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2009年1月17日 (土)

ノストラ会談、覚書〜法律事務所経営者の苦悩〜【松井】

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*1月。誕生月です。そうです、山羊座のB型。Tさん、Cさん、ありがとうございました! ↑ 虫型ボールペン!
 

 昨年来、大橋とよく、南森町ノストラ(カフェ?)で会談を開いています。
 ついこの前の会談で話していたこと。
 ノストラ会談メモとして、以下に。


 弁護士として、大阪ふたば法律事務所として、目標はいったいなんなのか。
 
 去年、大学院で経営学の授業を40時間ほど受けたとき、過去100年ほどの経営学の研究の歴史をひもといた結果としてもまずはっきりしているのが、会社はまずビジョンありき、ということでした。
 賃金体系でもない、労働スタイルでもない、もっとも大事な上位概念は、ビジョンだということでした。

 1900年代始めだったか、T型フォード車が大量生産されるようになり、そのちょっと前くらいから、管理会計という考えが形を持ち始めました。
 いかに効率よく工業製品を生産するかという発想です。
 そういった研究が進む中、意義深い研究成果が発表されたということでした。

 それは、さらに効率性、生産性を上げるにはどうしたらいいかということで、ある研究チームが工場の調査に入り、工場で働く従業員に聞き取り調査をしたというものでした。
 ところが、聞き取り調査をしただけで、生産性が上がったという結果、数字が出てきたのです。
 やったことといえば、まだ聞き取り調査だけでした。
 分析されたところでは、そこに働く一人一人の言葉に耳を傾ける、それだけで従業員の方々は、自分たちが尊重されたと受け止め、働くさらなる動機付けが強まり、生産性が向上したということだったのです。

 また、こんな話も有名らしいです。
 もくもくとレンガを運び、教会を作っている人々がいる。
 暗い顔をしてレンガを運ぶ一人に声をかける。何をしているんだい?
 男は答えた。みりゃ分かるだろ、レンガを運んでいるんだ。
 もう少しましな顔をした男に声をかける。何をしているんだい?
 男は答えた。みりゃ分かるだろ、教会を作っているんだ。
 そして、軽い足取りでレンガを運んでいる男に声をかける。何をしているんだい?
 男は、輝かしい笑顔で答えた。
 神様に仕える仕事をしているんだ!


 大橋とは、最後、依頼者に喜んでもらえるのが一番だよね、という話をよくしてきました。
 でも。それでは曖昧です。
 もう少し、具体的な目標、「神様に仕える仕事をしているんだ!」と笑顔で答えられるくらいの言葉は見当たらないのかという話をしていました。
 結果。
 午前1時ころ、ノストラにて導き出された言葉。
 「依頼者の正義の実現のために」
 
 この思いを価値基準として事務所の皆が共有できれば、じゃあ、そのためにはどうしたらいいのか、「実現」のためには私たちは何が出来るのか、何をすべきなのか、何がまだ足りないのか、という発想で、価値を次の行動に落とし込めます。
 
 「サルでもできる弁護士業」ではこの業界はぼろくそに表現されています。
 確かに、「弁護士の常識、社会の非常識」ということは多々あると思います。
 そんな中、下をみるのではなく、上を向いて、私たちは何のためにこの仕事をしているのか、何のために事務所を開いてい働いているのか。原点として、今の立ち位置を確認し、少しでも上に行けるように努力していこうと語り合いました。

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 幸いにも数十件の仕事を抱え、暇なわけではありません。しかし、「忙しい」は怠惰の理由にはなりません。
 「依頼者の正義」を「実現」するために。

 訴訟だったら、手続きの流れでいやがおうにも進み、判決という形で結果がでるので、その中で弁護士、訴訟代理人としてやるべきことというのはある意味、明らかです。
 しかし訴訟手続きではない、交渉ごとにこそ、この「実現」のための底力が必要とされるように思います。

 つくづく思うのは、「訴訟」って、原告にとっても、被告にとっても、あまりいいことがないということです。費用、労力、時間、そして何よりもお金。これはつまり、弁護士への着手金、成功報酬です。
 しかも。三審制です。とことんやったら2年は要します。勝てばいいというものではありません。
 こんな無駄をいかに回避するのか。

 相手方が、ある意味、頭のいい相手方であれば楽です。訴訟回避という点で利害が一致する、共通認識を持てるからです。裁判結果のみとおしがつくようなら、共通の言語で会話ができます。
 でもそういう相手方ばかりではない。そんなとき、こちらの底力が試されるのだと思います。
 交渉ごとは、相手方の理解から始まります。
 さっさと訴訟に手続きを移した方が弁護士としては、楽です。正直なところ。請求金額も増えます。
 
 でも。そんなとき。
 「依頼者の正義」、「依頼者の正当な利益」の「実現」、「確保」のためには交渉段階で最大限の努力を払いたいと思います。
 事件処理の迅速性も、そうです。
 「実現」するには、まず、とにかく、動くことが必要です。
 じっとしていても、誰も代わりには動いてはくれません。
 依頼者と弁護士しかいません。
 まず動く。
 相手方との共通言語を見いだす。
 そして、依頼者の正義を「実現」する。
 ちなみに、依頼者の正義って、相手方を叩き潰すことではありません。紛争関係者、皆が納得いく解決策を見いだすということです。難しい道だけど、その道を模索するということです。他の人が渡れないように、自分だけの利益を確保するために、自分だけが橋を渡り、その橋をぶっ壊すことではありません。そんなことをしたらその依頼者は、いつかどこかでしっぺ返しを受けます。相手方も然り。人の感情をなめてはいけないということ。

 そして。
 「グッド ジョブ」以上の、「グレイト ジョブ!」と声をかけられる。
 そして。100万円の成功報酬請求をしたら、90万円に値切られるのではなく、喜んで110万円を支払ってもらえるほどの仕事をすること。

 労働の喜び、達成感って、やっぱり人に喜んでもらうこと。
 弁護士、法律事務所としては、その社会での役割を考え、必死に尽くすこと。
 それしか、たぶん、進むべき道はありません。
 
 いかに稼ぐかということだけを考えたら、こんなに割に合わない仕事はないのではないかと思うこともあります。報酬をいただいても、時給にしたら最低労働賃金を下回るということももないわけではなく。
 それでも、この仕事をしているのは、やはりやりがいを感じるから。

 お医者さんのように、災害時、怪我した人を助ける、手当をするということはできないし、壊れた建物を安全な建物に建築し直すといったこともできないけど、「依頼者の正義を実現する」ということは、「法律、訴訟手続、言葉」を道具として、出来ることがある。これらの道具をつかって、いかに「依頼者の正義」を実現するか。
 そうです。実現するのは、「正義」と共感できる事柄であって、相談者の方であってもそこに「正義」を残念ながら見いだせない場合は、依頼をお断りしています。
 逆にいえば、私たちがご依頼をお受けしているのは、そこに「正義」が見いだせた相談者だけです。

 自分の、自分たちの、今の現実をみて、いろいろと嫌になることもあるけど、でも、前を向いてがんばってレンガを運び続きます。暗い顔をせず、明るく笑顔で。


 弁護士って、勤務弁護士ならプレーヤーとして最大限を尽くせばいいけど、独立して事務所経営をしていたら、当然、経営者、マネージャーとしての能力も試されます。
 同業者というだけでなく、共同経営者でもある大橋とは、いい事務所を作りたいねということで、事務所としての目標を確認しあいました。
 何を目的として「大阪ふたば法律事務所」が存在するのか。
 「依頼者の正義の実現のために」
 これを合い言葉として、体制を強化していきたいと思います。

 面白そうな本を昨日、本屋で見つけました。
「すべてのサービスは患者のためにー伝説の医療機関’メイヨー・クリニック’に学ぶサービスの核心」。
 読んでみます。経営者として。


 と、まあ、ぐだぐだ書きましたが、何事も人生、常に、struggleです。
 奮闘です。
 try&error です。
 挑み続けること、その過程を楽しむこと。
 それが出来ること、それだけで、幸せだと思います。
 ありがとうと感謝の気持ちが沸き上がります。
 いろいろと不十分だけど、日々、昨日の自分に勝てたか、ちょっとでも前進、奮闘しようと思います。
 戦っていることが楽しい!自分と戦っていることが、生きていること!負けて廃人みたいになることもあるかもしれないけど、生きている限り、またいつか立ち上がって戦う。自分との戦いを本当にやめたら死んでいるのと同じこと。

 大丈夫です。躁ではありません!
 
(おわり)
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