裁判員裁判の法廷【松井】
1
ついに裁判員裁判として刑事手続が行われて行きます。
数年前から、検察庁、裁判所、弁護士会の三団体が協同して、模擬裁判というのが実行されてきました。
一定のシナリオに基づいて、実際の裁判員裁判のように手続きをすすめて判決に至るというものです。
裁判員役は一般公募だったり、検察官、裁判官、弁護士、あるいは新聞記者の人が務めたりなどなど。
法律が施行されたいまもなお、模擬裁判が実施されています。
2
大橋は自ら名乗りを上げて、先日、模擬裁判の弁護人役をつとめてきました。
公判前整理手続から実際にやっていきます。
そして先日、法廷での場面となりました。
使われた法廷は、大阪地方裁判所内にある実際に裁判員裁判で使われる法廷でした。
1階にあります。
弁護士は傍聴ができるというので、ほんの30分ほどでしたが傍聴をしてきました。
3
初めて見た、裁判員裁判で使われる本当の法廷。
裁判官席には3名の黒い法服の裁判官だけではないというのが新鮮でした。
また、各テーブルにはモニターが備え付けです。
ずらっと並んだ裁判員役の人々。
私が傍聴したのは、検察官からの冒頭陳述からでした。
検察官は本当の検察官で、男女ペアです。
しかもさわやか系美男美女。
女性の検事が立ち上がります。
最初の一言に、ひえーっ!となりました。
「皆さん、おはようございます。」
検察官が、朝の挨拶をしています。普通のことなんだけど、愛想のいい検察官なんてそうそういないので、この挨拶に驚き!
そして始まった冒頭陳述。
難しい言葉を普通の分かりやすい言葉に言い換えていきます。
なるほど〜と思いました。
気配りを感じます。
4
一方、弁護人側。
これも張りのある声で明瞭に、伝えたいポイントだけを聞いて分かるように伝えています。
ぼそぼそと何をしゃべっているのか分からない、書面にかいてあることを声に出してぼそぼそ言っているだけのものとは違いました。
このとき対する弁護人側の主任弁護人役の方は、年配のどっしりした感じのベテラン男性弁護士。
若い女性検察官というのとは対極にあって、なかなか面白い印象をうけました。
対応して見た目を見ると、どっしりした感じの方が安心感を与えるように思えます。
若ければいいというものではないなと。あくまで与える印象についてのものですが。
5
で、裁判長。
あっ! 以前、私が私選で刑事弁護を担当したときの3人の裁判官の部長だ!という方でした。
あのとき、最初、冴えない感じだなと思っていたのですが、結果オーライで、事実認定を争った事件でこちらの主張を認め、強盗殺人未遂から傷害と窃盗に認定落ちを認めてくれた裁判官です。
あのときも被告人は、自白調書を検察官にしっかりととられていましたが、法廷での供述を認めてくれました。
で
、あのときの裁判長はどんな風に振る舞うのかと傍聴していると、「あまり変わってないじゃん」というものでした。
分かりやすく説明しようと言葉をいっぱい使っているのですが、言葉多すぎて、だんだん眠気を催しました。
6
ここで休憩になったので事務所に戻りました。
傍聴しながら思ったこと。
弁護人の立場からすれば、判断する人が3人じゃない安心感、裁判官だけじゃないという安心感がありました。
もし事実を争うような場合、これだけの人数がいたら、以前の3人の裁判官だけのときよりは弁護人の主張に耳を傾けてくれる可能性が高くなるのではないだろうかということでした。
以前、検察官の方と話をしていたとき、裁判員裁判になったら量刑は軽くなっていくだろうといったことを仰るのを聞き、そういうもんかなとしか思っていなかったのですが、今回、模擬裁判ですが、法廷の空気を感じてみると、確かに、刑事手続において、検察官 VS. 弁護人/被告人 という対立関係からしたら、今まで、裁判官はどちらかというと弁護人/被告人に対して厳し目であったのではないかと思えるところ、裁判官以外の人が裁判に加わるということは、どちらかというと弁護人/被告人にとってメリットかなという風に感じました。
裁判員裁判、たぶん一番、激変を強いられるのは裁判官だと思います。
そういう点では、これは期待のもてる制度かなとは思います。
ただ、いずれにしても裁判の目的は何なのか、刑罰は劇薬であるという認識が不可欠だとは思います。
冤罪が許されないのはなぜなのか、窃盗事件の被告人に死刑が科せられないのはなぜなのか。
刑事裁判は劇薬処方のための手続きです。誤審は許されないという価値観が大前提です。
そのために「刑事訴訟法」という厳格な手続きが要請されています。人類の歴史上の一つの知恵の所産です。
そこに一石を投じる裁判員裁判制度。制度は目的のための手段です。刑事裁判の目的は何なのか。
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