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2009年1月24日 (土)

法律の面白さ〜著作権法の目的〜【松井】

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*刑法の主観説と客観説の対立の中で。「だったらそれは、『目を瞑れば世界は消える』というのと同じだ!」みたいな批判の有名なフレーズがありました。法律論って面白い。


 勝手にわたしの心の師匠とさせてもらっている、shioさんこと塩澤一洋教授(成蹊大学)が書かれた論説「公表支援のフレームワークとしての著作権法の意義」(成蹊法学第68・69合併号)を読みました。
 頭の中に手を突っ込まれ、脳みそをグラグラと揺すられているかのような知的興奮を久々に味わいました。
 やっぱり法律って面白い!


 最近、以前の記事で触れた税理士の方々がメインのMLに入れていただいているおかげで、「弁護士」が世間一般でどのような位置づけなのか(何にでも噛み付く狂犬?)ということがおぼろげながら分かってきたような気がしているなかで、「法律って面白い!」、「法律って楽しい!」などと感じる自分を自覚すると、やっぱり奇人変人の類なのだろうかと憂鬱にもなるのですが。
 でも。
  法律って、楽しいっ!
  法律を使って考えるって、面白い!
 と表現せざるをえません。しかもこの面白い事柄を仕事として使って、人の役に立って、お金がもらえる。素晴らしい、の一言です。
 まあ、実際は、働いていると、純粋な法律の解釈論が問題、争点になるってことはあまりなく、建前、利害、無謬性、感情のせめぎ合い、実利など諸々の要素で紛争が成り立っていて、法律論、判例を振りかざしてズバッと解決!ということにはなりにくいのが辛いところではあるのですが。そういうところはジッと我慢して、相手の方、担当者の方の言い分にジッと耳を傾け、妥協点を探り出そうとします。


 そんな日常の中。
 塩澤一洋先生、「公表支援のフレームワークとしての著作権法の意義」。

 著作権法の目的から著作権法の意義を導き出すとどうなるか、それもその意義とは、「創作のインセンティヴ」ではなく、「公表支援としてのフレームワーク」ではないのかという位置づけでもって、改めて著作権法、さらには憲法を視野にいれて、もう一度「著作権法」を見直す、という意欲的な論文です。
 「『著作権が得られるから創作する』という著作者は少なかろうが、『著作権があるから安心して公表する』という著作者の心理は働くように思うのだ。」(262頁)。
 
 「文化的所産を多様化させていく動的な循環システムとして著作権法を捉え、そのシステムにおける『要点』としての意義を『著作物の公表』に見いだし、『著作物の公表』が著作権法システムの循環を進めると把握したうえで、著作物の公表を支援する装置として機能する著作権法の姿を描こうとするものである。」(240頁)、この論文。
 著作権法に興味のある方は、必読ではないかと思います。


 司法試験受験生の当時、まだ出版されたばかりでありながら、新しい刑法の流れを作ると一部では注目されていた前田雅英教授の「刑法総論」と「刑法各論」。
 オーソドックスに行くのが王道とされた受験道のなか、新しいもの好きのわたしはつい、前田刑法を読んでしまいました。
 そして。
 打ち震えるような感動を覚え、異端説、少数説と言われた前田刑法を勉強し続け、「前田説」で論文答案を書き続けました。
 I love Maeda Keihou! でした。
 総論として一貫した価値観が打ち立てられ、その価値観をうつしこんだ基準を立て、それでもって各論も美しく解決していく前田刑法。
 
 前田刑法に感じたときのような、理論の美しさを感じました。
 塩澤一洋先生「公表支援としてのフレームワーク」

 少数異端説だった前田刑法は、その後、やがて王道となり、数年後、前田先生は刑法の司法試験委員にまでなりました。
 

 わたしが司法試験に最終合格した年、1996年、10月の口述式試験の刑法の試験委員は、あの憧れの前田先生でした。

 目の前にあの前田先生が!!
 はやる心、繰り出される刑法の事例とそれに対する質問!
 ???
 意味が分かりません。でも。沈黙は大減点です。
 口からでまかせに適当なことを喋ります。
 目の前の前田先生の顔が曇ります。
 ああ、わたしはここで落ちるのか!?
 助け舟らしき質問がさらに繰り出されます。
 ええっい!
 前田先生だけが使用される、呪文のような基準、合い言葉。
 「通常一般人なら当該犯罪類型についての違法性を意識しうる事実の認識」

 呪文のように、質問に対する回答の言葉に何度も、何度も散りばめました。
 わたしは、前田先生、あなたの本を読んで、あなた一筋で刑法を勉強しました!
 必死のアピールです。そんなわたしをあなたは落とすのですか!?

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 この年、なんとか口述式試験も落ちることなく、無事に最終合格できました。
 この粘り強さが仕事にも生きています。きっと。全てにおいて、必死です。粘ります。
 そんな思い出の「前田刑法」。

 前田刑法のことを思い出しながら、塩澤一洋先生の論文を読みました。
 この論文も、やがて、「塩澤著作権」と言われるような新しい流れの最初の一石になるような気がします。
 汚い法律ももちろんありますが。でも。法律って、美しい。崇高な理念を感じさせてくれます。
 憲法に感動する気持ちと、同じです。著作権法に感動、塩澤著作権法に感動。
 こんな感動を与えてもらったことに感謝。ありがとうございます、塩澤先生。

(おわり)

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