質問する力 【松井】
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10月、大橋とスタッフ美濃さんの誕生日でした。おめでとうございます!
1
講師などをした際、あるいは単純に人に何かを説明していたような際、聞いていた人の方から逆に質問を受けることがあります。
依頼者の方に、現在の状況、今後の見通しなどを説明していても、質問を受けることがあります。
質問は、質問をすることそれ自体、とても力のあることだと思います。
ご自身で、情報をインプットし、咀嚼し、既存の知識などとの関連を精査し、その結果、アウトプットされるものだからです。
インプットが出来ていない、インプットはできたけど咀嚼できていない、咀嚼したけどつっかえるところが何なのか整理できていない、そのような場合、「質問」は出ません。
これは私自身が聞く立場になった場合も同様です。
なので私自身は、質問を受けることはとてもいいことだと考えています。
私の説明が不適切だったのか、あるいは不十分だったのか、あるいは聞いた話を消化、発展させたうえでの質問なのか。
どちらにしても、質問を受けるとこちらも何らかの気づきを得ます。
しかし中には、質問されると怒り出す弁護士もいるとか、いないとか。
なぜ怒るのだろうと考えると、たぶん、自分自身がうまく説明できていない、それを指摘されたように感じるからなのかと想像します。指摘される、批判されることになれていないからか。分かりません。
2
ただ、質問をする場合であっても、いわゆる礼儀というものを要求されることもあります。
私が質問をする立場の場合なら、それを考えます。
もちろん私が依頼者であって、弁護士に質問する場合は、遠慮会釈なく、分からないことは分からない、ある程度素人にも分かるように説明して欲しいと求めます。その方が依頼した弁護士とのコミュニケーションに資するので。
礼儀が要求される場合というのは、相手とはまさに一定の距離感があるときです。
例えば、その話の大前提として一定レベルの知識があることが前提されて話がされているようなとき、講師の専門家に質問するのであれば、礼儀としては、自身がまずもって調べて、勉強して、それでも分からない場合に質問を発する、自分では調べてこう考えるがこれはいいのかといった質問のスタイルが必要かと思います。
自分ですべき勉強をまったくせずに、「素朴な質問」を投げかけるのは、その場にそぐわないことがあります。
質問をする力がないままに素朴な質問をし、回答者の時間を奪うということです。
「KY」ではありませんが、「場」を読む力は礼儀として大事だとは思います。
ただ、とはいえどこがそういう「場」なのかを読むことに苦心して、訊きたいことを訊けないというのも自分にとっては時間の無駄です。素朴な質問が許される「場」というものもあります。
この辺りの見極めが大事です。
これは自分への戒めとして。
やっぱり「力」を付けるには、自分で自分が何を分かっていないのか、自分で「問い」を設定し、書籍等でその「解」、あるいは「解」のヒントになるようなものを探し、自分で苦しむことだと思います。
それでも、どうしても分からないときに「人に聞く」。一つの礼儀だと。
ただ、実務上、事件処理上は、ついつい友人・知人を頼って、すぐに訊いていますが。訊くことと、自身の調査を並行してやっています。やはりスピードと正確性の重視だから。実務上、解がはっきりしていることを自分で理解、調査できないからとグダグダ悩んでいても仕方ないので。
でも、人に教えを請うというのではなく、議論をするのであれば、やっぱり共通項としての土台を理解したうえで、それでもそこに異論を唱えるというのか、単に勉強していなくって無知に過ぎないのか、自分で認識することが大事だと最近、考えています。無知の自覚があるなら、謙虚さを失わないようにしないと相手にされなくなってしまう。
どちらにしても、知ったかぶりは怪我のもと。常に、根拠を遡って考えないと。自戒。
(おわり)
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