加勢大周さん、覚せい剤【松井】
1
加勢大周さんが覚せい剤や大麻の所持で逮捕された。尿から、覚せい剤反応も出たとか。
自分でも意外なほど、ちょっとショックを受けています。
田代まさしさんや、中島らもさん、光ゲンジの赤坂さんが逮捕されたときは特にそれほど衝撃は受けなかったけど、あの爽やかさんで売り出していた加勢大周さんと私の知る「覚せい剤」はあまりに繋がらなさすぎる。
しかも加勢大周さん、日本のテレビドラマに復帰しだしてこれからという時だったのではないのか。
大学時代、友人が加勢大周さんのファンだったこともあり、自身はそれほど注目していたわけではないけど、なんとなく気にはなっていた。阿部寛さんのように化けたらいいのだがと思っていた(わたし、何者でしょうか。)。
2
「覚せい剤」
弁護士は、たぶんほとんどの弁護士は1年目から、国選弁護人活動をします。
刑事事件です。
2年ほど前、国選弁護人登録を抹消しましたが、それまでの6、7年ほどは、年間数件の国選弁護人活動、さらにはその前の段階の捜査段階で、当番弁護活動、捜査弁護活動、少年事件の付添人活動などをしていました。
この間、担当した事件名でもっとも多かったのは、数えてはいませんが、たぶん覚せい剤事件です。
何度も、逮捕され、有罪判決を受け、服役をしても、出所してから覚せい剤の使用を止められず、またそんな人に限って職務質問で所持のところを現行犯逮捕され、そしてまた服役する。
そうしてどんどん年を取っていく。
出所してから、働くところも限られてしまい、そしてまた時間があまるとクスリに手を出してしまう。
悪循環です。
そういう被告人の弁護活動を何回かしました。
あの人に連絡して欲しい、この人なら情状弁護の証人に立ってくれると言われ、手紙をだし、電話をしても、相手からはもう連絡しないで欲しいと言われたり。兄弟などはなおさらの場合もあります。どれだけ迷惑をかけられたことかとこちらが怒られたり。
家族や親身になってくれる人も、最初の法廷では心底、その人のことを思い、証言してくれます、たいていは。でも、2度目、3度目となると、もう関わりたくないという気持ちになるのでしょう。
「希望」がなくなっていくのだと思います。
本人だけでなく、周りのものも。
悪循環です。
3
再犯率というものがあります。
この事件で、再犯率を考えたら、また刑事法廷に戻ってくるかもしれない。
でも再犯率は100%ではない。最初の過ちだけで二度と戻ってこない人もいる。
今回、3回目だけど、もしかしたらこんどこそもうこれで最後かもしれない。
最後にしなければいけない。
本人が有罪を認め、証拠上も疑問の余地がないときの情状弁護活動は、いつもそんな気持ちで被告人と面会し、法廷で弁論していました。
弁護人が希望を失っていては、いくら情状弁護をしても全く迫力も何もありません。
これが最後になるはず。
これを最後にして欲しい。
刑事事件の法廷に関わる法曹、弁護人はもちろん、裁判官、検察官ですら、たぶん皆、同じ気持ちだと思います。
長い人生、1度、あるいは何度しくじろうとも、それで人生が終わりになるわけではもちろんありません。死刑を執行されない限りは。
そうであるなら、死ぬほんの一瞬前、1秒前であっても、しくじったとしても、自分の人生を自分でやり直すことは可能ではないかと思います。自分の気持ち一つです。希望を抱くか否か。罪を犯し、自由を失い、罰を受けたとしても、希望を持つなということは罰のうちには含まれません。
先日見た映画「嫌われ松子の一生」で、松子は、出所してから投げやりな生き方をしますが、そんな松子の姿を見た服役時の友人から、うちにおいでよ、うちで美容師として働きなよと名刺を渡されます。
いったんは、くちゃくちゃにして捨て去ったその名刺を松子は、夜中、捨てた河原の茂みから拾いだしに行きます。
そして、その名刺を握りしめます。
「わたし、まだやれる」と呟きます。
松子、53歳。亡くなる数分前の出来事です。
加勢大周さん。まだ38歳。
まだまだ「やれる」と思います。
槇原敬之さんのように、復活を祈っています。
槇原敬之さんが謹慎生活を送っていたとき、別に親しかったわけでもない矢野顕子さんから手紙を受け取った、また音楽を始めるにあたってその手紙が励みになったといったことをどこかで語っていたように思います。
加勢さんにもそのような人が現れることを祈って。
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