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2007年12月13日 (木)

株式会社と相続と株式~事業承継対策は必須~【松井】

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 商法ははっ。会社法106条、共有者による権利の行使に関する条文があります。
 
 106条 株式か二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。



 株主とは、株式を有するものであり、株式の基本的内容は105条に定めてあります。 
 ①剰余金の配当を受ける権利
 ②残余財産の分配を受ける権利
 ③株主総会における議決権

 株式は、一株、100株と数えられますが、例えば、被相続人が、自身が設立し代表取締役となっていた株式会社の全株式1000株を有していた場合、死亡すると株式はどうなるのか。
 遺言書はなくて、法定相続人は子ども3名。
 1000株が法定相続分3分の1宛で即、子らに相続されるのでしょうか。
 そうではない、と考えられています。
 例えば、1000万円の貸金債権であれば、相続により当然に3分の1宛、相続されます。
 では、株式はどのように相続されるのか。
 遺産分割協議が成立するまでは、1000株が法定相続人3人に「共有」される状態となります。
 
 このとき、「株式が二以上の者の共有に属するとき」(106条)となります。
 そして同条によれば、株主総会での議決権行使、あるいは配当請求などについては、「権利を行使する者一人を定め」、株式会社にその者の氏名又は名称を通知しろ、しなければ「当該株式についての権利を行使することができない」とされています。



 共同相続人が準共有株主の地位を有することになります。でもこのままでは株主としての権利行使を会社に対して出来ない。では、どうやって「権利を行使する者」を定めるのか。
 この点、最高裁判決は、持分の価格に従いその過半数をもって決することができるとしています(最判平9.1.28)。
 多数決です。

 なので、相続人である子3名の間で紛争が起きた場合、2名対1名になってしまったときは、2名の意向によって「権利を行使する者」が決められてしまいます。
 そして、その1名が、少数派の1名の意思に反して、総会での議決権の行使をすることも可能と解されています。

 最高裁判決は、被選定者は、自己の判断に基づき議決権を行使できるとしています(最判昭53年4月14日)。



 結果、遺産に株式が存在した場合、しかもその株式が親族企業の会社の株であった場合、会社の経営権をめぐる紛争として、問題点が顕在化します。
 どういうことかというと、子3名A・B・Cが相続した場合、AとB 対 Cで利害が対立すると、AとBで株式の持ち分の過半数を超えることから、権利指定者をAに選定し、議決権の行使によって多数派を構成し、Cの意思に反して、Bを取締役に選任するといったことも可能です。
     

    会社      株式1 甲 相続⇒ 準共有:A,B,C

             株式2 D
             株式3 D
             株式4 E

 その趣旨は、会社にしてみれば、株主は多数存在するという大前提の中、株主の一人甲が死亡し、相続によってA,B,Cという3人が登場したからといって、A.B.Cを当然に、一人の株主同様に扱うということは実務上、困難であるという、会社側の事務上の都合でもって、権利行使者の指定という条文が置かれたのだろうと考えられます。
 株主に対する通知等を定めた126条3項も同じ趣旨だと思います。
 対会社との関係では、A,B,Cの方で、誰か代表者を定めて、通知してね、ということだと考えられます。会社としては、その通知を受けない限り、基本的に株主として対応しなくてよい、と。

 一般論からすれば、しごくまっとうな利益衡量かなと思います。
 ただ、この会社というのが、ワンマン社長の父親が代表取締役として実権を握っていた親族会社だったときにでも、上記のように扱っていいのか否か。

 極端な話しとして、甲がただ一人、全株式を保有していた場合はどうなるのか。

 遺産分割協議が成立しない紛争状況において、AとBの意思だけで、会社の意思決定を支配することが可能になります。
 
 また、AとBとの関係においても、相続事件でありがちな話しではありますが、当初は利害が一致して、結託して、権利行使者をAと選任していたのですが、株主の権利行使において、AがBの意向を無視して、やりたい放題となった場合、どうしたらいいのでしょうか。
 この点、Bは、Cと手を結んで、新たに多数派を形成して、持分の過半数でもってAを「解任」することが出来ると解されています。
 しかし、一旦対立したBとCが手を組めるのかという事実上の障害が十分、考えられます。
 となると、あとは選任されてしまえばAの天下、といった状況になり得ます。



 これは、現実にもよくある深刻な問題状況です。
 Aが経営の才能、知識、経験を備えた者であれば、会社経営が相続紛争によって傾くという心配はないかもしれません。
 しかしながら、このAが全く無能な者でありながら、経営に意欲を示してしまった場合、会社は、相続紛争をしている間に「破産」ということも十分ありえます。
 代表者個人の会社といえるような状況であった場合、会社が負債を抱えていると、代表者個人も会社の債務につき連帯保証債務を負っていることがほとんどです。
 
 相続争いをしている間に、会社が倒産、結局、分ける財産もなくなってしまう、ということが十分、あり得ます。
 
 経営者の方は、気を付けて下さい。事業承継の対策は必須です。元気でまだ大丈夫と思っているうちに対策を立てて実行するのが一番です。

 上記のような問題については、大野正道教授が2001年の時点で「企業承継法入門」(信山社)という著書で、整理し、解釈論についてでも提案されています。
 なお、最高裁判例でも、「共同相続人の有する株式が発行済み株式の全部に相当」するような場合、あるいは「発行済株式総数の過半数を占めている」場合については、異なる取扱いを認めたりはしています。

 ただ、やはり株式会社の世界は、資本多数決の世界であり、少数派は辛いよ、ほんと。 
 相続人の皆さん、相続人の一人から、「権利行使者の選定をしようよ!」と提案されたときは、よくよく注意してくださいね!油断しちゃダメですよ。

(おわり)

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