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05 会計

2009年4月 4日 (土)

足掛け10年 ~わたしがバカでした~【松井】

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 平成8年9年の司法修習時代、検察教官から言われました。
 「簿記の勉強はしておいた方がいいよ。でも、3級程度で十分。」
 東京地検の特捜部で脱税の事件なども担当された教官でした。
 その方が、簿記を勉強したほうがいい、でも3級でいい、という。だったらそうなんだろうと、当時、馬鹿な私は言葉をまにうけ、平成9年10年に簿記3級だけ受験し、合格しました。
 大阪での実務修習中、その日の修習先をあとにすると、いそいそと専門学校に向かいました。で、3級合格10日間コースを受講し、修習の合間にせっせと問題集を解いて、3級は難なく合格できました。
 で、そのまま一気に1級くらいまでを勉強すればよかったのにと今なら思うのですが、馬鹿な私は言葉を間にうけ、そのまま3級でストップして簿記の勉強を止めてしまいました。


 平成11年、弁護士登録して働きはじめると、すぐに気づきました。会社の社長さんと会話ができない!簿記、会計、税務の知識が全然違ったのです。
 これはまずいと思い、また同期の皆も多くがそう思ったようで、税務の勉強会などを開いたりはしました。
 しかしインプットの勉強なんてまずは一人でやるもの。なかなかうまく掴めませんでした。
 しかしまずは簿記の2級をと考え、受験申込はするものの、勉強せずじまいで受験日に欠席といことが2回ほど続き、そうこうするうちに日々の業務をこなすのに精一杯となって、いつの間にか簿記会計税務の体系的な勉強からは離れていきました。


 そうこうするうちに平成14年9月、思うところがあり独立して大橋と二人、今の「大阪ふたば法律事務所」を設立しました。充実していはいましたが、焦りがありました。
 簿記会計税務をやり残している。

 そしてある日。
 「ついに、そんなものが出来たのか!」と町で看板を見かけたとたん、入学願書を入手しようとしていました。平成18年8月。関西学院大学大学院会計専門職大学院。こうなったら思い切って時間とカネをかけて自分を追い込むしかない。取り憑かれたように、願書、面接を受け、入学を決めました。
 そして平成19年4月、10年近く前の簿記3級の知識のままに入学してしまいました。

 まわりは、上場会社で経理を担当されている方や、バリバリの現役税理士の方、あるいは23歳の商学部を卒業した公認会計士試験の受験生ばかり。
 皆さん優しかったです。アホなわたしが分からないところを教えてもらうのはもちろん、文献を探してもらったり、レポートを見せてもらったり、ときには家庭教師のように個別に問題の解き方などを教えてもらいました。
 法人税、地方税の計算の仕方、原価計算の手法、連結会計、国際会計基準などなど。そして監査のための監査基準論や公認会計士倫理なんてものも。簿記試験の受験にさく時間もなく、目の前の課題を必死でこなしました。
 平成20年9月、なんとか単位を取得し、卒業できました。

4 
 そして。
 この2月。
 ようやく簿記2級を受験し、10年かけてようやく合格。
 アホみたいですが、感慨深いです。
 会計専門職大学院を卒業して、簿記2級ってどうよ!?というのもあるので、次は1級を目指したいと思います。
 そう。そもそも簿記2級は、入学要件だったんです・・・。入学面接の際、試験管の公認会計士の先生から言われていました。簿記2級はとっておいてね。
 わたくし。本末転倒に近いものがあります。
 10年前、わたしが馬鹿でした。
 せっかく勉強するのに、この程度いい、なんてものはこの世の中にないと思わねばならなかったのです。3級でいいと思ってしまったために、それが呪いの言葉のようになってしまった。
 馬鹿でした。

 もうすぐ5月、今年の公認会計士試験の短答式試験ですね。皆さん、がんばってください!!
(おわり) 
 
*大学院を卒業できたことより、2級に合格したことの方が嬉しいです。10年前に積み残してきた荷物をやって回収できたような思い。人生であとやり残していることは・・・?
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2008年2月26日 (火)

絶対なんてないよ、たぶん 【松井】

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1 SPCの取扱い

 2月26日の日経の一面記事。
 上場企業のうち情報開示された34社について、連結対象からはずれているSPCが保有するとされる資産が10兆6183億円を超えているとのこと。これは連結総資産に対する比率2%。
 ちなみに、34社が関わるSPCは363社とのこと。

 ふーん。日本の会計基準、変わるんだろうね。というか、変えるようにとする日経新聞の意図を感じないでもない。圧力記事か。


2 監査法人

 同19面記事。
 NECが監査法人を変更とのこと。
 新日本監査法人からあずさ監査法人へ。

 新日本が切ったのか、NECが切ったのか。
 いずれにしても、新日本監査法人の気概を感じる。


3 非上場会社と研究開発費

 2月25日の日経夕刊の小さな記事

 「アップリカ支援で合意」
 「アップリカは二〇〇七年七月期に長年の不適切な会計処理を訂正し、数十億円の特別損失を計上して債務超過に転落した。」
 ちなみに、この「不適切な会計処理」とは、2007年12月13日のニッケイネットによれば、「同社は決算処理で研究開発費などの計上に絡み、保有する特許を過大に評価していたという。これを厳格に見直したことで07年7月期に大幅な最終赤字を計上した。」とのこと。
 
 ふーん。
 やはり「研究開発費」。
 
 ちなみに、「米大手日用品メーカーのニューウェル・ラバーメイド社(ジョージア州アトランタ)」が「経営を支援することで同社と基本合意した」とのこと。

 アップリカ葛西はやがて上場するのでは。


4 まとめ
 
 会計基準、財務諸表は、当たり前なんだろうけど絶対真実を反映しているとは限らないということを肝に銘じる必要あり。
 ただ、統計と同じでまったく使い物にならないものではない。意味のあるもの。

 統計については、
 「すなわち統計は、データの中から『ふつう』と『ふつうじゃない』を区別し、発見するツールとして有効に機能します。」(26頁、飯田泰之「考える技術としての統計」NHKブックス、2007年)と表現されているのをみて、なるほどと思った。
 統計も、会計基準・財務諸表も絶対の真実を現していることを保証するものではない。
 そしてなんと言っても、法律もまた然りではないかと思う。法律に則って結論が出される裁判についても、一審判決と二審判決の結果が異なることがある。それだけ、曖昧さがあるということ。絶対ではないということ。

 相談者や依頼者の方から、「勝ちますか?負けますか?」「勝つ確立は何パーセントですか?」と尋ねられることがある。

 端的な回答は「分かりません」である。
 私が結論を出すのであれば回答できる。何パーセントですと言える。
 しかし、判断するのは、私とは別の頭をもった第三者、裁判官である。他人の頭で何がどのように考えられてどういう結論が出るのかということについて訊かれた場合、推測・推論、統計的なことしかいえない。何%ですなんて言えるわけがない。
 根拠は何ですか?となる。

 その根拠は、訴訟代理人弁護士がその頭を必死で判決を書く裁判官の頭、思考過程を想像し、それに合わせる(合わせたつもりになる)ことでしかありえない。
 絶対ではない、法律も。曖昧、ブラックボックスが存在する。
 だから「絶対勝ちます」とも「絶対負けます」とも言わない。裁判に「絶対」なんて有り得ないから。
 ただ、「おそらく勝てない」「おそらく負ける」と考えるケースはあるので、そういったケースについてはその旨を理由とともに率直に伝え、原告側のときは受任はお断りし、被告側のときは和解によって、「勝ちはしないけど、負けもしない」という結論を導くのがベターであることを説明します。
 

 武富士の元会長の息子の贈与税課税の取消訴訟、香港が住所地か否かという点で一審判決と二審判決が異なった。
 グレーゾーンにいたことによるリスクだろう。最高裁の判決、どっちに転がってもおかしくはないと思う。
 ただ、どうあるべきかというと・・・。「諸般の事情を考慮して」結論が出るのだろう。
(おわり)

2008年2月21日 (木)

「市場と知財戦略」と会計制度【松井】

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 2月21日付けの日経朝刊で見かけた記事について、ひっかるものがあったのでここにメモ。
 
 「市場と知財戦略」として、「収益直結問われる日本企業」、「特許抱え込みの限界」といった見出しが踊っていました。



 要は、「『収益につながる特許を出そうとする米国よりも量を優先する傾向がある』(米ボストンの投資会社)」ということらしい。
 また、「日本は特許紛争に備えて部署を設けるなどリスク回避目的が目立つ。一方、米国は収益に直結する知財戦略の立案を重視する傾向が強い」とのこと。

 で、何にひっかかったかというと。
 「日本でも国際会計基準に合わせ、研究開発費を研究・開発段階に応じて資産計上する動きが始まった。」という箇所。
 「開発中の技術が収益に結びつくと判断できる段階で計上されるため、投資家は特許開発などの費用を知る目安になる。」。

 うーん。
 大丈夫なんだろうかという不安が素朴に沸き上がった。

 またもや、見積もり、予測によって、研究開発に投じた費用?が資産?として計上される。
 「開発中の技術が収益に結びつくと判断できる」ための明確な基準をASBJで公表するんだろうけど、裁判所の判断のブラックボックスじゃないけど、ある程度、曖昧にならざるを得ないのではないだろうか。
 となると、その場合、企業が作成し公表する財務諸表に対し、信頼できるのだろうか。監査をするんだろうけど、信頼性が付与されうるのだろうか。
 本来、何の資産性もなかった費用が試算として計上されて、バランスシートの見栄えがよくされるだけで、でも後からそのことが「粉飾」としてバレて大あわて、ということにならなければよいんだけど。

 極論は承知のうえで、監査制度なんて始めからない方が投資家の利益になるんだということを口にされていた元監査法人の公認会計士の方がいらっしゃった。監査がなければ、企業が作成し公表する財務諸表に対して疑ってかかるから、という極論を時々、思い出す。
(おわり)

去年、国際会計の動きについてまとめたPDFファイル 「20070620.pdf」をダウンロード


会計基準、激動!

2008年1月12日 (土)

監査基準委員会報告【松井】

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 公認会計士の方が行う財務諸表の監査には監査基準というものがあります。実は。私も最近知りました。そこには体系があって、次のようなものらしいです。

Ⅰ 監査基準
 第一 目的基準
 第二 一般基準
 第三 実施基準
 第四 報告基準

そして、
Ⅱ 実務指針
 1 監査基準委員会報告
 2 監査委員会報告
 3 IT委員会報告
 4 銀行等監査特別委員会報告

Ⅲ 各研究報告。


2 
 このうち、「監査基準委員会報告」というものをいくつか目にする機会があったのですが、驚きの品でした。
 監査人が企業の財務諸表の監査を行うにあたっての、非常に詳細かつ具体的な、従うべき準則として示されています。
 例えばこんな感じ。

監査基準委員会報告書第22号

継続企業の前提に関する監査人の検討

経営者の評価の検討
14. 監査人は、継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況を識別した場合には、当該事象又は状況に対する経営計画等が、当該事象又は状況を解消あるいは大幅に改善させるものであるかどうか、実行可能なものであるかどうかについて、十分かつ適切な監査証拠を入手しなければならない。
 この場合、監査人は、経営計画等のてん末について予測することはできないため実施可能な範囲で例えば次の点を考慮して、経営計画等が不合理でないかどうかを判断することに留意する。

<資産の処分に関する計画>
・資産処分の制限(抵当権設定等)
・処分予定資産の売却可能性
・売却先の信用力
・資産処分による影響(生産能力の縮小等)

<資金調達の計画>
・新たな借入計画の実行可能性(与信限度、担保余力等)
・増資計画の実行可能性(割当先の信用力等)
・その他資金調達の実行可能性(売掛債権の流動化、リースバック等)
・経費の節減又は設備投資計画等の実施の延期による影響

<債務免除の計画>
・債務免除を受ける計画の実行可能性(債権者との合意等)



 このような事柄が、監査にあたって監査人が依拠すべき監査基準として策定され、公表されているのです。 
 一般的な専門家向けの出版物でということなら分からないのでもないのですが、監査人皆がが従わないといけない基準として、そのほかにも具体的に、ここまで手取り足取り定めるのか!?というような「基準」が定められているようです。
 
 暗黙知が詳細に文字化されて公表されている、しかも従うべき基準として。そのことに驚きです。



 ただ、監査人による監査において依拠すべきとされる基準がこのようにどんどん詳細かつ具体的に定められていけばいくほど、「監査の品質」は確かに確保されるのでしょうが、誰がやっても同じということで均質化・均等化され、「公認会計士」の資格がなくてもいいんじゃないの?!ということになるのは必然のような気がします・・・。人数不足が叫ばれていることですし。

 公認会計士の方が、「二級公認会計士」といったもっと取りやすい資格をつくるべきだといったことを口にされているのを聞いたことがありますが、監査基準の実態を知れば知るほど私としては妙に納得です。
 
 2006年12月のエントリーですが、日本の資格をもって日本の監査法人で働いた後、今はアメリカで監査業務をされている方の文章です。
 ↓
 http://lat37na.exblog.jp/6182931/

 監査業界の変遷が興味深い。

 悪口では、日本の大監査法人は海外の大監査法人の支店となっているという言い方も耳にします。もちろん、監査業務の実態を私は知りませんので、あくまで耳にした表現として。

 ただ、いくつかの監査基準委員会報告書を目にすると、その詳細さと具体的な指針に対し驚嘆すると同時に、どういった点でプロフェッショナルとしての裁量・技量が発揮されるのだろうかと素朴な疑問が浮かぶのも事実です。
 まあ、マニュアルがあることと、それを実践できることはまた別のことですが。もちろん。

 と同時に、マニュアル・指針としてこちらの業務に役立ちそうなものは使わせてもらおうかと表現をメモしたりもしていますけど。



 マニュアルと暗黙知。暗黙知だけで、経験だけでオン・ザ・ジョブ・トレーニングで技術を身につけろというのも非合理的だとは思いますが、裁量の発揮の余地がないほどに手取足取り段取りを指示されて仕事をするのも面白くない。
 何事もやはりバランスか、ここでも。
 とはいえ、自分が日常を過ごす世界と異なる世界を垣間見るのは面白い!

 そういえば、昔、ひょんなことからテレビ番組の製作スタッフに混じって夜中の12時にラーメン屋でラーメンを一緒に食べたことがありました。
 夜中の12時に8名ほどの大勢のスタッフが翌朝の生放送に向けて準備作業中でその合間を抜けての一休みでのラーメン。ラーメンを食べて店を出ると、私は家に向かいましたが、スタッフの方々はまた職場へと戻っていきました。
 自分が生きるのとは異なる時間と場所で、まったく自分の知らない仕事が行われている。 
 パラレル・ワールドを見た思いでした。

 やはりいろいろな業界を見るということが大事ですね。自分の位置を確認するには。
 そういう意味では、私がいま働かせてもらっている業界は、まだまだ暗黙知が優勢かも。
 公認会計士の方々の世界の「監査の品質」という言葉を目にし、聞く度に、「訴訟行為の品質」、「法律相談業務の品質」といった言葉が脳裏をよぎります。「品質」は、おそらく、千差万別かもしれない・・・。
 なぜなら。私自身が既に私の「品質」を判断できないから。
 なぜなら。「基準」がないから。

 アメリカのワールドコム事件やエンロン事件、さらには日本のカネボウや、ライブドア事件のような、業界全体の信頼をゆるがすような大事件が起こったら、会計ビッグバンとはまたちょっと異なりますが、感覚的に言えば、法曹ビッグバンといったような出来事が起こるのでしょうか。
 公認会計士の方々の仕事も大変そうだと思います、率直に。でも世間から見たら、「品質」をちゃんと確保できるように「基準」としてルールを作ったから守ってねということでしょうか。業界全体で信頼を失ったとされているわけですから。
 去年7月、大手監査法人が消滅してしまったように、いつか大手法律事務所が消滅したりするような時代が来るのでしょうか・・・。
 誰も分からない。ただ、上記のLat37naさんの記事は示唆に富むかと思います。

(おわり)
 

2007年12月19日 (水)

ベトナム株~何を根拠に信頼するのか~【松井】

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 16日の日経の記事で見かける。
 「ベトナム株売買 取り次ぎ開始」

 来年1月から、個人投資家向けにベトナム株の売買の取り次ぎを国内の証券会社が始めるとのこと。
 「ホーチミン取引所に上場する129銘柄すえてを対象にする。」と。


 うーん。いったいどんな「個人投資家」が買うんだろう。
 何を基準に「買い」と「売り」を決められるのか。
 株価の根拠を合理的に判断出来るんだろうか、一般投資家として。

 疑問
 ・ベトナムの企業会計の会計基準はどうなってるの?
 ・ベトナムの企業の財務諸表の監査手続きはどうなってるの?
 ・市場の公正性はどうやって確保、監視されてるの?

 こんな基本的なことが分からないままでは、怖くて、「買い」も「売り」も決められない。
 
 ベトナムの上記の事情を知ってる「個人投資家」なんて日本にどれほどいるのだろう。 

 むしろ、日本にいるのは、「ベトナム株? 中国株みたいに、イケイケでどんな企業も株価は上がるんじゃないのか?」という根拠のない期待をもって「買い」に行く個人投資家じゃないんだろうか・・・。
 それ目当てだろうか・・・。

 心配。

(おわり)

2007年8月31日 (金)

経営者倫理と会計【松井】

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「本来、企業経営者は、誤った経営判断や経営環境の激変によって財務状態が悪化した場合、公正妥当な企業会計原則(ママ)の基準に従った決算を実施して企業の財産の維持、管理に努める一方、債権者、取引先、金融機関等の理解と協力の下に、経営方針の転換やリストラ等の徹底した経営努力を行い、この危機を乗り切るべきものである。」
「ところが、被告人は、グループ代表である一郎の積極的拡大主義の経営戦略を無批判に受け入れ、自己保身もあって、経営上の問題点の抜本的解決を先送りし、社会的存在である会社を甲野家の私物のように扱い、企業経営における麻薬ともいうべき粉飾決算に手を出し、ヤオハンジャパンとグループの当面の維持存続のみに汲々としていたのであって、その動機は、経営者倫理にもとる自己中心的で身勝手なものであるというほかない。」

「また、証券取引法違反事件をみると、、前記粉飾決算を基に、実態とは約128億8700万円も乖離した内容虚偽の有価証券報告書を提出、公表した事案である。不特定多数の投資家、一般債権者等の利害関係者を欺罔し、その判断を誤らせただけでなく、企業の経営内容を開示する有価証券報告書の意義を著しく害し、更には、証券の安全円滑な流通によって経済全体の発展を図る証券市場制度や株式会社制度の信用をも失墜させた。」
(静岡地裁平成11年3月31日判決(確定))。

 懲役3年、執行猶予5年。


2 

 粉飾決算等により、商法違反、証券取引法違反で起訴されたヤオハンジャパンの社長の判決文の一部です。
 カネボウ、ライブドア、日興コーディアル、そしてヤオハンジャパンの過去の粉飾決算事件の概要を学ぶ機会がありました。その際、配られた資料が上記の判決文です。
 公認会計士の方が上記判決文を読まれても、前記の裁判所の指摘はしごく全うだとうなずいておられました。

 企業経営者、特に上場を目指す会社、あるいは上場企業においては、経営者の責務として会計に対する理解は必須、最低限の素養なのだと思います。
 
 話は飛ぶようですが、新書本で「いつまでもデブと思うなよ」という本が出ており、興味深く読みました。
 基本は、「レコーディング」。現状の記録です。正確な状態を日々、記録し、数値化・文字化する。
 そうすれば自ずと、自己が直視するのがイヤであった現状の問題点が見えてくる。
 現状を受け入れたうえで、目標を定め、実現の方策を具体化し、日々、改善を図っていくというものです。
 著者は、この「レコーディング・ダイエット」で1年間で50キロを健康的に痩せたと述べています。


 企業経営者と会計というのも、このような関係なのではないかと思います。
 経営の現状を、日々、レコーディングして、数値化する、そのうえで問題点を改善していく。
 この問題点に直面したとき、売上げが少ない、利益が足りない、不良債権を抱えすぎている、在庫が多すぎ、上場出来ない、あるいは上場廃止になっちゃう、といった時、粉飾の誘惑を堪えて、改善策を打ち立てられるかどうか。
 現状に目をつぶり、粉飾することで、問題を先送りして、最後は手遅れになって会社ごと消滅してしまうのか否か。
 この決断力と判断力は、経営者の責任として試されるところだと思います。

 相談者、依頼者の方によく言う言葉があります。
 「嘘は、必ずバレる。嘘に限ってバレる。そういうものと思っておいた方がいいですよ。また、自分の弁護士に嘘をついてもいいけど、最後に不利益を被るのは貴方自身ですよ。」

 虚偽の事実を隠しとおしたいといった誘惑にかられるとき、そんなときこそ、現状をさらけ出しましょう。そのうえで改善策を一緒に考えましょう、と。
 「白」、「灰色」、そして「黒」、とあったとき、黒は論外としても、灰色に身を置くことなく、常に白の部分に身を置きましょう、と。
 「企業経営における麻薬ともいうべき粉飾決算」。 まさに「策士策に溺れる」。

 「経営者倫理」というよりも、経済的合理性で考えても、以前も書いたことがあるように思いますが、目先の利益に走って長期的に大損するという点を予測して、合理的な判断、決断が出来るかどうかのように思います。傷口は浅いうちに手当をする。痛いけど、放っておいてもう取り返しがつかなくなるよりは、まだましという発想。
 惰性、感情、欲求をコントロールできるかどうかという点では、ダイエットと同じか。

 ちょっとまとまりのない文になりましたが、粉飾事例をみて思ったことをつらつらと。

(おわり)
 

2007年7月13日 (金)

金融商品取引法、「内部統制の理論と実践」~八田進二教授の講演~【松井】


 大阪弁護士会であった八田進二教授による研修に参加しました。
 「内部統制の理論と実践 ~試行期間における課題~」と題する講演です。
 約2時間、最先端に身を置かれている教授の、現状を憂える生の声を聴いた講演でした。


 JーSOX法なんて存在しない、日本版SOX法なんて存在しない。そもそもアメリカのSOX法とはコンセプトが違うということを力説しておりました。
 巷にあふれているこの手の本の半分近くは、間違っている、理解していないといったことも口にされていました。
 つい先日も、日本の大監査法人の代表の講演を聴き、理解していないと驚き呆れ、手を挙げて発言し、怒ったことがあるという、つい1週間前のエピソードまで披露してくれました。彼らはアメリカの会計法人のマニュアルを翻訳したものを用意して使っているだけではないかとなかなか辛辣でした。


 印象に残っている点としては、内部統制とは、一大ビジネスチャンスのようになっているが、これをしなければいけないなんてものではないということを強調していたことです。統制の制度はあくまで各社個別のものであって、「One dose NOT fit all」ではないということです。
 このソフトを使わないと監査できないなどというのはもってのほかだといった言い方をされていました。

 また経営はあくまで経営者に最終的な責任があるんだ、経営者が前面に登場しなければならない、監査人が最終責任を負うといったことはおかしいといったことも力説していました。ついでに言うと、日本の会計基準は国際会計基準に匹敵する、特に金融商品に関する基準は超えているといった発言も。
 また今回の内部統制についてはあくまで「会計まわり」の事柄であるのに、会計をわかっていないものが多すぎると嘆いていました。
 
 とにかく、吠えられた、熱い2時間でした。
 細かい勉強は自分で出来る。大事なのは幹の部分を間違えないこと、それを久しぶりに考えた2時間でした。
 各論は、平成19年2月15日の企業会計審議会からの意見書と、参考資料で配られた金融ファクシミリ新聞4月16日から掲載された金融庁の池田唯一さんの記事を読めば分かるということなのでしょう。
 
(おわり)