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2008年1月12日 (土)

監査基準委員会報告【松井】

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 公認会計士の方が行う財務諸表の監査には監査基準というものがあります。実は。私も最近知りました。そこには体系があって、次のようなものらしいです。

Ⅰ 監査基準
 第一 目的基準
 第二 一般基準
 第三 実施基準
 第四 報告基準

そして、
Ⅱ 実務指針
 1 監査基準委員会報告
 2 監査委員会報告
 3 IT委員会報告
 4 銀行等監査特別委員会報告

Ⅲ 各研究報告。


2 
 このうち、「監査基準委員会報告」というものをいくつか目にする機会があったのですが、驚きの品でした。
 監査人が企業の財務諸表の監査を行うにあたっての、非常に詳細かつ具体的な、従うべき準則として示されています。
 例えばこんな感じ。

監査基準委員会報告書第22号

継続企業の前提に関する監査人の検討

経営者の評価の検討
14. 監査人は、継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況を識別した場合には、当該事象又は状況に対する経営計画等が、当該事象又は状況を解消あるいは大幅に改善させるものであるかどうか、実行可能なものであるかどうかについて、十分かつ適切な監査証拠を入手しなければならない。
 この場合、監査人は、経営計画等のてん末について予測することはできないため実施可能な範囲で例えば次の点を考慮して、経営計画等が不合理でないかどうかを判断することに留意する。

<資産の処分に関する計画>
・資産処分の制限(抵当権設定等)
・処分予定資産の売却可能性
・売却先の信用力
・資産処分による影響(生産能力の縮小等)

<資金調達の計画>
・新たな借入計画の実行可能性(与信限度、担保余力等)
・増資計画の実行可能性(割当先の信用力等)
・その他資金調達の実行可能性(売掛債権の流動化、リースバック等)
・経費の節減又は設備投資計画等の実施の延期による影響

<債務免除の計画>
・債務免除を受ける計画の実行可能性(債権者との合意等)



 このような事柄が、監査にあたって監査人が依拠すべき監査基準として策定され、公表されているのです。 
 一般的な専門家向けの出版物でということなら分からないのでもないのですが、監査人皆がが従わないといけない基準として、そのほかにも具体的に、ここまで手取り足取り定めるのか!?というような「基準」が定められているようです。
 
 暗黙知が詳細に文字化されて公表されている、しかも従うべき基準として。そのことに驚きです。



 ただ、監査人による監査において依拠すべきとされる基準がこのようにどんどん詳細かつ具体的に定められていけばいくほど、「監査の品質」は確かに確保されるのでしょうが、誰がやっても同じということで均質化・均等化され、「公認会計士」の資格がなくてもいいんじゃないの?!ということになるのは必然のような気がします・・・。人数不足が叫ばれていることですし。

 公認会計士の方が、「二級公認会計士」といったもっと取りやすい資格をつくるべきだといったことを口にされているのを聞いたことがありますが、監査基準の実態を知れば知るほど私としては妙に納得です。
 
 2006年12月のエントリーですが、日本の資格をもって日本の監査法人で働いた後、今はアメリカで監査業務をされている方の文章です。
 ↓
 http://lat37na.exblog.jp/6182931/

 監査業界の変遷が興味深い。

 悪口では、日本の大監査法人は海外の大監査法人の支店となっているという言い方も耳にします。もちろん、監査業務の実態を私は知りませんので、あくまで耳にした表現として。

 ただ、いくつかの監査基準委員会報告書を目にすると、その詳細さと具体的な指針に対し驚嘆すると同時に、どういった点でプロフェッショナルとしての裁量・技量が発揮されるのだろうかと素朴な疑問が浮かぶのも事実です。
 まあ、マニュアルがあることと、それを実践できることはまた別のことですが。もちろん。

 と同時に、マニュアル・指針としてこちらの業務に役立ちそうなものは使わせてもらおうかと表現をメモしたりもしていますけど。



 マニュアルと暗黙知。暗黙知だけで、経験だけでオン・ザ・ジョブ・トレーニングで技術を身につけろというのも非合理的だとは思いますが、裁量の発揮の余地がないほどに手取足取り段取りを指示されて仕事をするのも面白くない。
 何事もやはりバランスか、ここでも。
 とはいえ、自分が日常を過ごす世界と異なる世界を垣間見るのは面白い!

 そういえば、昔、ひょんなことからテレビ番組の製作スタッフに混じって夜中の12時にラーメン屋でラーメンを一緒に食べたことがありました。
 夜中の12時に8名ほどの大勢のスタッフが翌朝の生放送に向けて準備作業中でその合間を抜けての一休みでのラーメン。ラーメンを食べて店を出ると、私は家に向かいましたが、スタッフの方々はまた職場へと戻っていきました。
 自分が生きるのとは異なる時間と場所で、まったく自分の知らない仕事が行われている。 
 パラレル・ワールドを見た思いでした。

 やはりいろいろな業界を見るということが大事ですね。自分の位置を確認するには。
 そういう意味では、私がいま働かせてもらっている業界は、まだまだ暗黙知が優勢かも。
 公認会計士の方々の世界の「監査の品質」という言葉を目にし、聞く度に、「訴訟行為の品質」、「法律相談業務の品質」といった言葉が脳裏をよぎります。「品質」は、おそらく、千差万別かもしれない・・・。
 なぜなら。私自身が既に私の「品質」を判断できないから。
 なぜなら。「基準」がないから。

 アメリカのワールドコム事件やエンロン事件、さらには日本のカネボウや、ライブドア事件のような、業界全体の信頼をゆるがすような大事件が起こったら、会計ビッグバンとはまたちょっと異なりますが、感覚的に言えば、法曹ビッグバンといったような出来事が起こるのでしょうか。
 公認会計士の方々の仕事も大変そうだと思います、率直に。でも世間から見たら、「品質」をちゃんと確保できるように「基準」としてルールを作ったから守ってねということでしょうか。業界全体で信頼を失ったとされているわけですから。
 去年7月、大手監査法人が消滅してしまったように、いつか大手法律事務所が消滅したりするような時代が来るのでしょうか・・・。
 誰も分からない。ただ、上記のLat37naさんの記事は示唆に富むかと思います。

(おわり)
 

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