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2014年10月 7日 (火)

相続と税法〜納税者の災難か?〜

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 以前、遺産分割協議が整った後の相続税を巡る訴訟事件を担当させていただくことがありました。

 相手方には、遺産分割協議の代理人弁護士が就いていて、こちらは当事者だけで協議されていたという状況でした。

 遺産分割協議は弁護士がリードし、合意に至り、遺産分割協議書が作成され、基づき、実際の分配がなされました。

 

 しかし。

 問題はここからでした。被相続人の死亡を知ったときたら10か月以内に、法定相続人は、遺産分割協議が成立していなくても、いったん法定相続分で相続したものとして、各相続人それぞさが、相続税の申告と納税をする必要があるとされているのが相続税法です。

 この申告納税がされていました。

 その後、遺産分割協議が整い、法定相続分とは異なる金額で分けられた場合、理屈とては、法定相続分よりも多額の遺産を相続した人は、申告納税額が過少であったとして「修正申告」を、また、法定相続分よりも少ない財産しか受け取らなかったという人は払い過ぎとなる納税額を返還して欲しいと「更正の請求」を行うこととなります。

 ここで、いったん遺産分割協議は片付いたのにと、思いがけずあらたな紛争の火種となるのが、「更正の請求」です。

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 詳しくは記しませんが、この更正の請求についての弁護士のまったくの思い込みによる誤解により、新たな紛争が勃発しました。

 そこでは、私は、弁護士を就けずに単独で協議の交渉をしていた方の代理人として活動させていただきました。

 紛争のそもそもの原因は、弁護士があまりにも相続税法を知らなさすぎた、確認すべきことすらしていなかったことにあるように思えました。

 しかし。

 弁論準備の際に、裁判官からは、思わず椅子からひっくり返るかと思うような言葉が口をついて出てきました。

 「弁護士なんだから、税法なんて知らなくて当たり前でしょ!!

 そこからが勝負でした。

 弁護士向けの税法の講義は、弁護士が間違いやすいだけに各種の研修が実施せれています。弁護士の民法的な感覚だけで税法を見ると大きな過ちを犯します。

 この時のケースは、相続税法でも基礎中の基礎の知識のところでした。

 そのことを裁判官を納得させる活動を行い、最後は、無事に勝訴判決となり、控訴もされずに確定しました。

 ここまでではなくても、相続での遺産分割協議等をまとめる際、関わった弁護士がもう少し税法に配慮していたら,当事者の方たちはここまでさらに税金に苦しめられなくも済んだのではないかという事例はあとを立ちません。

 特に、相続税額だけで一人1000万円を超えるような事案ですと、なおさらです。

 遺産分割でもめて、相続税の納付額の工面でも苦悩する、相続に関わる弁護士は、最低限の、相続税法、さらには国税通則法の知識は必須でしょう。依頼者の利益を考えるのてあれば。

 平成26年10月6日の「週刊税務通信」では、大阪地裁平成26年2月20日判決が紹介されていました。

 残念ながら、判例秘書という判例検索サービスではヒットせず、全文は確認は出来てはいませんが。

 やはり、遺産分割協議と税務、更正の請求に関するものです。

 納税者の敗訴です。

 1815万円の納めた税金は戻ってはきませんでした。

 また、この納税者には、遺産分割協議により取得したはずの金員も入ってきていません。

 遺産分割協議の仕方として、「代償分割」というやり方があります。

 これで分割協議をまとめるときは、相手の資力、支払時期等の細部をしっかりと詰めるというのがポイントというのが、この納税者敗訴判決の教訓でしょうか。

 記事を読む限り、相続税の連帯納付義務の追及も受けているようで、悲惨としかいえません。

 こういった事例を見聞きするたびに、どうすれば防げたのか、なんとかならなかったのかと思います。

 国税通則法23条2項は、厳しいです。

(おわり)

*神川朋子弁護士( NY州弁護士)が、カリフォルニアの弁護士会の大会に参加してきました。法律に、税務と英語はもはや必須というのを実感しています。「弁護士」にさらなる付加価値をつけていかないと、実務の遂行(依頼者利益の最大化)が困難です。

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