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2007年11月15日 (木)

スズケン対小林製薬の仮処分~今後の行方~【松井】

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1 
 スズケンが小林製薬に対して行った仮処分の申請が11月12日付けで名古屋地裁から却下されたとの報道(11月13日付け日経夕刊)。
 小林製薬のHPでは早速、広報されていました。ちなみにスズケンの方では広報を見つけられませんでした。いいのでしょうか?最高裁HPの下級審裁判例のところでも載っていません。載るでしょうか?本当は、情報開示という点では差し支えない範囲で小林製薬は決定書全文を載せたらいいのにと思うのですが。たぶん本訴になるだろうし。争点を明らかにするという意味でも。


 今回の仮処分の詳しい内容は、まだ分からないけど、おそらく仮の地位を求める仮処分(民事保全法23条2項)だったと思う。係争物に関する仮処分は、給付請求権があることが前提だけど、小林製薬が保有するコバショウの株式に対して、スズケンが給付請求権を有するわけではないから。
 仮の地位を定める仮処分は、「争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる。」とされています。

3 
 「債権者」というのは仮処分の申立人側のことをいい、「債務者」というのは相手側のことをいいます。
 法23条2項のこの「債権者に生ずる著しい損害」の要件については、あの有名なUFJ信託銀行経営統合交渉差止仮処分申立事件の最高裁決定(最決H16.8.30)で次のように言われています(19年版有斐閣判例六法より)

 債権者が被る損害の性質、内容が事後の損害賠償によって償い得、かつ、仮処分命令が発せられた場合に債務者の被る損害が相当大きいと解せられる本件申立ては、本条2項の要件を欠く。

 利益衡量ですね。


 スズケンと小林製薬の仮処分を考えた場合、おそらく上記と同じような判断をしたのではないかと推測されます。何の根拠もない推測ですけど・・・
 でも株式を譲渡するなというのは、やっぱりよっぽどのことであって、契約にばっちりお互いをそこまで拘束するような文言が明記されていない限り、困難だったのではないかと思います。で、きっとそこまでの明記はされていなかった・・・。
 ただ、スズケン側の思惑としては、「騙された、損害を被る」という思いがあるわけで、今後どうなるかというと・・・。

 損害賠償請求の本訴、しかないかと思います。

 上記のUFJ信託銀行経営統合交渉差止仮処分申立事件も、その後、損害賠償請求の本訴となり。
 で。
 本訴の行方はというと、何億円だったかの和解金が支払われて終わったように記憶しています。
 なお、日本評論社から「UFJvs.住友信託vs.三菱東京 M&Aのリーガルリスク」という本が2005年に出版されています。



 スズケンは、まぁ、間違いなく損害賠償請求訴訟を起こすでしょうから、それに対して、小林製薬はどのように対応するのか。
 徹底抗戦?でしょうか。
 契約書を見ていないので分かりませんが、利害状況を見る限り、スズケンの主張、言い分に一理もないとは思えません。
 貴方が大株主だというから、貴方との契約で子会社・関連会社に対して、自分の大事な事業の一部を譲渡し、その対価としてその会社の株式の譲渡を受けた、それがもはや貴方の関連会社でもなくなってしまうというのでは、譲渡を受けた株式の価値にも大きな影響があり、いわば大事な事業の一部を騙し取られたような思いになるのはある意味、当然かと思います。
 事業譲渡の対価が株式ではなく、現金だったら、単なる売買で一回限りの契約関係で終わっているということになるのでしょうけど、「現金」と「株式」は当然、意味が違うのであって、一回限りの契約で終わるという意思表示にはならないかと思います。
 そこには何らかの継続的な関係の形成が意味されていたといえるのではないでしょうか。
 それを、子会社・関連会社の株式を一方的に譲渡自由だからといって、全然異なる外資系の会社に株式を譲渡することが果たして許されるのかどうか。
 スズケンは司法判断を問うでしょう。
 で、やっぱりお金をいくらか払って和解?でしょうか。
 個人的には要注目です。
 まずは仮処分の行方を見守らねば。
(おわり)

追記
 小林製薬とメディセオ・パルタックHDとの間のコバショウ合併の詳細
 http://www.mediceo-paltac.co.jp/news/pdf/2007/070926.pdf
 スズケンが20%の株を取得した経緯からして、やっぱりそりゃ怒るよね・・・。コバショウ、消滅会社みたいだし・・・。小林製薬もまさか強硬路線一本槍とは思えない、賢い会社なら・・・。株主に対する説明を果たしている?ただ、損害の算定が難しい。見えない財産だしねぇ。提携関係。具体的にどういうメリットがあったのか。やはり当初の合意時点での双方の利害、思惑が大きい。それを小林製薬は知らない、関係ないとは言い切れるのだろうか。裁判所は実は以外とドライじゃなかったりする。どうなるんだろう。代理人弁護士の見通しはいかに。

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