相続と相続税と名義預金/「裁判官基準」
得意気です。第1回姫路城マラソン、5時間8分ほどで完走できました。
歩いてしまいそうなとき、沿道の皆さんの応援が励みになって走り続けることができました。
ありがとうございます‼︎ 応援は本当に人を動かす力になるのを実感できるのがマラソンの良さです。走り始めて2キロのところで、「あと40キロや!」という声援には苦笑しましたが(^_^;)
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今年27年1月1日からの相続税の改正、増税を機に、ますます相続と相続税との関連について関心が高まっているようです。
弁護士と税理士とのコラボの書籍などもよく見かけるようになりました。
逆にいうと、なぜ今まで見過ごされがちだったのかということの方が不思議です。
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平成11年に大阪弁護士会で弁護士登録してから、たまたまだったのですが、弁護士1年目から、複雑な相続事件を多く担当させていただきました。
その中で、あ、これは相続税を知っていないといけない、とすぐに痛感するようになりました。
さらには、相続税だけではなく、そもそも相続税の納税義務が発生するような事案では、どのように資産が形成されているのかというと、大抵は、なんらかの事業をされている方なので、その事業に関して、所得税、具体的には、不動産所得、譲渡所得といったものを知っている必要がありますし、資産管理会社を作られたり、法人として事業に成功されている方の場合がおおいので、法人税の核くらいは知っておく必要があります。
さらには、当然、ある程度、決算書の数字も読める必要があります。
そうでないと、依頼者に対して、本当に依頼者の利益に適った解決方策を示すことができないからです。
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そこで、この時機を逃したらもう体系的に学ぶ事はないかもしれないと、2007年、平日夜間と土曜日授業が主ということで、関西学院大学専門職大学院の経営戦略研究科の会計専門職専攻に入学しました。
また、さらに実務を深める機会として、縁あって、2010年からは国税不服審判所で審判官としてはらたくこととなりました。
そこで、また数多くの「相続と相続税」の事案を担当することとなりました。
国税不服審判所では、基本的に事件は非公開ですが、先例的な意義があるとされたものは、ホームページで要旨等が公表されています。
この分類をみるだけでも、相続税にからんで、相続上、どのような問題が多いのか伺い知ることができます。
興味のある方は、一度、ざっとでも目を通されることをお勧めします。
例えば、相続税の課税財産の範囲、という分類があり、その中に、「預貯金」という分類があります。
これが、よくいう「借名預金」という問題のところです。
被相続人名義の預貯金ではないけど、実質的には被相続人の財産だとして、課税財産に含んでいなかった場合に課税対象とされるものです。
相続税の申告を税理士の先生に依頼した場合でも、被相続人名義でないものは、遺産ではないから、税理士の先生に伝えなくてもいいだろうとして伝えない方もいらっしゃるかと思います。
これに対して、気の利いた税理士の先生でしたら、故人の所得の割に遺産が少ないというときは、名義の預金等がないかを遺族に確認します。
そこで、遺族名義等の預金を見つけたときにどのように判断するか。
「国税調査官ならどう判断するか」
「税務署からはなんといわれるか」
これを基準としていたら間違います。
なぜなら。国税調査官、あるいは、税務署長、あるいは国税局の審理部の担当者、これらの人でも間違っていることがあるからです。
なにを間違うのか。
証拠の評価、事実認定、事実認定のための経験則をです。
これらの要素は何を基準にすべきなのか。
裁判所での裁判官です。
「裁判官ならどう判断するか」
を基準として、国税の税務調査のときでも判断すべきです。
そうでないと、実は、法的には明らかに間違った判断、ありえない判断がされていたといった場合、それに気づかずに言われるがままに修正申告をしていたというようなとき、悔やんでも悔やみきれません。
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相続税に限らずですが、調査が入ったときには、「裁判官基準」で調査官の指摘が合理的かどうかを判断して対応すれば、納税者の方も悔いはないかと思います。
名義預金の場合、裁判官基準とは何か?
裁判官は何を基準に判断するのか?
基準については、最高裁判例があるものは最高裁判例です。
名義預金の場合、どうか。
いくつかの最高裁判例があります。
てっとり早いのは、裁判官の福井章代さんが、最高裁判決の読み方を整理された、判例タイムズでの研究でしょう。
平成18年9月1日号 「預金債権の帰属について」ー最二小判15.2.21民集 57巻2号95頁及び最一小判平15.6.12民集57巻6号563号を踏まえてー
相続税で名義預金の問題に直面した場合、この小論は必読だと思います。
裁判官の頭の中が垣間見えます。
調査に来た調査官、あるいは国税局の審理部の担当者の頭の中と裁判官の頭の中が同じという保証はどこにもありません。
なぜならば。
試験も違うし、資格も違うし、仕事も違うし、経験も違うからです。
警察官の捜査が、刑事訴訟法のもと、裁判官基準で動かされるのと同様に、税務調査に関しても、民事訴訟法・行政訴訟法のもと、裁判官基準で動くようになっていって欲しいというのが願いです。
ただ、警察官の捜査に関しては、起訴の前に、法律家である検察官のチェックが入ります。常に、検察官からのフィードバックがあります。
しかし、国税の調査と処分に関しては、そのような裁判を知っている本当の法律家によるチェックは構造上、入っているとはいえません。強制捜査となる査察はもちろん別です。
国税庁の本部や、局の国際関係には、検察官や弁護士が数名は入っています。また、局には、一応、リーガルチェックの機関としの部門があるようです。しかし、憲法から、訴訟法から法律を学び、使ってきた人材ではないので、本当の法律家と比較したときの限界があるかとは思います。もちろん、司法試験に合格しながら、行政官を務めている人は別でしょうけど。
えっ、この程度の調査、理屈なら、いっそのこと更正処分を受けて、争ってみても良かったのではないの?というケースで、調査官から言われるがままに期限後申告や修正申告書を出し、あとから悔いている納税者の方を見かけるたびに、ただ単純に、純粋に胸が痛みます。
(おわり)
川の流れ。大きな流れにただ流されるだけでは、どこにも辿りつけません。目指さないと。
大阪の大川です。もしかしたら、ここて泳ぐかも。
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