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2009年3月28日 (土)

裁判と執行〜一の矢、二の矢、三の矢〜【松井】

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*上海に行きました。嘘です。神戸三宮の中華街です。


 裁判制度を利用して訴えを提起する場合でも、提起された場合でも、判決が出てそれで終わりではありません。
 途中、和解で訴訟が終了ということもありますが、その合意内容として、当事者間でのお金のやりとりがあるときは、和解の席で現金のやり取りがされたりということがあります。また分割や、和解後の後日の支払であっても、第1回目の支払から履行されないということはめったにありません(たまにあるようですが・・・。それだと代理人弁護士の信用が傷つきます。曰く、あの代理人との間では和解をしても履行してもらえないかもしれない、信用できない、と。)。
 つまり和解だと、裁判所で和解調書を作成し、その後、その中身が履行される確率が一般的には高いのです。
 なぜか?
 和解って、合意です。双方が妥協しあってのうえでの紛争解決です。裁判所のテーブルは借りたけど、自分たちで合意点を見いだしてこんな紛争、とっとと解決しちゃいましょ、というものです。
 屈辱的な和解、全面勝訴的な和解といろいろな和解の位置づけがありますが、基本は「合意」です。当事者の「納得」です。
 だから。
 始めから約束を守る気がないままに合意するというのはまさに詐欺ですが、そうでなければたいていの一般的な良心的な人、会社は、約束を守り、履行してくれます。


 ところが、判決だとどうか。
 裁判官が決めたものです。
 さんざん、自身の言い分を主張したが裁判所が認めてくれなかった、あるいは認めてくれた、いずれにしろ、原告 VS. 被告の構造のなかで、くっきりと勝者と敗者が現れます。
 敗者はなっとくするのか。
 裁判所の判断だから仕方がない、戦って言い分を主張立証しつくしたけど認めてもらえなかった。
 結果、1000万円を原告に支払えとの判決が出された。
 原告の代理人に振込先を教えてもらって早速、1000万円を振り込んでしまおう、と行動する人は多いでしょうか、少ないでしょうか?
 
 そもそもそんなお金はないよ、裁判所が払えと言ってもないそでは振れません、と開き直られたらおしまいです。
 地獄の果てまで追いかけるのか否か。
 

 判決を得ても紛争は終わりではない。そんなときもある。
 だからこそ。
 訴訟を提起する、宣戦布告するという場合、判決後のことまで考える必要があります。
 今は財産ありそうだけど、訴訟をして確定までに2年かかってその間、相手の財産が散逸、費消され、とるものも取れないという状況に陥ったりはしないだろうか。
 あるいは、内容証明を送る、提訴をするにしても、相手に紛争状態を知らせた時点で相手が財産を隠すのではないか。
 勝訴判決をとっても文字通り、「絵に描いた餅」です。判決書きなんて紙っきれです。
 
 裁判にしても、内容証明の送りつけにしても、宣戦布告をする前に、相手の資産状況、相手の行動パターンなどをよく検討し、押さえておくものを押さえておく。
 それが、「仮差押え」「仮処分」といった保全手続です。
 訴え提起の前に、相手方のめぼしい財産に対し保全処分の申立てを行い、裁判所が理由あり、必要性ありと認めてくれれば、1週間もせずして裁判所の命令により、相手方の財産に対し、法律上、動かせないような措置がとれます。
 これで安心して、1年、2年と裁判できるってものです。
 ただ、これは相手方にも相当の不利益を与えかねないので、担保をつまねばなりません。
 
 とりっぱぐれてただの紙切れ判決を得ることを極力さけるためには、担保をつむ余裕がある限り、またこの手続きを別途弁護士費用を払って行う余裕がある限り、相手方にめぼしい資産があってそれが散逸するおそれがある場合は行うのがベターです。
 判決確定に1年、2年とかかろうが、これで安心して訴訟を行うことが出来ます。
 相手は、ないそでは振れないなどと開き直ることができなくなります。
 また、うまくいけば、保全処分を受けた相手は、その財産が痛いところをつかれたような場合、早期解放のため、合意での解決を求めてきて、裁判にいたらずに合意で解決することもあります。


 相手に、最初の「一の矢」を放つときは、次の「二の矢」、「三の矢」を考え、依頼者に説明・提案するのが弁護士の仕事だと思います。
 担保をつむ金銭的余裕がないというようなときは、判決が紙っきれになるリスクを十分理解してもらうことになります。
 また、相手が財産の名義を親族名義にしていたり、法人名義と代表者名義と異なることはありますが、そこで形式論でへこたれていては弁護士の名がすたります。
 「どうしたら認められるか」「なんとかできないか」とひねり出すのが人間弁護士の腕の見せ所だと思います。
 形式的に法律の要件にあてはめて、「出来ません」というだけならわたしが司法試験受験生のときでも弁護士業は出来ると思う。

 そうそう。「勝訴率100%の弁護士」になるのは簡単。負ける可能性がある事件は全て断って、受任しなければいいだけです。
 依頼者の方が戦いたいというのなら、やるだけやってみたいというのなら、「駄目かもしれないけど、認められる可能性が皆無ではないなら、こちらに正義があると思えるのであれば、力の限りやれるだけ一緒にやってみよう。」。
 自分が相談者だったらこういう弁護士に事件を依頼したいです。
 こちらの話を聞かず、はなっから駄目、無理といった言葉を簡単に使うような弁護士には頼みたくない。
 自分が相談者なら、「逃げたな。」と思います。
 だから。
 いつも、いつまでたっても、弁護士業をやればやるほど常に怖いけど、逃げないようにしたいと思います。

(おわり)
*事務所スタッフ川上さんのお誕生日でした。いつもありがとうございます!川上さん、美濃さんといったスタッフの支えなしでは事務所はまわりません!
淀屋橋ティカールのチョコケーキです。美味しい!幸せでした。
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 つぶやき。
 ケーキ職人は美味しいケーキを作る事で人に幸せを感じてもらう事が出来て、たぶんそれがきっと自分の喜びにもなるんだろうけど、弁護士ってどうなんだろう。うまくいったときは依頼者の方と一緒に喜べるけど、うまくいかなかったときが辛すぎる。力及ばず申し訳ありませんでしたと言うことしか出来ない。そして、傷口がそれ以上大きくなることがないよう、ダメージを最小限にできる方策を一緒に考えるだけ。例えば、支払方法の交渉など。辛い。所詮「代理人」であって、無力といえば無力。というか、無能。

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