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2008年9月 5日 (金)

交渉のコストマネジメント【松井】

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 先日、大阪府立大学の窪田先生のコストマネジメントの講義、約20時間を受ける機会がありました。
 講義一辺倒のものではなく、受講者の中で5、6名でチームを組み、予めケースを与えられ、そのケースをもとにしてチームで討論、発表をするというパターンで7回ほどの討議、発表が繰り返されました。
 レポートの提出もあり、なかなかハードな講義だったのですが、もっぱら製造業におけるものといわれてた「コストマネジメント」について、一応一通りどんなもんかというところは把握できたのではないかと思います。
 そして、先日、仕事で交渉を経たあと、事務所に戻る前に淀屋橋のホリーズカフェでダッチソフト・オーレを食べながら、ふと考えました。
 交渉のコストマネジメント。


 コストマネジメントとは、コストダウンよりも広い概念です。目的は、利益業績の改善、そのための手段としてのコストマネジメント。
 その中でも、原始的な標準原価計算といわれるものから、原価改善、戦略的コストマネジメントとして、源流段階からコントロールしようという原価企画、設備企画、そしてさらには間接費や営業費についてもマネジメントしようという動き、ABCの効用と限界とったものから、品質コストに環境コスト。

 交渉ごと、訴訟活動でも同じではないだろうか。
 紛争解決に行き着くまでの「コスト」をいかにマネジメントするか。
 初期の段階がやはり非常に重要だと言うことです。初期段階でのコントロールが行き届かないと、紛争は必要以上にとんでもなく肥大化して、解決までの「コスト」がかかってしまう。「コスト」というよりも、むしろ多大なる「ロス」が発生してしまう。
 これをいかに回避するのか。
 源流段階の管理にポイントがある、と実感しています。

 これもまた私がよく依頼者の方に言う言葉として次のような言葉があります。
 「肉を切らせて骨を断ちましょう」
 「なんですか、それ?」と言われた事もありますが、要は、「損して得取れ」ということです。

 感情的には腹のたつ相手方です。
 心情としては、相手方を利するような事はいっさい、したくありません。
 が、それで自分が特に損をするわけでもなく、損をしたとしても回復不可能な損害ではなく、相手を利する事で、相手の「感情」「心情」がほどけ、他の事柄でこちらに協力的になるという状況にあるのなら、相手を利する行動をとるほうが、結局は、自分が大得を得るといことです。

 例えば。資料を欲しいという相手に対して、コピー代として1枚20円を請求したばかりに、相手方の感情を害し、そこで事が進んだ事柄も進まなくなる、そんなとき、相手方の要求に喜んでと応じて、手間、時間、費用がかかるけど、快くにっこりわらってコピーした資料を手渡してあげる、そのことによって相手方もこちらに「ありがとう」と言わざるを得ない状況となり、そこに友好な関係が生まれて、事が好転する、ということもあります。

 こちらがニッコリと微笑めば、相手方の敵愾心、戦闘意欲がどうなるか。
 カーネギーの成功法則だったかなんだかの本でも書かれていました。
 にっこりと微笑む赤ちゃんと目が合ったら、笑わない人はいない。
 
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 ただ実際には、多くの方が感情に左右され、「コストマネジメント」的発想からすれば、まったく逆の余計な「コスト」「ロス」を発生させる言動をとりがちです。
 相手方と接触する目的は何なのか?そのための手段は何なのか?ということをよく見極める必要があります。

 感情に任せて、売り言葉に買い言葉で言葉を投げつけたり、振る舞ったりする。
 わざと相手方をカッとさせるようなことを言う。
 そのときは気分がいいかもしれません。
 でもそのことによって紛争解決に至るための「コスト」「ロス」が余計に発生するのです。

 この発想は、何も二枚舌を使えということを言っているのはもちろんありません。
 不必要に相手の感情を害することはない、不必要に相手に損害を与ええることはないということです。

 裏を返せば、根本的には、因果応報という考えがあるのかもしれません。
 昨日の敵は今日の味方。
 依頼者のため、必要以上に敵を作る必要はありません。
 たとえ依頼者の方は感情が抑えられないとしても、代理人たる弁護士は「代理人」たるがゆえに相手方と、依頼者とはまた違う距離を形成できるのです。この点を代理人活動に生かさない理由はありません。
 WIN-WIN の交渉術と言われるもの同じ事だと思います。
 自分が渡った橋を叩き割るような交渉はするな、と表現されていた交渉術の本もありました。


 刑事事件の法廷弁護に関する本ですが。
 「弁護のゴールデンルール」(キース・エヴァンス著、2000年、現代人文社)という本があります。

 法廷で検察側の証人に対する弁護人からの反対尋問での締めくくりについてこう書かれています。

 「そして、すべてが終わったら、この魔法の言葉を忘れるな。

  『この証人に対して裁判長からさらにご質問はおありでしょうか。スミスさん、法廷にお越し下さった事を感謝いたします。裁判長、証人を退廷させてもよろしいですか?』」


 嫌われ者の弁護士こそ、良き隣人たれ、ということだと思います。
 それが依頼者の利益につながる、弁護士のコストマネジメント。

 時々、書面でも、振る舞いでも、「むかつく!」という相手方代理人弁護士がいるような、いないような、ブツブツブツ。
 そんなときは相手にいったいどんな「コスト」が発生するのか。誰も知らない。

(おわり)

お!ココログにこんな機能が!
お描きモード。
スマイル!私の机の前にはこんなシールが。
「Laugh & Laugh !」

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