欠陥住宅訴訟の被告〜訴訟戦略〜【松井】
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消費者法ニュースNO.79 2009年4月号で紹介されていたのでここにメモ代わりに。
和歌山地裁平成20年6月11日判決です。
「欠陥住宅の建替費用損害」とあります。
「海岸寄りの埋立て造成地に建てられた木造軸組み住宅が、地盤の状況を調査することなく漫然と支持地盤に立脚しない不相当基礎をつくられたために不等沈下したもので、取り壊し建替えるほか相当補修方法がないとして、・・・新築代金3000万円を大幅に上回る損害賠償が認められた事例」とあります。
大阪高裁に控訴されているのかどうかは不明です。
原告の訴訟代理人は、欠陥住宅訴訟で著名な澤田和也弁護士です。
で、ふーんと思ったのは、被告が3名だということ。
どういった3名なのか。
2
主文は、被告らは、原告に対し、連帯して3828万1000円を平成7年5月8日から支払済みまで年5分の利息もつけて支払えというものでした。
判決が20年6月なので、13年間分の利息だけでも、2500万円ほど発生しています!
で、こんな法的債務が認められた被告は誰なのか。
設計施工請負会社、担当建築士、そして請負会社の代表取締役個人でした。
注文住宅において、請負会社や設計施工管理を頼んだ設計士を被告として責任を問うことはよくあります。
本件では、請負会社の代表取締役個人の責任追及もしていたわけです。
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なぜか。
だいたいにおいて、責任追及するといっても会社には資産がない、でも社長個人には資産がある、あるいは会社だけだと破産して逃げられてしまうといったことが往々にしてあるからです。
で、理屈はどうか。
「被告Cは、被告会社の代表取締役として、欠陥のない建物を建築して損害賠償義務等を負うことのないようにすべき忠実義務を負っているというべきである。
しかるに、被告会社は、建築基準法令に適合しない本件建物を施工したものであり、建設業者にとって、建築物の設計、施工にあたり、建築基準法令を遵守することは、基本的な義務であるから、被告会社がかかる義務に違反したことについては、被告Cに重大な任務懈怠があったと認めるのが相当である。
したがって、被告Cは、原告に対し、旧商法266条の3第1項に基づく損害賠償責任を負うというべきである。
また、被告Cは、被告会社の代表取締役として、建築基準法令に適合する建物を建築し、顧客に提供すべき義務を負っているにもかかわらず、これを怠った過失があるから、民法709条の不法行為責任も負うというべきである。」
そうです。契約上の責任だけでなく、契約がない場合についての規定である不法行為責任も問うていたのです。そして裁判所はこの原告の主張を認めて、上記のように判示しています。
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法的な責任を追及するといっても、実質論、現実論として誰を被告とするのか、またその際、法律論として、時効や除斥期間等との関係でどういった法律構成を立てるのか。
大事な訴訟戦略となります。
たぶん弁護士によっては、上記の場合、代表者個人までは訴えない人もいるのではないかと思います。
法人と個人の概念にとらわれて。
でも、実質論、現実論からすれば、会社だけ訴えてももぬけの殻で、勝訴判決をもらってもそんな判決書はただの紙っきれで、実質的な被害回復、損害の金銭賠償はまったく得られないということもありうる以上、誰を被告とすべきか、そして誰を被告と出来るのかというのは大事な事柄であって、ここが弁護士の頭の使いどころだと思います。
(おわり)
★
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