「サルでもできる弁護士業」【松井】
1
なんて刺激的なタイトル。しかもあの幻冬社から3冊、同時出版。
中古で買って、読んでみようっと。
2
弁護士法72条。
非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止が定められています。
この立法事実の有無について、検証してもいいころかもしれないなどとわたしなどはときどき思います。夢想か。
誰でも、法廷で代理人活動が出来るとしたら。刑事弁護も、交通事故の交渉も、弁護士じゃなくても誰でもできるとしたら。
その方が質の高いサービスがもしかしたら提供されるかもしれない。
弁護士なんて。
司法試験という試験に合格して、司法研修所の研修をうけて、卒業試験に合格しただけの人。
合格している人と合格していない人との間で、サービスの違いがあるのだろうか。
もしかしたら、司法試験なんて、研修なんて、卒業試験なんて、合格していなくっても、より高い法的なサービスを提供できる人もいるんじゃないだろうか?ということかと。
3
どうなんでしょう?
少なくとも。試験に合格しているから、すべてにOKというわけではないのは確かな事実かと。
利用する人はどうやって、何を基準に弁護士を選んだらいいのだろう?
ドクター・ショッピングだったかと同様に、弁護士ショッピングというのもありだと思います。
相談してみて、信頼できそうにないという感覚があったなら、その直感を信じた方がいいと思います。
その基準は人それぞれ。
それで構わないと思っています。
60代のどっしりとした威圧的な男性弁護士が好きな人、有能だと思う人、20代の初々しいフットワークの軽い女性弁護士が有能だと思う人。人それぞれだと思います。
ただ。
たぶん。
医療過誤が被害者にとって見えにくいのと同様、弁護過誤も被害者にとってはみえにくいと思います。
訴訟で、時効の主張をすれば勝てたのに、弁護士が時効の主張を失念しており、敗訴した、といったケースです。たぶん、依頼者にはずっと分かりません。他の弁護士に相談してみない限りは。
これから。
弁護過誤訴訟も増えるんでしょうね、たぶん。
なぜ今まであまりなかったのか。過誤がなかったからか、それとも扱う弁護士がいなかったからだけなのか。
良くも悪くも、過渡期なんだと思っています。
うちの基本は。パン屋さんがおいしいパンをつくってお客さんに喜んでもらいたい、というのと同じです。
訪れていただいた依頼者の方のお役にたって喜んでもらえたら、それでいいと思っています。社会のためになっているかどうかは、結局、そうしたことの積み重ねでしかないと思うので。自分が出来ることを一つ一つやっていきたいと思っています。
たとえそれがサルでも出来ることだとしても(笑)。
サルって訴訟代理人になってくれたり、交渉もやってくれたりするのだろうか。
4
ふと。
西田弁護士がいっている「サルでもできる弁護士業務」って、多重債務者の方の救済のことだろうか?まだ読んでいないから分からないけど。
わたし自身は、現在、多重債務の方の新規の相談を基本的にはお受けしていないけど(ほかに受け皿がいっぱい出来ているので。弁護士会の多重債務相談をご紹介しています。)、受けていたときは、ヤミ金からの取り立てという名の暴言に対し、盾になりつつ、今後の生活をどうやって立てなおしていくのか、日々の生活状況について聞き取りをして、一緒に考え、方向性を確保するというのを意識していました。
所詮お金のことだからどうとでもなる、命までは取られないといって、自殺予告の電話をもらっても一喝しつつ、なだめすかし、働けないなら生活保護の支給が得られるように市役所の窓口の人とかけあい。ここで断ったらほかに行くところがないという方々に解決策を提示し、トンネルの出口を示すことが出来たとき、安堵の表情が見られたとき、最低限の役目を果たせたと思っていました。
なので。今、大阪でも、電車の車両の中や駅のところに司法書士事務所さんの広告、「あなたは払いすぎていませんか?」「借金で悩まずに相談を」「初回、無料」といったものも、眉をひそめる人もいるのでしょうが、社会の役にたっている、それで救われる人が一人でも増えるならいいじゃないかと思っています。たとえ、流れ作業での処理だとしても、払えない、死ぬしかないか、夜逃げするしかないかと思っていた人の代理人になる人がいるのならば。
ただ、過払い金だけをとったらあとはポイっというのだけは、人としてどうかとは思いますが。
ただ、そもそも。
なぜ「過払い」といったこんなことがまかりとおってきたのか。
なぜ多重債務という状況に陥るのか。そういった根本にまで立ち返って考える必要があるのだと思います。
起こる現象に対して表面的に対応し、自分が金を稼ぐだけならば、まさにサル。その人がそれで満足しているのなら、それはサル。
(おわり)
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