エンターテイメント業界の法律
奈良橋陽子さん「ハリウッドと日本をつなぐ」(2014年、文藝春秋)を読みました。
エンターテイメント業界。なかなか厳しく、かつ面白いです。特に、映画製作。
それはともかく。こういった記述に職業的には目がいきます。
*赤字 松井
72頁
「契約書」
「万事うまくいって、ある俳優がその役に選ばれたとします。すると今度は大手のスタジオと契約をします。同時にビザの手配もしてもらいます。
日本では弁護士を雇うことが少ないと向こうも知っているので、契約書にすぐにサインするように強く要求してくることも多々あります。ただ、アメリカの弁護士(もちろん日本の弁護士の場合もあります)が入った場合はその契約書をちゃんと見て、どの条件が入っていないとか、この条件は権利を譲り過ぎだとか、チェックしてくれると思いますので、そのアドバイスに従うことが大事てす。」
84頁
「翻訳の難しさ」
「契約書は正確に翻訳し、法律上のことをきちんと俳優に理解してもらわなければいけません。かつて、大手のスタジオが契約書を作成し、それを日本人の役者のために翻訳する必要があったと時に、『こちらにできる人がいるから大丈夫です』と言われたことがありました。しかし『念のため、事前に一度読んで確認してください』と言われたので読みましたが、最大の問題は、その『できる人』が映画独自の表現を知らなかったことでした。
契約書の中に『××日はFREEである』と書かれていたのですが、これを『ただ』、つまり『ギャラは支払われない』と翻訳していたのです。実際は『この日はオフの日』というのが正しい意味なのです。このことは指摘すると、スタジオの弁護士は『ではあなたが知っている人で、契約書の翻訳ができる人はいませんか?』と尋ねてきました…!」
2
奈良橋陽子さんの本を読んでいて、興味をもち、それならばと、日本の芸能界からハリウッドの映画出演にと挑戦した田村英里子さんや、工藤夕貴さんの本を読んでみました。
二人とも、「SAYURI」を通じて奈良橋陽子さんと面識があるようです。それぞれの本に、「奈良橋陽子」さんのお名前が登場してきます。
いずれにしても、ハリウッドの映画業界、熾烈な様子がうっすらと垣間見得ます。想像を絶する競争の世界なのでしょう。
日本の「ぬるい」契約社会も、これから、ようやく徐々に変わるかもしれないですね。
CDが売れない。
マドンナは、もう5年以上前に見越して、レコード会社から離脱してますし。
http://songjing55.cocolog-nifty.com/20022010/2007/10/the-paradigm-in.html
業界激変。
でも、映画業界はどうなのでしょう。
出版業界も激変ですよね。
3
そういえば。
昔。
友人が、東京の大手出版社から小説を出版するというとき、契約書のチェックを頼まれました。
ただ、じゃぁその段階で、全くの新人小説家である友人が、その大手出版社と契約条項を巡って交渉する余地、つまり大手出版社は、規定の契約書の条項を変える余地があるのかというととてもそのような期待はできない力関係でした。
どうしても、出版社の方がこの本を出させて欲しい、あるいは、俳優として出演して欲しいという「オファー」を受けた立場なら、別です。
しかし、そうでないと。
規定の契約書、つまりは出版社に有利で契約書を出版社が著者との交渉に応じて、変えるかどうか。
こういった、ことを始める前から諦めて、交渉しないというメンタリティーがこれから日本でも変わっていくんでしょうね。
お互い、言うだけいわな、という。で、言ったもの勝ち。黙っている者、交渉しないものが損をする。
(おわり)
* 奈良橋さんの本で、「MIYAVI」さんを知りました。格好いい。。。
既に日本ではいろいろ言われているようですが、アンジェリーナ=ジョリーの監督作「アンブロークン」を早く日本でも観てみたいものです。まだ上映は決まっていないのか。
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