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2009年4月30日 (木)

遺産分割事件の長期化を回避するには〜「審判事項」と「訴訟事項」〜【松井】

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 足掛け10年近く争ってきた遺産分割調停事件がついに調停成立で終わりました。
 この事件を振り返って、遺産分割事件の長期化を回避するための要因がいくつか浮かび上がります。
 

 まず長期化の要因になりがちなこととして挙げられることは。
 ・遺産の範囲についての争いの有無。
 ・裏表的な面がありますが、特別受益の主張の有無。
 ・収益物件の存否。
 ・相続債務の存否。
 ・相続人が多数か否か。
 ・ゴネ得を狙う相続人がいるか否か。
 ・就いた代理人弁護士が依頼者に法的にあるべき債権債務を説明、説得できるか否か。
 だと思います。


 長期化の一因として、わたしの能力不足があったのかどうかということも考えました。
 ただ、この件は、相手方がああだった以上、どんな弁護士が就いても同じ経過を辿らざるを得なかっただろうと考えます。担当している他の事件でこんなに解決まで長期化した事件はまったくないので。

 金額的に看過しえない特別受益を否定し、遺産の範囲を巡って訴訟をせざるを得なかった。
 そのために、最高裁判所まで争い、2年を費やした。
 また、特有財産についても所有権の帰属を巡って話し合いでの合意ができず、やむをえず別途裁判をせざるをえなかった。
 遺産分割調停申立てについて、申立て、取下げ、訴訟、申立て、取下げ、訴訟。そして3度目の調停申立て。
 本来なら最初の訴訟の際、一挙的解決を図るべきところ、当事者の楽観的なものの見方とまだ他の相続人に対する信頼を持っていたこと、何よりも訴訟に要する費用増加の問題から、二度に渡る訴訟になってしまいました。
 

 訴訟事件の長期化の構造的な一番の要因は、「訴訟事項」と「審判事項」の乖離だと思います。
 
 当初、調停では、ここで種々の事柄、相続債務の弁済方法や賃料の収受、テナント物件の管理などについても一挙的に解決しようとします。本来、相続発生後の事柄であり、遺産分割の審判となった場合は、審判事項ではありません。つまり家庭裁判所は判断してくれません。訴訟で争ったらと放り出されます。
 ただ、審判手続き前の調停手続きにおいては、だいたい皆、当初、言いたいことを言います。
 そこで、皆がいい人だったらきちんと合意に達し、無事に調停成立となります。
 しかし、そうでない場合、紛糾するだけです。

 調停不成立、審判手続きに移行したとしても、審判では解決されません。
 そこで、別に訴訟が起こります。さらに争いとなっている事柄が、遺産の範囲を巡る争いであったり、相続人を巡る争いであった場合は、調停申立ての取下げを促されます。
 そのまま審判手続きに移って家庭裁判所の審判官が審判を出しても、「既判力」というものが上記の事柄についてはないので、別途、訴訟で争おうと思えば争えるからです。だったら、審判をしても無駄じゃん、ということで、地方裁判所で裁判して解決してきてから、家庭裁判所にまた来てね、ということになります。
 こうして、第一次調停申立て、第二次調停申立てという事態が起こってきます。


 前にもこのブログで書いていたと思いますが、相続問題といっても結局は、財産の帰属を巡る争いであって、婚姻だ、離婚だ、養子だといった本当にその意思が問題となる「親族」問題とは異なります。
 だったら、いったん地方裁判所にいった事件については、特に、遺産の範囲を巡る争いや相続人の範囲を巡る争いについては、そのまま、他の遺産も確定させて、地方裁判所の裁判官が遺産分割もしてしまえばいいのにと思います。
 和解期日を3回までは入れることにして、それでだめなら、審判ならぬ判決で遺産の帰属を決めてしまえばいいのにと。
 こういった事柄で裁判をしているような相続人の関係で、また家庭裁判所にもどっても調停で話がつく確率の方が低いわけで、審判になるのであれば審判を出すものとして、判決で帰属をきめちゃえばいいのにと思います。審判と同じように判決することなら可能なはずです。
 
 そうすればこの10年かかった遺産分割事件も5年で解決できたと思います。
 相続事件の解決が長引いて得する相続人って、本当はいません。相続人皆が一様に損をするだけです。早く解決できていたときに比べて。

 代理人に就く弁護士にも、迅速に解決しようという意気込みが必要です。それがないと、いくらでも長期化させて皆を損させることが可能です。
 いっさい妥協しなければいいだけですから。
 どんな提案があっても答えは「NO」。あるいは、合意する意思があるふりをして協議に応じつつ、まとまりそうになると、やはり「NO」。これで他の相続人を振り回せば、長期化は簡単です。
 
 グーグルの広告で、「相続事件は弁護士で変わる!」という広告が出ています。
 そのとおりだと思います。どんな代理人弁護士が就くかも大きいです。早期解決できるか否かは。


 相続事件の長期化の要因は、複合的です。
 そういう意味では、10年以上争われているケースって実は少なくはないとは思いますが、皆が本当に不幸だと思います。これを法的になんとか出来ないのか。いつも思います。
 
 紛争の長期化を避け、問題を解決するのに一番重要なこと。 「解決する意思」だと思います。ここに温度差があるとまず間違いなく長期化します。
(おわり)

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