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2008年4月23日 (水)

最悪の事態に備えよ~控訴について~【松井】

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美味しいご飯を食べて、がんばろう。


 もう10年前になる司法修習中、研修所の民事弁護教官の弁護士が仰っていました。訴訟代理人をして判決期日を迎えるときは、最悪の事態を想定し「控訴状」を用意している、と。



 弁護士としては、仕事柄、最悪の事態についても常に想定し、シミュレーションを行います。
 そしてこの場合はこう、この場合はこうといった考えつく限りの選択肢を取り上げ、その行き着く先を想定し、どのような対応ができるかを考え、その上で選択肢の中からベストと思えるものを選択肢として提案します。
 ただ、それでも最後に決断をするのは依頼者です。依頼者の意思に反する代理人活動はできません。
 結果について責任を負えないと判断せざるを得ないときは、代理人を辞任します。
 


 この事務所のブログに辿りつかれる方の検索ワードでは、なぜか「控訴 期間制限」といったワードが継続的に上位に現れています。
 そこで、控訴審について改めて簡単に触れておきたいと思います。


 去年、控訴審について受けた研修などについてはこちら。
 
 裁判官とのコミュニケーション
 
 勝って兜の緒を締めよ
 
 
 控訴状の提出期間は、民事訴訟法285条に規定されています。「判決書又は第二百五十四条第二項の調書の送達を受けた日から二週間の不変期間内に提起しなければならない。」
 そうです。「不変期間」です。これを徒過したら、過ぎたら、控訴できません。一審判決は確定します。もうその事柄については二度と争えません。


 控訴状を出したら、民事訴訟規則182条です。
 「控訴状に第一審判決の取消し又は変更を求める事由の具体的な記載がないときは、控訴人は、控訴の提起後五十日以内に、これらを記載した書面を控訴裁判所に提出しなければならない。」

 上記のブログ記事の中で書いているように、高等裁判所の裁判官が苦情を述べているのは、この書面がきちんと50日以内で提出されている割合が低いということです。
 つまり、この書面については期間を徒過しても明確な不利益は特に規定がないということです。ただ、裁判官の座談会等によればやはり心証はよくない模様。
 また、書けばいい、出せばいいというのではなく、読みやすい「簡にして要を得た書面」を作成提出しなければなりません。



 去年、法曹会から、司法研修所編として「民事訴訟における事実認定」という本が出版されました。
 これは最近の愛読書です。
 巻末、資料として面白いものが付いています。
 「事実認定を語る~高裁裁判官インタビュー集」です。
 高等裁判所の裁判官14名が、A裁判官からN裁判官として、それぞれ一審判決のあり方や、高裁判事としての心構えなどについて語っています。
 
 まだまだ裁判所は信頼できると思える、素晴らしい言葉が語られています。
 興味のある方はぜひご一読を。

 以下、抜粋。

 「書証の成立だけから結論を導かないこと」(316頁)

 「書証がないと、それだけで『書証がない以上、認定できない』という言い方がされることがありますが、一概にそうとは言えません。」(317頁)

 「さらに、書証を過度に重視してしまうと事実認定を誤る場合があるので、注意が必要です。」(322頁)

 「適正な事実認定ができるためには、人間の行動に対する洞察力、人間に対する共感力を育てることが大切だと思います。つまり、その場に置かれた人間が普通どのように思って行動するかという視点ですね。もし行動として異例であるならば、そうした行動をとる合理的な理由があるのかどうかを考えてみることになります。こうした洞察力は、日頃から新聞等を読み、他人の見方を知るとともに、自分でも考えることにより養われます。知識は何でも吸収し、好奇心を持つべきでしょう。」(323頁)

 「若い裁判官は、『処分証書は特段の事情のない限り記載内容の通りの事実が認定される』と考える傾向にあるように思われます。そもそも、契約等の法律行為は、取引行為であり、目的のある行為ですから、その背後には動機があるはずです。したがって、法律行為は、効果意思だけではなく、合理的な動機、目的があって初めて認定できるものなのです。しかし、契約書の記載内容からは、これらの動機、目的や背景事情は見えてきません。
 したがって、契約書の成立のみならなず、特段の事情についても重要な争点ととらえ、これらの事情の探求を心がけるべきです。そもそも事件になるのは、特段事情がある(あるおそれがある)からだといっても過言ではありません。裁判官は、特段の事情の認定にもっと積極的になるべきだと思います。」(325頁)

 「本当の詐欺師の証言は、明確性、一貫性があり、反対尋問や補充尋問をしても内容がぶれないものです。その意味では、出来すぎの証言は要注意です。」(327頁)

 「最近の判決を呼んでいると、事件を解明しようとしていないのではないかと思われるものがあります。当事者や関係者の生の行動や、その行動をとったときの気持ち、心理に迫ろうとしていないもの、どうしてそういう行動をしたのかに思い至っていないものが散見されるのですが、それでは駄目だと思います。私は、事件を解明するようにしたいし、若い人にもそうして欲しいと思っています。確かに、結論をだすだけなら、細部の解明は不要なときもあるでしょう。しかし、当事者、市民は、裁判所が書証だけでおおざっぱな判断をすることを支持していません。当事者は、紛争の実態を知って欲しいとおもっているはずです。」(332頁)

 「事実認定力向上のためのアドバイス」として、「客観的事実との突き合わせが大切です。それをしないと、認定を誤ることがあります。
 また、当事者がなぜそのような行動をしたのかを思い描くこと、当事者双方のそれぞれの立場に立って、行動や心情を考えることが有益です。」(333頁)

 まだまだ以下に続きます。

 「そーだ、そーだ! いいぞ、いいぞ!」という発言ばかりです。

 でも、きっとこの発言で批判の対象となるような判決書を作成された裁判官に限って、このインタビュー集を呼んでも、これが自分のこととは気づかないのでしょう。
 自身も含めて、みなそんなもの。
 だから常に、自戒し、自らを振り返り、自身の活動がどうなのかをチェックし続けなければならない。
 がんばろう。おーっ!!

(おわり)

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