弁護士による税務調査対応と税理士との協働
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税理士による税務調査対応、税務調査。
全国で行われているもののうち、1000件あれば993件は全く問題のないものではないかと思います。何が問題がないかというと、納税者の納得です。
しかしながら、1000件のうち、7件は問題のあるケースではないかというのが感覚です。
この7件が、納税者の方から、あるいは税務調査対応される税理士さんから、弁護士が相談を受けることになります。
納税者の方から、というのは、つまり既に対応してくれている税理士はいるけど、その対応に不満、あるいは信頼しきてれていないという方になります。
また、税務調査対応について税理士ではなく、弁護士に相談と言っても、まず普通の弁護士では対応は困難です。
なぜか。
税務署とはどういう組織かを知ることがないからです。
また、過去に何件か事件を実際に担当していない限り、税法の問題点の整理の仕方もわからない弁護士が残念ながらほとんどです。
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そうした中、国税庁関連の組織の一つである国税不服審判所に3年の任期のところを4年、しかも、所長が国税庁キャリアである名古屋国税不服審判所と、裁判官が所長をし、さらには相続案件が多いと言われる大阪国税不服審判所神戸支所に勤務した私のところに、この7件に当たる事件が相談に来ることが増えています。
ご相談、ご依頼を受けて。国税機関で勤務させてもらった弁護士として、非常にお役に立てる分野であることを実感しています。
税務訴訟で著名な弁護士木山泰嗣先生の著書で「税務調査を法的に視る」という名著があります。
なぜこのような本が出版されているのか。税理士向けの雑誌での連載の書籍化です。
木山先生も、端的には書かれてはいませんが。
これまでの日本の税務調査、税務行政。
法的視点をもって検討されることがなかった、ということに尽きると言えます。
税務調査対応をさせて頂くにつれ、その思いを実感していす。
逆に言えば、法的視点がなくても上手く回っていたのが、税務調査であり、税理士による税務調査対応だったのではないかと思います。
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法的視点。つまり。
一番、至近な点で言えば。事実認定のための証拠法です。
木山先生も書かれています。税務調査職員は、事実認定の証拠法を知らない。これに対応する多くの税理士も同じです。
また、何を事実認定する必要があるのかという点でいうと、その法律効果が発生するためには、どのような事実が証拠で認められる必要があるのか。何が証拠となるのか、です。
証拠、証拠と言っても、裁判の世界では、幅広く目配りをされます。
有利な証拠、不利な証拠。双方を見る必要があります。
また、あるべきなのにないもの、も。
さらに、事実認定といっても、スキル、技術があります。
司法研修所編として「民事訴訟における事実認定」(法曹会)として約400頁に及ぶ書籍が出版されているくらいです。
弁護士は、司法修習時代から、このスキルを習得するための研修を受け、実務、民事訴訟で実践を経てきています。
裁判という勝ち負けの世界での洗礼を受けています。
しかしながら、税理士や国税職員、税務調査担当職員は、そのような訓練、洗礼は受けていません。
これは、弁護士が、税理士試験の洗礼や記帳申告実務の洗礼を受けていないのと同じです。職種が違うだけにすぎません。
この狭間に落ち込んでいるのが、日本の税務調査対応だと思います。
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残念なことに、未だに聞く言葉。
「その税務署の署長とつながる国税OBを通じて、署長に口ききして、税務調査に手心を加えてもらう。」。
そうしたことがまかりとおっていた業界なのでしょうか。
今ではむしろ、そうした言葉を税理士が口にする場合、自身の能力の限界を口にするのに等しい話と言わざるをえません。眉に唾をつけてスルーすべきでしょう。そうしたことを口にする税理士に遭遇した場合。
税務署内の組織のノウハウに精通した者の知恵を借りるという意味では、私も、国税OBの税理士の方々にご相談することはあります。
しかし、それとは別に、何か裏技的な影響力を及ぼせるといったことを口にする場合、むしろ何らの力もないことの自白と言わざるをえません。
本当に力がある人なら、無駄に期待をさせることを口にすることなく、結果を出してから、あの結果は口ききをしたことによるというものです。
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法的視点で、税務調査を視る。
そうすると、残念ながら、現場の担当者の調査の不備、事実認定の甘さなど、いろいろな不備が目に付きます。
しかしながら、そうしたやり方で、1000件のうち993件は何ら問題とされることなく通ってきたやり方です。
こちらが不備な点を指摘したとしても、以前あった回答は、「これは局の方で決まった方針です。争うなら審判所で争ってください。」。
一度決めたこと、途中から出てきた弁護士に事実認定の不備、つまり裁判所ではその認定は認められないでしょう、なぜなら・・・という指摘を素直に受け入れられないつ軌道修正できないのが組織です。
ある相続税の調査事件では、こうした調査担当者と私とのやりとりに同席し、調査官自身が、分が悪いとう苦渋の表情を示したことに満足し、自身が本当は争えば勝てることも理解しながら、指摘どおりの修正申告に応じた納税者の方のケースがありました。
納税者の満足というのは、本当の法的サービスを受けた上での満足であって初めて意味があるものだと思います。
よくわからないけど、争えば勝てる見込みがあるのかどうかもわからないけど、税理士の先生が言うから、修正申告をしたというものとは違います。
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1000分の993のケースはどうなのか。
納税者は、税務調査を法的に視た上で、自身の強みと弱みを理解して、本当に納得して修正申告を提出しているのか。
税務調査対応の行政については、本当は弁護士が登場していくべき分野だと年々、実感しています。
しかし、対応に当たられる税理士の方では、弁護士と税理士の違いを知らない方がほとんどかと思います。よく聞くセリフが、「弁護士が出ててくると大事になる。」「弁護士が出てくるのはまだ早い。」と言ったものです。
国税不服審判所に着任した時に税理士の方から言われた言葉で、ひっくり返りそうにになったことがあります。同業の弁護士には笑い話としてネタにしています。
審判所に着任した税理士から、私が弁護士と知りつつ何気なく言われた言葉。
「要件事実の本は、伊藤先生の本がいいですよ。」
弁護士が、司法試験に合格し、司法研修での私の当時は2年間、ひたすら要件事実を実践で学び、論じ、書いてきた業種であるということを全く知らない、想像だにしていないというのが税理士の現実なのだなとこの一言でよくわかった一言でした。
納税者の方々が自ら、もっと弁護士のところに相談に行くしかこの分野、税務行政のあり方、法的を視点が入ることはない、変わらないかと思います。
多くの税理士は、事実認定、法律論等の税務調査対応が弁護士の分野ということを知りません。
ここでも、弁護士が、税理士の業務をとっていくというのではなく、適材適所というにすぎません。
修正申告をするとして、弁護士が作成するのはほぼ不可能です。
税理士が訴状を書けない、準備書面を書けないのと同じです。
税務調査の対応としては、事実認定も含めた法的主張を書面で出すべきことが木山先生の本でも提言されています。
この点からも、一般に、税理士の方は法的書面を作成することができないことがほとんどではないかと思います。
それは、国税不服審判所で4年間勤務して、代理人として、税理士が書面作成しているか、弁護士が作成しているかは、文章を読めばすぐに分かることでもありました。
税理士の方は法的書面を書くのが普段の仕事ではなく、またそうした訓練も弁護士ほどには受けいないからにすぎません。
そうしたバックグラウンドの違いを理解する税理士が増えれば、税務調査に関わる弁護士も増え、税務調査がさらにもっとよく変わる余地が多いにあるところだと考えています。
木山先生の本、ご意見も同じかと思います。しかしながら、ここの分野は税理士ではなく弁護士にと税理士には面と向かっていえないため、税理士に、もっと法律に、弁護士に近づいて下さいと提言しているご著書になるかと思います。
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しかしながら。
審判所で、税理士ではありませんが、多くの国税職員の方々と接してみて。
税務実務一筋でやってきた方に、今から法的なものの見方を身につけろ、というのは無理があるようにも思います。
それまでの仕事が違うからです。
20代の若い、これからの人なら別ですが、40代、50代のキャリアを積んできたか方々に、一から法律的思考を身につけろと言っても、そうした日々の訓練、また一人一人の向き不向きもある中、無理というものだと思います。
税理士、弁護士。バックグラウンドの違いを理解して、協働、役割分担、能力の違いを意識する、資格業者であっても自身の無知の知をもって、獲得目標を得るための手段として業務にあたりるのが一番、納税者の利益につながるかと思います。
わたしの周りでは、そうした理解のもとで協働させていただいている税理士の先生方が多くいます。そうした方々とは本当にうまく役割分担ができて、納税者の方も納得の活動ができているかと思います。
逆に、そうした役割分担、違い、差を理解しないままの税理士と一緒に仕事をすることはできません。そうした方の場合、異なる視点についていけず思い込みで動かれ、事態が悪化することになるだけです。無駄をとおりこして邪魔なものとなってしまいます、紛争解決にとって。
弁護士との協働ができる税理士が増えることを望んでいます。
法的サービスを受ける納税者の権利のために。
また、そうするためにいろいろな場面で発言し、法的サービスの狭間に落ち込んでいる税務行政の世界にもっと多くの弁護士の知見が活かされるようにしていきたいと思います。
9月から某所で、税理士を目指される学生の方々に対して授業をする機会を持ちます。付け焼刃的な法律用語を操るだけでなくて、本当の法的思考、法的にものを視る力を養える授業にしていきたいと思います。
法律の面白さを知ってもらうために。
それは、対権力となった時に本当の力となります。
以上
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