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2009年9月24日 (木)

相続法と計算~遺留分など~ 【松井】

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 ブログの過去の記事を見て頂くと分かるように、私は個人的にも「相続」事件が大好きです。
 なぜか。たまたま弁護士1年目のとき、他の弁護士さんが遺産分割事件の審判まで担当された事件の不服申立の事件、即時抗告審を担当したり、公正証書遺言の作成を担当していたところ残念ながら適わずに遺言者の方がお亡くなりになってしまい、そのまま遺産分割事件に突入し、遺産の範囲から問題となり、あしかけ10年、調停、訴訟、調停、訴訟となってしまった事件を担当した影響が大きいと思います。

 即時抗告審からの担当で学べたことは、本当に相続の0~10まで基本的な事柄を総ざらえできたということでした。
 家庭裁判所での審判書に対して、そのアラを見つけ出す作業です。しかし、弁護士1年目。相続の分野は実は司法試験でも試験にほとんど出ないところなため、実務的なことは全く知りませんでした。
 そのような状態で、審判事項とは何か、訴訟事項とは何か、財産を評価するにしてもいつの時点でどのように評価すべきと考えられているのか、しらみつぶしにチェックしていきました。まさに弁護士1年目だからこそ出来たような時間をかけた仕事っぷりでした。
 そして公正証書遺言の作成とその後に続く、調停申立て、取り下げ、遺産の範囲確認の訴えなども同じです。結局、2回訴訟をして、2回とも最高裁までいきました。そして3度目の正直で、ようやく調停成立です。その間、特別受益だ、持ち戻しだ、なんだと確認しました。これは相続事件ではよくあることですが、被相続人に収益物件があり、この収益物件に関して、賃貸借ということで種々の問題が生じ、さらにはこれもよくありがちですが、被相続人が各種不動産を取得するに際し、結構な額の借入金で建設資金や運用資金を賄っていたため、負債も相当額あったという、次から次へと周辺の事柄も相続に絡んで問題となるという場合でした。
 また私としては幸運なことに、この間さらに、何件かの遺留分減殺請求訴訟や遺言無効確認の訴えを担当させていただく機会がありました。
 こうして、相続分野について、四方八方からいろいろな経験をさせていただくことができました。
 そして法的にもまだまだ未開拓な、やりがいのある分野だということが分かると同時に、相続事件というのは、お亡くなりになられた被相続人の方の一代記に接するものだという思いになりました。ご自身でそれだけの財産を築かれた方、あるいは代々の財産を守られた方がどのようにビジネスを行い、配偶者をもち、子をもち、行きて来られたのか。その40年、50年に渡る歴史に接し、この点で興味深く思うと同時に、畏敬の念を禁じ得ません。
 このように、過去30年、40年前の事柄が問題になりえて、壮大な思いで仕事をさせていただくのは相続事件くらいではないかと思います。


 でも、弁護士によっては相続事件があまり好きではないという人もいます。
 なぜか。
 当事者が複数であって、利害対立状況が複雑というのもありますし、また結局、過去のしがらみにもとづく兄弟げんかや後妻と子ども達の親子げんかじゃないかという見解もあるようですし、親が遺してくれたものに何で取り分でいがみあうのか、さらには計算が複雑でよくわからないから好きになれないという点もあるようです。
 
 この点、言い得て妙な表現を最近、見かけました。法学教室09年10月号の「家族法ー民法を学ぶ第19回」「具体的相続分の決定『だってもらってたじゃない!』(神戸大教授 窪田充見)の中の言い回しです。

 

「ところで、個人的なことになりますが、おの具体的相続分の計算という問題、私は、比較的好きです。計算ばかりであまり好きではないと言う諸君も多いのではないかと思いますが、そうした計算の前提となるしくみの中には、相続をめぐる基本的な問題が見え隠れしていると感じられるからです。」
とあります。
 まさにそのとおりです。

 さらにはこのような表現も。
 

「私の印象では、相続法の問題は、各所によくわからない深みが潜んでいる。」

 そうなんです、そうなんです。

 だからこそ、平成10年以降においもて、相続の分野では未だなお注目の最高裁判決が出て続けているのだと思います。
 突き詰めて考えると、この場合、どうなるんだろうという問題が今なお結構あります。 
 以前にも述べたように、こういった問題は従前は、最高裁にいくまえにどこかで当事者間でおりあいがついていたのだろうと思います。ところが、最近ではやはり徹底的に裁判所の判断を求めるというところに来ているのではないかと思います。
 なお、当事者が複数で複雑に利害がからみあうという状況も、私は実は好きです。利害関係が単純ではないだけに、どこかでダイナミックな解決に至る要素、チャンスが多いからです。
 以前、ある家裁の調査官が口にしていました。
 

「相続事件(遺産分割)は、アイデアですよ。」

 そのとおりだと思います。


 ところで、判例タイムズ07年11月15日号での「遺留分減殺請求訴訟を巡る諸問題」では、裁判官ら共同で執筆しているのですが、次のような表現で冒頭はじまっています。
 

「遺留分減殺請求訴訟は、複雑困難な訴訟類型の一つとされており、遺留分侵害額、減債額等の算定が複雑であるほか、論点や判断要素も多く、個々の論点についても必ずしも実態法の解釈が一義的であるとは言えない。」

 「このため、当事者双方がこれらの論点等について十分に理解せず、また、共通認識を持つことなく、主張立証を行って、審理が混乱する場合も少なくない。」

 つまり、弁護士が「遺留分」について理解しないままに適当に訴訟活動をしていることが多いですよ、ということです。
 
 なぜか。やはり「算定が複雑」であり、「論点や判断要素も多く」、「必ずしも実態法の解釈が一義的であるとは言えない」からです。
 思うに、そもそも問題、論点があることすら気づかずに訴訟活動、代理人活動をされている場合もあるのではないでしょうか。
 その場合「共通認識を持つことなく」、交渉、訴訟活動が行われます。
 一番の被害者は、まさに依頼者、当事者ではないかと思います。

 でも逆に、複雑で困難な問題だからこそ、紛争解決を担当させていただく弁護士としては、非常にやりがいを感じ、面白いと私は思うのです。
 遺留分減殺請求にしても、法律上は、民法1028条で

「兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。」
として、
「一 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の三分の一
 二 前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の二分の一」

とあります。
 だから、私は相手に「三分の一」、「二分の一」請求できるといったことにはなりません。

 ここからがスタートです。
 1029条1項には、遺留分の算定の規定があります。
 

「遺留分が、被相続人が相続開始のときに有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して、これを算定する。」

 とあります。
 さらには、民法は1044条まで遺留分に関する規定をおいています。
 遺留分、遺留分と言われていますが、実際に、じゃあ、誰に対して、いくら、何を請求できるのかというと、事案に応じた計算をせざるをえません。
 
 これにやりがいを感じられるかどうかだと思います。

 知識と経験と、そしてアイデアが相続事件だと思います。
 

 ちなみに、先の判例タイムズの特集の見出しだけひろっておきます。
 これだけのことが問題になりうるのが遺留分なのです。
 計算式に当てはめて、ちゃっちゃと算出できる代物ではありません。
 
 公正証書遺言の作成件数が増えているようですが、遺言作成数の増加と共に、遺言無効確認の訴えのみならず、遺留分減殺請求訴訟も増えてくるのではないかと予想されます。 現に私の方へのご相談でも、遺言を巡ってのご相談が増えています。
 検討順位は、まず、無効ではないのかどうかをしっかり検討します。カルテや介護施設の記録が重要です。
 そして次に、遺留分を侵害する内容か否かが検討されます。このとき、相続時の財産だけではなく、生前に渡しているものなどがないかまで検討しなければなりません。
 実は、方向性を決めるまでにかなりの調査作業を要するのが、相続です。


以下、判例タイムズ07年11月15日号、12月15日号


 

第1 遺留分減殺訴訟の意義・訴訟物等
  1 遺留分減殺請求訴訟の意義
  2 遺留分減殺請求訴訟の訴訟物

 第2 遺留分減殺請求の当事者
  1 遺留分減殺請求権者
  2 相手方
  
 第3 遺留分及びその侵害額の算定
  1 遺留分侵害額の算定法法
  2 算定の基礎となる財産について
  3 当該相続人の遺留分の割合
  4 当該相続人の特別受益額
  5 当該相続人の純相続分額
  
 第4 遺留分減殺請求権の行使
  1 遺留分減殺請求の意思表示
  2 減殺の方法
  3 遺留分減殺請求の競合
  4 権利の濫用
  
 第5 遺留分減殺請求権の効力
  1 遺留分減殺請求権の行使と法律関係
  2 遺留分減殺請求権の行使により遺留分権利者に帰属する権利の性質
  
 第6 価額弁償
  1 価額弁償の制度について
  2 価額弁償と減殺請求の効果
  3 価額弁償の方法
  4 価額弁償の評価基準時
  5 価額弁償の抗弁を容れる場合の判決主文
  6 価額弁償の終期
  7 贈与又は遺贈の目的物が第三者に譲渡された場合
  8 一部の価額弁償の可否
  9 贈与・遺贈が未履行の場合

 第7 遺留分減殺請求権の消滅 
  1 放棄
  2 時効


(おわり)
 
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