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2008年8月18日 (月)

マンゴープリン事件 〜仕事・経営のあり方〜【松井】

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*北浜の事務所ビルからの美しい夕焼け。この景色のように常に心穏やかでありたいです。


 弁護士は、弁護団事件であろうが、複数事務所で数名で担当する事件であろうが、本当に責任をもって自分の事件として受け止めるのはそのうちの1名か2名というのが真実ではないかと思っています(弁護団事件だと、担当の割り振りによもよるかとは思いますが。人一倍、重く感じているのはたぶん弁護団長と事務局長ではないかと。)。
 裁判所でも合議事件で裁判官が3人の担当になっているからといって、3人が3人、同じだけの重みで事件を担当しているわけでは当然、ないと考えています。だいたいは、一番若い左陪席が判決文の下書きをし、年長の裁判長が最後の決裁権をもつ、真ん中の右陪席は言うべき意見は当然言うけど、責任分担としては気持ちはちょっと軽いという感じではないかと思います。
 だから、裁判官も、検察官も弁護士も、基本は職人仕事なんだと思います。
 だから、前回の記事でも最後にちょっと触れたように、一人仕事、職人仕事の限界をときどき感じたりします。

2 
 事務所は北浜の川沿いのビルにあるのですが、近くには、知る人は知っている「G」という洋菓子屋さんがあります。

 先日、私一人では到底なしえなかったであろう事件について、多くの法律家の方々の力を借りる機会がありました。
 もちろん責任は依頼者から依頼を受けた私一人にあるのですが、私の頭1個ではいろいろな点でまだまだ限界があります。そこで、何人かの法律家の方々からお知恵を拝借し、力をお借りしました。おかげさまで限られた短期間の時間で何とかやり遂げることが出来ました。
 それぞれお忙しい法律家の方々だったのですが、皆様、自分のことのように考えていただき、有益なアドバイスをいただきました。
 一人一人にお礼を述べつつ、最後の一人の方には、事務所が近いということもあり、また先日、依頼者の方から頂いた上記「G」のマンゴープリンがおいしかったこともあり、このマンゴープリンを手みやげに、直接にお礼のご挨拶をしようと思いました。

 で、今日、「G」によってマンゴープリン9個の化粧箱入りを買おうとしました。
 ところが。
 バイトらしき店員は、すみませんと言いつつも、「7個しかありません。」という。
 「7個で綺麗に化粧箱に入れられるのですか?贈り物になるんですけど。」と問うと、おもむろにそこらへんにあった箱を持ち出し、目の前7個を無造作に入れ始めました。
 とてもじゃないけど、贈答品としては思えない入れ方。
 仕方なくその間、まわりを見ると、このマンゴープリン2個が別のお菓子といっしょにセットで名前を付けられて売り出されているのが目に入りました。

 「あっちの2個を詰めて、9個にすることは出来ないですか?」
 
 戸惑う店員。「ちょっと確認してきます。」といって少し離れた別の店員に駆け寄って行きました。
 別の店員は、何やら電話口に出ています。
 店員は、ぼうっとその横で、電話が終わるのを待っています。
 その間、私はずっと待たされていました。
 やっと電話が終わり、アルバイトさんはその店員と会話を交わし、アルバイトさんが一人、戻ってきました。
 
 「すみません、セット売りをばらすことはできません。」

 私もいらだっていたのかもしれません。
 「バカ」という二文字が頭をよぎりました。まるで自分がゴネたのを諭すような言い方をされたと受け止めてしまったからかもしれません。
 いずれにしても、その店員と言葉を交わす気力が一瞬にしてすっかり失せました。
 
 「もう要りません。」
 とすかさず言って、きびすを返してとっとと店を出ました。

 マンゴープリン9個で4000円、その別のセット売り5000円。目の前の4000円をとるのか、いつ入るか分からない5000円をとるのか。バラすことの容易さとバラすことによる支障、そして目の前の客のニーズに答えられないこと、どちらを優先させるのか。
 判断能力がないのではなくて、考える力も無ければ、考えたことを行動に移す権限もないのだと思いました。
 従業員を責められません。
 その「G」という店の底を知ったような思いになりました。なんだ、この程度の店だったのか、と。

 
3 
 事務所へ戻る道すがら、考えました。
 結局、それが経営者の器なのだと。
 直接、客に対応させる店員の教育、教育のみならず権限を与えていないこと、そのことによって結局損をするのは経営者であること。いったいどれだけの機会ロスが生まれているのか。
 道すがら考えました。
 「あの店では二度と買い物しない。」と。
 
 賢い店ならどうしたでしょう。
 いつ来るか分からない5000円のセットを買う客よりも、目の前のマンゴープリン9個を買おうとしている客を優先させたことでしょう。そのことによって実際にキャッシュも手に入るし、お客の満足度も高められる。
 
 「リッツカールトン」に関するサービスとは、という本を思い出しました。
 リッツカールトンでは、従業員一人一人に20万円までのお客のために自由にとっさのときに対処できるための決済権限を与えているということが書かれていました。
 目の前の困っている、助けを求めているお客様に対し、すぐにその場で適切な対応をとれるのはその客を目の前にしているその従業員個人だけだ、そうであるなら普段から、従業員には目の前の客を大事にするようにことあるごとにこれをとき、そしてそれを実現するための権限を与える、そうすれば従業員は自信をもって、目の前のお客様のためにニーズを満たすことができる、それでホテルの評価、評判が高まれば、それは結局、安くつく話。

 北浜の「G」の経営者は、その点、まだまだなんだと思いました。
 ちなみに、同じ北浜にある大証ビルの上島珈琲は本当に素晴らしい、ハイレベルな従業員の方々が揃っていると思います(もちろん、?という方もいますが。)。おそらく皆、バイトの女性だとは思うのですが、その場が従業員を成長させるのか、皆、一定のハイレベルだと思います。頭の良さ、人間としての賢さが、セルフサービスのコーヒー店であっても客は十分、分かります。
 面接が素晴らしいのか、研修・教育が素晴らしいのか。やはり、採用段階だと思います。リッツカールトンも採用面接を最も重視していたと確か、書かれていた。
 価値観を共有できるチームになれるかどうか。


 ひるがえって、法律事務所はどうでしょう。
 事務所によっては事務局長という人がいつも電話に出て、当の弁護士とは一度も会話もしないままに交渉事件が終わるということもなきにしもあらずですが、おそらくそんな事務所は今後、少数派でしょう。だいたいは相手方弁護士からの連絡の際、弁護士が直接に電話にでるか、対応します。事務員、スタッフしかいないときに緊急事態が発生したら、担当弁護士に確認をとります。
 目の前に、マンゴープリン9個を今すぐ買いたいといって来る客は基本的には法律事務所には来ません。
 なので、状況を同列に論じることはできませんが。

 経営者として大切な事。

 現場には、自分の頭で考えられる人をおく。
 現場には、決済権限を認める。
 従業員の能力、姿勢に対する責任は、すべて経営者の責任である。
 従業員が、店の顔である。
 従業員を大事にしないといけない。

 これが、仕事、経営のあり方だと思いました。
 

 いずれにしても、もう意地でも二度と「G」には足を踏み入れない。

 「大阪ふたば法律事務所」は、アルバイト2名、正規スタッフ2名、弁護士2名と少数先鋭で運営しているので、このマンゴープリン事件のような事件はおこりようがないのですが、前回の記事の最後でも書いたように、今後、なんらかの形で事務所のスタッフが増える、あるいは会社組織のようなものに関わるとなったら、本当に人材がすべてだと思います。
 自分の頭で、経営者のように考えられる人が従業員であって欲しい。世の経営者の理想だと思います。

(おわり)
 
*商売人の町、天神橋筋商店街。アーケードのある商店街、心落ち着きます。
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