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15 税務

2010年1月23日 (土)

「節税」の内容【松井】

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*年末、ビールと大橋弁護士。


 奥村佳史さんの「法人税が分かれば、会社のお金のすべてが分かる」(光文社新書)を読みました。
 
 

 非常に面白い本で、楽しく読めました。
 身近な事案から説き起こして、法人税法の趣旨について触れています。
 くだけた文章でありながら、次のようなことに触れられた骨太な本です。
  

法人税の納税義務者
  法人税の課税標準
  法人税の税額計算
  繰越欠損金制度 
  受取配当の益金不算入
  棚卸資産と売上原価 
  減価償却 
  役員給与
  交際費、寄附金、使途秘匿金
  貸倒損失と貸倒引当金
  資産の評価損
  圧縮記帳などの節税対策
  申告と納付

 こんな内容について、「たくあんで法人税を納めることができたなら」「赤字でも法人税」「みずほ銀行はなぜ法人税を払わないのか?」「投資会社社員は電話が怖い?」「決算日、肺が凍りそうです」「リゾート施設を買ったなら」「名ばかり管理職の次は、名ばかり役員」といった章のタイトルで、各章を書き出されています。


 そのため、読み物としても非常に読ませる内容で面白いのですが、著者の骨太の意見、視点も随所に見受けられ、ほれぼれとします。
 私が、やはりそうだよねと腑に落ちたのは、節税の点に対する著者の言葉でした。
 
 217頁
 

「本当に有効な節税対策はあるのか」
という箇所です。
 
「私が節税対策に求める効果は次のとおりです。
  (1) 課税の繰り延べではなく、永久に税負担が減少するものであること。
  (2) 会社が余計な支出をしなくてもいいもの
  (3) 会社の損益計算書に損失が計上されないもの 」

 

「皆さんがよくご存じの節税対策は右の条件を満たしますか?
  例えば、慰安旅行に出かけるという節税対策は、(1)を満たしますが、(2)と(3)を満たしません。
  乗用車を購入する方法も同様です。」

  そうしたうえで、一つだけこれらの要件に当てはまるものが一つだけある、と紹介しています。
  そして。
 

「実はこの方法、上場企業ではほとんどの会社がご存知です。けれど中小企業にはあまり知られていません。その理由は簡単です。」

 
「このような節税プランを紹介したとしたとしても、ビジネスとしてうまみのある業者が存在しないためです。」
 「つまり、節税対策というのは色々とあるけれど、これを商材として販売した場合に儲かるというものだけが世の中に広まるのです。そうでない節税対策はいくら有効なものであっても、宣伝してまわる人がいないため、世の中に広まっていかないのです。」

 
  そして次にこのように述べています。
 
「税理士事務所の中にも、生命保険の代理店を営んでいるところがあります。生命保険は節税プランとして薦めるけれど、自己株式買取は薦めない。こういった税理士さんがどういった思考で動いていらっしゃるのかはわかりません。」

 
3 
 弁護士業においても、本当に弁護士一人で出来る仕事というのは限られています。
 依頼者の方に、建築士さん、税理士さん、会計士さん、不動産業者さんなどを紹介し、これらの別の専門業種の方々と共同しつつ仕事を進めることもあります。このようなとき、キックバックのような類の金銭を他の業者から受け取る弁護士はまずいないと思います。
 依頼者の正当な利益のために働くという大前提からすれば、第三者に対して依頼者にお金を使わせることによって、その第三者からお金が入り自分の懐が潤うような構造は、依頼者の利益のためにといいながら、実際には自分が儲けを手にいれたいがためにという構造にならないといはいえないからです。
 それでも、いや、客観的に依頼者の利益になっていれば何も問題ないんだといったことを述べられていた某業種の方の意見を目にしたことがあります。
 正直なところ、驚きました。
 客観的に「公正」であるかどうかなんて、判断は困難です。
 そこでまず大事なのが、「公正らしさ」、「らしさ」という構造、仕組みを守ることです。
 こういった考えから定められている法律もいくつかあります。
 
 奥村佳史さんも、節税プランと生命保険を例にとってこのことを述べているのだろうと思います。
 これはたぶん、専門家としてのプライドの問題なんだろうと思います。
 とにかく常に、依頼者の利益を最優先させ、依頼者の利益だけを考える、自分の利益は結果論として出てくるもの。それが弁護士の姿だと思います。
 ある先輩弁護士が仰っていた、事件処理の際に気をつけているということ。
 「依頼者に出来るだけお金を使わせないこと。」
 
 そのとおりです。なので、実は、不動産鑑定士さん、一級建築士さん、税理士さん、公認会計士さん、不動産仲介業者さんなどを紹介し、それらの方々の協力を得ざるをえないときは非常に心苦しいというのが本当のところです。
 私が兼ねることが出来ればいいのですが、そんな能力もなく。
 また、裁判において裁判所は、第三の専門家の意見は一応、尊重するということが多々あるのも事実であり。なんともまあ、難しいです。
 紛争解決において、他者の力を借りる限りはお金がかかります。
 お金を節約しようと思えば、正直なところ、他社の力を借りずに自分一人でことに当たるということになります。

(おわり)
*昨年。西表島を旅行中の松井の姿。こんなもんです。。。基本、ジーンズ。
 
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2009年10月 1日 (木)

「国税不服審判所と審査請求手続」の研修【松井】

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撮影 塩澤一洋氏(http://shiology.com/)。勝手に心の師匠。なんと!iPhone3GSで撮影した写真だということです!絵画のような妖艶な一枚。


 昨日、大阪弁護士会主催の「国税不服審判所と審査請求手続」という研修を受けました。
 講師は、大阪国税局不服審判所の所長、本多俊雄さんです。ついこの春までは民事部の裁判官をされていた方です。おそらく2、3年ほど、審判所の所長を務めた後、また裁判所に戻られます。
 そうです、国税不服審判所は「国税庁の中の特別の機関」なのですが、その所長は裁判官という法曹が務めているようです。
 もう12年前になる、司法修習時代の私がいたクラスの民事裁判教官の裁判官も、一時期、東京の国税不服審判所の審判官をされていましたので。
 で、特に守秘義務が厳しいようなのですが、その義務の中で、いろいろと興味深い実務上のお話がきけて面白かったので、ここにまた自分用にメモします。ブログをご覧頂く方にも何か参考になることがあれば。


 国税不服審判所の詳細については、HPが充実しているのでこちらをご覧ください。
 http://www.kfs.go.jp/

 審査請求事件については、平成20年度、発生件数が2835件あったということでした。ちなみに、異議申立ては5313件、訴訟は355件ということです。
 うち、審査請求事件について代理人の状況はどうかというと、これは感覚的なものですがということで、次のような状況らしいです。
 代理人なし・・・・47%
 税理士代理人・・・29%
 弁護士代理人・・・12%
 代理人なしで審査請求手続きをされる方が約半数。驚きでした。また、税理士さんも代理人として約3割がついているというのも予想より多く、活躍されているんだなという印象を受けました。
 ただ、審査請求について、平成20年度の処理のうちで、納税者の主張が何らかの形で受入れられたものの割合は、14.7%だそうです。
 これを狭き門と捉えるのか否か。


 最近の傾向としては、やはり国際税制がらみが多いということでした。
 そういえば、大学の同級生などで国税局に就職したという人が、留学しているらしいという話も聞いたことがあるので、国税局の方も力を入れているのだと思います。
 また、国際税制がらみになると、金額も大きく、専門性も高く、そして争訟性が強いという傾向があるようです。
 企業も、納得出来ないときは国税局に対して争うようになってきたということだと思います。数年前から言われていますが。
 

 審査請求手続に関しては、審判官として多いのはやはり税務所からの出向の人がほとんだということで、手続的保障といった観点、主張と証拠といった観点、あるいは第三者機関としての視点という点で不慣れな面もあり、法曹出身の審判官として、いろいろと協議しているということでした。
 税務所の職員として働いていた方々が、第三者機関として、いわゆる古巣の税務所の判断について改めて審査というのは、これはもう制度的に難しい面があるというのはやむを得ないと思います。
 また、法曹ではないので、実体面と手続面を区別して思考するという訓練を受けているわけでもないので、この思考法はなかなか難しい面もあるのだろうと思います。
 ただ、もちろん税法については税務所の職員出身の方は実務を経験されたプロですので、逆に法曹出身者の方はその面で教わることが多々有るのだろうと思います。
 行政部内の最終判断となる裁決を行う機関としては、よく出来た機関なのだろうと思います。


 ちなみに私は、固定資産税という地方税に関し、地方自治体に対し異議申し立てを行い、自治体の行為が改善されたという経験はありますが、国税に関して、この審査請求手続を利用したという経験はありません。
 ただ、講師が言うには、たとえば税理士が代理人となっている件でも、やはり民法上の観点が重要であって、知識と経験が必要な案件で、弁護士さんに相談に行かれたらどうですか?と言いたくなるような案件もないわけではないということでした。
 また弁護士が訴訟代理人となって訴訟になった事案でも、審査請求手続の方を利用していてれば、もっと早く妥当な解決が導き出せたのではないかと感じる事案もないわけではないということでした。
 

 国税不服審判所の目的は次のようなものです。
 

「税務行政部内における公正な第三者機関として、適正かつ迅速な事件処理を通じて納税者の正当な権利利益の救済を図るとともに、税務行政の適正な運営の確保に資すること。」

 おもしろいのは、納税者の正当な権利利益の救済が目的だけではなくて、税務行政の適正な運営の確保にもある点です。
 そのためか、不当な処分の取消対象は、違法な処分だけではなくて、不当な処分も取消の対象になるようです。

 「違法」「不当」と聞いて思い出すのは、ある裁判官の言葉です。
 「違法判決」と言われたら困るけど「不当判決」と言われる分には仕方ないと思える、というものです。
 裁判ではそういう世界です。
 しかし、この審査請求、裁決においては、「不当」な処分も是正の対象とされるのです。
 
 裁判と、それ以外の似て非なる制度に手続き。
 いろいろとあります。またどこかでまとめたいと思います。
 相続でよく出てくるので依頼者の方々によく説明するのですが、普通に生活していたら、「裁判所」「裁判官」というひとくくりで、裁判所、家庭裁判所、訴訟手続、審判手続、裁判官、審判官、訴訟事項、審判事項の説明が難しいです。「既判力」って何という話も出てくるし。ホワイトボードに書いて、説明させていただくと、なるほどと納得はしていただけるのですが、その後、本当に腑に落ちているのかどうか怪しいことも多く。
 相続事件だと、下手したら、家庭裁判所と地方裁判所(高裁、最高裁)をいったりきたりということもあります。だから事件解決が長期化することも多く。前にもどこかで書きましたが、離婚訴訟のように、家裁で一元化するか、地裁でも判断可能とした方がいいのにと思います。
 
(おわり)
*京都地裁に行ったらよくよるお店、mamaroのスープカレーです。絶品! 
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2009年9月 6日 (日)

最高裁判所の裁判官~弁護士活動の方向性~【松井】

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1 
 大阪弁護士会所属の弁護士であり、平成18年まで約4年間、最高裁判所の15人の裁判官のうちの一人を務められた滝井繁男弁護士の著書を読みました。滝井繁男「最高裁判所は変わったか 一裁判官の自己検証」(2009年7月、岩波書店)。
 大橋が購入し、8月末までなら貸してあげるよということだったので、そのまま借りて大橋よりも先に読んでしまいました。
 読了中から、これは自分用にも書き込みできるように一冊、買おうと思う一冊でした。


 判例時報21年8月11号に掲載されていたところによると、平成20年の最高裁民事破棄判決は52件。「既済件数2952件に占める割合は1・9%となる。」ということです。
 つまり、最高裁で、高裁の結論がひっくりかえる確率は、2%未満。
 そもそも、その前の高裁で地裁判決がひっくり返る割合は確か25%くらいだったはず。
 三審制といっても、事実上、一審で決着つく確率がいかに高いことか。
 
 とはいえ、年間、最高裁には民事事件で約3000件が係属するということです。
 これを5人の裁判官からなる小法廷3つで審理していくのです。
 記録読みに追われるその激務の様子が描かれています。
 もちろん、裁判官の中でも優秀な人を集めているといわれている最高裁判所調査官の方の下支えがあってのこと。
 それでも、

「私の場合、退庁時間まで七時間半、昼食時を除いてほとんど記録を読み続けているため、この時間になると、気力、体力ともその限界にきているというのが実感であった。」
(43頁)とあります。
「帰宅後は、食事を終えると比較的丁寧に新聞を読むようにはしていたが、疲れているのでさらに机に向かうという気力はなく、早い時間に寝ることにしていた。そして、概ね四時迄には起きて、また記録を読み始めるというのが日常であった。」
(同頁)とあります。
 まさに、文字通り「激務」だと思います。そんな生活が4年近く続くのです。
 
 しかしそのような中で、滝井元判事は、個々具体的な事件の中で「最高裁判所」が果たすべき役割を考え、見落としがあってはならないと、記録を精査し、そして判断し、ときに個別意見を表明していきます。
 
 判断した個々具体的な判決事例についても、かなり突っ込んだ判断経過が記述されており、最高裁裁判官の頭の中の思考過程が記されている、貴重な本だと思います。
 
 訴訟代理人をつとめる弁護士に限らず、企業法務、契約業務、あるいは国政、地方自治にかかわる人は必読だと思います。行政訴訟に関する記述が厚いです。

 以下、自分のメモように、やはりそう考えているのねといった箇所を少し引用しておきます。


 租税法律主義について

 

「最高裁は、租税の賦課は法律の根拠に基づかなければならないとする租税法律主義の趣旨は、私人が予測不可能な課税をされることは許されないというものであって、法がある賦課徴収をなす趣旨であること、あるいは減免を認める趣旨でないことが国民にあきらかであるにもかかわらず、技術上の工夫をこらしたり法文上の不備をついたりして課税を免れようとするものに対して課税をすることは租税法律主義に反するものではないという見解に立つものだと思われる。」
(132頁)。
 私は、この記述を読み、映画フィルムの事件を思い出しました。

 行政庁の裁量について

 足立区医師会の事件に対して(昭和63年7月14日第一小法廷判決、判時1297。29)
 

「原審の東京高裁は都の言うような混乱と障害の生ずるおそれがあるという判断に合理的根拠はないと判断し、都の処分には裁量判断の逸脱があると言ってこれを取り消したのですが、最高裁は、一定の事実を起訴として混乱が生ずるという行政の判断の過程にその立場における判断のあり方として一応の合理性があることが否定できない異常、その判断に裁量の逸脱はないとして原判決を破棄し、請求を棄却する判決をしたのです。混乱するかどうかは、将来のことですから判断の基礎となる事実は評価にわたることになりますが、その捉え方いかんでは、行政の判断が尊重されることになってしまうのではないか、それでよいのだろうか。この事件では本当に混乱がどの程度起こるのか、また、仮に少々の混乱があっても他の要素との衡量、この事件では公益法人設立の利益というものと、混乱の程度との衡量が必要ではないかと思うのです。この辺のことがもう少し、議論されてもいい事件だったのではないかという気がします。」
(169頁)。
 思考を停止させずに、とにかく突き詰めて具体的に根拠を考え抜くということだと読みました。
 「裁量の基礎となる事実をしっかりと認定し、その判断過程に注目すること」
(同頁)。

 民事事件について

 

「公害訴訟なんかでも似たようなことが言えると思うんですが、原告側が被害というものの実像を、それが出てきた原因と関連づけてすごいエネルギーを投じて明らかにしてきた。そのなかで、これは何とか救済しなければならないんじゃないかという判断があって、損害賠償請求が認められ、さらには差止請求権を認めるという考え方が出てきたのではないかと思うのです。」

 
「私は、裁判の正当性が承認されるかどうかは、その判断過程の客観性が認識されるための説得力をどれだけもつかにあると思います。説明義務とか契約上の付随義務として一定の信義則上の義務を認めるような判決がでてきておりますが、こういうものも社会的承認を得るための説得のためのもので、このような考えがどこまで拡がっていくのか、これから司法への期待が高まるなかで、新しい法解釈を迫られたとき、どれだけ説得力のある理由を編み出せるか判例の展開に注目したいと思います。」
(338頁)。

 弁護士一年目のとき、裁判官を説得するのは、根本的には、理屈じゃない、事実だということを教えられたことがあります。

 ローマ市民を前にして、ブルータスがやったこと、その殺人は是か非かが議論されました。是とする派と非とする派とが市民の前で訴えました。
 是とする派は、その殺人はやむを得ないものであって、殺されたものは殺されるべくして殺されたことを理屈で訴えました。
 それに対して。
 非とする派は。
 血染めのシャツを市民の前に差し出しました。
 そして言うのです。
 「見ろ、これがブルータスのしたことだ!」と。
 市民は血染めの残酷なシャツを突き出され、それを是とすることは出来ず、ブルータスの非道に対し一気に怒りで沸き上がるという話しです。

 法律マシーンではなく、感情をもった裁判官です。もう一歩のところで突き動かすのは感情だということなんだと読みました。


 弁護士として向かうべき道が見えてくるように思います。
 その道をどこまで進めるかどうかは別にして。。。努力し続けることが出来るかどうかですね。それも、全ては気力にかかっている。。。
 ま、総論ばっかり語っていないで、各論を実行することですね。がんばります。

(おわり)
 
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2009年4月 4日 (土)

足掛け10年 ~わたしがバカでした~【松井】

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 平成8年9年の司法修習時代、検察教官から言われました。
 「簿記の勉強はしておいた方がいいよ。でも、3級程度で十分。」
 東京地検の特捜部で脱税の事件なども担当された教官でした。
 その方が、簿記を勉強したほうがいい、でも3級でいい、という。だったらそうなんだろうと、当時、馬鹿な私は言葉をまにうけ、平成9年10年に簿記3級だけ受験し、合格しました。
 大阪での実務修習中、その日の修習先をあとにすると、いそいそと専門学校に向かいました。で、3級合格10日間コースを受講し、修習の合間にせっせと問題集を解いて、3級は難なく合格できました。
 で、そのまま一気に1級くらいまでを勉強すればよかったのにと今なら思うのですが、馬鹿な私は言葉を間にうけ、そのまま3級でストップして簿記の勉強を止めてしまいました。


 平成11年、弁護士登録して働きはじめると、すぐに気づきました。会社の社長さんと会話ができない!簿記、会計、税務の知識が全然違ったのです。
 これはまずいと思い、また同期の皆も多くがそう思ったようで、税務の勉強会などを開いたりはしました。
 しかしインプットの勉強なんてまずは一人でやるもの。なかなかうまく掴めませんでした。
 しかしまずは簿記の2級をと考え、受験申込はするものの、勉強せずじまいで受験日に欠席といことが2回ほど続き、そうこうするうちに日々の業務をこなすのに精一杯となって、いつの間にか簿記会計税務の体系的な勉強からは離れていきました。


 そうこうするうちに平成14年9月、思うところがあり独立して大橋と二人、今の「大阪ふたば法律事務所」を設立しました。充実していはいましたが、焦りがありました。
 簿記会計税務をやり残している。

 そしてある日。
 「ついに、そんなものが出来たのか!」と町で看板を見かけたとたん、入学願書を入手しようとしていました。平成18年8月。関西学院大学大学院会計専門職大学院。こうなったら思い切って時間とカネをかけて自分を追い込むしかない。取り憑かれたように、願書、面接を受け、入学を決めました。
 そして平成19年4月、10年近く前の簿記3級の知識のままに入学してしまいました。

 まわりは、上場会社で経理を担当されている方や、バリバリの現役税理士の方、あるいは23歳の商学部を卒業した公認会計士試験の受験生ばかり。
 皆さん優しかったです。アホなわたしが分からないところを教えてもらうのはもちろん、文献を探してもらったり、レポートを見せてもらったり、ときには家庭教師のように個別に問題の解き方などを教えてもらいました。
 法人税、地方税の計算の仕方、原価計算の手法、連結会計、国際会計基準などなど。そして監査のための監査基準論や公認会計士倫理なんてものも。簿記試験の受験にさく時間もなく、目の前の課題を必死でこなしました。
 平成20年9月、なんとか単位を取得し、卒業できました。

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 そして。
 この2月。
 ようやく簿記2級を受験し、10年かけてようやく合格。
 アホみたいですが、感慨深いです。
 会計専門職大学院を卒業して、簿記2級ってどうよ!?というのもあるので、次は1級を目指したいと思います。
 そう。そもそも簿記2級は、入学要件だったんです・・・。入学面接の際、試験管の公認会計士の先生から言われていました。簿記2級はとっておいてね。
 わたくし。本末転倒に近いものがあります。
 10年前、わたしが馬鹿でした。
 せっかく勉強するのに、この程度いい、なんてものはこの世の中にないと思わねばならなかったのです。3級でいいと思ってしまったために、それが呪いの言葉のようになってしまった。
 馬鹿でした。

 もうすぐ5月、今年の公認会計士試験の短答式試験ですね。皆さん、がんばってください!!
(おわり) 
 
*大学院を卒業できたことより、2級に合格したことの方が嬉しいです。10年前に積み残してきた荷物をやって回収できたような思い。人生であとやり残していることは・・・?
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2009年2月20日 (金)

弁護士さんへ〜50のじぶんへ〜【松井】

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弁護士さんへ

 相続に関する問題を扱うのならば、相続税法をきちんと勉強してください。
 せめて最低限のこと、手続は押さえてください。
 それを踏まえて、合意書を作成してください。
 お願いします。

 迷惑です。
 当事者の方々が被害を被ります。
 
 分からないのならきちんと税理士さんに相談してください。
 税理士さんに相談するときは、相続税法の分かっている税理士さんに相談してください。

 自分のミスの尻ぬぐいを当事者の方にさせないでください。

 あちこちで、すすり泣きが聞こえてきます。
 プロなら、恥を知って下さい。
 バカならバカの自覚を。それがプロの賢さ。

 条文の読み方、知っていますか?
 「できる」というのは、義務ではありません。
 勉強、しようよ。

 ~~~~~~
2/23 改訂 「心はホットに、頭はクール」にということで、改訂。

 数年後の自分への、自戒の意味を込めた一文です。
 厚顔無恥な弁護士、といわれないように。
 弁護過誤を扱う弁護士さんに自分が訴えられたりしていないように。

 アンジェラ・アキの「15のきみへ」とかいう歌がありましたが、
 「50のじぶんへ」としておきます。

(おわり)

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2009年1月12日 (月)

「他人の失敗から学ぶ税法」【松井】

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*しょこたんこと中川翔子さんなみのブログ更新頻度です(嘘)。本当は11日に作成しています。しょこたんの亡お父さん、中川勝彦さん、好きでした。「花の首飾り」、持ってました。


 東京で弁護士をされている方で凄い方がいらっしゃいます。
 税理士試験に科目合格され、公認会計士試験にも合格し、税務・監査の実務につきながら、司法試験にも合格して、現在、弁護士をされています。



 その方のホームページは情報公開も充実しています。
 昨年来、その方が主催するメーリングリストに加入させていただき、今にいたっています。
 もっぱら税理士の方々が主で実務の情報交換、切磋琢磨をされています。
 そこでの税理士、公認会計士の方々の議論を目にしていると、自分のアホさ加減が分かって非常に勉強になります。
 月4回、発言しないと登録を削除されてしまいますが、基本、資格のある方は登録自由です。
 弁護士業を実務として行う人々は、可能な限りこのMLに入れてもらって勉強すべきではないかと思います。
 
 だって。
 弁護士業をしていて税務と無関係で事件処理をすることってあり得ないから。
 民法の感覚、弁護士の感覚で税法を捉えると、大けがします。根本が違う。


3 
 公開してくれている情報でまず弁護士が読むべきレジュメ
 「他人の失敗から学ぶ税法」
 http://homepage1.nifty.com/msekine/
 
 弁護士が税法の無知のため、あるいは確認ミスのために事件処理をしくじり依頼者に損をさせている事例が山盛りです。
 ここぞというときは税理士の方に確認しますが、そもそも税理士の方に確認すべきだったという発想すらないときにミスが起こります。
 後の祭りで取り返しがつかないですよ。相続税の事例だと金額も大きくなりがちですし。まさに他山の石。

(おわり)

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2008年9月27日 (土)

鳥飼重和弁護士の講演と「弁護士」【松井】

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 ↑京都 糺の森。

 今や税務訴訟で超有名な東京の鳥飼重和弁護士が講師の日本弁護士連合会主催の研修を受けました。
 お題は、「弁護士に役立つ税務訴訟の知識」。
 しかし内容はというと、鳥飼弁護士もたった2時間で細々とした話をする気は毛頭なかったようで、もっぱら弁護士に発破をかけるような、威勢のいい経験談といった感じでした。
 私はなかなか面白く聞くことができました。
 備忘録代わりにここにメモ。


 レジュメの一分抜粋
 

 弁護士における課題
 1 受け身の姿勢が変わらない
 2 社会の要望が見えていない
 3 市場を築く気がない
 4 実例 
    相続・事業承継
    内部統制
    中小企業


 租税法率主義と私法重視
 
 タックスロイヤーは、本来、弁護士
 タックスプランニングに必要な要素
 ① 税法・通達に精通・・・・税理士
 ② 税務実務に精通・・・・・税理士
 ③ 契約法に精通・・・・・・弁護士
 ④ 証拠法に精通・・・・・・弁護士

 日本のタックスプランニングに欠けているのは、③と④
 弁護士が加わっていないから。
 日本では、弁護士と税理士との協同が必要。

 

 中小企業、会社経営者の方にとって、身近な相談相手、専門家は、やはり税理士さんになるのだと思います。
 うちの実家の商売でもそうです。父や母は、出先の店を閉めるか否か、融資のこと、兄への事業承継(というほどのものでもないですけど)について、誰に相談しているかというと、顧問の税理士さん、会計事務所です。
 四日市にも弁護士が増えているはずなのですが、弁護士には相談しません。
 さすがに契約トラブルなどについてはたまに私が相談を受けますが。
 でも、「弁護士」に相談するのは、事後の話であって、「事前」の事柄について相談するのは、「身近」な税理士さんです。
 
 なぜか。
 まさに「身近」というこの一言に尽きると思います。
 記帳代行を頼んでいれば、またそうでなくても月に1回は訪問してくれて、話をする機会がある、それが「身近」な税理士さん。
 本来、契約法/証拠法の知識と経験が必要な、まさに弁護士マターであっても、税理士さんが「回答」「アドバイス」をくれます。

 ただ、以前、税理士さんが顧問先からの質問に次のようにアドバイスしたと堂々と発言しているのを見て、椅子からひっくり返りそうになりました。

 Q(経営者) 従業員が、過失か故意か分からないが、現金を紛失し会社に損害を与えた。経営者がとる対応は如何。
 A(税理士さん) 損害分を給与から天引きしたらいい。

 ええええっっ!!!????
 労働法、裁判例をちょっとでも知っていたら、そんなアドバイス、あり得へん!
 税法・通達や、税務実務に精通していることと、経営や労働法、会社法、民法、さらには裁判になったときに大事な証拠法に精通しているとうい担保は何もありません。弁護士は、かろうじて司法試験に合格している、研修所で教育を受けている、訴訟代理人をつとめているという担保があるにすぎませんが。
 
 これが実態の一つなんだと思いました。

 鳥飼弁護士ではないけど、弁護士、社会のためにもがんばらないと。


 それはさておいても、自分が無知であることを知ること、謙虚さが大事だとこのごろつくづく思います。
 謙虚に人に教えを請う姿勢をもって努力していれば、手を差し伸べてくれる人が現れます。
 自分が何もかも分かっている、自分が言っていることが常に正しいといった上から目線の言葉を発していれば、間違っていても誰も糺してはくれません。はっきり言って、損です。人生、損する。
 
 

「『クレジット』レベルが高ければ、多くの人からアクセスされ、より多くのエネルギーを集めることになる。
  結果、あらゆる課題の解決に調達できる材料や使える手段、人生のさまざまな局面での選択の幅が、『クレジット』レベルの低い人より、はるかに豊かになる。
  何かのテーマについて考えるプロセスだけをイメージしてみても、『クレジット』レベルの高い人は、より豊かな広がりで助けを求められるから、他人の思考プロセスまでを拝借できる。
  それは、自然に、いい考えを導き出すことに繋がるだろう。
  もっとも、外見だけを見れば、他人には単に『運のいい人』や『本番に強い人』に見えるだけかもしれないが。
  『クレジット』レベルの低い人には、他人が知恵を貸さないから、狭い世界観での乏しい情報による決断になる可能性がある。視野狭窄に陥る危険も。」

  (196頁、藤原和博「誰が学校を変えるのか 公教育の未来」2008年9月、ちくま文庫)
  ここでいう「クレジット」とは、「信頼と共感」と定義されています。

 経営者も、弁護士も、「クレジット」レベルを高める、「信頼と共感」を高めないと、「狭い世界観での乏しい情報による決断」という愚をおかしかねない。

(おわり)

↓ 愛用マグカップとMacBookAir
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2008年4月 7日 (月)

そうだったのか、「税理士法」【松井】

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 3月、日本弁護士連合会主催の「租税税訴訟の新たな展開」という研修を受けました。 その際、従前、租税に関して、弁護士はその果たすべき役割を果たしてこなかったのではないかという指摘がありました。
 従前、税務のことは税理士がやるべきことで弁護士が担当すべき事柄ではないといった風潮がなかったのかということでした。
 その際、税理士の役割に関して、税理士法1条の指摘がありました。

 税理士法1条には、「税理士の使命」として次のように記されています。
(税理士の使命)
第一条 税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。

 一方、弁護士法1条はというと。
(弁護士の使命)
第一条 弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。
2 弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。



 つまり、税理士法の規定する税理士の役割・使命としては、決して「納税者の代理人」ではないということです。
 「独立した公正な立場」で、納税者と税務当局との間に入る、調整役的な面が役割と考えられていた面が多分にあったのではないかという指摘でした。

 ところで、課税については、国家権力として抑制の対象たるべきものとされ、憲法でしっかりと定められています。

 憲法84条
 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。
 
 租税法律主義です。
 なぜこんなことが憲法で定められているのか。歴史の所産です。


 この点、従前、納税の権利は十分に守られてきたのかということです。
 弁護士が「納税者の代理人」として、租税法律主義に照らし、おかしいことはおかしいとして、交渉あるいは訴訟によって戦ってきたのか否かということです。
 これこそ弁護士の役割・使命ではないかと。
 
 先の研修のタイトルは「租税訴訟の新たな展開」です。まさに「新たな展開」です。
 
 私の中では、入国管理業務についても、法律に則った、予測可能性・平等適用がまだまだ不十分な業界ではないかとの思いがありますが、税法もそうでしょう。
 
 以前、会社法の研究者の方とお話をしていたとき、「ダメ駄目、和解なんてしちゃ。判決もらって白黒つけなきゃ、法律の解釈論が進化しない。」といったことを言われました。
 紛争当事者の代理人としては、判決をもらうよりもよっぽどの事情がない限り、和解の方が当事者の利益に繋がることの方が大きいです。
 しかし、相手が国・行政機関である場合、和解は困難な事が多く、特に、租税訴訟は始めた場合は最高裁までやる覚悟が必要だといわれているように、白黒つけるべき事に対しては、判決をもらって白黒をつける方が利益になるのかもしれません。
 和解でも納得できないのなら、筋を通すべき事に対しては筋をとおす、その事に対して弁護士として役に立てることがあれば、これはまさに弁護士の使命としてやり甲斐を感じることだと思います。

(おわり)

2008年3月18日 (火)

税務訴訟の新たな展開【松井】

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 先日、日本弁護士連合会の研修「租税訴訟の新たな展開」を受講しました。
 講師は、青色発光ダイオードの訴訟や武富士の贈与税訴訟で著名な升永弁護士、東京地裁の税務訴訟担当部の裁判官、さらには税法で著名な三木義一教授、さらには公認会計士資格も有する関根稔弁護士などでした。
 午後1時から午後5時まで、途中休憩を挟みながらも密度の大変濃い研修でした。


 升永弁護士は「租税法律主義の現代的意義」として、今、改めて世界の中の日本を意識し、世界からの投資を受け入れられる基盤として、予測可能性としての租税法律主義の重要性、日本の現状、弁護士の役割について論じられました。
 もっと饒舌な方なのかと勝手に思い込んでいたところ、とつとつとした語り口であり、租税法律主義に対する熱い思いに触れたように思います。
 今まで、この分野で弁護士は戦ってきたのかと。放置され、租税法律主義がないがしろにされてきたのが現状ではないかと。


 これを受けて、東京地裁民事第2部の裁判官の講演はより実務に即したものであったところ、意識しているのはまさに「租税法律主義」だということを明言されていたのが印象的でした。
 租税訴訟特有の問題点などにも触れながら、弁護士に対する苦言を述べられていたのは、やはり訴訟活動に対するものでした。
 「準備書面作成上の留意点」として、「見た目よりも内容勝負、簡にして要を得たものを」とレジュメには記されていました。「見た目にはだまされない、響かない」と述べていました。やはり量より、質。判決書きを書くときもしているとのことでしたが、骨子、ダイジェスト、要約を作ってみることをすすめられていました。
 確かに、これは弁護士向けに講演する裁判官がよく口にすることです。どんな主張もA4 10頁以内で収まるはずだ、分厚いだけの準備書面ほど読むとがっかりする、中身がないことが多いと。
 それに、これも裁判官の口からよく聞く事柄ですが「証拠説明書」が非常に有用であるということです。「立証趣旨」を丁寧に考えて書く。自身でもこの証拠がいったいどういう点で有用かをチェックする意味でも大事だと思います。


  ともかく、最高裁判決の重要性、その分析手法、さらには租税訴訟の意義とそこにおける弁護士の果たすべき役割を考えさせられる、濃い研修でした。
 租税訴訟では、通常、和解はありません。また、いったん提訴すれば最高裁まで覚悟する必要があるといわれています。
 国と戦う弁護士が求められていると思います。
 弁護士はもっと税法を勉強して役割を果たすべきだと述べられていた升永弁護士や日弁連税制委員会の委員長水野武夫弁護士の言葉が印象的でした。

(おわり)

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2008年2月11日 (月)

税理士さんの話しと講師・プレゼンのあり方【松井】

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 先日、ベテラン税理士の方の話を聞く機会がありました。何に課税するのかという話しから始まり、それは3本柱だと。
  所得
  資産
  消費
 現在の日本の税制がどうかという話しから、今後、どの方向へ向かうのか。
 また、税制のあり方として、税収額が先か歳出額が先かというバランス論の話し。
 その他、税理士のあり方、価格移転にからむ国税庁の「事前確認制度」、地方税の国税準拠主義の実態などの話しを聞き、数時間に及ぶ講義でしたが、非常に興味深く聞き、ちょっと考えさせられました。
 以前、経済週刊誌で特集が組まれていましたが、今後、「v.国税庁」という事柄が増えるのかもしれません。「もう黙ってられへん!」という流れが出てきそうな気がします。顔色をうかがうのはもう止めだ、法廷で、理屈で勝負だ!という企業や個人が増えそうな気がします。


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 それはともかくとして。
 私自身もたまに講師などをすることがあります。準備に時間をかけ、1時間や2時間の時間、その場にいらっしゃる方が何か一つでも聞いて良かったと思ってもらえるようにと心がけています。
 これが例えば、TV番組での「弁護士」としての出演だと、構成・編集についてはディレクター、放送作家の方などが構成を考えてくれて、こちらはその流れに沿った話をするに過ぎません(とはいえ、打ち合わせと準備に相当の時間をかけます。20分ほどの番組放送時間のために)。
 しかし講師・講演については、テーマを与えられると、その構成はこちら一人で考えることがほとんどです。お任せになります。
 その際、興味を持ってもらえるようにと中身を構成することになります。

 この数ヶ月、弁護士、税理士、公認会計士などの実務家の方が講師の研修や講演を聴く機会が非常に多く、他人のその講師ぶりを見ていろいろ自分なりに気づいた点、考えさせられた点があるので、自分のメモ用にここに記しておきます。



● まず、第一は、やはり声のトーン。暗い調子なのは、それだけでこちらの気分も暗くなってきます。妙に張り切って明るくはじけた感じ、とまではいかなくても、最低限、暗くない調子の声のトーンで話す必要はあり。
● 次に、内容。やはり伝えたいこと、最低限、伝えないといけない情報があるときは、まず全体像を示すべき。最大のポイント、最低限、伝えたいことはコレ!というものをまず最初に提示すべき。それがないままに、いたずらに情報量が多く、メリハリなく伝えていっても、何を何のために今、講師が目の前で話をしているのかがよく分からなくなる。● 配布物。パワーポイントの画面をたくさん印刷して配布すればいいというものではない。かといって、通常のA4メモ書きのレジュメを渡すだけなのもよくない。なぜなら、講師が前で話をしていても、常に手元のレジュメを見て、講師と聴衆のアイコンタクトがなくなり、全体的に印象の薄い講義になってしまうから。レジュメを配ったとしても、パワポのスクリーンがなかったとしても、そうならそれで講師が前で板書をして、聴衆の顔を上げさせ、注意を惹くべき。
● その他
 用意した内容を淡々と流すのではなく、ときどき経験に基づく雑談を交えるとメリハリになって、聴衆の関心が続く。
 当たり前だけど、講師は手元を見て話すのではなく、前を、聴衆を見て話す。
 参加型にして、ときどき問いを聴衆に投げかけ、回答してもらう。キャッチボールが出来ると、一体感が出てくる。



 といったことをつらつらと考えていました。これらはもちろん、本でもよく書かれていることばかりですが、実際に自分が聴衆の立場で考えてみると納得出来る事柄ばかりです。
 お金をもらって講師、講演をする限りは、たまには自分の様子をビデオ撮影するなどして振り返ってみるといいかもしれません。単に場数を踏むだけでは上達もなく、やはり練習があって向上があるということだと思います。
 私も一度、自分の相談現場の様子、あるいは講師・講演の様子をビデオ撮影して振り返ってみようと思いました。

 ちなみに、法廷での尋問の様子は、刑事事件の重大事件ですとまず間違いなく、速記官の方が入ってそのままの様子が文字化されます。また民事事件ですと、録音され、それが反訳されます。
 これらを読み返して、証人の記憶の曖昧さを追及してよく頑張ったな自分、と思うこともあれば、何を訊いているんだ、わたし!?と豆腐の角に頭をぶつけて死んでしまいたくなるような気分になることもあります。
 
 最近読んだ、「ハーバード・ロースクール アラン・ダーショウィッツ教授のロイヤー・メンタリング」という本で書かれていた一文です。ちなみに、この本の原題は、「letters to a young lawyer 」です。

 「弁護士という職業は終わりのない試験の連続」。
 そのとおりだと思います。しかもその「試験」というのは、「(法曹というのは)能力や努力を正確に反映しない成績がつけられる試験の連続だ」というのです。

 また、「情熱的に生きよう!」という言葉も贈られています。
 私自身、無表情な顔で、面白くなさそうに仕事をするようにはなりたくないと思ってきました。
 
 そしてこの本で強調されていたこと。
 「もし私が自分だけのためにしか働かないとしたら、私は何者だろう?」

 冒頭のベテラン税理士さんは67歳でしたが、黒の革ジャンにジーンズで登場しました。そして、やってこられた仕事も、尋常ではない情熱を傾け続け、「不撓不屈」ではないけど、交渉すべきところ、闘うべきところでは戦い、そして結果を出してこられてきた方でした。
 まさに骨太のプロフェッショナル。
 格好いい講師であり、税理士であり、本当のプロフェッショナルの方でした。もし私が60歳を超えても今の仕事をしているとしたら、こうありたいと思わせられる迫力でした。
 今年37歳ですが、あと3年の30代をどう生きるか、終わりのない試験の連続です。いつまで心身が耐えられるのか。試験に耐えられる情熱がなくなったとき、惰性になりだしたときが辞め時かなと思ったりしています。自分だけのために働くようになってしまったら、辞めます。
(おわり)