「市場と知財戦略」と会計制度【松井】
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2月21日付けの日経朝刊で見かけた記事について、ひっかるものがあったのでここにメモ。
「市場と知財戦略」として、「収益直結問われる日本企業」、「特許抱え込みの限界」といった見出しが踊っていました。
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要は、「『収益につながる特許を出そうとする米国よりも量を優先する傾向がある』(米ボストンの投資会社)」ということらしい。
また、「日本は特許紛争に備えて部署を設けるなどリスク回避目的が目立つ。一方、米国は収益に直結する知財戦略の立案を重視する傾向が強い」とのこと。
で、何にひっかかったかというと。
「日本でも国際会計基準に合わせ、研究開発費を研究・開発段階に応じて資産計上する動きが始まった。」という箇所。
「開発中の技術が収益に結びつくと判断できる段階で計上されるため、投資家は特許開発などの費用を知る目安になる。」。
うーん。
大丈夫なんだろうかという不安が素朴に沸き上がった。
またもや、見積もり、予測によって、研究開発に投じた費用?が資産?として計上される。
「開発中の技術が収益に結びつくと判断できる」ための明確な基準をASBJで公表するんだろうけど、裁判所の判断のブラックボックスじゃないけど、ある程度、曖昧にならざるを得ないのではないだろうか。
となると、その場合、企業が作成し公表する財務諸表に対し、信頼できるのだろうか。監査をするんだろうけど、信頼性が付与されうるのだろうか。
本来、何の資産性もなかった費用が試算として計上されて、バランスシートの見栄えがよくされるだけで、でも後からそのことが「粉飾」としてバレて大あわて、ということにならなければよいんだけど。
極論は承知のうえで、監査制度なんて始めからない方が投資家の利益になるんだということを口にされていた元監査法人の公認会計士の方がいらっしゃった。監査がなければ、企業が作成し公表する財務諸表に対して疑ってかかるから、という極論を時々、思い出す。
(おわり)
去年、国際会計の動きについてまとめたPDFファイル 「20070620.pdf」をダウンロード
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