2018年10月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

最近のコメント

最近のトラックバック

無料ブログはココログ

flickr


松井

2007年6月11日 (月)

異業種の舞台裏~生テレビ番組に出演して~【松井】


 年に1回ほど、何かの拍子で声をかけていただき、テレビ番組に出演することがあります。それもだいたいが生放送の情報番組。
 「弁護士」=専門家ということで、相続や生活に密着した法律情報を語ることが期待されます。
 今年も先日、相続問題についてということで関西ローカルの某番組に出演させていただきました。


 なぜ自分が引き受けるのか。タレント弁護士になりたいから?いやいやもちろん違います。
 打合せ、本番などで、普段接することのない異なる業界、しかもテレビ業界という非常に特殊な業界をかいま見ることが出来て、自身、今後弁護士としてやっていくうえで非常に勉強になることが多いと考えているからです。


 現に、相続問題を多く担当しているということで初めて出演させていただいた日本テレビの「思いッきりテレビ」のときなどは、コーナーの時間も40分近くあったこともあり、担当ディレクターの方と今にしておもえばかなり頻繁に打合せをしました。
 そのとき、自分でも改めて統計を調べたり、どういったら視聴者の方が分かりやすく理解できるのかといったことを集中的に考えました。
 また生放送、しかも司会者はみのもんたさんということで、どんな質問がその場のアドリブで出てきても答えられるよう、知識を総ざらえして行きの新幹線の中でも頭の中で一人リハーサルを繰り返していました。あんなときどうなる、こうなったらどうなる。


 先日、出演させていただいた生放送も久しぶりで非常に勉強になりました。
 放送時間が刻一刻と迫るなか、秒読み状態の中で、ディレクターの方やフロアディレクターの方、制作会社の方はもちろん、司会役の方、質問役の出演者の方も一緒に、リハーサルをしたあと、どこをどうカットするのか、構成をどう変えたらいいのか、私の回答の仕方についても、もっとこういう言い回しをしたら分かり易いのではないかと検討していただきました。

 こんなことは私にとっては非日常なので、秒読みが続く中での検討作業は本当に神経がすり減るような思いであり、出演の度に毎回、直前には吐き気を催すくらいなのですが、こんな仕事を毎日やっているスタッフ、出演者の方はすごいなと改めて尊敬します。
 特に、ゲストの芸人の方。直前に台本をもらって簡単に流れを押さえるだけで、本番では絶妙の間で笑いを呼び込むトークを繰り広げられます。今回は、海原しおり、さおりさんでした。面白かった。
 また司会者の方も、台本の中でこれは視聴者に伝えないといけないという点に話題を流れを阻害することなく場を変調させる。
 私が話しておかないポイントに触れるのを忘れていても、うまくフォローしていただき、その点に流れを持って行っていただく。
 皆、プロの仕事をしているなといつも思います。

 緊張感。

 大変、勉強になりました。
 スタッフ、出演者の方々からの率直で素朴な質問や、その言い回しは分かりにくいといった指摘も非常に勉強になります。

5 
 でも、生放送番組に出演させていただいた直後、毎回思うのは「もう二度と出ない」ということです。相当な緊張感からの開放故ですが。
 でもしばらくすると、声を掛けていただく限りは出演させていただこうという思いにもなります。
 やはりちょっとでも普通の方が知識を付けていただき、余計な紛争がなくなればいい、自分がお役に立ちたいという思いはもちろんですが、やはり勉強になる、刺激になるというメリットの方が大きいからです。


 先日の番組はどうだったのでしょう。少しはご覧になったかたの役にたったのか。
 相談に来られたかたなら、その表情で、納得されて帰られる、喜んでいただいて帰られるというのが表情を見て分かるのですが、テレビの怖いところは視聴者の顔が見えないということです。
 それは本当に怖いことだと思います。テレビ番組の中で言いっぱなしで、間違ったことを言う「弁護士」は世間にとっても百害あって一理なしのこともあるのではないかと思います。「弁護士」を名乗って仕事をする以上、責任は重大です。その自戒がなくなったら弁護士を名乗って仕事をしてはいけないんじゃないかと考えています。テレビに消費されるようになった終わりかと。
 
 竹内まりあの言葉。
 私は音楽をやりたいのであって、芸能人になりたいわけではないと思い至った。それからは宣伝のためとはいえテレビ番組には出ないようになりました。

 何にしてもそうだけど、自分がやりたいことは何なのかという目標を常に見失わないようにすることは、難しいけど大切なことだ。自分を大切にね。

(おわり)

2007年6月 4日 (月)

アップル社、吠える!~ものごとのバランスについて考える~【松井】

林檎の歌 さんのブログから知りました。
アップルが「文化庁は著作権行政から手を引け」と主張

政府が行った、「○「知的財産推進計画2006」の見直しに関する意見募集の結果について」が公表され、
アップル社からの意見が公表されています。
4番目が「アップルジャパン(株)」の意見です。

総括として、

「文化庁著作権課に依る一方的な行政運営には理解不能である。徒に著作権者団体
の意見のみを汲取り消費者、機器メーカーの立場は無視し続けている。」
と記されています。

ちょっと感情的な表現にすぎる気もしますが、著作権の世界において「消費者」の声ってどれほど代弁されているのでしょうか。
消費者は、消費する人にすぎないのだから、黙って口を開けて落ちてくるものだけを口に入れておけばいいという発想でしょうか。
文化も消費者があって初めて成り立つ世界なのは当然であって、そうでないなら、人知れず山奥で一人、絵を描いたり、小説を書いたり、音楽を作って演奏していればいいということ。
認めてくれる「消費者」がいて初めて、職業としては成り立つわけで。

今の状況は、アップル社が指摘するように、バランスが悪いのは事実ではないかと思います。

じゃあ、どうしたらいいのか?いろいろと方策はあるかと。
坂本龍一も確かがんばっていたし。声高に自らの権利主張だけをするのではなく、顧客の利益とのバランスを考える。

それにしても、昔、新書で「著作権の考え方」という元文化庁の職員が書いた本を読んだことがあるのですが、
「それはあなた、著作権の考え方じゃなくて、あなたの考え方ではないの?」という読後感を持ったことを思い出しました。
傲慢さが鼻についたということでしょうか。日本の著作権行政を自画自賛していました。

著作権法の学者の先生方にもがんばってもらいたいと思います。
どこへ行く、著作権法。

2007年5月17日 (木)

「中小企業に配慮」~外国人研修・実習制度~【松井】

Cimg1970
*5/18追記 やっぱり買ってきてくれました!!ありがとう、大橋先生!
1 
 今日は、大橋は日本弁護士連合会関連の仕事で東京出張です。東京出張だと大橋はいつも事務所に「舟和」の芋ようかんをお土産で買ってきてくれます。楽しみです。


 それはさておき。外国人研修・技能実習制度の見直し論が熱を帯びてきました。動きとしては、経済産業省、厚生労働省、入国管理を所轄する法務省、そして長勢法相の私案と三つ巴のような状況のようです。
 朝日新聞の記事(5月16日朝刊)の見出しによれば、
 

「法相、『単純労働者』の容認案」
  厚労省『研修廃止』不当な労働解消
  経産省『制度拡充』中小企業に配慮」
 という状況のようです。

 お!と思うのが、「中小企業に配慮」です。本音のところなんだろうと思います。研修・技能実習制度は、「日本の高度技能を外国人に教えることが」が目的のはずです。なのになぜ、教える側のはずの企業、しかも中小企業への配慮が必要なのか。
 制度の実態は、低賃金の単純労働者を中小企業に供給するという、メリットは中小企業にある、中小企業のための制度だということになります。

3 
 ものごとの解決の方向性は、何事も「三方よし」にあると考えています。
 近江商人の商売哲学、「売り手よし、買い手よし、世間良し」。
 
 これになぞらえれば、「中小企業よし、外国人労働者よし、世間よし」になるかと。
 
 まず第一の価値観は、同じ仕事をしても外国人と日本人の給与に差があるという事実はどう考えても不合理であり、不正義だということです。労働基準法の遵守は、絶対だと思います。
 それを踏まえて、現実として、中小企業は、日本人相手に求人をかけても、相対的に賃金が低い等の理由から、労働者が集まらない、賃金が高くはない単純労働には人は集まらないという実態があります。
 中小企業の人手不足です。
 
 そこでどういう案が合理的なのか。

 現在、日本は政策としては外国人の単純労働者の受入れを認めていません。入国管理局はこの方針のもとVISAの審査などをし、取締りを行っています。
 この政策の転換です。
 「法相、『単純労働者』の容認案」に繋がります。

 では、なぜ今まで、外国人の単純労働者を受け入れて来なかったのか。
 日本の国益を害するから。
 どのような国益なのか。
 日本人労働者の仕事を奪う、という点にあったのだと思います。また、事実の裏付けはないんではないかと思うのですが、外国人の増加による治安の悪化なども挙げているのかもしれません。
 先日、新たにフランスの大統領となった人は、フランスへの移民に対して厳しい非難を繰り返していたようです。
 
 こういった政策を転換し、思い切って外国人の単純労働者を受け入れる。

 外国人もまた、なぜわざわざ日本で働くのか。本国で働くよりは基本的に高賃金を稼げるからという理由がおそらくもっとも多いのかと思います。現状は。
 外国人労働者を保護というのであれば、日本では働けないようにするのが一番です。日本にいなければ搾取されることもない。
 でも、働きたいから日本に来る。

 そこで、実態が労働であるのなら、日本人労働者と同じように法制度上、労働者としての権利を手に入れられるようにするのが外国人にとってもメリットが大きいのではないでしょうか。
 
 どういった職に就くのかは自由です。
 
 自由の状況において、自ら、国内では相対的に低賃金の職に就くというもの自由と選択の結果です。そこにおいて、労働者としての権利を保障されればいいのではないでしょうか。
 
 「研修制度」の仕組みは、「JITCO」という団体が総元締めとしてしきっています。
 「中小企業に配慮」という経産省の本音は、「JITCO」の権益確保でしょう。
 なぜ朝日新聞はそういったつっこんだところまで報道しないのか。分かっているけど書かない、分かっていないから書けない。どちらかは分かりません。
 中小企業の保護っていったって、労働基準法に反した低賃金で「労働させること」は駄目でしょう。やっぱり。不正義。研修生受入企業の全部が全部とはいえませんが、実態は「労働」、しかも搾取といった状況で、「研修」という名でやり過ごしていただけのことなんでしょうから。ずるい、やはり。「偽装請負」とどう違うんだ。実態でなく、名称の問題としてすり替えるところがいやらしい。

(おわり)

2007年5月11日 (金)

ブログ 【松井】

もう5月も10日をすぎて、あっと思ったら今月、大橋も松井もまったくブログ記事をエントリーしていませんでした。

これではいけないと思い、書こうと思うのですが、そんなときに限ってうまく文章がまとまりません。
そうでないときは、お!この問題意識はまとめてブログにアップしておこう、こんな問題提起を書き記しておこう、この写真を載せてみようなどと思うのですが。

相続を巡る問題をもう少し体系的にまとめていく作業をしようと思いつつ、今日はいつも以上に雑文を。


自身はよく人のブログをチェックしています。
お、これは面白いというものを目にしたら「お気に入り」に入れてしまい、何回か見ます。そして、そのまま日々、チェックし続けるものもあれば、いつのまにかチェックしなくなっていくものもあります。

そこで、立花隆の私はこんな本を読んできたではありませんが、こんなブログ、HPがお気に入りに入っているということでここに記してみます。
何の意味があるのか。まあ、人の本棚を覗くような気持ちで。

■ Europe Watch
http://europewatch.blog56.fc2.com/

海外在住の大阪出身の会社員の方のブログ。
海外、特にヨーロッパでの生活事情、仕事事情、時には社会情勢などについて、生の資料を基に触れられていて興味深い。

■ 不肖宮嶋茂樹 儂サイト
http://www.fushou-miyajima.com/

カメラマン、不肖宮嶋さんのサイト。破綻した夕張市の写真がもの悲しい。

■ 悠法律事務所
http://yuu-kamikawa.cocolog-nifty.com/law/

毎日更新!すごい。切り口も鮮やか。

■ 弁護士独立開業マーケティング
http://bengoshidokuritsu.sblo.jp/

自らを実験台にして、赤裸々に若手弁護士の経営実態と経営戦略を公開されています。

■ shiolgy
http://shiology.com/shiology/

著作権専門の塩澤一洋教授のブログです。写真が素晴らしい。文章も暖かい。影響を受けて、デジカメ  RICOH DIGITAL を購入してしまいました。

■ New York Today
http://nylawyer.exblog.jp/

ニューヨークに留学し、現地の法律事務所で働いている弁護士さんのブログ。写真もきれい。中身も、現地情報が多く、興味深い。

■ 岡口裁判官のサイト
http://okaguchi.at.infoseek.co.jp/top.htm

裁判官としてバリバリ働きながら、このサイトの充実ぶりはすごいです。裁判官には確かに時々超人的な人がいますが、まさにその方か。情報感度がすごいです。

■ 私的な事柄を記録しよう 勝間和代さんのブログ
http://kazuyomugi.cocolog-nifty.com/

朝日新聞のBEで藤巻兄弟・弟に変わって登場された勝間さんのブログ。
現在、注目中。

■ ネット生命保険立ちあげ日記
http://totodaisuke.weblogs.jp/

東大在学中に司法試験に合格し、その後修習に行かずに外資系コンサルティング会社に就職、ハーバード大学のMBAを上位10%という成績で卒業されたという目も眩むような経歴の岩瀬さんのブログ。示唆に富みます。生命保険の世界は確かに従前、まか不思議。

と、まあ、こんなところです。


ところで、最近、新しい事件で相手方の弁護士と二人、交渉の場に立ちました。腹のさぐりあいのような会話、かけひき、情報の取り合いと掴ませあい。しかし表面上はまったく穏やかに笑顔での会話。ストレートや変化球の投げ合い、打ち合い。
久しぶりに緊張感を感じ、ゾクゾクして楽しい!と思ってしまいました。やっぱり交渉はこうでないと。
表面上は笑顔で、しかしテーブルの下は大乱闘。
紛争解決に向けて、人と交渉~コミュニケーション できる弁護士さんが好きです。理想。

(おわり)

2007年4月 6日 (金)

「無効」~特定商取引法~【松井】

1 
 19年4月3日、最高裁判所の判断が明示されました。
 NOVAという英会話学校が定める、途中解約の場合の清算規定の合法性に対してです。
 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070403112951.pdf

 結果は、「無効」。


「上告人は、本件使用済ポイントの対価額について、本件清算規定に従って算定すべきであると主張する。しかし、本件清算規定に従って算定される使用済みポイントの対価額は、契約時単価によって算定される使用済みポイントの対価額よりも常に高額となる。本件料金規定は、契約締結時において、将来提供される各役務について一律の対価額を定めているのであるから、それとは別に、解除があった場合にのみ適用される高額の対価額を定める本件清算規定は、実質的には、損害賠償額の予定又は違約金の定めとして機能するもので、上記各規定の趣旨に反して受講者による自由な解除権の行使を誓約するものといわざるをえない。
 そうすると、本件清算規定は、役務提供事業者が役務受領者に対して法49条2項1号に定める法廷限度額を超える額の金銭の支払いを求めるものとして無効というべきであり、本件解除の際の提供済役務対価相当額は、契約時単価によって算定された本件使用済みポイントの対価額とみとめるのが相当である。」

 特定商取引法という法律の49条1項、途中解約権の保障、同条2項1号、解約清算金について法定限度額を定めた規定、これらの趣旨について、最高裁はこう示しました。 

「特定継続的役務提供契約は、契約期間が長期にわたることが少なくない上、契約に基づいて提供される役務の内容が客観的明確性を有するものではなく、役務の受領による効果も確実とはいえないことなどにかんがみ、役務受領者が不足の不利益を被ることがないように、役務受領者は、自由に契約を将来に向かって解除することが出来ることとし、この自由な解除権の行使を保障するために、契約が解除された場合、役務提供事業者は役務受領者に対して法定限度額しか請求できないことにしたものと解される。」
 全く素直な条文解釈だと思います。

 なのに、なぜ、NOVAは途中解約の場合の清算方法について数々の訴訟を提起されながら、強行に自身の清算規定の正当性を主張し続けたのか。
 消費者が絶対に正しいものとは当然、思わないけど、多くの法律家が妥当性を考えればその結論はほぼ明かという条項について、なぜ、すぐに問題を収束させる方向で行動を変えないのか。
 硬直性に陥った企業の強弁に対する最高裁の判断。
 「あなたの言っていることは通らないよ。」

 間違うことは仕方ない。
 自分で判断し、是正していく力が企業を、人を強くする。
 

(おわり)

2007年3月31日 (土)

仕事とは~佐藤可士和さん~【松井】

Cimg1943

 今朝の朝日新聞土曜版では、アートディレクターの佐藤可士和さんが取り上げられていました。
 私の印象では、昨年あたりから、その仕事の結果だけでなく、ご本人がいろいろな媒体に取り上げられ、その職場や仕事のやり方、思いなどが露出するようになっていました。

 今日の記事を読むと、ますます興味を持つとういか、佐藤可士和さんに対する関心が高まりました。
 正直なところ、一分の隙もなく何かにこだわるということはあまりない、むしろ好きではないのですが、矛盾かもしれないけど、些細なことに妙に心惹かれて愛着するということがあります。モノに対して。

 写真は、愛用しているモノたちです。フランスのロディア社のノートパッドに、コンピュノート社のコンピューターの本物の基盤で創られたノートフォルダ、アマダナ社の計算機に、ゲンテン社の筆箱。
 なぜ気に入っているかというと、もちろんブランド名などではなくデザインやそのモノから感じられるセンスに心惹かれるからです。


 心がウキウキさせられるのは、創った人の遊び心、軽やかな感じのなかに思い入れ、細心の心遣いを感じられるモノです。
 写真にうつっているモノたちからは、私はそういった「弾み」を感じます。
 逆にいえば、「考えなし」のモノたちからはマイナスの波長を感じて、嫌な気分になってしまいます。「考えなし」の対極が、私の心を弾ませる「考えあり」のデザインのモノたちになるのだと思います。
 

 佐藤可士和さんが創り出すモノたちからは当然ですが、「考えあり」のまさにとぎすまされた意識を感じます。そしてのその仕事に対する姿勢を語る、掲載されている佐藤さん自身の言葉にはいろいろと印象深いものがあります。

 以下、3月31日付け朝日新聞「be」からの引用です。

 

「僕が『広告は、見てもらえないものだ』と思って、作っているからでしょう。」
  
 「多くの広告は、見てもらえるという前提で作られている。だからどうしても、あれも言いたい、これも入れたいと欲が出る。でもそれ以前に、とにかく目や足を止めてもらわなきゃならないのに。それには広告に、価値を与えなきゃだめです。」

 「突破口は、とことん本質に向き合うことだと思う。そして本質をつかんだら、余計なものは徹底してそぎ落とす。難しいですけどね。」

 「単なる提案にとどまらず、最後に具体的な形、モノまでつくるところは普通のコンサルタントとは違います。そしてそれは、デザイナーにしかできないと思いますから。」

 「僕の仕事は、相手から答えを引き出すことだから。」
 「だから僕は、たくさん質問をして『本当はあなた、こうしたいんじゃないの?』ということをズバッとつかんで、鮮やかに解決したいんです。」

 「僕はむしろ、いろんな人と仕事をすればするほど、どんどん自分の中に知恵が入ってくる。そしてそれが別の仕事で役立つんです。



 仕事とはこういうものかもしれないと思いました。
 裁判官に読んでもらえると思って、本質に欠けたダラダラとした書面を作ってちゃダメだし、相談者、依頼者の方に分かってもらえる、聞いてもらえると思って、分かりににくい言葉で話したらダメだし。

 「突破口は、とことん本質に向き合うこと」

(おわり)

2007年3月23日 (金)

相続税の脱税事件~刑事判決の読み方~ 【松井】


相続税を脱税したということで逮捕された大阪のトモエタクシーの元社長に対する大阪地裁の判決が3月22日、出たようです。

日経ネットの記事から。
http://www.nikkei.co.jp/kansai/news/39018.html

【2007年3月22日】 相続税巨額脱税でトモエタクシー元社長に懲役4年・罰金7億円──地裁判決(3月22日)  実父の遺産を海外口座に隠し相続税約24億9000万円を免れたとして相続税法違反(脱税)罪に問われたタクシー会社「トモエタクシー」(大阪府守口市)元社長、西井良夫被告(62)の判決で、大阪地裁の川合昌幸裁判長は22日、懲役4年、罰金7億円(求刑懲役5年、罰金10億円)の実刑を言い渡した。相続税の脱税事件の罰金としては過去最高とみられる。

 川合裁判長は「極めて巧妙、計画的犯行で反省もしていない」と指摘した。西井被告側は即日控訴した。西井被告側は公判で「海外送金は父の指示で、脱税の意図はなかった」と無罪を主張していた。川合裁判長は、海外送金は西井被告が主導して行ったと認定。他の相続人にも海外口座の存在を隠していたことなどから「脱税目的の財産隠しだった」と述べた。


 相続税法68条によれば、「偽りその他不正の行為により相続税又は贈与税を免れた者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」とあります。そして同条2項によれば、「前項の免れた相続税額又は贈与税額が五百万円を超えるときは、情状により、同項の罰金は、五百万円を超えてその免れた相続税額又は贈与税額に相当する金額以下とすることができる。」とあります。

 この法定刑にてらしてみれば、懲役4年の実刑判決は法定刑の5年に近い量刑であり、相当重いといえます。
 ただ、罰金刑については、相続税法によれば「免れた相続税額・・・に相当する金額以下とすることができる」とあるので、裁判所はしようと思えば、免れたといわれる「相続税約24億9000万円」に近い金額を罰金と課すことも出来たはずです。
 なぜ、免れた相続税額の約3割強の罰金刑なのか。

 公訴事実に対して否認して争っていたようですが、有罪判決でした。
 報道を見る限りでは、亡父に言われるがままの海外送金であって脱税の認識、故意にかけるので無罪という主張を行っていたのではないでしょうか。
 ただ、間接事実としては、亡父が意識を喪失した後も新たに送金を行っていること、他の相続人にも海外口座の存在を秘していたこと、申告にあたり税理士からの助言にもかかわらず海外口座を申告しなかったことといった事実から、故意、違法性を意識しうる事実の認識はあったと認定されたようです。


 刑事弁護人は、どのように争ったのでしょうか。客観的証拠を十分に検討できていたのでしょうか。客観的証拠からすれば有罪の事実認定は無理だといえる場合はともかく、証拠は十分だと思える場合、依頼者である刑事被告人にはその旨の危険性を当然、説明します。ただ、そうであっても本人が故意の不存在、無罪を主張する場合は、最大限の力を振り絞って戦います。
 控訴審でいったいどのように争うのか。おそらく親族の証言、税理士の証言などが証拠としてもあったことでしょう。おそらくこの点の事実認定を争っていたのだと思います。
 
 報道で注意しないといけないのは、有罪の場合、もっともらしく、「●●といった事実から有罪が認定された」と報道され、この事実認定の●●には疑問の余地はない当然のことだと思いがちです。しかし、刑事事件で争う場合、まさに●●の事実認定が証拠でどのようになされるのか、証人の証言は信用性があるのか否か、物証に検察官が主張するような信用性があるのかといったところが争われるのです。
 トモエタクシーの元社長の相続税脱税事件についても控訴審でひっくりかえるかもしれません。
 有罪判決は、確定するまで有罪ではありません。
 一審判決の当不当は判決全文を読まない限り、分かりません。
 ライブドアの堀江社長らに対する判決も、同じでしょう。
 判決文の全文を読まずに、判決の中身、事実認定について当不当の意見を述べることは、弁護士ならしないと思います。

(おわり)

2007年3月22日 (木)

鴨志田穣さん、亡くなる【松井】

070321_125815


 カメラマンでエッセイスト、そして本人は不本意だったであろうけど、何よりも漫画家・西原理恵子さんの夫として有名だった鴨志田穣さんが亡くなったという新聞記事を昨日、見る。42歳、腎臓ガンということだった。


2 
 新聞記事を見て、一人ショックを受けていたところ、携帯電話に友人から電話が入る。「見た?」ということで、毎日新聞を定期購読していた友人から、西原理恵子さんの毎日新聞での連載漫画「毎日かあさん」からの最新情報を教えてもらう。

 訃報を見て、あれっと思ったのは、喪主が元妻・西原理恵子さんと書かれていたことだった。
 それも、友人曰く、鴨志田さんは、アルコール中毒を克服し、最近は、また西原さんとその子ども達と一緒に暮らし始めていたんだといこと。

 確か去年、本屋で、「酔いがさめたら、うちにかえろう」という鴨志田さんの本が平積みとなっているのを見て、あぁ、アルコール中毒を治したんだと思いつつ、「うちにかえろう」という部分で、別れた西原さんや子ども達、「うち」への未練があるんだなあとしみじみとした思いになり、印象に残っていた。
 そもそも離婚の原因も、「毎日かあさん」などを読む限りでは、お酒と暴力、そして潜在的な嫉妬心だったようなので、一緒に暮らし始めていたということについても妙な印象を受ける。ただ、それで最後、「喪主」を努めるというところに西原理恵子さんの情の深さを見た思いがする。



 それにしても、42歳。
 アルコール中毒を入院で克服し、酔いをさまして「うちにかえった」数か月間は幸せだったのだろうか。たぶん幸せにすごしたんだろう。
 「鳥頭紀行~3歩で忘れる」で描かれている「鴨ちゃん」の漫画、写真を見て、知らない人なんだけど、悲しい複雑な思いがこみ上げる。
 でもきっと西原さんは、このこともまたきっと何らかの形で漫画にするんだろうと思う。たぶん性(さが)だから。漫画家の仕事も辛いだろうな。

鳥頭の城


(おわり)

2007年3月 3日 (土)

専門性について その2 【松井】

Rikon

 前記事においてもちょっと触れたように、離婚事件というのは弁護士であれば誰でもできそうな分野といった位置づけがされがちです。
 しかし、実は、違います。

 写真は、司法修習同期の一澤昌子弁護士(大阪)が昨年出版した本です。
 テーマはまさに、離婚。しかも「熟年離婚」です。
 
 出版時に一冊贈呈をうけ、早速読みました。
 
 私自身も確かに、弁護士1年目のときから離婚事件を担当させていただいたりしており、一応の知識、技術は知っているつもりでした(現在は離婚事件については新規受任いたしておりません。)。
 しかし、この一澤弁護士の本を読み、「一澤さんはいつもここまでしていたのか!!」と愕然としました。
 (もちろん、事務所パートナーの大橋も離婚事件の「経験値」は高く、端で見ていて、粘り強くよくやるな!!といつも驚いています。)
 

 弁護士にしてみればおそらく一件何気ない事件、離婚事件においてすら、弁護士の経験値(単なる経験数ではなく、どこまで徹底して調査し、やり込んでいるかということです。)に差がでるのです。
 こういった事実は実は利用する側にはあまり分かりません。

 以前、依頼者の方と雑談していたときにこういう話になり、そのとき依頼者の方が仰ったのは、「他の弁護士さんのことがあまり分からないから、一度頼んだ弁護士との仕事のやり方についてはこういうものなんだと思ってしまうんです。なのでその弁護士の仕事のやり方がどうということは分かりません。」ということでした。
 企業であれば、確かに依頼する件数、相談案件も多いので、弁護士を比べてみることはできるかもしれません。
  
 しかし、離婚や相続といった問題は、人生でそう何度もある問題ではありません。
 だから、他の弁護士ならどうか、依頼した弁護士のやり方が最善なのかどうか、比べようがない、分からないということでした。

 ただ、これからの時代は、個人の方であっても、最初に依頼する弁護士を選別する、つまり相談者・依頼者が弁護士を比較検討する時代は訪れると思います。また、そうでないといけないと思います。
 
 そのためには弁護士の方も自らの情報を公開していくことが求められざるを得ないと思います。
 病院のあり方が変わっていったように、法律事務所のあり方も変わっていきます。

(おわり) 

NPO建築問題研究会~専門性~【松井】

 今日土曜日は、所属する団体、NPO建築問題研究会の月に一度の相談会開催の日でした。

 この相談会では、欠陥建築問題に詳しい一級建築士の先生と弁護士が数名ペア、チームとなって、相談者からの相談を聴きます。
 
 弁護士が法的な視点でアドバイスさせていただくのはもちろんなのですが、建築問題、建物工事にまつわる問題については、やはり一級建築士の先生のものの見方、切り口が加わることにより、よりいっそう具体的かつ実効的なアドバイスがなされるということをいつも痛感します。
 
 弁護士では思いつきにくい切り口が加わり、相談者の方も次にとるべき具体的な行動が見えてきます。


 ところで、じゃあ一級建築士の先生であれば誰でもそういった鋭い切り口を持ちうるかというと、どうもそうではなさそうです。
 欠陥住宅という問題について数多くの事例に当たられている建築士の先生だからこそ見える切り口というのがあるということです。

 一級建築士と弁護士は、仕事としてはそれだけで専門家の仕事になりますが、その中でもさらに専門性というものが生じてくるのは当然だと思います。
 
 一級建築士だから建物のどんな問題にも対応できるわけではない。構造計算の問題、瑕疵の問題、住宅、ビルなど得意分野は区分されるようです。

 弁護士も同じです。特許事件、医療過誤事件、欠陥住宅・建築瑕疵といった分野があります。さらには、弁護士ならその多くは誰でも一度は経験しているであろう離婚事件や相続事件、交通事故といった事件であっても、その事件の数をこなしているか否か、「経験値」の差がものをいいます。
 
 ただこういったことは専門家に相談をする相談者、依頼者の方には分かりにくいことです。建築士、弁護士というだけで「専門家」となりがちなために、その専門の中でも専門は何かといったことまでなかなか分かりません。
 弁護士の方でも、特定の分野が「専門」であると名乗りすぎると、逆にそれ以外の分野の事件に門を閉ざすこととなるのであまり好まない傾向があるように思います。そこで、「得意分野」という言い方が登場します。
 ただ、病院が手術数などを公表したりするように、利用する側に対してもっと弁護士の情報提供をという流れになるのは確実であり、弁護士の事件の具体的な「経験値」が数値化されていくのでしょうね。
 利用する側にとってはいいことだと思います。
 ただ、そうなると事務所、弁護士の個性、特性というものがない、見えにくい事務所は経営難になっていくんでしょうね。ただ単に弁護士の人柄、相談者との相性といったものではなく、まさに弁護士の能力が問われる、プロ中のプロか否かの能力の有無が問われる時代がすぐそこに来ているのだと思います。
 
(おわり)

より以前の記事一覧