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2007年12月 5日 (水)

リスクのない貸し出し、なんてあっていいの?【松井】

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 11月30日付けの朝日新聞の「私の視点」という欄で、「銀行員(中小企業担当)」という倉本清さんの意見が掲載されていました。
 表題は、「信用保証制度 責任共有制度の見直しを」とあります。
 ひっかかったのは、責任共有制度によって「金融機関は貸し出し当初から、20%の信用リスクを抱えることになる。」として問題提起している、その問題設定のあり方でした。

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 この「リスクを抱える」ことによって、金融機関は「新制度のもとでは、20%の信用リスクのために債務者区分の判定をせざるを得ない。」そして、「結果として、決算内容が芳しくない企業には資金が行き渡らなくなる。」とし、不都合として次のように締めくくっています。
 「責任共有制度の導入は、中小企業、特に零細企業に対するカネの流れを止めてしまうおそれが大きい。自分のところは大丈夫と考えている企業にも連鎖倒産の危機が迫る。早期の見直しを求めたい。」


 貸し付ける側の金融機関が、20%の信用リスクを負う場合、いったいなぜ、カネの流れを止めることになるのか。
 ひっかかった原因は、それじゃまるで金融機関は、保証協会の100%保証の制度のもと、自ら貸し出しのリスクを考え、判断することを放棄して、いわば保証協会におんぶに抱っこで貸し付けていただけじゃないのか!?という疑問が浮かんだことにあります。
 貸し付ける側が、単純に、企業の決算内容だけ、数字だけを見て、形式的に「債務者区分の判定」を行うことが当然の前提にされているように読めます。
 しかし、根本的な問題は、貸し付ける側の金融機関が、自らリスクを背負って、つまりそれは「分析」「判断」を適切に行い、貸し付けるということがされていなかったということにあるのではないか。
 
 賛否両論があるようですが、当時マッキンゼー・アンド・カンパニーに勤務されていた、現早稲田大学教授の川本裕子さんの「銀行収益革命」(2000年、東洋経済新報社)という本を読んだことがあります。
 その本で書かれていたことを思い出しました。

 引っ張り出してちょっと読み返してみました。
 「日本でもヨーロッパでもリスクに見合った値付けをいち早く行った銀行が最終的には利益をあげていることになる。」(81頁)。
 データ、データ分析の適否について判断する能力時間は私にはありませんが、今回の「責任共有制度の見直しを」という掲載記事は、保証協会の100%保証の制度保証によって、金融機関が「リスクに見合った値付け」を放棄することを意味しているように思えてなりません。

 20%の信用リスクを負担する⇒だから、決算内容のよくない中小企業におカネが行かない、という点に実は、論理の飛躍があるのではないかと思います。
 決算の数字を見るだけじゃなくて、きちんとリスク分析を行い、貸し付けるべきところにはそれ相応の利息を付して貸し付ければいいのではないでしょうか。
 その努力を放棄、あるいは収益の機会を自ら放棄しているように思えます。

 まあ、金融をよく知らない、分かっていない素人の素朴な疑問かもしれませんが。
 記事を読んでいて、なんとまぁ、消極的な!と思いました。
 
 また、上記の記事のよく分からなかった点は、「責任共有制度」と90年代の総量規制、バブル崩壊、失われた10年を同じ類のものと論じている点です。飛躍しすぎでは・・・。


 信用保証協会による100%保証、それを基にした安易な貸付、そして保証協会の保証を得るために連帯保証人になった経営者の親族。借り入れた企業の破産により、連帯保証債務に苦しむ親族の方を見たことが疑問に繋がっているのかもしれません。連帯保証人になられていた方は、企業の事業とはまったく関係のない、ごく普通の会社勤務の方でした。その方が、親族の企業の倒産のため、ある日突然、保証人として数千万円の債務の負担が現実化してしまうのです。まぁ、だったら連帯保証人を拒否すればよかったのではないかという疑問もありますが、連帯保証人をつけないと保証、貸付けを受けられないやり方がされており、親族なので拒みにくいという心情があることを完全無視することも、問題の本質が隠れてしまうかと思います。
 貸し付けるべきところには貸し付ける、そうでないところにはたとえ保証協会の100%保証があっても貸し付けない。メリハリがあってしかるべきかと思います。それが、考えるということでは。
 ただ、信用保証協会は連帯保証人をとることはやめたとか。合理的でいいことだと思います。

そうそう。川本裕子さんの「銀行収益革命」の副題は、「なぜ日本の銀行は儲からないのか」です。
信用保証協会の100%保証がないとカネを貸せないというようでは、そりゃ、儲からないよねと思います。この本は2000年に出版されていますが、今は2007年。こんなものなんだろうと一人納得。

(おわり)

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