信託と弁護士と税務
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近畿弁護士連合会の夏季研修がこの3日間、大阪弁護士会館で実施されていました。
私は泊まりでの出張のため、残念ながら出席できなかったのですが、「新しい民事信託の実践」というテーマで、東京弁護士会所属の伊庭潔弁護士が研修講師となった研修が実施されていました。
レジュメだけみると。
やはり、との記述がありました。
「信託税制 原則として、信託を利用した節税はできないと考えるべき。
信託の設定方法を誤ると過大な相続税、贈与税が課せられることがあるため、信託税制に詳しい税理士に相談することが必要。」
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昨年7月に弁護士業に復帰しててから、いろいろなご縁があって、税理士の先生方がメインの信託税制の勉強会に参加させていただいてきました。
関西の税理士の先生方ですが、皆様、信託税制が関わる税務を扱ったことがないということで、皆で、この半年以上の間、民事信託、具体的には、株式や収益不動産などの資産の活用・承継にどう使えて、使えないのかを勉強してきました。
その結果、ちょうど先日、まさにほぼ意見が一致していたのは、上記に記述の点でした。
信託税制を勉強すればするほど。
節税にはまず使えないし、下手をするとかえって余計な税額負担が生じるリスクが生じて怖い、予見可能性がまだまだ未知数な点があるといったことでした。
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私の場合、今年の27年1月に税理士登録しているとはいえ、申告業務などは扱っていません。
ですが、税理士の先生方との勉強会を通じて、今の信託税制がどういう立て付けかといった点はおぼろげながら理解しました。
そうすると、弁護士として民事信託を扱うとしても、「信託に詳しい税理士に相談すること」は必須要件であって、でも、さらに弁護士自身がやはり、基本的な信託税制の仕組みを理解していないと、適切な民事信託のスキームの提案は無理、弁護過誤になりかねないとの思いを抱くに至っています。
信託税制を理解するには、相続税法の相続や贈与のみならず、不動産や株式が登場するでしょうから、譲渡所得の基本概念や、資産評価についても知っている必要があると思います。
となると。
本当に弁護士が信託を扱っていいのか、リスクをコントロールしたスキームを提案できるのか。微妙だと思います。
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平成18年の信託法改正によって、民事信託がより使える制度になると言われながら、現状、少なくとも東京以外はまだ普及しきっていないと思われます。
その原因は、やはり信託税制がネックになっているのではないかと思います。
わかっている税理士さんがそもそも多くはないですし、またわかっている弁護士も多くはない。
専門家の責任もありますが、やはりなによりも信託税制そのものに問題があるのではないかとも思います。
この点、いろいろなところですでに問題提起されているところです。
こうした点、専門家である税理士、弁護士がもっと声を上げる、上げ続ける必要があるところに思えます。
まずは、確実に税務上、問題のないケースから、相談者の理解を得て実践していくか。税務署からの「お尋ね」や、調査対象となったときの理論武装を整えて。
変えていかないと、何も変わらないですね。
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成年後見制度については、弁護士などの成年後見人の不祥事が相次いだこともあり、家庭裁判所の監督も厳しくなり、資産の活用といった視点はほとんど期待できず、とにかくただただ不正から守る、といった視点しかなくなっています。
こうしたところで、本当に、残される子、被成年後見人などの生計を考えたら、より柔軟に資産活用ができる民事信託の利用は不可欠ではないかと思われます。
必要な人に必要な法的サービスが届くように、専門家の責任だと考えています。
(おわり)
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一泊での出張というのは、沖縄出張でした。その日の仕事の段取りが終わった後、海を見る機会がありました。久しぶりに、透明な海、水平線を見て、心が洗われました。沖縄に暮らす人々を羨ましく思いました。暮らしたら暮らしたで、報道もされているように種々の問題が山積かとは思いますが。
暮らしていなくっても、沖縄の問題は日本で暮らす人々の問題ですね。沖縄の人々だけの問題ではない。平和記念館に立ち寄りたかったのですが行けませんでした。
もうすぐ終戦記念日。
東方神起のユノさんが韓国の制度のもと、2年間の予定で韓国の軍に入りました。2年後、無事に東方神起として活動できる世の中であって欲しい。
沖縄の海も人も守っていかないといけないですね。
「守る」というのは戦うことだと思いますが、それは暴力以外の方法で。だとすると、言葉でしかないですね。あとは、日本国憲法。言葉を守る法。
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