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18 交通事故

2009年11月14日 (土)

権利の上に、眠らない!〜消滅時効など〜【松井】

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 民法では、3に記載のような規定があります。
 要は、いつまでも権利行使できるわけじゃないよ!ということです。
 「権利の上に眠るものは保護に値せず」という言い方で、せっかく発生していた権利を行使できないときが定められています。時効消滅と言われるものです。
 ただ、時効は、「時効の中断」というものが認められています(民法147条)。なかにはこの中断が認められないものもあり、それは消滅時効とは別の、除斥期間といわれています。

 なぜこんな規定があるのか?
 自分が請求される側だったらどうでしょうか?忘れたころに請求してこられる。もうそんな昔の書類などは捨てちゃったよ、覚えていないよ、といったことが考えられます。一方で、請求する方は、もっと早く請求しようと思えば請求できたでしょという事情があります。
 だったらこの間の利害を調整して、「権利の上に眠るものは保護に値せず」としても必要性/許容性 OKだろうと考えられます。
 そこで、消滅時効や除斥期間といったものが定められてます。


 最近、不景気だからか売掛金回収の相談を受けることが多いです。踏み倒されるという話。

 1000万円の売掛金だったら迷わずに裁判をするのでしょうが、30万円程度や100万円前後といったように、弁護士に依頼して裁判を起こしてまで回収するのか迷われるような金額のケースが多いです。
 裁判を起こして勝ったからといって、完全に回収するには和解で終わらない限り、強制執行まで要します。差し押さえ、換価手続きです。
 弁護士費用を払って、いったいいくら手元に残るのか。

 経営者の方の決断だと思います。
 ただそうして迷っているうちに、日にちがどんどんすぎて、結局、時効で回収できないということも考えられます。

 裁判を起こし回収作業に着手する、あるいは、税法上、損金で落とせないか検討し諦めてしまう。
 二つに一つの場合がほとんどです。

 どちらにしても、決断できないままに、うっかり「権利の上に」眠ることのないように気をつけて欲しいと思います。

 売掛金の回収に関わらず、中古の家を買ったけど雨漏りがするであったり、交通事故に遭ったけどまだ加害者から賠償金を支払ってもらっていないだとか。
 ぼんやりしているうちに1年、2年は大人になるとあっという間に経ってしまいます。

 皆様、どうぞ気をつけてください。そして。早めに弁護士なら弁護士に相談し、「決断」をされることをおすすめします。



 「権利の上に眠る」ものはメッ!のあんな規定、こんな規定

 

166条1項 消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。
 167条1項 債権は、十年間行使しないときは、消滅する。

 さらに、債権の種類等によって細かくわけ、5年、3年、2年、1年の時効期間を定めています。

 

169条 年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、五年間行使しないときは、消滅する。

 

170条 次に掲げる債権は、三年間行使しないときは、消滅する。ただし、第二号に掲げる債権の時効は、同号の工事が終了したときから起算する。
   1号 (省略)
   2号 工事の設計、施工又は監理を業とする者の工事に関する債権
 

 

173条 次に掲げる債権は、二年間行使しないときは、消滅する。
   1号 生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権
   2号 自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作し又は自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権
   3号 学芸又は技能の教育を行う者が生徒の教育、衣食又は寄宿の代価について有する債権

 

174条 次に掲げる債権は、一年間行使しないときは、消滅する。
   1号 月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権
   2号 自己の労力の提供又は演芸を業とする者の報酬又はその供給したものの代価に係る債権
   3号 運送賃に係る債権
   4号 旅館、料理店、飲食店、貸席又は娯楽場の宿泊料、飲食料、席料、入場料、消費物の代価又は立替金に係る債権
   5号 動産の損料に係る債権

 また、契約上の債権ではなくって、事故など契約当事者間でなかったものについての不法行為責任については3年とされています。また、「権利を行使できる時から」という定め方ではなく、「損害及び加害者を知った時から」との文言になっています。

 

724条1項 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。


 その他にも、無過失責任といわれるものなどについては、次のような規定があります。基本、1年です。

 

570条 売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。
 566条3項 前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。

 
 
637条1項 前三条の規定による瑕疵の修補又は損害賠償の請求及び契約の解除は、仕事の目的物を引き渡した時から一年以内にしなければならない。
 638条1項 建物その他の土地の工作物の請負人は、その工作物又は地盤の瑕疵について、引渡後五年間その担保の責任を負う。ただし、この期間は、石造、土造、れんが造、コンクリート造、金属造その他これらに類する構造の工作物については、十年とする。


 また、離婚の際の財産分与の請求権については、「離婚の時から」2年とされています。

 

768条1項 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
  2項 前項の規定による財産の分与につちえ、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りではない。


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2008年12月25日 (木)

サルでもできる弁護士業、その2【松井】

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 多重債務者の方の問題について前回書きましたが、類似したもので、やはり悩ましいというか、不可思議に思うのが交通事故の被害者側の代理人活動です。
 多重債務者の方、特に過払金請求の代理人の場合、根本的なところについて疑問に思わないとそれはサルだと思ったのですが、同じようなものが交通事故の被害者側の代理人活動です。
 弁護士が代理人として交渉したとたんに保険会社側から提示される賠償金額が上がることが多いです。
 これはまったく理不尽なことだと思います。

2 
 以前書いたように、徳島で新聞記者をしている忙しい友人の代理人となり、電話と郵便、FAXとで、示談交渉を行いました。
 結果、提示されていた賠償金額が、4倍以上になりました。
 なぜ?
 友達が、当初相手方から提示された金額を不思議に思わず、それで合意していたら、いったいなんだったのか!?
 不公正だと思います。
 相手方が、まさに「情報の質及び量並びに交渉力」とに「格差」がある(消費者契約法1条)というのはこういうことだと思います。
 業者にしたら、消費者は赤子の手をひねるようなものなのだと思います。
 それが、被害者の側に弁護士がついたら、手のひらを返したように、金額がアップする。
 最初の提示額はいったいなんだったんだ!?と思います。
 本当にひどい話だと思います。


 いわゆるグレーゾーン金利もそうだけど、この不可思議な保険会社の対応もなくしていかないと。
 そんな狭間でゆらゆらと浮遊して生きていく、サルでも出来る弁護士業はどうかと思います。
 差を埋める活動をしつつ、その差が生じる根本的な構造をなくしていかないと、サル。

(おわり)
掌に「模範六法」(物書堂)。iPhoneです。便利です。

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2008年4月 5日 (土)

交通事故の示談交渉【松井】

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 大学時代からの親しい友人が去年、交通事故に遭いました。信号のない横断歩道を歩いていたところ、曲がってきたバンにはねられたということでした。
 はねとばされて頭を打ち、意識不明で救急車で病院に運ばれた、気づいたら病院のベッドにいたということでした。
 その後、幸い2日ほどで退院となりましたがしばらく自宅で静養し、様子を見て、人手不足であったこともありほどなく仕事を再開したということです。
 病院から事故の一報があったときは驚いたのですが、退院したということでひとまず安心していました。



 その友人からまた先日、連絡がありました。

友人 「明日、相手方の担当者と示談交渉があるんだけど、何か気を付けた方がいいこと、ある?」

松井 「ないよ、特に。最初でしょ?だったら、まずは相手の言い分、提示額とその根拠をしっかりと訊いて確認したらいいよ。
 だって、どうせ最初はかなり低い提示額のことが多いから。まずは聴くことだよ。で、ペーパーで提案をもらってね。それをうちにファックスしてくれたら見るから。相手の言い分を聴いてから、それに対する形でこちらの反論なりをしたほうがいいよ。
 ただ、まあ、参考までに、損害として賠償が認められる項目はどんなものがあるか、相場額についての定番本もあるからそれをファックスで送っとくわ。」


 翌々日。

友人 「提示してもらった。紙ももらったけど、金額が滅茶苦茶低いような気がする。ファックスで送るから、見て。」

松井 「はあい。」

 事務所でファックスを受け取る。
 やはり!



 分かっていたけど、こういのは本当にヒドイ話だと思います。
 友人が何も知らなければ、提示された額が相当な金額であると信じ、これを受け入れていたかと思うと。
 ものには相場というものがあります。

 ごまかされやすいのが「慰謝料」です。
 交通事故の場合の「傷害」を受けたことに関する「慰謝料」については、通常、入通院慰謝料という形で、通院期間、入院期間、さらには実通院日数といった要素により、おおよその相場の金額があります。
 これは、つまり、裁判で訴えて請求したら、裁判所がいくら認めてくれるのかという相場です。
 ただ、これももちろん機械的に決まるわけではなく、個々具体的な事情によってもちろん増減額されます。

 が、しかし。それでも。
 ものには相場というものがあります。
 
 友人が提示された額は、事務所でたまたま後ろの席にいた大橋にも一緒に見てもらい、事故の状況、その後の状況もざくっと話したうえでざくっと検討しても、え!?一桁間違っている?そうやんなぁ、この表で見て、増減額して、このくらいの金額でどうかという金額と照らし合わせても、一桁違うよねぇ、と2人でうなずき合うような金額でした。

 加害者の運転手は業務上の運転による事故であり、金額は保険会社の担当者ではなく、会社の担当者が出てきて提示してきたとのことなので、担当者もそれなりに「相場」は知っているはずです。
 
 世の中、こういうことでいっぱいです。消費者被害事件の悪徳業者とおんなじ思考回路に行動パターン。
 相手の情報不足、交渉能力のなさ、経験のなさ等につけこみ、自己の利益のみを図る。 フェアじゃないわ。
 確かに、示談交渉であって、商売とは違うけど、根本は同じ。あさましい。



 消費者契約法には次のように記されています。
 1条「この法律は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力等の格差にかんがみ、消費者の利益の擁護及び増進に関し、消費者の権利の尊重及びその自立の支援その他の基本理念を定め、国、地方公共団体及び事業者の責務等を明らかにするとともに、・・・もつて国民の消費生活の安定及び向上を確保することを目的とする。」
 
 まさに損害賠償に関する「情報の質及び量並びに交渉力等の格差」が存在し、業者になめられている。
 許せん!分かってはいたけど。


5 
 ということで、友人と晩、対策協議をすることとなりました。弁護士として代理人交渉するか否か。
 交通事故の示談交渉で、正直なところあまりいい気がしないのが、実際問題、代理人として弁護士が就いて交渉すると、業者の態度が変わるだけでなく、提示金額が変わること。
 だったら初めからちゃんとした対応をすべきだと思うんだけど、この業界もなかなか変わらない。

 ネットで検索すると、行政書士の方々のサイトの情報が非常に充実していることに驚きます。
 示談交渉については、相手方からの提示金額やその根拠について、納得を得られないときは、お近くの弁護士会、市役所等で、弁護士に相談されることをおすすめします。依頼しなくても、相談だけでも。
 交通事故は、事件が多数あることから処理も定型的な面がないわけではありませんが、個々具体的な事案によって異なります。
 ネット相談ではなく、会って話して対面で具体的な事情を専門家に聞いてもらい、対応すべきだと思います。
 「情報の質及び量並びに交渉力等の格差」が存在する以上、それをどこでどう補うか。本当は、業者がその格差を縮める努力、情報提供義務を尽くすべきだとは思うのですが、そうはいかない実際がある以上、自分の身は自分で守っていく努力が個々人にも必要です。

(おわり)

以下、つぶやき。
弁護士に相談しに行くってやはり、敷居が高いのでしょうか。
もっと早く、先にこちらに相談に来てくれていたら間に合ったのにといったケースがたまにあります。
大阪府知事になってしまったタレントの橋下弁護士ではないけど、敷居を低くしようとの一貫でこのブログを始めました。
普段、こんなことを考えている、こんな思いで仕事をしているという、見えざるベールを少しずつ、チラミででも剥がせたらと。
今は、弁護士ブログもいっぱいできています。真面目な感じのものが多く、お馬鹿なものはまださすがに見かけないのですが、うちのブログや事務所も模索中。
個人的には、肩の力の抜けた、シニカルなお笑いが好きです。ぶつぶつぶつ。
 あ、そうそう。弁護士による代理人交渉がそうじゃない場合と何が違うかというと、弁護士の場合、交渉が決裂したら、次には提訴があるということです。訴訟代理人として裁判所に提訴し、訴訟遂行をして、判決をもらうということが控えている蓋然性が高い点、交渉の重みが違ってきます。裁判になったらどういう結論がありうるかをある程度わかっているということ。
 弁護士法72条。非弁護士の法律事務の取り扱いの禁止を定めた規定。
 この規定がなかったら?
 個人的にはなくってもいいんじゃないかと。誰が淘汰されていくのか。三百代言の跳梁跋扈の防止が趣旨とは言われていますが、どうなんだろう。それこそ利用者・消費者の選択の幅を広げてみるという余地もあるのではないかと。