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2008年4月17日 (木)

「和解」の上手な裁判官【松井】

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 裁判所で裁判が継続していても、途中、大体は尋問手続の前、あるいは尋問手続直後、裁判所から、和解勧試ということで話し合いで解決できないかを検討する和解期日が設けられます。もちろん事案によりますが。


 法廷や従前の弁論準備手続室においては、原告と被告双方が同席して裁判官を交えて話をするのが通常ですが、和解期日では、まずは原告だけが部屋に入り裁判官と話をする、次に交代して、被告だけが裁判官と話をするということがあります。
 片方ずつそれぞれから裁判官が和解にあたっての解決案、その意向を聞き取ります。
 そのうえで、また被告と原告が入れ替わり、裁判官の方から、あちらはああいっていますよ、あなたももっと妥協したらどうですかといったやりとりが行われることになります。

 ただ、ここで「和解をまとめる」のが上手な裁判官とそうでない裁判官ということで、裁判官の技量の差が現れます。
 2年間の司法修習において、大阪地方裁判所の民事の部に4か月身をおいた際の経験、さらには弁護士になってからのこの9年間の経験からは、端で見ていて、「お、この人は和解をまとめる技術があるな。うまいな。」と思わせられる裁判官というのは、双方の話をよく聞く人だということです。

 「プロカウンセラーの聞く技術」(東山紘久、創元社)という本があります。この本も私がときどき読み返す本です。
 人の話を聞く、ということは一つの技術です。
 この点、出来る裁判官というのは聞くのが上手です。
 日産のゴーン社長の記事をあちこちでよく見かけますが、記事曰く、ゴーンさんが最も原点として大事にしていることは、「人の話に耳を傾ける」ということだそうです(といった記事を目にした記憶が印象に残っています。)。
 人は、自分の話を聞いてもらったという実感を得られると、同様にその人の話に耳を傾け始めます。
 裁判の和解手続も、同じだと私は思います。

 つまり、和解の上手でない裁判官というのは、自身の心証を開示するだけで、当事者の話に耳を傾けようとはしない、傾けるふりすらしようとはしないのです。

 和解は、双方の「妥協」によってしか生み出されません。どちらかの言い分を100%きくということもありますが、それは敗訴に等しいものです。双方から妥協を引き出し、合致点を見いだす作業としては、当事者はもちろんそうですが、裁判官も、双方の言い分をまずよく聞くというのが必須だと思います。


 私がまだ弁護士3年目くらいだったころ、私はひどい失言をしたことがありました。
 弁論準備期日の前に提出した、私としては渾身の力作準備書面。この事件の本質、実態は、原告の訴えとは異なり、こういうものなんだ!という書面を被告側として書き上げ提出しました。
 期日当日、裁判所に行くと、明らかに裁判官の態度が異なりました。
 こちらの言い分を認めた形で、双方の代理人弁護士に対し和解を強く勧め始めたのです。
 正直なところ、「勝った」と思いました。
 ただ、そこは裁判官、バランス感覚をもって、こちらに尋ねてきました。この案であれば被告(こちら側)に有利だけど、それでは和解にはならない。和解することについての原告さんの側のメリットも見つけないとね。」と言って、こちらに何らかの妥協を迫ってきたのです。
 そこで私の口をついて出てきた言葉。
 「判決が出ないということが、原告のメリットではないですか。」

 つまり、和解をせずに判決が出るとなると、原告の敗訴判決が出る、和解すれば敗訴判決は出ないでしょ、敗訴判決を回避できることそれが原告のメリットといことです。
 一瞬、その場が凍りつきました。
 しまったと思い、「言い過ぎですかねぇ。はははっ。」と笑ってごまかそうとしましたが、裁判官はさすがに毅然と「そうですね。」と一言でした。
 結果としては、相手の望む事柄をこちらも与えるという形でおさまり、良い和解が出来たのですが、和解が成立するか否かということは、代理人弁護士の力量はもちろんですが、裁判官の力量に負うところも多分にあります。

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 上記の裁判官は、和解を成立させるために原告側の言い分も聞き、それを考慮するように被告側に持ちかけました。原告側としては、裁判官にここまで配慮してもらったら、しかも和解を蹴ったら敗訴の可能性が高いという状況で、和解を蹴るということはし難かったかと思います。裁判官からの配慮を感じたからこそ和解に応じたのだろうと思います。 
 和解をまとめるのが上手な裁判官というのは、人間心理に造詣が深いものです。
 結局、人は、脅しでは決して動きません。
 このままでは貴方は負けるよ、といったことで人がおいそれと大幅な妥協をして和解を成立させるということは意外なほどまずありません。(このとき、もちろん代理人としては必死に説得しますが。感情を捨て、経済的合理性で判断することの良さを説きます。)。

 ただ、人間心理としては、そこまで言われるなら、納得でないままに和解をするくらいなら、負けると分かっていても和解を蹴って判決を、ということになり、この点を裁判官は分かっていないのではないかと思うことも、残念ながらないではありません。

 裁判官が一言、当事者の言い分に耳を傾け、相応の理解を示したうえで、心証を開示して和解をすすめたらな、当事者も納得して気持ちよく和解に応じるだろうにということがあると、まったく残念でなりません。

 裁判所修習の際に学んだことは、裁判官が和解として双方から妥協を引き出そうと思ったら、決して、貴方の方に言い分があるなどということは口にせず、それぞれの弱点を指摘するということでした。自分の方が勝つ、と思わせるようなことを言ってしまうと、普通、じゃあ和解するメリットなんてないから、判決で、ということになります。ただ、それはまず当事者の方の言い分によく耳を傾けたうえで、貴方の言い分はこの点よく分かります、ただ、判決となるとこういう弱点がある、そうなると判断は難しい、ここで妥協して和解をするのが貴方にとって一番いいことだと思いますよ、と言った風に切り出すのです。
 裁判官は皆、こういったことまで考え抜いて和解期日に臨んでいると信じています。私は。検証のしようもないから分かりませんけど。


 ただ、こういう「聞く技術」は、裁判員裁判の制度が運営されだしたら、担当裁判官にまず求められるテクニックだとは思います。一方的に喋るだけでは、「裁判官」という権威での脅しだけでは、人は動きません。たぶん、きっと。まずは裁判員になられた人の意見によく耳を傾けないと。
 これは裁判官に限らず、弁護士も同じ。
 まずは相談者、依頼者の方の話に対し、先入観・偏見なく、耳を傾けるように心がけているつもりです。ただ、そのうえで証拠が弱い、あるいは法律上、請求権として成り立つ根拠が見あたらないといった弱点を指摘せざるをえないときは指摘させていただきます。
 そのうえでそこにある問題を解決する最善の策を見つけるべく努力します。
 できません、無理です、NO、といだけなら、弁護士は役立たずだと思いますし。
 依頼者が、一番に望むことは何かを探り、それに向けての方策、次善の策などを検討し、示すことが弁護士の勤めだと思います。
 ただ、そのためにはまずは、決めつけたりせずに依頼者の方の話に耳を傾けることが大事だと思っています。
(おわり)

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