企業内の犯罪 ー従業員による横領・窃盗ー
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企業内での不正、特に、法人化していても実際にはオーナー経営者一人で従業員を何人も抱えているといった企業からの従業員による横領・窃盗の相談がなぜか増えています。
例えば、法律事務所もそうですが、医療機関です。
トップは、弁護士あるいは医師といった資格者であってプロフェッショナルです。
何人か従業員を抱えていて、組織的には経営のトップにあったとしても、経営そのものが仕事なわけではないプロフェッショナルですので、経理的な経営上の実務は、担当者に任せがちです。
まさに医療機関に多いのが家族経営だと思います。
医療機関に限らず、企業がある程度の大きさとなり、家族経営からの脱却を図るとなると、事務局長・経理部長を外部からの職員に任せることになります。
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外部の人に会社の経理を委ねる時、不正を防止する「システム」を必ず構築しておく必要があります。
自分が逆の立場のとき、自分は職務を全うするだけであって、間違っても人のお金、会社のお金を盗むようなことはしないと自分は考えていたとしても、他の人が、しかも、信頼して任せていた、まさかこの人がという人が、なんらかの事情で会社のお金に手をつけてしまうのです。
税理士がみているから大丈夫というのは大きな間違いです。税理士は通常は、記帳指導と申告業務しか依頼を受けていない立場です。
「監査」の仕事は、通常の税理士業務とは異なります。
このことを分かっていない弁護士や裁判官が少なくはないのも事実です。
また、監査法人の監査が必須の上場企業であっても、本年の東芝をめぐる報道のように、内部職員が偽の会計書類を作っていたら、それを見抜くのはやはり大会計監査法人によるナン億円もかけた監査業務であっても困難であったということが明らかになってしまいました。
東芝の場合はトップからして不正に関与していた疑いが濃厚なようですが、そのような場合は別にしても、従業員による犯罪、不正に関しては、これを未然に防ぐ体制・システムを作るのがもっとも効果的であり、唯一の被害防止策ではないかと思います。
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ではどのようなシステムを作るのか。
それは、医療機関の場合が典型ですが、各企業の業務における独特の金銭の流れがあります。それを熟知した者によるシステム設計をする必要があります。
監視・管理システムを作ったつもりが、実は、その当該担当者に大きな権限を与えた結果、かえってその責任者による不正・犯罪を誘発してしまったというケースも稀ではありません。
再発防止策がまさに重要になります。世界的大手監査法人のKPMGが出している、企業内不正に関する書籍でも、統計データから、不正対応に対する初期の対応ミスによってさらなる不正を誘発してしまったという例が少ないことが示されています。
企業内で一度、不正が発覚した場合は、当該問題を熟知した専門家への相談をお勧めします。
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時々読みかえす本に、稲盛和夫さんの「稲盛和夫の実学 経営と会計」(日経ビジネス文庫)があります。
読みかえす度に新たな発見を得る本ですが、今回、目にとまった記述を紹介しておきます。
103頁
「『ダブルチェック』とは、経理のみならず、あらゆる分野で、人と組織の健全性を守る『保護メカニズム』である。
仕事が、公明正大にガラス張りの中で進められているということは、その仕事に従事する人を、不測の事態から守ることになる。それは同時に、業務そのものの信頼性と、会社の組織の健全性を守ることになるのである。」
「ダブルチェックとは、人に罪を作らせないための原則である」
そうした上で、次の項目について具体例を挙げて論じています。
□ 入出金の取り扱い
□ 現金の取扱い
□ 会社印鑑の取扱い
□ 金庫の管理
□ 購入手続
□ 売掛金、買掛金の管理
□ 作業屑の処分
□ 自動販売機、公衆電話の現金回収
そしてこう述べています。
「トップ自らが、本当に守られているのかを現場に出向き、時々チェックしなくてはならないのである。」
「その根底には、社員に決して罪をつくらせないという思いやりが、経営者の心の中になくてはならないのである。」
これはプロの経営者、経営が仕事である社長にとっては当然のことです。
しかし、本当に難しいのは、大きなお金を扱う機関でありながら、トップの仕事が他のプロフェッショナルであって、経営そのものがプロフェッショナルとは限らない医療機関が一般的に抱える問題ではないかと思います。
信頼できるその道のプロフェッショナルをどうやってみつけるのか。
医療機関相手のコンサルティング業者が多い理由もこのあたりにあるかと思います。
二次被害に遭うことのないようにだけ気をつけて欲しいと思います。もちろん他利の姿勢で有益な助言をするプロフェッショナル コンサルティングというものが存在するという前提です。
(おわり)
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