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2007年12月27日 (木)

事業承継と遺留分・遺留分減殺請求訴訟~皆、模索中~【松井】

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 判例タイムズ2007年10月1日号では、「事業承継と遺留分」として北海道大学の藤原正則教授の文章が掲載されていました。
 2007年6月に公表された「相続関連事業承継法制等検討委員会」の中間報告を受けてのものです。

 結論的には、同報告では現行の遺留分制度に対する法改正に言及されているのに対し、「遺留分を制限する方向には少なからぬ疑念を感じる。」としています。なぜなら、「家族を社会連帯の制度と位置づける法制度全体の重要な一翼を担っているのが、遺留分制度だと考えるからである。」としています。そのうえで、事業承継と相続法制については、「まずは現行法での予防法学上の措置が事業承継という問題に即して検討されるのが、問題解決の順序ではなかろうか。」として、特別受益、遺留分法規、議決権制限種類株式の発行、贈与・遺贈といった制度の利用について詳細に言及されています。信託の活用についても、「事業(会社)承継への信託の活用は従前から説かれており、改正信託法の下での可能性も考慮されるべきであろう。」と指摘しています。



 事業承継については、私が経験した事例では、まさに頓挫し、相続人間の不信感の増長と商法106条(共有者による権利の行使)の利用の結果、全く会社経営の経験も、能力もないといえる方が代表取締役に就任する結果になったことがありました。事務所に相談に来られたときには、既に商法106条の権利行使者の指定がなされており、これを覆す多数派形成の説得活動も頓挫したというものでした。本来なら、権利行使者の指定をする際に、一相続人からその案内があったとき、それが一体何を意味するのかについて相談に来て欲しかったと残念な思いをしました。

 同族企業における事業承継は、創業者たる被相続人が保有する株式の生前贈与という形で行われることが多いかと思います。
 この点に対する問題点の指摘が次の遺留分減殺請求です。
 「後継者以外の相続人が遺留分減殺請求権を行使すれば、生前贈与、遺言による処分は効力を否定され、後継者への資産の集中は頓挫する。」「後継者への自社株の生前贈与は、後継者の事業の寄与による株価上昇も含んだ形で遺留分減殺請求の対象となる。後継者への自社株の贈与は、10年以上前に行われているのが4割に上るにもかかわらずである。」(前記藤原)とあります。


 遺留分は民法1028条以下に記載されています。
 1031条 遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる。
 1028条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
 1号
 2号

 私自身、過去に何回か、遺留分権利者の方々の代理人となって遺留分減殺請求訴訟を提起したことがあります。
 被相続人の遺言として、一人の者に対し包括遺贈が定められた遺言書が出てきたケースでした。それも公正証書遺言で。
 なので、遺言も作れば安心というものでは決してありません。妙な内容の遺言を作るとかえって紛争を複雑化させるだけになります。
 遺留分減殺請求訴訟は、これまた実はなかなか特殊な類型です。
 まずもって、以前、家裁の裁判官も講演で言っておりましたが、相続事件を扱うのであれば、表計算ソフトのエクセルの利用は今や必須の状況であり、特に、遺留分減殺請求はそうです。計算方法について、エクセルを利用すれば、過程が一目瞭然となります。
 つまりそれだけ、過程の多い算出を行うということです。

 条文、1028条をみると、単に、例えば、直系尊属のみが相続人である場合、被相続人の財産の三分の一、 それ以外の場合、被相続人の財産の二分の一とあるので、単純に、相続発生時の遺産総額の二分の一が遺留分権利者らの遺留分として計算すればいいようにも思えます。 
 が、違います。
 いろいろな計算過程を踏まえて初めて、侵害されている遺留分額がいくらなのか、訴訟で請求できる金額がいくらなのかが算出されます。
 この遺留分減殺請求訴訟については、判例タイムズの2007年12月15日号でも、小論文が掲載されていますのでまた別途、述べたいと思います。


 確かに、一つの方策としては、事業承継者以外の相続人において、事前に納得のうえ、遺留分放棄の手続きをしてもらうことだと思います。
 この手続きは家庭裁判所に対する申立てなのですが、これも過去、数回、代理人として遺留分放棄の申立てを行ったことが私もあります。
 どのケースも、生前贈与あるいは遺贈とのセットで、紛争予防としてなされました。放棄をする推定相続人に対しては、十分な贈与が行われていました。

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 ただ、贈与の場合に問題となるのは、結局、税金の問題です。この点、相続時精算課税制度が出来ましたが、これが有効なのは一定の場合であり、有効でないケースも多々あります。
 これに対し、同族企業の株式の評価方法について見直されています。これと、議決権制限種類株式の発行、遺留分放棄の制度をうまくかみ合わせることが出来れば、スムースな事業承継が可能になる余地は増えるかと思います。
 ただ、非後継者の推定相続人が強硬であった場合、被相続人であり経営者がとりうる有効な手段はいかなるものがあるのか。
 相続関連事業承継法制等検討委員会も模索中のようです。
 中間報告では、「事業承継契約のスキームの創設」などが委員会で全体の賛成が得られたということです。
 問題は、いかなるスキームを創設しうるのかということです。
 
 相続紛争によって、事業がボロボロの姿になり、結局、相続人全員が損をする結果は、見るも無惨です。


 ★信託の利用に言及しているという、久保和英「企業法務と相続問題ー中小企業の事業承継を中心として」市民と法43号(2007年)49頁以下というのをチェックせねば。ノーマークだった。

(おわり)

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