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2009年4月17日 (金)

法人と個人〜取締役の責任〜 【松井】

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 法人と個人って、法律上は「別人格」という言い方をされます。
 これを利用して、会社をつくって、個人が責任を負わないようにする。この点、このように責任を分離することを認めることには積極的な意味があったりします。
 なんの為に法人制度が作られているのか。
 株式会社なら簡単です。株式という形でひろく出資を募り、お金を集めて、それを元手に商売をし、利益を生み出し、株主には配当をして利益を還元する。取引行為はあくまで会社が、法人格をもって取引の主体となり得るようにする。
 そうすることによって個人のお金と会社のお金を分離する。
 そうすることによって、万が一、会社が背負ったその負債を返済できない状態になったときでも、個人の方、出資した人、運営していた人には原則、とばっちりがいかないようにする。それが、法人と個人は別人格、ということです。
 会社を潰せばそれで、おわり、です。法律上は。ただ、実際は、経営者が会社の借入金の連帯保証人にならざるをえず、なっていたりするから社長も破産、というケースがほとんどなだけで。
 会社にお金を貸していた人、売掛金のある取引先、その会社に出資していた人、みんなの債権は全額戻ってくることはありません。破産手続きにおいて配当が数パーセント出ればましなほう。


 こういった法人の人格の制度は、これを悪用するという人も当然、出てきます。
 たとえば、いまのは、個人/法人というものですが、法人/法人というパターンも出てきます。すなわち、会社運営をしながら、自分の会社にとばっちりがこないように別法人を作る、あるいは事実上、支配して、汚いことは別法人にやらせるというやり方です。
 そして何かトラブルがあったとき、自分や自分の法人Aは何も関わっていません、悪いことをしていたのは別法人のBなんです!というやり方、逃げ方です。


 裁判所がこんなの認めるわけがありません。
 ただ、こういうことを考える人は頭のいい人で、しっぽをつかませないようにいろいろと工夫しています。親族でも何でもない人をB会社の代表取締役に据えたりして、事実上のB会社としての活動の痕跡を残します。
 何かあっても、B会社がやったことだ、悪いのはB会社の代表取締役だ、と逃げます。
 
 が、しかし。
 司法修習中、東京地検の特捜部で脱税事件などを担当されていた検察教官が仰っていました。
 「脱税には『たまり』が必ずある。」
 ごまかすようなことをしても、それはあくまで「ごまかし」なので、必ずどこかにその「ごまかし」の痕跡としての「たまり」が出てくるという話です。
 書類でも、人の証言でも。その人の行動の結果がどこかに現れて、「たまり」として形になります。

 これを探し出し、収集し、証拠として法廷に出す。
 証拠から見えてくる実態は、法人格の濫用の実態。
 法人/法人 だからといって杓子定規な判断を裁判所はしていません。


 法人/個人 でも同じです。
 個人の人が、それは法人の行為だから、取引相手はあくまで法人だから、といって逃げ切れるとは限りません。
 旧商法は266条の3という条文をもうけていました。
 会社法は、429条として、役員等の第三者に対する損害賠法責任を定めています。
 

429条1項 役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。

 「取引の当事者は法人だから、代表取締役個人の責任の追及はできないよ」という回答は、不正確です。

 例外的な場合を想定し、その要件を満たす事実の有無を精査すること。弁護士としては当たり前のことがらだと思います。
 その代表者の責任追及が出来ないという結論に何か違和感を感じるというとき、その「違和感」の理屈を突き詰めるのが弁護士の仕事だと思います。
 「違和感」が大事だと思います。
 「できませんよ、あきませんよ」というのは、簡単。場合によっては、自分の無知の吐露、技術力がないことの自白を意味します。
 頭を常にフル回転させていないと!違和感センサーが鈍ります。
 そのためには、リラックスが大事。
 ニコちゃんマークでリラックス。
(おわり)

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