民事訴訟における事実認定~筆跡鑑定について~【松井】
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法曹会という出版社から、よく司法研修所の本が出版されます。司法研修所の本といえば、教官をしている裁判官たちがようは筆者ですので要注目の書籍が多いです。
ということで、11月、「民事訴訟における事実認定」という本が出版されました。
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第1章 事実認定の基礎
第2章 各種証拠方法の証拠力
第3章 契約類型による事例分析
うち、第2章、第4節、鑑定というところで、第2 鑑定の対象とし、3 経験則を具体的な事実に適用して得られる事実判断としての鑑定のうち⑷として、筆跡鑑定について触れられていました。
刑事事件での裁判例がほとんどのようですが、それらを分析した結果として次のように結論づけられています。
202頁以下
「判例の立場は、具体的な鑑定の中身について、慎重な検討を加え、個別的に証拠価値を評価していくというものといえよう。そもそも筆跡鑑定事態、筆跡の恒常性・希少性についての限界があるといわざるをえないから、その信用性の判断をする際には、以下の各点に留意し慎重にすることが肝要である。」
以下、アからキまで7つのポイントが示されています。
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裁判における筆跡鑑定の証拠価値について興味のある方は、必読かと思います。
目次だけ読んでいても興味津々です。
「全体像の把握」として、「「鳥の目」と「虫の目」の使い分け」と小見出しがついています。
また、「事実認定の精度を向上させるための留意点」等々。
早速、読まねば!
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なお、筆跡鑑定については、「アンケート調査の結果によると、筆跡鑑定の信用性については懐疑的な見解が多かった。」とあります。アンケート調査までしたりしているんですね。
日経ビジネス・オンラインでは、
、として元銀行員で小説家の黒木亮さんが書かれていますが、裁判官によるこういった研究成果の発表物を目にし、読むと、日常の業務を行いながらよくこれだけ研究しているなとそのエネルギーに驚くことがよくあります。日本の裁判官がおかしい
尋問中、居眠りする裁判官もいれば、そうでない裁判官もいるということなんでしょう。
裁判。訴訟手続。訴訟代理人。
嫌い、好き、好き、嫌い、嫌い、好き。
勝てば官軍ですかね、やはり。
監査のない社会、公認会計士のいない社会がよい社会という言い方があるようですが、裁判のない社会、裁判官も弁護士もいない社会がよい社会なんでしょうね。究極は。
(おわり)
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