2018年10月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

最近のコメント

最近のトラックバック

無料ブログはココログ

flickr


29 企業倒産

2009年7月17日 (金)

住宅瑕疵担保履行法【松井】

3705530913_871ddff8e2


 住宅瑕疵担保履行法(特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律)によって、「資力確保措置の義務づけ」に関する規定がこの平成21年10月1日から施行されます。
 分かりやすいパンフレットなど
  ↓
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutaku-kentiku.files/kashitanpocorner/2-pamphlet.htm


 住宅を建てた、買った、住み始めた、雨漏りが止まらない、地盤が緩くて処置がされておらず家が傾いたなどなど、3000万円以上のお金を長期ローンを組んで借り、一生に一度の買い物の家が実はキズものだった、瑕疵があったという問題が実は珍しくはありません。
 買う側の人は、こんなに高い買い物をするのであり、業者も親切にいろいろとすすめてくれる、手抜き工事といった悪いことをすることはないだろう、大手有名業者だしとか、ものごとをいいように、いいように考え、疑うことなく高っかい買い物をします。しかも建売りであっても、たった2、3回しか現物を見えるところだけ確認してという買い方を意外としたりします。
 建築士の方の言葉で印象深いのは、次のような言葉です。「みな、車や靴を買うとき、何度も迷い、調べ、試したりして、確認してから買うのに、何千万の買い物になったとたんになぜ、同じような買い方をしないんだろうか。」。

 買って住み始めたはいいが、キズものだったとき、売主はそれ相応の責任を取らされるのが法律です。でも、それもこれも売主に力あってこそのものです。
 責任を問おうと思ったら、売主の会社がなくなっていた、倒産していたということも、実は、建築業界、珍しくはありません。
 会社を潰して、新たな会社を起こして、同じ仕事をしていたりすることもないわけではなく。
 売主の会社が倒産していたら、そこはもう自分でなんとかするしかありません。
 破産制度って結局は、債権者に泣いてもらう制度ですから仕方ありません。

 こういう問題は以前からよく指摘されていました。
 めちゃくちゃな家を建てて、売りまくって、売り逃げするというパターンです。


 そこで立法の必要性が叫ばれ、出来たのがこの住宅瑕疵担保履行法です。
 業者が、瑕疵担保責任を果たせるよう、保険に加入したり、保証金の供託をさせておくものです。宅地建物主任業者の場合などは、既に同じような制度がありました。
 倒産し得を許さない制度です。
 
 この制度は、業者にとっては金銭面での負担が大きいものだとは思いますが、業界全体の信用を逆にアップさせる制度ともなるのではないかと思います。
 ついていける業者と、ついていけずに落ちこぼれる業者が出てくるかとは思いますが。
 どの業界も、淘汰の時代です。
 
 消費者の立場からしたら、これから家を買おうとする人は要チェックです。
 すでに家を買ってしまった、その家に問題があったという人は、適用場面に注意が必要です。
 パンフレットにあります。
 「施行日と引渡し時期に注意しましょう。」と。
 法律は、基本、遡って適用されることはないので、泣かないといけない人はいるかと思います。
(おわり)


3706341558_2cd257dee6


2009年6月17日 (水)

企業倒産【松井】

3621249327_5c3712d0a1

 私が司法試験受験生のとき、受験科目は、憲法、民法、刑法、商法が必須で、あとは民事訴訟法選択か、刑事訴訟法選択、そしてもう1科目は、破産法、労働法、刑事政策、国際私法、国際公法などから1科目選択するというものでした。
 私は、民事訴訟法選択の破産法選択でした。
 王道でした。
 しかし、最終合格するまでの過去2年間は、破産法のG評価(AからGで、最低評価。)で足を引っぱり、泣いていました。G評価が一つでもあると絶対に合格はできませんでした。このGのために2年間、最終合格が遅くなりました。

 なぜ破産法が2年連続、G評価だったのか。模試では破産法は得点源でした。しかし、本番では通用していませんでした。いわゆる論点主義だったからです。論点主義で模試では点がとれるけど、本試験では論点主義では足下すくわれていました。それに気づいて、最後の1年は破産法の勉強法を他の科目と同じように、条文から考えられるように訓練しました。破産法だけ、模試で点が取れていただけになめていたのです。


 そんな私の中では、苦い思い出とともにある「破産法」。
 弁護士として働きだしたら、必須の法律でした。破産法を勉強していてよかったと心から思いました。

 借金を返せない、取引先への支払いが出来ない、手形の不渡りをだしてしまう、そういった中小企業の経営者の方からの相談。
 あるいは、取引先からの支払をあてにしていたのに、破産しますすという弁護士からの通知が来た、あそこがもうすぐ不渡りを出すという噂があるけど、なんとか回収できないのか、といった相談。
 平成11年に弁護士登録して以降、今に至るまで、企業倒産に関する相談は常にあります。

 そして経営者の方からの相談はそれぞれ悲痛なものがあります。
 
 ただ、もう会社として金が回らない、事業を継続できる見込みがないというようなときは、倒産する企業側はもちろん、そこを取引先とする企業においても、破産法上は、基本的にはもう何の手出しもできません。ロックがかかっています。

 倒産する方は、粛々と倒産に向けての、裁判所に破産申立をするための資産整理を出来る限りしていくだけで
す。そうして集まったお金は、弁護士への費用や裁判所への予納金として使い、残りは破産管財人に引き継ぎます。管財人において、後日、配当という形で債権の数パーセント程度の金額を全破産債権者に平等に支払います。

 また、取り立てる側においても、相手方の資産の仮差押えだ、訴訟だとしても、破産手続き開始決定が出れば、基本は破産手続きが優先します。
 また、債権回収に熱心なものはそうでないものよりも保護されるのは当然だとしても、いわゆる危機時期に至っては、「債権者平等の原則」というものが威力を発揮し、抜け駆け的な取立てをしても、後日、破産管財人からは「弁済の否認」を受けて取り戻されることもあります。
 なので、多くは、なす術がありません。

 債権回収をというのなら、早め早めに担保をとっておくというのが最も効果的だと思います。抵当権者は、破産手続きにおいても別扱いをされますので。本当に倒産かもとなってから担保をとっても、これもまた管財人から否認されることがあります。


 企業倒産に関しては、申立人代理人をすることもあれば、裁判所に選任されて破産管財人をすることもあります。
 どちらにしても、正直なところ、せつない気持ちになります。
 企業経営者の方、経営と法律の知識をもって、足下をすくわれることなく事業を継続して行って欲しいと思います。そこには、顧客はもちろん従業員の方々の生活がかかっています。
 そして。
 経営に失敗して、多くの方々に迷惑をかけたとしても、個人については経済的再起更正が破産法の「免責」の趣旨です。
 倒産したからといって人生が終わりになるわけではありません。
 たくましい経営者の方は、破産手続き中であるにも関わらず、また新たな事業を始めようとしたりしています。
 やる事業、やる事業、ことごとく失敗しつづけて、それでも挑戦しつづけて、50代になってから始めた事業が大当たり。
 確か、マクドナルドの創業者だったか、ケンタッキーの創業者だったかの話です。
 気持ちを鼓舞して、また前を見て次へと向って歩んでいって欲しいと思います。
 こんな私がいうのも何ですが。
 
 ただ、まあ、私も、依頼事件が無事に成功して終了し依頼者の経済的利益が確保され、成功報酬を請求したら、依頼者の方から踏み倒された、あるいは値切られたというようなことがあったらと想像すると、怒り心頭にはなります。
 それでも、破産しますと言われたら手も足もでませんので。諦めるしか仕方ありません・・・。ただ、そのときでも確かに、「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」という一言があるかないかは大事なんでしょうね。

(おわり) 
  
3621247519_d73dc91fa6