を出版させていただいているのですが、悔やまれるのは、「更正の請求」についての記述が少なかったことです。

 「更正の請求」が問題になるのは、税務署長等に対して「更正の請求」をしたけど、「理由はない」旨の通知を受けた場合です。この通知が「原処分」として、取消の審理の対象となります。

 更正の請求の総則的な規定は、国税通則法23条にあるのですが、特に問題となりやすいのが、23条の2項の方で、1項の特則的な規定であり、23条1項の規定に関わらず、一定の場合は、1項の規定による更正の請求が出来ると規定されています。

 では、この一定の場合とはどういう場合かということで、「次の各号のいずれかに該当する場合」とてして規定されています。

 たとえば、3号。

 「その他当該国税の法定申告期限後に生じた前2号に類する政令で定めるやむを得ない理由があるとき」です。

 そして、この「政令」として、国税通則法施行令6条が登場し、「政令で定めるやむを得ない理由は、次に掲げる理由とする」として、1号から5号までが規定されています。

 

 前記の大阪地裁平成26年2月20日判決でも、究極的には、この国税通則法施行令の6条1項2号の「計算の基礎となった事実に係る契約が、解除権の行使によって解除され、若しくは当該契約の成立後生じたやむを得ない事情によって解除され、又は取り消されたこと」に当たるか否かが争われ、裁判所は、本件では、いずれにも該当しないとして、請求を棄却したものです。

 納税者の人は、5000万円の代償金請求権を他の相続人に対して取得したものとして、1800万円ほどの相続税を申告納付していました。

 平成6年頃のことです。

 この他の相続人は、遺産の不動産等を単独で相続するものとして、その見返り、代償金としての債権でした。

 そうです。「債権」に過ぎない、というのが最大のミスではないかと思います。

 債権ということは、当然、不履行がありえます。不履行。約束どおりに支払われない、ということです。

 弁護士はよくこのリスクを知っています。ですので、例えば、裁判上での和解で金銭のやりとりをするときは、裁判所の一室で、実際に現金なら現金、昔の株券なら株券のやりとりをします。その上で、和解を成立させ、終わらせます。

 後払いとなる債権での和解をする時でも、不履行を想定して、必ずなんらかの担保をとります。

 

 しかし、この当事者はいい人たちだったのか、当時、お互いきっと信頼関係があったのだろうと推測されますが、違いました。

 「平成6年遺産分割協議では、本件各代償金の弁済期及び弁済方法につき、①堺市αに所在する『Eゴルフセンター』の売却時、又は②本件相続に係る相続税の納付時、のいずれか早く到来した特に、Bが原告らに対し一括して支払うこととされた。」ようです。

 はーーーーーっ、とため息が出ます。

 Bの相続税額は3億5000万円近く。

 

 原告らは、取り敢えず、自身らの相続税1800万円ほどを納付しました。得たのは、Bに対する5000万円の代償金請求権だけで、実際には、何も取得していないに等しいにも関わらず。

 

 結果。ゴルフセンターが売れたのは、平成16年でした。

 そして。Bは、相続税を完納できておらず、原告らには、平成19年となって、税務署長から、相続税の連帯納付義務の履行を求める書面が届けられました。

 悲惨、の一言です。

 ここまでの事実関係で、そもそもどうすればよかったと学べるのか。

 まずはこの3つです。

 1つ 遺産分割協議を代償金で解決するについても、同時履行か担保をとる。

 2つ 遺産が不動産しかなかったとしたら。

    これは私もやったことがありますが、売却を一相続人に委ねない、ということです。コントロールできなくなります。共同売却をするにしても、期限を切ります。

 3つ 相続税額は、自己の課税額だけでなく、他の相続人の課税額につても確認し、それを確実に納税できるか否か、裏付けをとること。これをしておかないと、忘れた頃に連帯納付義務の通知が届きます。

 

 この事件の当事者の方々は、平成6年の相続につき、平成22年となり、当時の遺産分割協議を解約しました。

 5000万円の支払の履行請求は諦めるか、おいておくとしても、ともかく、1800万円ほどの納付した税金の返還と、相続で得た限りでとはいえ、相続税の連帯納付義務だけでもなんとか免れようとしたものと思われます。

 が。

 税務署長、大阪国税不服審判所、さらには大阪地方裁判所の判断は、本件の事情のもとでは、納税者らによる、平成6年の遺産分割協議の解除について、上記の「更正の請求」の要件は満たしませんよ、というのでした。

 このような事案は、金額の多寡こそあれ、決して珍しくはないように思います。

 そもそも、更正の請求の23条2項の要件は、実は、意外と厳しいです。条文の字面を表面的に読む以上に。

 控訴しているようですし、判決書からは分からない特別な事情がまだまだあるのかもしれませんが、どこかで諦めざるを得ない事案かもしれません。

 「遺産分割協議」と「代償金」と「連帯納付義務」。

 気をつけて下い。 


と、今回もさらっとした話しです。

本当は、「更正の請求」や「相続税の連帯納付義務」、さらには「遺産分割協議」のよくある留意点などをもっと具体的にまとめたい(言いたいことがある)のですが、またの機会に。

                           (おわり)

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2014年10月 7日 (火)

相続と税法〜納税者の災難か?〜

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 以前、遺産分割協議が整った後の相続税を巡る訴訟事件を担当させていただくことがありました。

 相手方には、遺産分割協議の代理人弁護士が就いていて、こちらは当事者だけで協議されていたという状況でした。

 遺産分割協議は弁護士がリードし、合意に至り、遺産分割協議書が作成され、基づき、実際の分配がなされました。

 

 しかし。

 問題はここからでした。被相続人の死亡を知ったときたら10か月以内に、法定相続人は、遺産分割協議が成立していなくても、いったん法定相続分で相続したものとして、各相続人それぞさが、相続税の申告と納税をする必要があるとされているのが相続税法です。

 この申告納税がされていました。

 その後、遺産分割協議が整い、法定相続分とは異なる金額で分けられた場合、理屈とては、法定相続分よりも多額の遺産を相続した人は、申告納税額が過少であったとして「修正申告」を、また、法定相続分よりも少ない財産しか受け取らなかったという人は払い過ぎとなる納税額を返還して欲しいと「更正の請求」を行うこととなります。

 ここで、いったん遺産分割協議は片付いたのにと、思いがけずあらたな紛争の火種となるのが、「更正の請求」です。

2 

 詳しくは記しませんが、この更正の請求についての弁護士のまったくの思い込みによる誤解により、新たな紛争が勃発しました。

 そこでは、私は、弁護士を就けずに単独で協議の交渉をしていた方の代理人として活動させていただきました。

 紛争のそもそもの原因は、弁護士があまりにも相続税法を知らなさすぎた、確認すべきことすらしていなかったことにあるように思えました。

 しかし。

 弁論準備の際に、裁判官からは、思わず椅子からひっくり返るかと思うような言葉が口をついて出てきました。

 「弁護士なんだから、税法なんて知らなくて当たり前でしょ!!

 そこからが勝負でした。

 弁護士向けの税法の講義は、弁護士が間違いやすいだけに各種の研修が実施せれています。弁護士の民法的な感覚だけで税法を見ると大きな過ちを犯します。

 この時のケースは、相続税法でも基礎中の基礎の知識のところでした。

 そのことを裁判官を納得させる活動を行い、最後は、無事に勝訴判決となり、控訴もされずに確定しました。

 ここまでではなくても、相続での遺産分割協議等をまとめる際、関わった弁護士がもう少し税法に配慮していたら,当事者の方たちはここまでさらに税金に苦しめられなくも済んだのではないかという事例はあとを立ちません。

 特に、相続税額だけで一人1000万円を超えるような事案ですと、なおさらです。

 遺産分割でもめて、相続税の納付額の工面でも苦悩する、相続に関わる弁護士は、最低限の、相続税法、さらには国税通則法の知識は必須でしょう。依頼者の利益を考えるのてあれば。

 平成26年10月6日の「週刊税務通信」では、大阪地裁平成26年2月20日判決が紹介されていました。

 残念ながら、判例秘書という判例検索サービスではヒットせず、全文は確認は出来てはいませんが。

 やはり、遺産分割協議と税務、更正の請求に関するものです。

 納税者の敗訴です。

 1815万円の納めた税金は戻ってはきませんでした。

 また、この納税者には、遺産分割協議により取得したはずの金員も入ってきていません。

 遺産分割協議の仕方として、「代償分割」というやり方があります。

 これで分割協議をまとめるときは、相手の資力、支払時期等の細部をしっかりと詰めるというのがポイントというのが、この納税者敗訴判決の教訓でしょうか。

 記事を読む限り、相続税の連帯納付義務の追及も受けているようで、悲惨としかいえません。

 こういった事例を見聞きするたびに、どうすれば防げたのか、なんとかならなかったのかと思います。

 国税通則法23条2項は、厳しいです。

(おわり)

*神川朋子弁護士( NY州弁護士)が、カリフォルニアの弁護士会の大会に参加してきました。法律に、税務と英語はもはや必須というのを実感しています。「弁護士」にさらなる付加価値をつけていかないと、実務の遂行(依頼者利益の最大化)が困難です。

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2014年9月25日 (木)

相続と塩漬け株とキャッシュアウト

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今更ですが。
会社法の教授が主催する、公認会計士さんや会計士資格ある会社の監査役の方、商工会議所の方々との勉強会に参加させて頂いて、改正会社法のキャッシュアウトについて、ようやく学びました。


実務的な視点からの話を聞いて、これは使えるようになっていて損はない制度とやっと納得がいきました。買取り方、買い取られる方,どちらの側でも。
相続がらみで、同族会社での株式の在り方でもめる、解決に至らず、少数株が塩漬けということもよくあるのですが、使えそうです。
キャッシュアウトを利用するアドバイスが出来ないとダメですね。
とはいえ、このキャッシュアウト、「株式」とはいったいなんなのかといったことや取締役の責任について、これまでの根幹を揺るがす改正内容といえそうです。
なぜ、こんな改正が通ったのか?
税法のみならず、民法のみならず、会社法のこんなところでも、ユルユルと必要性をテコに、それまでの事柄の本質が変えられていたようです。
あちこちで、講演して、雑誌などに書いて、本を出す。
それの繰り返しで、その考えがじわじわと広がっていく。
発言の力を思い知りました。
反対をも跳ね返す粘りだったのでしょう。

さらに先日は、税法の教授の方々の研究会にも参加させていただき、
発表者であった消費税法の実務家として超有名な税理士の方と消費税法の本質がいかに理解されていないかというお話ができました。
国税通則法16条2項7号の意味が理解されていないことの方がやはり多いのが現状なんですね。
その前は税理士の方々との勉強会で、久々に国税OBの方ならではの視点からの見解、調査実務はこうだ!といった話をお聞きできたりとで、10日間で3つの研究会、それぞれの視点があり、凄く刺激的でした。

結局まあ、全部、自分の不勉強を痛感する機会になりました。
先日は久々にジュンク堂で本をバカ買いすることに。
それぞれ次回までに、勉強します。
組織再編に絡む事項、会社法・税法と、
国際取引に絡む税法・契約法等の知識・経験はもう
大阪の一弁護士でも必須ですね。
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