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2008年4月24日 (木)

取締役の責任~有限責任論の根拠は?~【松井】

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↑ ダブル・フレンチというらしいです。PCのキーボードを叩くので爪を伸ばせません。塗ってもいませんが。


 判決書の全文を読まないと詳細は判りませんが、昨日4月23日付けの報道によれば、以前、このブログ記事でも触れた蛇の目ミシン株主訴訟の差戻審の判決が昨日、東京高等裁判所であったようです。
 主文 当時の取締役ら5名に対し583億円の支払いを命じたとのこと。

 なお、これは株主代表訴訟なので支払先はもちろん会社に対してです。

 以前のブログ記事
 コンプライアンスって何?~こうあるべきだということ~【松井】 


 新聞の記事なのでどこまで信用できるかという問題はありますが、紹介されている早稲田大学法学部の上村達男教授のコメントが気になりました。
 「『株主は有限責任なのに、取締役は無限責任という現行法を見直すべきだ。』と指摘している。」とのこと。

 !?

 株主は共益権と自益権しかないよ、つまり基本は議決権と配当を受ける権利しかないよ。投下資本を回収しようと思ったら売るしかないよ。
 一方、当時の取締役経営者は、他人の財産を預かり、幅広い裁量のもと経営を決定する権限があるよ、それに対して相応の報酬も会社からもらっているよ。
 なのに、なぜ株主と取締役を同列に論じるの?!

 他人の財産を委任によって預かり、損害賠償責任が発生する大前提として、要求される注意義務違反があり、それによって会社に損害を被らせたらその損害額について因果関係がある限り、賠償責任が生じるというのが当たり前じゃないの!?
 583億円の賠償命令も、5人でそれだけの損害を会社に与えることを注意義務に反してやったからの過失責任でしょ。
 決して、失敗したから責任を負えという結果責任を問うているものではない。
 なのになぜ、取締役だけ、個人的に支払不可能な金額の損害を会社に負わせた場合は責任を制限すべきという議論が出てくるのか。全く理解できません。



 この理屈でいうなら、過失責任の結果、第三者に損害を負わせても、その人にとって支払不能であるなら、責任を制限すべきということです。
 例えば、過失によって4人の人を死亡させる事故を引き起こし、損害額が3億円になった、しかし責任を負う加害者は50歳で年収500万円、大学受験をひかえた子どもが3人といった場合だったら、やっぱり損害賠償額を限定すべきということになるのでしょうか。
 
 確かに、責任について制限した方がいいのではないかという発想も気持ちとしては分からないでもありません。
 ただ、それでは発生した損害の落とし前をどこでどうつけるのかという点のフォローも必要であり、何ら過失のない被害者が泣けということなのでしょうか。
 バランス的には、保険制度を充実させるというのが一番の現実的なような気がします。

 同期のKYさんへ。損害賠償論の研究ということであればこの有限責任論も面白いのではないでしょうか。どうでしょ。

(おわり)

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