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2009年9月15日 (火)

親族会社にありがちかも~取締役会の形骸化~【松井】

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 自分用にメモです。親族会社というわけではないのでしょうが、株式会社の代表取締役が、法律上、取締役会決議が必要なのに、決議なく、自分だけの判断で対外的に第三者と取引をしちゃったというとき、第三者は、その取引は無効だと主張できるかどうかという問題です。
 最近、最高最判例が出ました。
 最判二小平成21年4月17日判決(判例時報2044号142頁)です。
 

 事案はというと簡略化すると次のようなものでした。
 A社がY会社から、利息制限法を越える利率でお金を借りて返済しつづけていたところ、実は2億円ほどの過払いがあり、不当利得返還請求権を有しているということが分かりました。
 そこで、A社は、他の債権者であるXに対し、この2億円の債権を譲渡しました。平成16年12月のことです。
 しかしながら、実はこのA社は、同年5月、約20億円の負債を抱えて、既に事実上倒産している状態でした。
 つまり、A社には、この2億円の過払金返還請求権以外にはめぼしい財産はなかったのです。
 ということは、会社法の規定からいけば、この2億円の債権の譲渡は、会社の「重要な財産の処分」にあたり、取締役会決議を要するとされるものでした(会社法362条4項1号)。しかしA社の代表取締役は役会決議を経ずに、Xにこれを譲渡し、Xも、これがほぼ唯一の財産であること、役会決議がないことも知っていました。
 その後、XがYに対し、2億円の返還請求訴訟を提起しました。Yは、あんたは債権を譲り受けたといっているが、譲渡人のA社において有効な債権譲渡の手続が執られておらず、そのことをあんたは知っていたんだから、A社⇒Xの債権譲渡は無効で、あんたに債権はないよと反論しました。
 原審の東京高裁は、このYの主張を認め、X敗訴判決となりました。


 しかし最高裁は、ひっくりかえしました。
 争点は、A社は無効主張をしていないのに、第三者のYが無効を主張することが出来るか?というものでした。
 面白いです、法律。絶対的無効と相対的無効という考え方です。
 絶対的無効というのは、誰との関係でも無効といこと、相対的というのは、この人とこの人との間では無効だけど、他の人との間では有効という考え方です。

 で、最高裁はというと、相対的無効と考えました。
 会社法362条4項がもうけられた趣旨からの帰着です。

 

「会社法362条4項は、同項1号に定める重要な財産の処分も含めて重要な業務執行についての決定を取締役会の決議事項と定めているので、代表取締役が取締役会の決議を経ないで重要な業務執行をすることは許されないが、代表取締役は株式会社の業務に関して一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有することにかんがみれば、代表取締役が取締役会の決議を経ないでした重要な業務執行に該当する取引も、内部的な意思決定を欠くにすぎないから、原則として有効であり、取引の相手方が取締役会の決議を経ていないことを知り又は知り得べかりしときに限り無効になると解される(最高裁昭和36年(オ)第1378号同40年9月22日第三小法廷判決・民集19巻6号156頁参照)。」

 「そして同項が重要な業務執行についての決定を取締役会の決議事項とさだめのは、代表取締役への権限の集中を抑制し、取締役相互の協議による結論に沿った業務の執行を確保することによって会社の利益を保護しようとする趣旨に出たものと解される。」

 
「この趣旨からすれば、株式会社の代表取締役が取締役会の決議を経ないで重要な業務執行に該当する取引をした場合、取締役会の決議を経ていないことを理由とする同取引の無効は、原則として会社のみが主張することができ、会社以外の者は、当該会社の取締役会が上記無効を主張する旨の決議をしているなどの特段の事情がない限り、これを主張することはできないと解するのが相当である。」


 感覚的にも妥当な判断だと思います。
 A社と、その取引の相手方X、そして第三者にたるY、それぞれの利害関係の調整が図られているように思います。
 
 このように、本来、取締役会の決議事項だけど、たとえば今回のA社は、行為時、事実上、代表取締役しかいない状況だったのだろうと想像できるし、そうでなくても、親族会社のような場合、そこまで厳密に手続をとっていないことはままありうる話しであって、その度に、相手方以外の人から、「無効」だといわれたのでは取引の当事者はたまったものではないかと思います。
 会社がそれでいいって言っているんだから、いいじゃん、といったところでしょうか。
 よくありそうな話しなのに、今頃、最高裁判決が出ているというのも不思議です。
 
 ただ、まあ、親族会社とはいえ、手続は手続としてきちんとしておいたほうが余計な紛争を招かないと言う意味では、適切だと思います。
 面倒でも、株式会社を経営する以上は、最低限の会社法の手続を押さえておかないと、いざ、相続紛争などが起こったときに足下をすくわれかねないので注意、勉強しておくべきだと思います。

 経営者って、大変です。
税法はもちろん、会社法民法労働基準法といった法律、さらには簿記会計管理会計も知っておく必要が本来あります。
 ここらへんを適当にやっていると、ハッと気づいたら目の前に破産法の適用が待ち受けているということにもなりかねないので気をつけてください。
(おわり)

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