比べるからよく分かる 【松井】
*中之島のバラ園。いったいいつ工事が終わるのでしょうか・・・。
1
分譲マンションの理事長をしていますが、以前、述べたように、管理会社のよしあし、業者のよしあしについては、比較の視点があるかないかが重要だと思います。
仕事柄、過去、分譲マンションの管理会社、あるいは理事会、住人などに関する事件を何件か担当させてもらったことがあったので、ひどい管理会社なども見ていますし、もちろん良心的な住人に親身な管理会社というのも見ています。
ただ、わたしのマンションの他の理事の方などはもしかしたら、比較の視点がなくて、今のレベルがどうというのがよくわからないかもしれません。
つまりは、比べて、初めて自分が相対するその対象の位置づけ、評価が出来るということです。
2
工事、業者などについては、相見積が大事だ、相見積をとるのは当たり前だとはよく言われることです。
相場、標準といったものが、単独ではよく分かりません。それが、比べることによって奥行きが見えてくるのです。
で。
たぶん、弁護士や医師もそうなのだと思います。
最初に会ったその人がベストなのかどうか。
分かりません。
なかなか比べられないからです。初めて弁護士に相談するとなったらなおさらです。
最初、紹介を受け、相談し、依頼したらその人に頼むのが当たり前、他の人に改めて相談すると申し訳ない、悪いという感情が働くのだと思います。
でも、医師の世界では、セカンド・オピニオンというものが取り入れられる、受入れられるようになってきました。
実は、弁護士の世界も実はそうなってきているのを実感します。
初めて相談するかのように相談に訪れられた方が、実は弁護士への相談は3人目だったということがありました。
やたらと関心し、よく分かったと感動した素振りであり、おかしいなと感じていました。中身ではなく、ホワイトボードを使って手続きについて説明をしたり、先の先の先まで説明したり、証拠の評価について説明したり、説明を受けるというそのことそのものに感動している様子だったからです。
別れしなに訊きました。
苦笑いをしながらおっしゃいました。実は、弁護士3人目の相談だったと。他の前の二人の弁護士と、私の説明の仕方、内容などについて比較されていたのです。
これを不愉快に思う弁護士さんもいるかもしれませんが、わたしは別に構わないと思っています。
なぜか?
私が相談者であれば、たぶん同じだからです。相談者が弁護士を試すこともあると思います。
知人から紹介を受けた弁護士さんでも、不審に思う、いまひとつ信頼できないと思ったら、別の弁護士さんにあたってみます。
それが、当たり前だと思います。選べばいいのだと思います。自分が信頼できると思える弁護士を。あわないと思えば、無理にそこで依頼することもありません。
弁護士も、その能力、人柄が比べられる時代なのです。
そのことを肝に銘じておかないと。
弁護士が相談者、依頼者を選ぶのと同じように、相談者、依頼者も弁護士を選ぶのです。
「羊たちの沈黙」という映画であったような。「闇を覗くものは、闇からも覗かれているのだ」、と(ちょっと違う?)。
3
弁護士3年目くらいのとき、勤務事務所で既に担当させていただいていた事件の依頼者の方が顔をあわせるなり言ってきました。
「先生が言ってたとおりでしたわ! 市役所の無料法律相談の弁護士さんも同じことを言ってましたわ!」
無邪気に言われ、「ああ、そうですか。そうでしょ。言ったとおりでしたでしょ。」と言って、苦笑いをするしかありませんでした。
言った説明を信用されてもらっていなかったんだとがっくりしましたが、でも、そのことをさらっと言ってくれるだけまだ信頼関係はあるんだと思いました。大阪、大好きです。率直です。豪速球です。
弁護士の使い方なんで、それくらいでいいんだと思います。
依頼者が、弁護士の機嫌、顔色を見て、言いたい事もいえない、気を遣って訊きたいことも訊けないなんて本末転倒だと思います。
ただ、まあ、人間なんで、不躾な言動をとられると普通に頭にくることはあります。それが、依頼者であれ、相手方であれ、弁護士であれ、裁判官であれ。ただ、まあその感情をどうコントロールし、行動にどう反映させるかはまた別の問題。
自分が相談、依頼をする場合でも、耳に心地いい話だけをして、リスクの面を説明してくれないのはそれはそれでまた疑問が沸き起こります。
有利な点、不利な点、証拠の状況、これから取り得る方策、手段、相手方の行動パターンを見据えての今後の見通し、特に、最悪の事態はどのような事態か。
やっぱり説明ですね。
で。
判断、選択をするのは、自分。弁護士は所詮、代理人です。
結果を背負うのは自分です。
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