作品を生み出す人・澤田知子さん
1
先日の1月、大阪は梅田の蔦屋書店でのトークイベントといった
ものに初めて行ってみました。2003年、木村伊兵衛写真賞を受賞
したことでその存在を知り、なんとなく気になり続けていた
写真家・澤田知子さんのトークイベントでした。
そのFacebookの存在は見つけていてフォローしていたところ、
告知があり、チケットを手に入れるために、即、最新写真集
「Facial Signature」も購入しました。
2
行ってみて。
非常に刺激的な1時間でした。トークの相手であった
椿昇さんは、残念ながら何者かも全く知らなかったのですが、
澤田さんの高校時代の美術教師で、恩師でもあるとのこと
だったのですが、それだけの人ではなく、美術業界に
、今は大学の教授をされていて、業界に対しても突き放し
た考えをお持ちの方で、椿さんの話がまた面白く、行って
よかったと思えるトークイベントでした。
何が面白かったのか。
「食べていけないと、作品は作れない。」その言葉
を聞けたこと。
そして。日本のアート市場と、ニューヨーク、ロン
ドンの市場や、購入者、愛好家との違い。
「ハーブ&ドロシー」という映画の存在は知って
いました。見ていませんが。
海外(といっても、もっばらそのニューヨーク
とロンドン)での購入者は、大金持ちであろうが、
作者や作品のことを本当に根ほり葉ほり聞いてくる、
私よりも私のことを知っているのではないかと思う
くらいだと。
本当に好きで気に入って作品を買ってくれると。
3
作品であっても、発表して終わりではない。
売る行為と買う行為があって、そこにきちんとしたや
りとり、納得、評価が加わる。そこで、また新しい作品
が生み出されていく。
この素敵な過程、市場がきちんと機能しているのが、
成熟したニューヨークや、ロンドンの市場であると
いった話でした。
結局、他方で、日本のマーケット、美術界は未成熟
である、お金持ちが美術品を買う際、まだまだ百貨店
の外商任せが多い、日本から新人を見つけ出し、
日本以外の国に発信しようという業界人が少ないと
いった話でした。
澤田さん自身も、今は、力、コネクションのある
海外のギャラリーがついていて、経済的には困窮は
していないといった状況のよう。
単に、いい仕事、いい作品を生み出せば、あとから
お金はついてくるといった話ではなく、やはり
自己プロデュース能力、経済感覚かないと、生き残り
続けるのは厳しいようです。
そうした話は、もう10年近くまえ、村上隆さんの
「芸術起業論」で読んではいました。
4
澤田さん自身、5年ほどスランプの時期があったと。
このまま、作品を生み出せないなら、カツラを床に
置いて、業界を去ろうかと思ったと。
その時、共同プロジェクトの話があり、ハインツ
トマトケチャップの写真をもとに作品を作ったところ、
「これは知子の作品だね。」と言われて、自身の
タイポグラフィが自分自身であることに気づいたと。
木村伊兵衛写真賞を受賞した「コスチューム」は、
危ないところであった、逸れるところであったと。
このことを、椿さんは、10年はそのスタイルを続けろ
と、10年経てば、それが澤田知子だと認識される、と考え、
見守っていたと。
5
生み出し続けることは、しんどいかと思います。
フランスの三つ星レストランの有名シェフが自殺
したとの報がながれていました。
最近のところでは、カート=コバーンを思い出して
しまいました。
食べて、生きて、世の中に、一つでも多く作品を
残していってほしいです。
作品。
もしかして、amazonで買えないのかとチェックして
みたら、篠山紀信さんの作品は買えるようでしたが、
さすがに澤田知子さんの作品は売られていませんでした。
どこで売るのか。
美術業界。この辺りに革新の要素があるのではないか
と思います。
(おわり)
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