マンション管理に関するたぶん「健全な怒り」から、勢いで3つ、ブログを作りました。
4年ぶりに弁護士業に復帰し、一応、今も大阪弁護士会消費者保護委員会に所属しているのですが、すっかり幽霊部員になっていました。
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4年ぶりに弁護士業に復帰し、一応、今も大阪弁護士会消費者保護委員会に所属しているのですが、すっかり幽霊部員になっていました。
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大阪国税局の職員による、税務調査の情報の漏洩事件です。
認否は不明です。
昨年来、元国税職員のOB税理士を中心とした情報漏洩事件が散発的に報道されていたところ、そのあたりから芋づる式のようです。
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法的に守秘義務がある事柄についての漏洩ということで、刑事罰を伴う違法行為ではあるのでしょうが、現金をもらって、納税者の脱税を見逃した、であれば、文句なしでしょうが、「何時ころ実地の税務調査に入る」あるいは「現在、税務調査の対象となっている」といった情報に、納税者として実際、どれほどの価値があるのでしょうか。
税務調査に入られるとなったら、帳簿を隠したり、売上除外、経費水増し等の行為をしているとして、それらの証拠を隠すのでしょうか。
そういった証拠類は、売上除外等の脱税行為をする際に、すでに証拠偽造していたり、隠匿していたりするのではないのでしょうか。
不正な行為をするような人は、いつ税務調査に入られてもごまかせるようにしているのではないのかと思うのですが。
そんな小細工もせずに、漠然と、売上除外として、帳簿外の口座に売上金を振り込んでいるとかだったら、ただの馬鹿ですし、何も工作していなければ、事前に、1ヶ月後に税務調査が入るという税務署内部の情報を得たとしても、ごまかしきれないでしょう。
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税務調査の時期等の内部情報の価値。
思うに。
自分は税務署職員とこういう内部コネクションがあるんだ、といった売りにならないことを売りにする人にとっての価値しかないと思います。
まったく見せかけの価値。
今回、情報漏洩の相手は税理士さんではないようですが、そういった事柄を得意げに語る人物には注意したほうがいいと思います。
見せかけだけの人で、ありとあらゆるものを食い物にするタイプかもしれません。
恐ろしいことに、そういう人は存在するので。
しかもそういう人に価値を見出す人もいる。
現職税務職員とのコネクションを吹聴する人には気をつけろ。
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そういう意味では、税務署の職員も単にいいように使われただけともいえ、憐れにすら思います。40代。組織としてあってはならないことですが、国税庁自体が5万6000人を擁する組織であり、行政組織として「監察官」を擁する巨大組織です。
一定数の不祥事が起こるのは必然ともいえるなか、よくぞ年間これだけの数字で収まっているなというのが、統計的な数字の評価ではないのでしょうか。
擁護するようですが。
そういった別のミカタがあってもいいのにとは、不祥事報道に接するたびにいつも思います。
まあ、昔は本当にもっといろいろいあったのかもしれませんが。
私が知る限りでは…などと書き出すと、それこそたかだか4年間の国税不服審判所での経験をさも、大きなことのように語りだす、怪しい人種になるんでしょうね。中身空っぽの任期付国家公務員ビジネスでしょうか。
(おわり)
*2年9ヶ月ほどお世話になった名古屋国税不服審判所の建物です。
裁判官ー検察官ー弁護士と、先輩後輩、教官、友達といった関係があるのはよくあることです。事件がかかった時は、裁判所外で会いません。事件の話も一切しません。終わってからも、守秘義務の範囲では一切、事件に関する話はしません。でも、一切、関係を絶つということはありません。仕事は仕事、私的関係は私的関係。
これが法曹のスタンダードだと思います。守秘義務を破っている人は見たことはありません。破ったり、破るようそそのかしたりしたら、その時点で軽蔑の対象です。良き村社会なのでしょうか。
過去のデータを整理していたら、2005年に出演した、日本テレビの「おもいっきりテレビ」出演にあたってのディレクターさんとの打ち合わせをした後の自分用のメモがでてきました。
自分でも、なぜここまでまとめていたのかまったく思い出せないのですが、自分で読み返して、興味深い点もあったので、備忘録的にここに載せておきます。
時は、相撲取りの若貴のお父さんが亡くなり、若貴の相続でもめるか?とワイドショーの話題が華やかなりし頃のことで、みのもんたさん司会の昼間の全国放送の番組「おもいっきりテレビ」の特集は、ずばり、相続紛争でした。
当時の松井のブログをみたディレクターさんからお声をかけていただきました。
*なお、参照される場合は、個人の責任でお願いします。個別の相談等を目的としたメモではありません。当職は、一切の責任を負いません。
*自筆証書遺言でも、本当に確実に法的な問題が生じるのを回避しようとするなら、遺言・相続業務に本当に経験のある通じた弁護士にご相談ください。弁護士が関与し作成された遺言書でも、争いになっている事案は少なくありません。
H17年7月9日
おもいっきりテレビ 遺言・遺産分割協議 メモ
弁護士 松 井 淑 子
■7月6日水曜日午後2時~午後3時30分
打合せをもとに
遺言・遺産分割協議について気をつけること
~主に、遺言・しかも自筆証書遺言について~
★公正証書遺言なら、公証人に相談段階で法的チェックが入るので問題となることは少ない。
★自筆証書遺言の場合、死後、無効となるリスクが大きい。
真剣に遺言書を作成するならやはり一度、専門家に相談し、チェックしてもらうのがベスト。
・各弁護士会での法律相談 30分 5250円。
・死後、遺言が無効か否か争いとなったら、裁判となり弁護士費用がかかる。それに比べれば安い。
■ 遺言について、結論としていえること ~紛争予防策~
作ればよいというものではない。作っても、子供達の間でもめるときはもめる。遺言無効確認の裁判などになる。脅迫されて書かされたものだと言われたりする。
一番よいのは、生前から、皆の前で方針・意向を伝えるなりしておくこと。あるいは、期待させ誤解を招くような言動はとらないこと。
子供達に対して、理由のない不平等な取扱いはしないこと。不平等に理由があるなら、その理由を明らかにしておくこと。例えば、前妻の子で、離れて暮らしていたからちょっと少なめとか、あるいは、生前、三男には他の子と比べ十分なことをして上げていないから、ちょっと多めなど。
また、孫の一人を養子に入れていたなら、そのことも他の子にいっておくこと。なぜその子だけを養子にしたのか。争いになると考え言わなかったとしても、後から分かれば結局、争いとなってしまうから。
ありがちなのは、年老いた親が、長男にはおまえに家をやると言い、長女にもお前に家をやるなどといい、子どもそれぞれに対して良い顔をして、矛盾することを言っている。相続がおこったとたん、兄弟間で疑心暗鬼となり、もめるもと。
もっとも、生前からあまり財産のことを言うと、皆、さぐり合いのようになりかえって空々しい状態になることもある。最悪は、遺言書の書きあい(書かせあい)合戦のような状態に。
■ 遺言をのこす意味
遺言がないと、法定相続人が法定相続分に応じた権利をもち、遺産をどうするかについて、全員で遺産分割協議を行わないといけない。誰が何を取得するのか。当事者だけで話しがまとまらないと、家庭裁判所に調停申立を行い、そこで話し合い。それでもまとまらないと、審判といって裁判所が分け方を決めてしまう。
結局、争いが何年にもわたり、その間、不動産の管理が行き届かず、さらには不動産・株等の価値が下落してしまい、みんなが損をすることにもなりがち。
そこで、遺言。主に、自分が亡くなる前に、自分の財産について、自分の死後の分け方、誰に何を取得させるのかを決めておく方法。
また、法定相続人ではない者、特別にお世話になった恩人・愛人などに、自分の死後に財産を遺したいと思ったら、相続人ではないので遺言で遺贈するしかない(生前に贈与することも出来るが、贈与税の問題。)
また、自分の財産をこの相続人には相続させたくない、というときも。虐待を受けたりということであれば、遺言で相続人から「排除」ということも出来る。
■ 遺言作成の好適日
・ 民法961条 満15歳に達した者は、遺言することが出来る。
・ 大前提は、まず、遺言を作成する能力のある、精神的にも・肉体的にも、
元気なときに。
例えば、認知症の症状が出てからでは、後日、遺言作成能力がなかった、わけがわからずに書いているとして、遺言の効力が認められないこともある(遺言無効確認の裁判というので、相続人間で争いになる。)。
・ ただ実際に多いのは、自分が入院したときや、健康が弱ったときに、改めて自分の死後を考え、遺言を書く人が多い。
そのまま健康を回復できないと、弱っていくなかで遺言書の作成の段取りをすることは困難なこともある。例えば、公正証書遺言では、出張サービスもあるが、公証人役場に行かねばならないのでままならない等々。
・ 儀式のように、毎年、年始に書くという人もいるようである。
★ 認知障害から成年後見を付されているとき
ときどき正常な判断を示すことが出来る時機があるが、認知障害により成年後見に付されている。遺言をしたいがどうしたらよいか。
医師二人の立ち会いが必要(民法973条)。
■ 遺言作成の準備
・ まず、自分のこれまでの人生を振り返る。
・ 財産については、不動産・預貯金・株式・自動車など、目録を作ってみる(遺産目録)。
・ また、自分の法定相続人は誰か、相続分はいくらかを確認する(遺留分の問題も出てくるので)(相続人目録)。実は、妻はじめ子どもも知らない、若いときに認知した子がいるといった場合は、その子も相続人として登場してくる。
・ 相続人に限らず、自分の財産を、誰に、何を取得させたいかを考える。
・ また遺言では、自分を虐待した相続人を相続人から排除したりすることもできる。
中身の注意点は、後述。
■ 遺言の方式
紙に書けばよいというものではない。民法で、きっちりと方式が決まっている。この定められた要件をはずすと、無効とされてしまう。遺言者の真意を確保するため。ただ、紙やペンなどはなんでもよく、横書きでも縦書きでもよい。
決められた要件とは、基本的に次の3つのどれかであること。
普通方式
・自筆証書遺言
・公正証書遺言
・秘密証書遺言
その他、特別方式4種類がある。死亡応急者遺言、伝染病隔離者遺言、在船者遺言、船舶遭難者遺言。
よく利用されているであろうものは、自筆証書遺言と公正証書遺言。
もっとも、自筆証書遺言よりは、公正証書遺言の方が5倍以上多い。
★ 公正証書遺言(法務省民事局HP)
遺言公正証書 平成元年 約4万件
平成11年 約5万8000件
(約41%増)
★ 信託銀行の遺言保管件数 (信託協会HP 遺言関連業務取扱状況)
平成6年 約1万7000件
平成11年 約2万7000件
平成16年 約4万8000件
★ ちなみに、家庭裁判所での自筆証書遺言の検認件数(法務省HP)
平成6年 7349件
平成15年 1万1364件
★録音テープや録画テープでは駄目なのか?
外国ではOKなところもあるが、現在の日本の民法では認められない。
録音テープは本人が吹き込んだものか否かを判定することが困難であり、また偽造や変造の危険が高いから。ビデオについても、同様の理由。
仮に、遺言が有効か無効かの裁判で証拠として提出されたとしても、逆に、撮影者・録音者に言わされているのではないか、という疑いをもたれるだけのこともある。良し悪し。
■ 公正証書遺言
公正証書は公証人が基本的に公証人役場で作成してくれるもの。
二人以上の証人の立会いを得て遺言者が公証人に遺言の趣旨を口述し、公証人がこれを筆記して遺言者及び証人に読み聞かせ、遺言者及び証人が筆記の正確なことを承認した後、各自署名押印し、公証人が方式に従って作成された旨を付記して署名押印する方式(民法969条)。
原本は公証人役場に付属する倉庫等に保管される(公証則26条)。原本について、紛失、偽造、変造のおそれはないので、検認手続きは必要とされていない(民法1004条2項)。
公証人という信頼性の高い第三者が、遺言者の意思に間違いないと公証してくれるので、後日、無効といった問題が生じにくい。
ただ、公証人手数料が必要。
これは、遺産の総額に応じて。
ちなみに、1億円までは10万円以下。
★ 公証人はどこにいる?
全国各地にある公証人役場にいる。元裁判官や元検事だった人が主に、公証人を務めている。法務省民事局HPによれば、平成12年9月1日現在、公証人役場全国に299箇所、公証人は543名。
*なお、公正証書遺言でも、裁判上、無効とされることはある。
遺言能力が認められない等。
■ 自筆証書遺言
費用があまりかからず、誰にも知られずに作成できるのは、自筆証書遺言。
遺言の内容を全部自分で書いて、日付を入れて、署名押印するだけ。
★ デメリット
自筆証書遺言は、後日、有効性が争いになりやすいというデメリットが大。民法の約束事、まず形式をしっかりと守っておかないと無効とされる。なぜなら、どのような形式でもよいとなると、それが本当に本人の真意だったのかどうか争いのもとになるから。
法律上、効力があるとするために民法は厳格な要件を付している。
これが一つでも欠けると、無効となる。また、明らかに無効とまではいえないが、書き方が曖昧、作成経緯について怪しい点などがあると、結局、遺言無効確認の裁判などが起こってしまい、相続人間にかえって紛争を残すおそれがある。
その他、遺言書が発見されない危険、偽造・変造される危険。紛失、破棄・隠匿の危険。家庭裁判所での検認手続きが必要、視覚障害者にとって利用しづらい。
基本 ①全文自書、②日付自書、③氏名自書、④押印。
事例
・日付:
「昭和四拾壱年七月 吉日」は有効か?
日付の記載を欠くものとして、無効。いつ書いたのか、特定できない。
ただ、「平成8年遺言者の誕生日」はOK。特定できるから。
平成17年4月5日に作成したのに、平成18年1月1日と記載した場合
わざと遺言作成日と異なる日付を記載した場合は、無効。
もっとも、実際に遺言を書いた日と遺言書に記載した日付が違っていても、特段の事情がない限り、日付が記載された日に成立した遺言として有効。日付は、遺言の成立時期を明確にするために要求されているものだから。
・自書:
ワープロは、駄目。
手が震えて字が書きづらく、他人の添え手による補助を受けた場合は自書といえるか?
他人の意思が介入した形跡がなければ自書といえる。
財産目録がタイプうちの場合、目録と照合しなければ遺贈物件の特定が出来ない場合、自書の要件を欠き、全部無効(東京高判昭和59年3月22日。判タ527.103)
・氏名:
特定できれば、ペンネームでもOK。
・押印:
実印じゃないと駄目なのか。指印ではどうなのか。
実印でなくてもよい。指印もOK。但し、遺言者の同一性、真意の確保、文書の完成を担保する意味があるので、実印がベター。
*「一通の遺言書と確認されれば、その一部に日付・署名・押印が適法になされてい」ればよい(最判昭和36.6.22、民集15.6.1622)。
一通の遺言書と確認されるために、契印があればベター。
■ 訂正方法も法律で決められている(民法968条2項)
自筆証書の加除、訂正
遺言者がその場所を指示し、これを変更した旨を付記して、特にこれに署名し、かつ、変更の場所に印を押さないと、効力がない。
例えば、500万円の「五」を「九」と訂正して、900万円とした場合、①訂正した「五」の所に押印し、②その遺言書の欄外に「この行一字加入一字削除」と付記して、その次に署名、あるいは、遺言書の末尾に、「この遺言書の第○行中『五』とあるのを『九』と訂正した」旨付記して、署名しなければならない。
★ 方式違反の訂正
訂正変更が無効となり、訂正変更はなかったものとして、訂正変更前の記載が遺言として扱われる。
しかし、訂正変更前の文字が塗抹等によって判読し得ないとき、当初から記載されていなかったものとして、結果、遺言全部が無効となることもある。
■ 遺言の内容
★ 遺産処分の遺言(民法964条)
「遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。但し、遺留分に関する規定に違反することができない。」
ベターなのは、特定の相続人に特定の遺産を帰属させる旨の遺言。
「相続人XにA土地を相続させる。」
その他、相続分の指定(902条)、遺産分割方法の指定(908条)、現物分割、代償分割、金銭分割もあるが、遺産分割協議が行われることが前提とされているので、紛争予防としてはあまり意味がないともいえる。
★ 条件付き、負担付きもOK。
例えば、
「遺産中の土地甲を長男Aに与える。そのかわり、長男Aは三男Cが大学を出るまで経済的な面倒をみること」(負担付遺贈)。
「自分の死亡時に長男Aに子どもが出来ていれば、長男Aに土地甲を与える」(条件付遺贈)。
* 負担した義務を履行しないとき。
相続人は、相当の期間を定めて履行を催告し、期間内に履行がなければ、遺言の取消を家庭裁判所に請求できる(民法1027条。取消請求権)
★ 表現方法 ~解釈、真意が争いになる~
何を、誰に取得させるのかの特定をしっかりと。
遺言書の記載内容が不明確であると、真意が分からないとしてかえって争いに。
*遺言が有効か無効か、遺言の効力として当然に権利移転を生ずるか(遺贈、相続させる遺言)、あるいは、遺産分割手続きを要するか(分割方法の指定、相続分の指定)など、遺言の解釈は、遺産分割の前提問題として大きな影響。
★事例
・「自宅を長男にまかせます」
与えるという意味を含まず、遺贈とは認められないとされた(東京高裁昭和61年6月18日判タ621.141)。
・「遺産相続については、一切妻にまかせる」
争いになった。包括遺贈という解釈の余地もある。一見明白に無効とは言い難い(東京高裁平成9年8月6日判タ1005.170)。
*いずれにしても、「取得させる」「遺贈する」「相続させる」などと明記すべき。
・「青桐の木より南方の地所」をAに取得させる。
争いとなり、裁判にまでなった。
裁判所は、作成当時の事情、遺言者の置かれたい状況などを考慮して、遺言者の真意を探求し、遺言が出来るだけ有効となるように解釈して、特定ありとした(東京地判平成3年9月13日)。
・「住居表示」により特定された遺贈
遺贈の目的物として「不動産である東京都○区○丁目○番○号をXに遺贈する」と記載。
不動産は、法律上、土地と建物を区別している。法律上、住居表示は建物の表示である。建物のみを遺贈する真意なのか、建物ののみならずその敷地たる土地も贈与する意思なのかが判然としないとして、裁判に(最判第三平成13年3月13日)。なお、決着するまでに3年以上要している。
*不動産については、特定をしっかりとするべき。
不動産登記簿謄本の表記にしたがって。これは「住居表示」とは異なるもの。
不動産登記簿謄本を取得、確認しないといけない。
*また、実務的には、不動産の共有取得は避けた方がよい。売却、使い方等について合意が必要であり、紛争の種。
*その他、預貯金、株式についても、金融機関名、口座番号等の特定をしっかりとする。
*遺産目録を作っておくのがベター。
判例の態度
・遺言の解釈にあたっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探求すべきものであり、遺言書が多数の条項からなる場合にそのうちの特定の条項を解釈するにあたっても、単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出しその文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者のおかれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探求し当該条項の趣旨を確定すべきもの(最判昭和58年3月18日)。
・遺言書に表明されている遺言者の意思を表明して合理的にその趣旨を解釈すべきであるが、可能な限りこれを有効となるように解釈することが右趣旨に沿うゆえんであり、そのためには、遺言書の文言を前提にしながらも、遺言者が遺言書作成に至った経緯及びその置かれた状況等を考慮することも許される(最判平成5年1月19日)
■ 公序良俗に反して、無効。
愛人に全財産を遺贈する、遺言。
判例:無効となるときと、有効となるとき。ケース・バイ・ケース。
遺言者と愛人との親密度と遺贈との関係、遺言者と妻及び愛人の関係の態様、夫婦としての実態の産む、破綻の原因、両当事者の資力、遺贈の内容
⇒遺贈が不倫関係の維持継続を目的としたものか否か、
遺贈が相続人(特に、妻)の生活を脅かすものであるかどうか。
■ 法定相続人の遺留分。
遺留分権利者は、配偶者、子、親。兄弟にはない。
相続人が親だけ場合は、全財産の3分の1の遺留分がある。
その他の場合は、2分の1の遺留分が定められている。
例えば、父が愛人に6億の全財産を取得させると遺言しても、妻と子供は、2分の1、3億円は取り戻せる。
また、場合によっては、遺言そのものが無効となる。
■ 相続税
★ 遺言で遺産をもらったら税金はどうなるの?
相続税を払う必要が出てくるかも。
【4.5%】 (国税庁HP 発表資料)
もっとも、平成14年1月から平成14年12月、死者約98万人に対して、相続税の申告対象となった被相続人は約4万4000人。課税割合は、4.5%という少数。
ほとんどの人は、相続税を払うことはなく無縁で相続する。
★ 相続税
基礎控除の制度
5000万円×(1000万円×法定相続人の人数)
例えば、遺産は自宅の土地建物と預貯金で合計5000万円、相続人は妻と子ども二人なら、財産が8000万円(5000万円×(1000万円×3名)未満の5000万円であるから、5000万円をどうわけようが、相続税を納める必要はない。
但し、注意点。 生命保険金は民法上は、原則的には遺産には入らないが、相続税法上は「みなし相続財産」として計上される。その他にもみなし相続財産があるので注意。
★ 配偶者控除といった制度
その他、配偶者は、相続で財産を取得しても、すべての財産の2分の1か、1億6000万円のうち、どちらか多い金額に達するまでは、相続税が課税されない。
■ 生前に贈与しておいたら
★ 贈与税
基礎控除額110万円。
もっとも、住居について
・配偶者に贈与。20年以上婚姻。済んでいる家。2000万円の特別控除。
・親から子へ。住宅取得資金を贈与。550万円まで控除(110万円×5年分を先にという発想。)。
★ 相続時精算課税制度/生前贈与の際
65歳以上の親が、20歳以上の子に生前贈与。
特別控除2500万円。限度を超えた金額に20%の税率。贈与を受けた分につき、相続のときに、精算して納税することを選択。相続税、贈与税が免除されるわけではない。
メリット 相続税が基礎控除の範囲内のとき、相続税もかからないのでメリット。
■ その他
★ 夫婦が子供達のためにと一緒に同じ書面で遺言をすることは出来るか。
NO。
民法上、一人一人の意思確認をするべきとされている(民法975条 共同遺言の禁止)。
■ 遺言執行者の指定
執行を必要とする遺言内容、すなわち、遺贈の実現、認知や相続人の廃除のときなど、執行人が執行。親族を指定したり、弁護士を指定したり、あるいは信託銀行を指定したり。
遺言書に指定しておいてもよいが、指定していなくて執行者が必要な場合は死後、家庭裁判所が選任してくれる(民法1010条)。
■ 遺言の撤回
遺言の撤回はいつでもできる。但し、遺言の方式によらないといけない(民法1022条)。
撤回しても、その前の日付の遺言は原則、復活はしない(民法1025条)。
例えば、次男に2000万円を取得させる遺言を作成したが、入院中、次男が一度も見舞いに来ないなどといったことから、取得させたくないとき撤回の書面作成。あるいは、異なる内容の遺言書を作成すればOK。
前の遺言と後の遺言の内容が矛盾するとき、後の遺言が有効。
民法1023条「前の遺言と後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を取り消したものとみなす。」
■ その他 ~封入、契印~
封筒に入れる必要はない。しかし、入れて封緘したほうがよい。封筒には「これを発見したものは家庭裁判所で検認の手続きを取るように」と書いておく。
遺言書が数枚にわたるとき、契印は要らないが、一体のものと分かるようにしておいた方がよい。
■ 保管方法
遺言を作ったはいいけど、死後、見つけてもらえなかったら無意味。
そこで。
まず、封筒に入れ、「遺言書」と記載し、「この遺言書を相続開始後家庭裁判所に提出して検認を受けること」と付記。
自宅の金庫。
銀行の貸金庫。*預けている貸金庫名を相続人や受遺者などに知らせておく。
弁護士に預ける。弁護士会の遺言センター。
★ 自宅保管
発見者が一人で見て、都合が悪いとき、破り捨てるなどの恐れ。
★ 遺言書を破り捨てるとどんな問題が起こるのか。
遺言者自身が、破り捨てたら、遺言はなかったことになる。破棄による撤回。(民法1024)
では、遺言者以外の人が死後、発見してから破ったら?
★ 長女が父の遺言書を死後、仏壇のところから発見したが封をあけて中身を見たところ、妻に3分の2、次女に3分の1を相続させる内容だったため、破り捨てた。ところが、次女がゴミ袋の中から破り捨てられたこの自筆遺言を見つけ、テープでつぎはぎし、皆に見せた。
・遺言を破り捨てた長女:自己が利益を得ようとして、遺言書を破棄したもの。相続欠格。(民法891条5号)。
・遺言書の効力は?:無効なら、相続人は配偶者妻と子であって、2分の1宛になる。
内容を判読でき、自筆証書遺言としての形式(全文自書、日付、署名、押印)があれば、一体のものとして、有効。
★ 複数の遺言書が出てきた
日付が3日しか異ならない二つの自筆証書遺言が出てきたが、内容が全く正反対だった。例えば、長女に全てを相続させるとあった(A遺言)のが、長女を相続人として廃除をもとめる内容(B遺言)だった。
複数の遺言がある場合、日付の新しいものが有効。ただ、本件では2通とも、遺言者の真意に基づいて作成されたものか否か、争いとなる可能性が大きい。書かされた可能性が高い、遺言能力に欠けていたとみられる。裁判になったら、2通とも無効とされてしまう可能性が高い。
しかし、この2通の前に、甲遺言として、A遺言と同じ内容の遺言があったら、
B遺言について他の相続人から、書くように強制されて書かされた可能性が高いと判断。
■ 遺言の保管者、発見者
家庭裁判所で、遺言書の検認の手続きをしないといけない。
封印のある遺言書も、家庭裁判所でないと開封できない。
違反者は、5万円以下の過料(行政罰)に処せられる(民法1005条)
■ 検認手続き
「遺言には、常に偽造・変造の危険がつきまとう。そこで、民法は、遺言制度を公正に運用するために、後日の紛争に備えて、遺言書の現状を保全する手続きを用意した。それが、家庭裁判所による遺言書の検認である(1004条以下)」
どのような用紙何枚に、どのような筆記具で、どのようなことが書かれ、日付・署名・印はどのようになっているか等々を記録して検認調書に記載。
★検認を受けたか否かは、遺言の効力とは無関係。検認を受けたからといって、遺言の有効性が確認されるわけではない。また、真正に成立したと推定されるわけでもない。
現状の確認手続き。
■ 891条5号 相続欠格事由
相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者は、相続人となることができない。
遺言に関し著しく不当な干渉行為をした相続人に対して相続人となる資格を失わせるという民事上の制裁を課そうとするもの。もっとも、遺言書の破棄隠匿が相続に関し不当な利益を目的とするものでなかったときは、不当な干渉行為ということはできない。自己に有利に遺産を貴族させようとする意思が必要。
★ 遺産分割協議後に発見された遺言
父の遺言書が発見されず、相続人(母と子3名)らで遺産分割協議が成立した。内容は、全てを妻Aが相続するというもの。しかし、その後、土地を子ども3名にという内容の父の遺言が発見された。
自分たちに土地を取得させるという内容であり、その遺言書の存在が分かっていれば、全てAにという遺産分割協議の意思表示をしなかった蓋然性が極めて高いので、遺産分割協議は錯誤により無効(参考判例最判第1平成5・12・16)
★ 日付が欠けて無効な自筆証書遺言に日付を書き加えた相続人
遺言書の偽造又は変造に当たる。しかし、遺言者の意思を実現させるためにその法形式を整える趣旨でされたにすぎないものであるときは、偽造・変造した相続人は、相続欠格者に当たらない(最判昭和56年4月3日 民集35.3.431)。
■ 自筆証書遺言書作成を弁護士に頼んだら費用はいかに。
弁護士 自筆証書遺言あるいは公正証書遺言作成の援助アドバイス料
だいたい10万円以上。
以上
*クリス=ボッティ。トランペット奏者。なんと、52歳。年をとるなら、男女問わず、美しくとりたいと思いました。内面でしょうね。20代、美しかった人も、40代、50代、いろいろな問題を抱えるからか、変容する人もいるようで。。。哀しいかな。
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改正相続税法、しかも改正の内容が基礎控除減額といった課税強化の方向であるため、いよいよ来年施行ということで、なにかと巷の一般向け雑誌でも相続特集が組まれています。
日経ビジネス「どうする田舎の実家や不動産〜節税対策のアパートも裏目に」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20131216/257089/?rt=nocnt
いわゆる「相続対策」とは少し観点は違うのですが、雑誌でもテーマとして取り上げられるようになってきた、親が亡くなった後の残された田舎の土地・建物問題について、私が考える指針をここに記しておきます。
先日、ピンチヒッターで某市の市役所が主催の市民向けの法律相談の担当をしてきたのですが、そこでもやはりこの手の問題のご相談が少なくはないようです。
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よくありがちな状況としては、次のような状況が問題状況となります。
人口が減少していく一方の地方都市に、父母が暮らす。しかも、住宅は賃貸住宅ではなく、土地付き一戸建て。土地建物の所有名義は、父のみ、あるいは父と母の共有名義。
子供達は、一名は地元で暮らすが、世帯をもっており住居もあり。他の子供は、他の都市に出ており、田舎に帰る意思はなく、その地で生活の基盤を築いている。
そこで、父が亡くなる、母が亡くなる。父が亡くなった時には、母が同所で暮らしており、そのまま母はそこを終の住処とする。
そして母が亡くなったとき。。。
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遺産として、預貯金等の資産は、換価して処分が可能です。
問題なのは、不動産、母が終の住処とした自宅の土地と建物です。
そこで暮らす子、相続人かいれば、その人が取得を希望するので、引取先という点では問題にはなりにくいでしょう。
問題なのは、2の状況のように、相続人は誰も、当該土地・建物の取得を希望しないという場合です。
この点、大都市の物件ならそれほど問題になりません。売れるからです。
しかし。人口が減少していくのみの地方都市、田舎の物件の場合。。。売れません。買い手はいません。隣の土地所有者に声をかけても、そもそもそこも相続人が売りに出していて買い手がついていないという可能性が大です。
そこで、親亡き後の田舎の不動産問題が生じます。
この土地、建物、どないすんの?という問題です。
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問題を先送りしても、リスクが消えるわけではなく、むしろ時の経過とともに、問題はより複雑になります。
ですので、次の策を次善の策としておすすめします。
まず、リスクとは。
(1)無人建物の老朽化リスクです。
建物は、不思議なことに、そこに人が暮らすがどうかで傷み方が違ってきます。無人の建物、特に、このような場合、おそらく父と母が昭和の時代に購入した不動産でしょうから、ただでさえ相当老朽化が進んでいると思われます。
そのような建物が、無人となって荒廃していくと、どういう問題がおこりうるか。
犯罪の温床となったり、他人が勝手に住み着いたり、あるいは、崩壊によって通行人を傷つけることが考えられます。全て、所有者としての管理責任が問われる可能性かあります。
(2)登記名義変更が困難となるリスクが、次に生じます。
建物は、次に述べるように、とりあえず撤去したとしても、土地はどうしようもできません。
そこで放っておくとどういう事態となるか。
いざ、買い手がついたり引き取り手が見つかった場合、不動産登記名義を変更する必要かあるのですが、そのためには父と母の相続人全員からの押印が必要になります。
しかし年月が経つと、相続人の子どもの一人も亡くなり、その配偶者や子どもが、父母の相続分を相続していることがあります。兄弟の配偶者や子どもからの印鑑をもらう必要がでてきます。
また、さらには、行方知れず、さらには海外在住となると、登記のための必要書類取得のためにさらに種々の面倒な手続きが増えてきます。
そのため、問題を先送りしても、何もいいことはありえません。
買い手がないとしても、次善の策を打っておくべきです。
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売れない時の次善の策とは何か。
父・母名義の土地建物につき、とりあえず、今いる相続人の誰か一人の名義に変えておくことです。
つまり、「不動産の共有状態」を解消しておくということです。
要は、売れない土地建物について、誰かひとりにババを引いてもらうというこです。
そのためには、他の相続人もそれなりに協力する必要があります。
例えば、建物の解体費用を多めに負担するなど。
あるいは、固定資産税については、応分に負担し続けるものとして、金額を先に渡しておくなど(田舎の固定資産税ですからしれていると思います。建物を撤去しても、しれています。。。)。
不動産の共有状態というのが、その後、この不動産を動かそうとした時に一番ネックになります。
処分については、全員の合意が必要だからです。
そのため、売れない土地建物でも、とりあえずは、相続人の誰か一人の名義としておくことを強くお勧めします。
皆がそんな不動産は要らないというものを引き取ってくれるというわけですから、単純に、資産評価して時価がつくから、その分をキャッシュで代償金とうし支払えとういのは、欲を出してかえって損をするというパターンになります。
そういった、大きな視点からの損得勘定ができない人をたまにみかけますが、そういう人には言いたい。
損して得取れと。
売れない不動産なんて、お荷物以外のなにものでもありません。
固定資産税評価額は、「時価」ではありませんから。
(おわり)
*大阪市の北税務署の建物です。重厚な地震対策。このまま100年は使う計画でしょうか。
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前回、「相続と税法」ということで、ざっくりとした記事を書きました。
国税審判官としての任期付公務員の4年間、日々、気づいたこと、考えたことは自身のノートにメモはしていましたが、以前のようにブログ記事ということでまとめることまではしていなかったので、なかなか具体的にまとめずらく。
でも、以前のときのように、気づいたこと、考えたことは具体的にここに書いて、オープンにアウトプットしていくようにします。
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前回の「相続と税法」では、大阪地裁平成26年2月20日判決について触れました。
ネットで裁判所がオープンにしているものも検索したのですが、全文はなぜかヒットしません。ただ、前回の記事を見て頂いた方から、幸いにも、判例検索ソフト ウェストローではヒットするということで、全文を確認できました。ありがとうございました。「出典裁判所ウェブサイト」となっているのですが、これはなぜか見付けられません。
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大阪地方裁判所平成26年2月20日判決(平24年(行ウ)183号)。
事件自体は、「更正の請求」をして、「理由はない」とした八尾税務署長、国を相手に納税者が、当該処分の取消しを求めた訴訟です。
自身、4年間の公務員の間、ブログこそ書いていませんでしたが、経験をアウトプットし、ミス回避のために人の役に立てばと、退職後の平成26年7月22日、日本加除出版社さんから「税理士・弁護士のための税務調査の後の不服申立手続ガイド」を出版させていただいているのですが、悔やまれるのは、「更正の請求」についての記述が少なかったことです。
「更正の請求」が問題になるのは、税務署長等に対して「更正の請求」をしたけど、「理由はない」旨の通知を受けた場合です。この通知が「原処分」として、取消の審理の対象となります。
更正の請求の総則的な規定は、国税通則法23条にあるのですが、特に問題となりやすいのが、23条の2項の方で、1項の特則的な規定であり、23条1項の規定に関わらず、一定の場合は、1項の規定による更正の請求が出来ると規定されています。
では、この一定の場合とはどういう場合かということで、「次の各号のいずれかに該当する場合」とてして規定されています。
たとえば、3号。
「その他当該国税の法定申告期限後に生じた前2号に類する政令で定めるやむを得ない理由があるとき」です。
そして、この「政令」として、国税通則法施行令6条が登場し、「政令で定めるやむを得ない理由は、次に掲げる理由とする」として、1号から5号までが規定されています。
前記の大阪地裁平成26年2月20日判決でも、究極的には、この国税通則法施行令の6条1項2号の「計算の基礎となった事実に係る契約が、解除権の行使によって解除され、若しくは当該契約の成立後生じたやむを得ない事情によって解除され、又は取り消されたこと」に当たるか否かが争われ、裁判所は、本件では、いずれにも該当しないとして、請求を棄却したものです。
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納税者の人は、5000万円の代償金請求権を他の相続人に対して取得したものとして、1800万円ほどの相続税を申告納付していました。
平成6年頃のことです。
この他の相続人は、遺産の不動産等を単独で相続するものとして、その見返り、代償金としての債権でした。
そうです。「債権」に過ぎない、というのが最大のミスではないかと思います。
債権ということは、当然、不履行がありえます。不履行。約束どおりに支払われない、ということです。
弁護士はよくこのリスクを知っています。ですので、例えば、裁判上での和解で金銭のやりとりをするときは、裁判所の一室で、実際に現金なら現金、昔の株券なら株券のやりとりをします。その上で、和解を成立させ、終わらせます。
後払いとなる債権での和解をする時でも、不履行を想定して、必ずなんらかの担保をとります。
しかし、この当事者はいい人たちだったのか、当時、お互いきっと信頼関係があったのだろうと推測されますが、違いました。
「平成6年遺産分割協議では、本件各代償金の弁済期及び弁済方法につき、①堺市αに所在する『Eゴルフセンター』の売却時、又は②本件相続に係る相続税の納付時、のいずれか早く到来した特に、Bが原告らに対し一括して支払うこととされた。」ようです。
はーーーーーっ、とため息が出ます。
Bの相続税額は3億5000万円近く。
原告らは、取り敢えず、自身らの相続税1800万円ほどを納付しました。得たのは、Bに対する5000万円の代償金請求権だけで、実際には、何も取得していないに等しいにも関わらず。
結果。ゴルフセンターが売れたのは、平成16年でした。
そして。Bは、相続税を完納できておらず、原告らには、平成19年となって、税務署長から、相続税の連帯納付義務の履行を求める書面が届けられました。
悲惨、の一言です。
5
ここまでの事実関係で、そもそもどうすればよかったと学べるのか。
まずはこの3つです。
1つ 遺産分割協議を代償金で解決するについても、同時履行か担保をとる。
2つ 遺産が不動産しかなかったとしたら。
これは私もやったことがありますが、売却を一相続人に委ねない、ということです。コントロールできなくなります。共同売却をするにしても、期限を切ります。
3つ 相続税額は、自己の課税額だけでなく、他の相続人の課税額につても確認し、それを確実に納税できるか否か、裏付けをとること。これをしておかないと、忘れた頃に連帯納付義務の通知が届きます。
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この事件の当事者の方々は、平成6年の相続につき、平成22年となり、当時の遺産分割協議を解約しました。
5000万円の支払の履行請求は諦めるか、おいておくとしても、ともかく、1800万円ほどの納付した税金の返還と、相続で得た限りでとはいえ、相続税の連帯納付義務だけでもなんとか免れようとしたものと思われます。
が。
税務署長、大阪国税不服審判所、さらには大阪地方裁判所の判断は、本件の事情のもとでは、納税者らによる、平成6年の遺産分割協議の解除について、上記の「更正の請求」の要件は満たしませんよ、というのでした。
7
このような事案は、金額の多寡こそあれ、決して珍しくはないように思います。
そもそも、更正の請求の23条2項の要件は、実は、意外と厳しいです。条文の字面を表面的に読む以上に。
控訴しているようですし、判決書からは分からない特別な事情がまだまだあるのかもしれませんが、どこかで諦めざるを得ない事案かもしれません。
「遺産分割協議」と「代償金」と「連帯納付義務」。
気をつけて下い。
*
と、今回もさらっとした話しです。
本当は、「更正の請求」や「相続税の連帯納付義務」、さらには「遺産分割協議」のよくある留意点などをもっと具体的にまとめたい(言いたいことがある)のですが、またの機会に。
(おわり)
1
以前、遺産分割協議が整った後の相続税を巡る訴訟事件を担当させていただくことがありました。
相手方には、遺産分割協議の代理人弁護士が就いていて、こちらは当事者だけで協議されていたという状況でした。
遺産分割協議は弁護士がリードし、合意に至り、遺産分割協議書が作成され、基づき、実際の分配がなされました。
しかし。
問題はここからでした。被相続人の死亡を知ったときたら10か月以内に、法定相続人は、遺産分割協議が成立していなくても、いったん法定相続分で相続したものとして、各相続人それぞさが、相続税の申告と納税をする必要があるとされているのが相続税法です。
この申告納税がされていました。
その後、遺産分割協議が整い、法定相続分とは異なる金額で分けられた場合、理屈とては、法定相続分よりも多額の遺産を相続した人は、申告納税額が過少であったとして「修正申告」を、また、法定相続分よりも少ない財産しか受け取らなかったという人は払い過ぎとなる納税額を返還して欲しいと「更正の請求」を行うこととなります。
ここで、いったん遺産分割協議は片付いたのにと、思いがけずあらたな紛争の火種となるのが、「更正の請求」です。
2
詳しくは記しませんが、この更正の請求についての弁護士のまったくの思い込みによる誤解により、新たな紛争が勃発しました。
そこでは、私は、弁護士を就けずに単独で協議の交渉をしていた方の代理人として活動させていただきました。
紛争のそもそもの原因は、弁護士があまりにも相続税法を知らなさすぎた、確認すべきことすらしていなかったことにあるように思えました。
しかし。
弁論準備の際に、裁判官からは、思わず椅子からひっくり返るかと思うような言葉が口をついて出てきました。
「弁護士なんだから、税法なんて知らなくて当たり前でしょ!!」
そこからが勝負でした。
弁護士向けの税法の講義は、弁護士が間違いやすいだけに各種の研修が実施せれています。弁護士の民法的な感覚だけで税法を見ると大きな過ちを犯します。
この時のケースは、相続税法でも基礎中の基礎の知識のところでした。
そのことを裁判官を納得させる活動を行い、最後は、無事に勝訴判決となり、控訴もされずに確定しました。
3
ここまでではなくても、相続での遺産分割協議等をまとめる際、関わった弁護士がもう少し税法に配慮していたら,当事者の方たちはここまでさらに税金に苦しめられなくも済んだのではないかという事例はあとを立ちません。
特に、相続税額だけで一人1000万円を超えるような事案ですと、なおさらです。
遺産分割でもめて、相続税の納付額の工面でも苦悩する、相続に関わる弁護士は、最低限の、相続税法、さらには国税通則法の知識は必須でしょう。依頼者の利益を考えるのてあれば。
4
平成26年10月6日の「週刊税務通信」では、大阪地裁平成26年2月20日判決が紹介されていました。
残念ながら、判例秘書という判例検索サービスではヒットせず、全文は確認は出来てはいませんが。
やはり、遺産分割協議と税務、更正の請求に関するものです。
納税者の敗訴です。
1815万円の納めた税金は戻ってはきませんでした。
また、この納税者には、遺産分割協議により取得したはずの金員も入ってきていません。
遺産分割協議の仕方として、「代償分割」というやり方があります。
これで分割協議をまとめるときは、相手の資力、支払時期等の細部をしっかりと詰めるというのがポイントというのが、この納税者敗訴判決の教訓でしょうか。
記事を読む限り、相続税の連帯納付義務の追及も受けているようで、悲惨としかいえません。
こういった事例を見聞きするたびに、どうすれば防げたのか、なんとかならなかったのかと思います。
国税通則法23条2項は、厳しいです。
(おわり)
*神川朋子弁護士( NY州弁護士)が、カリフォルニアの弁護士会の大会に参加してきました。法律に、税務と英語はもはや必須というのを実感しています。「弁護士」にさらなる付加価値をつけていかないと、実務の遂行(依頼者利益の最大化)が困難です。
過去のブログです。相続等について、ぶつぶつ言ってます。
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