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2010年1月23日 (土)

「節税」の内容【松井】

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*年末、ビールと大橋弁護士。


 奥村佳史さんの「法人税が分かれば、会社のお金のすべてが分かる」(光文社新書)を読みました。
 
 

 非常に面白い本で、楽しく読めました。
 身近な事案から説き起こして、法人税法の趣旨について触れています。
 くだけた文章でありながら、次のようなことに触れられた骨太な本です。
  

法人税の納税義務者
  法人税の課税標準
  法人税の税額計算
  繰越欠損金制度 
  受取配当の益金不算入
  棚卸資産と売上原価 
  減価償却 
  役員給与
  交際費、寄附金、使途秘匿金
  貸倒損失と貸倒引当金
  資産の評価損
  圧縮記帳などの節税対策
  申告と納付

 こんな内容について、「たくあんで法人税を納めることができたなら」「赤字でも法人税」「みずほ銀行はなぜ法人税を払わないのか?」「投資会社社員は電話が怖い?」「決算日、肺が凍りそうです」「リゾート施設を買ったなら」「名ばかり管理職の次は、名ばかり役員」といった章のタイトルで、各章を書き出されています。


 そのため、読み物としても非常に読ませる内容で面白いのですが、著者の骨太の意見、視点も随所に見受けられ、ほれぼれとします。
 私が、やはりそうだよねと腑に落ちたのは、節税の点に対する著者の言葉でした。
 
 217頁
 

「本当に有効な節税対策はあるのか」
という箇所です。
 
「私が節税対策に求める効果は次のとおりです。
  (1) 課税の繰り延べではなく、永久に税負担が減少するものであること。
  (2) 会社が余計な支出をしなくてもいいもの
  (3) 会社の損益計算書に損失が計上されないもの 」

 

「皆さんがよくご存じの節税対策は右の条件を満たしますか?
  例えば、慰安旅行に出かけるという節税対策は、(1)を満たしますが、(2)と(3)を満たしません。
  乗用車を購入する方法も同様です。」

  そうしたうえで、一つだけこれらの要件に当てはまるものが一つだけある、と紹介しています。
  そして。
 

「実はこの方法、上場企業ではほとんどの会社がご存知です。けれど中小企業にはあまり知られていません。その理由は簡単です。」

 
「このような節税プランを紹介したとしたとしても、ビジネスとしてうまみのある業者が存在しないためです。」
 「つまり、節税対策というのは色々とあるけれど、これを商材として販売した場合に儲かるというものだけが世の中に広まるのです。そうでない節税対策はいくら有効なものであっても、宣伝してまわる人がいないため、世の中に広まっていかないのです。」

 
  そして次にこのように述べています。
 
「税理士事務所の中にも、生命保険の代理店を営んでいるところがあります。生命保険は節税プランとして薦めるけれど、自己株式買取は薦めない。こういった税理士さんがどういった思考で動いていらっしゃるのかはわかりません。」

 
3 
 弁護士業においても、本当に弁護士一人で出来る仕事というのは限られています。
 依頼者の方に、建築士さん、税理士さん、会計士さん、不動産業者さんなどを紹介し、これらの別の専門業種の方々と共同しつつ仕事を進めることもあります。このようなとき、キックバックのような類の金銭を他の業者から受け取る弁護士はまずいないと思います。
 依頼者の正当な利益のために働くという大前提からすれば、第三者に対して依頼者にお金を使わせることによって、その第三者からお金が入り自分の懐が潤うような構造は、依頼者の利益のためにといいながら、実際には自分が儲けを手にいれたいがためにという構造にならないといはいえないからです。
 それでも、いや、客観的に依頼者の利益になっていれば何も問題ないんだといったことを述べられていた某業種の方の意見を目にしたことがあります。
 正直なところ、驚きました。
 客観的に「公正」であるかどうかなんて、判断は困難です。
 そこでまず大事なのが、「公正らしさ」、「らしさ」という構造、仕組みを守ることです。
 こういった考えから定められている法律もいくつかあります。
 
 奥村佳史さんも、節税プランと生命保険を例にとってこのことを述べているのだろうと思います。
 これはたぶん、専門家としてのプライドの問題なんだろうと思います。
 とにかく常に、依頼者の利益を最優先させ、依頼者の利益だけを考える、自分の利益は結果論として出てくるもの。それが弁護士の姿だと思います。
 ある先輩弁護士が仰っていた、事件処理の際に気をつけているということ。
 「依頼者に出来るだけお金を使わせないこと。」
 
 そのとおりです。なので、実は、不動産鑑定士さん、一級建築士さん、税理士さん、公認会計士さん、不動産仲介業者さんなどを紹介し、それらの方々の協力を得ざるをえないときは非常に心苦しいというのが本当のところです。
 私が兼ねることが出来ればいいのですが、そんな能力もなく。
 また、裁判において裁判所は、第三の専門家の意見は一応、尊重するということが多々あるのも事実であり。なんともまあ、難しいです。
 紛争解決において、他者の力を借りる限りはお金がかかります。
 お金を節約しようと思えば、正直なところ、他社の力を借りずに自分一人でことに当たるということになります。

(おわり)
*昨年。西表島を旅行中の松井の姿。こんなもんです。。。基本、ジーンズ。
 
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