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2007年10月

2007年10月29日 (月)

NOVAの仕訳~クレジット利用の罠~【松井】

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10/30追記
「NOVAの監査 調査へ」と日経朝刊。「会計士協『リスク情報』開示焦点」」と。
中身には、「受講生が前払いしたレッスン料の45%を契約時点で売り上げとしており、収益計上の方法が適切だったのかも調査の対象となりそうだ。」とありました。
外から見ている分には、正直なところ、何を今更・・・という感が否めません。
また、「4-6月期の業績開示で本来計上すべき解約返戻金を一部しか計上しなかった。」ようです。本当は6月時点で債務超過だったかも!?ということ。


 10月24日の日経で、こんな見出しがあった。
 「支払能力を超す契約禁止 経産省審議会 割賦販売で義務づけへ」
  
  経済産業省の産業構造審議会の小委員会は23日、信販会社など割賦購入あっせん業者に対し、消費者の支払い能力を超える契約を結ばないよう義務づけることで一致した。」という。


2 
 NOVAが10月26日、大阪地方裁判所に対し、会社更生手続開始の申立てを行った。
 丁度、10月1日付けの判例タイムズには、「特報」として「外国語会話教室の受講契約の解除に伴う受講料の清算規定が特定商取引法に関する法律49条2項1号の定めに違反し無効とされた事例」として平成19年4月3日最高裁第三小判決の解説が掲載されている。
 法49条1項の趣旨について、最高裁はこう述べた。
 「特定継続的役務提供契約は、契約期間が長期にわたることが少なくない上、契約に基づいて提供される役務の内容が客観的明確性を有するものではなく、役務の受領による効果も確実とはいえないことなどにかんがみ、役務受領者が不測の不利益を被ることがないように、役務受領者は、自由に契約を将来に向かって解除することができることとし」
 
 そう。NOVAのビジネス・モデルは、講座受講料をポイント制とし、このポイントを大量に一括して買わせる、その際の支払方法としてはもちろん現金一括払いというものは少なく、70万円の総額であっても、1か月2万円を支払うというカタチで割賦販売を行うというものだった。収入月3万円の学生など。ただ、もちろんNOVAが分割払いを受け入れるのではなく、立替払いをしてくれる第三の会社、信販会社が登場する。

 このとき、NOVAの仕訳はどんなものか、公認会計士の方が示してくれた。

 現金   100  /  前受授業料  100
 
 そして、
 前受授業料 20  /  売上      20


 P/L 売上 20、 C/F 100 が計上される。

 営業C/Fは黒字であるが、先払いでもらっているものなので、黒字でもあやうい会社になるという。



 NOVAはいったいどこで過ったのだろうか。
 中途解約の場合の清算方法等に対する消費者からの苦情に対し、もっと早期に、もっと謙虚に耳を傾けていれば、ビジネス・モデルの転換も可能だったのではないか。

 電車の定期券を買って、解約した場合、清算金は割高になって当たり前だ。
 バナナを1本買ったら100円のところ、3本買うからというので270円にした。しかし1本返すというのなら、それは受け入れるけど、バナナ2本で200円だから70円しか返さない。270円÷3本=90円じゃないよ。
 という話し。
 NOVAはこの理屈で戦い続け、最高裁判所までいって負け判決を持ち帰った。
 絶対に自分の主張が正しい。
 思うに、商売なんだから、理屈を押し通すのではなく、相手の声に耳を傾けようよ、といったところか。
 
 最高裁の指摘は、法の趣旨、この契約の特性をよく見ていると思う。バナナの3本売りとどこが、どう違うのか。電車の定期券とどこがどう違うのか。
 クレジット利用での長期にわたる分割支払い方法。対価として提供される、モノの特殊性。

 経営上のワンマンという問題もあったようだ。
 いろいろな問題が合わさって、負のスパイラルを描き、今回の破綻に至ったのだろう。大ざっぱだけど。

 この失敗から学び、ビジネス・モデルを変更すべき業界、企業は、山ほどあるだろう。負債が大きくなる前に手を打たないと。
 営業C/Fが黒字だからといって、大丈夫とは限らない。

(おわり)

2007年10月25日 (木)

The paradigm in the music business ~長期契約のマドンナは何処へ~【松井】

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 前の続き。
 マドンナのオフィシャル・ウェブサイトでの告知の記事(末尾)を読んだ。

 The paradigm in the music business has shifted
 and as an artist and a business woman,
 I have to move with that shift,

 マドンナなりにmusic businessの環境変化に対応、あるいは変化させたということなんだろう。
 
 告知の記事を読むと、マドンナ側もライブ・ネーション側も手放しで大喜び。
 
 creat a new business model

とまで言っている。


 この告知の記事を読んでふと思った。
 果たして、マドンナは今後、大丈夫なんだろうか、と。
 契約は10年の長期の契約だとか。
 それは、ある意味、保証でもあるが、ある意味、拘束でもある。

 逆に、これからの「変化」に対応できなくなるのではないか。

 過去25年を振り返っても、自身が11歳のとき、今のこの音楽業界の現状は想像もつかなかった。CDが登場し、さらにはi-Tunesで音楽を買い、i-pod で音楽を聴くなんて。
 今後の10年間、同じように誰もまだ想像がつかない音楽ビジネス・モデルが登場しないなんて誰がいえるだろう。
 
 今回のマドンナとライブ・ネーションの契約の契約書は、たぶんきっと、すっごい、ごっつい契約書が作成されていると思う。

 「契約」について考えるとき、考えないといけないのは「出口」だ。円満にこれからビジネス関係を築いてやっていこうね、と言うときに、別れるときはこういう風にしようねと決めておくこと。こんな場合には別れようねと決めておくこと。
 当然、決めてあると思うけど。
 どんなときだろう。ライブ・ネーションが世間の変化に対応できないとき。あるいは、マドンナに商品価値がなくなったとき、か。


 今後、想像を超えた環境変化が起こったとき、果たしてライブ・ネーションは対応できるのだろうか。
 図体がでかいだけなんじゃないのかという気がふとしたもので、マドンナのこの契約は果たしてマドンナにとって利のあるものなのか疑問が浮かんだ。
 それはきっとライブ・ネーションという会社がどういう会社なのか、今ひとつ、よく分からないからだとは思う。上場しているようなので、情報はとろうと思えばとれるんだろうけど。

 ただ、告知の記事を読む限り、世界規模のネットワークを有するということが強みのよう。
 ただ、マドンナほどの知名度のあるアーティストが、今更世界規模のネットワークを頼りにするというのもどうなのかという素朴な疑問がある。
 ナイン・インチ・ネイルズのように、規模を小さくして、コンテンツごとに誰と手を組むのかを選別するという方が変化に対応しやすいのではないかと思うんだけど。
 ライブ・ネーション。どうなんだろう。 
 大丈夫か、マドンナ。
 選択を誤ったような気がしないでもない。
 次にでるアルバムのその後を見れば分かるだろう。


(おわり)

-マドンナ オフィシャル・ウェブサイトからー

Madonna Joins Forces With Live Nation In Revolutionary Global Music Partnership
Posted: 16 October 2007

LOS ANGELES, CA - October 16, 2007 - Live Nation's President and Chief Executive Officer, Michael Rapino officially confirmed today that Madonna has entered into an unprecedented global partnership with Live Nation and will become the founding artist in its Artist Nation division.

"The paradigm in the music business has shifted and as an artist and a business woman, I have to move with that shift," commented Madonna. "For the first time in my career, the way that my music can reach my fans is unlimited. I've never wanted to think in a limited way and with this new partnership, the possibilities are endless. Who knows how my albums will be distributed in the future? That's what's exciting about this deal - everything is possible. Live Nation has offered me a true partnership and after 25 years in the business, I feel that I deserve that."

"Madonna is a true icon and maverick as an artist and in business," stated Mr. Rapino. "Our partnership is a defining moment in music history. I am thrilled that Madonna, who is also now a shareholder in our company, has joined with us to create a new business model for our industry. Bringing all the varied elements of Madonna's stunning music career into the Artist Nation and Live Nation family, moves her future and the future of our company into a unique and extraordinary place."

The first-of-its-kind partnership between Madonna and Live Nation encompasses all of Madonna's future music and music-related businesses, including the exploitation of the Madonna brand, new studio albums, touring, merchandising, fan club/web site, DVD's, music-related television and film projects and associated sponsorship agreements. This unique new business model will address all of Madonna's music ventures as a total entity for the first time in her career.

Arthur Fogel, Chairman of Live Nation's Global Music Division and Chief Executive Officer of Global Touring, who has produced the artist's last three worldwide tours with the company which generated close to $500 million in the last six years commented, "Madonna is without a doubt one of the most fiercely original artists in history. It is a great opportunity for Live Nation and Artist Nation to build upon our years of success with Madonna as a touring artist."

Artist Nation was created to partner with artists to manage their diverse rights, grow their fan bases and provide a direct connection to fans through the global distribution platform and marketing proficiencies that have made Live Nation the world's largest live music company. Headed by the division's Chairman and Chief Executive Officer, Michael Cohl, Artist Nation has significant infrastructure in place to execute additional revenue streams including recorded music, merchandise, studios, media rights, digital rights, fan club/website and sponsorship divisions.

Joining with Artist Nation to work with Madonna will be Live Nation's unmatched global distribution platform and artist-to-fan-reach, including over 80 offices in l8 countries, over 200 national and local sponsorship personnel, over l60 venues, access to over 35 million fans that attend well over l0,000 shows that Live Nation produces, promotes and/or hosts each year for over l,000 artists including fan access via Live Nation's growing database of over 25 million fans.

"I've been fortunate enough to work with Madonna for half my life. She has always encouraged me and set a great example for me to push the boundaries to reach our full potential. This partnership exemplifies just that," commented Madonna's co-manager Guy Oseary.

Angela Becker, Madonna's co-manager added, "The partnership and vision for the future that Artist Nation along with Live Nation presented to us assured me that this is the ideal home for Madonna. It is with great trust and optimism that we collectively move ahead together."

In regard to Madonna's relationship with her current label, the artist commented, "My time with Warner Bros. Records has been great. I appreciate their hard work and value the many relationships I have developed over the years with the label in the U.S. and around the world. I have an album coming out with them next year and I'm excited about it. We still have work to do together."

ABOUT MADONNA:
The multi-Grammy Award winning artist, songwriter, children's book author, producer and video visionary with an unrivaled reputation for astonishing stage spectacles, has made music history many times over, logging an incredible 12 number one pop singles and 35 number one dance singles in the U.S. alone. Her 2006 "Confessions" tour generated almost $200 million, making it the highest grossing concert tour of all time by a female artist. Over the last 25 years, Madonna's collective record sales number over 200 million albums worldwide. Her last album, Confessions On A Dance Floor debuted at number one in 29 countries and sold almost 8 million copies worldwide. Her last concert DVD The Confessions Tour - Live from London, sold more than 1.2 million copies worldwide.

ABOUT LIVE NATION:
Live Nation is the future of the music business. With the most live concerts, music venues and festivals in the world and the most comprehensive concert search engine on the web, Live Nation is revolutionizing the music industry: onstage and online.

Headquartered in Los Angeles, California, Live Nation is listed on the New York Stock Exchange, trading under the symbol "LYV." Additional information about the company can be found at www.livenation.com under the "About Us" section.


2007年10月22日 (月)

マドンナとナイン・インチ・ネイルズ、そして  noodles【松井】

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(注 まとまり、ありません)
10/24追記 27日まで、コルネイユの動画が観られる!

 中学生のころ、ソニー・ミュージック・TVが始まった。金曜日の深夜12時30分から3時50分まで。毎週、食い入るように見続けた。
 丁度、マイケル=ジャクソンの「スリラー」やマドンナの「ライク・ア・ヴァージン」、シンディ=ローパーの「ガールズ・ジャスト・ハブ・ア・ファン」(邦題ハイスクールはカフェテリアとかなんとか)が流行ったころだった。
 そして、近所にはレコード・レンタル店が開店し、毎日ようの通っていろいろなレコードを借り、せっせとテープに録音していた。FM放送を聴いて他のまだ聴いたことのない音楽を知り、シンニード=オコナーやテレンス=トレント=ダービーといった才能に衝撃を受けたりしていた。
 コンサートはミーハーで、ハワード=ジョーンズや、トンプソン=ツインズ、そしてチャーリー=セクストンのコンサートに行った。ネーナのコンサートでは、学校を早退して名古屋へ行き、ホールの入口で待ち伏せした。エルビス=コステロのコンサートでは待つだけのみならず、着ていたTシャツにサインまでしてもらった。
 まったくお馬鹿でミーハーな中学、高校時代。

2 
 マドンナといえば、私にとっては「ライク・ア・ヴァージン」で登場したときの衝撃と共に自分の中学時代が蘇る存在。
 そのマドンナが、長年契約してきたレコード会社であるワーナーとの契約を解消し、代わってライブ・ネーションという会社と契約したとういう。マドンナのオフィシャル・サイト


 

2007年10月17日(水)08:19
 【シリコンバレー16日時事】米コンサート運営大手ライブ・ネーションは16日、女性人気歌手マドンナ(49)が同社に移籍したと発表した。大物歌手は収益源の軸足をCDからコンサートへ移行しつつあり、マドンナは「音楽業界の構造変化に対応した」と移籍理由を説明した。

 米紙によると、契約は期間10年で総額1億2000万ドル(約140億円)。同社がコンサート運営や3枚の新アルバム制作、関連商品販売などを包括的に展開する。 

【時事通信社】


 レコード会社と契約をしなくても、音楽を発表し、それを売り、またコンサートを開催して、ビジネスとして収益をあげられるということか。
 
 一方で、これまた10代のいっとき、バロウズなどが好きになったきかけの山形浩生さんのHPでの紹介で、ナイン・インチ・ネイルズがレコード会社、レーベルとの契約を解消したことについて、喜びの報告をしているものがあった。 移籍ではないようだ。
 


 レーベル。レコード会社との契約。

 思い出すのは、やはり鈴木あみの裁判。以前にもこのブログで触れた。

 一発あたると莫大な売上げにつながるが、そこでの利益で他の新人アーティストの育成、つまりプロモーション等にお金を費やすビジネスモデル。
 アーティスト側にすると、売れるまでは恩義を感じ、恩返し的に次々とアルバムを制作、発表しつつ、契約で縛られて年に何枚だすということを強いられるもの。
 ナイン・インチ・ネイルズは辛かったんだろう、きっと。

 freeということの喜びが伝わってくる。

 これは、ナイン・インチ・ネイルズが確固たる地位を築き、自分たちも金銭的には不自由をしておらず、今後は、好きなときに好きな作品を発表するという喜びなんだろうと勝手に想像する。

 そういった点では、マドンナも確固たる地位を築いているようだけど、自身ではそうは思っていないからこそ、ワーナーを離れ、代わりにライブ・ネーションと契約したんだろう。
 マドンナのインタビュー記事でずっと記憶に残っているものがある。
 「私は、歌も特別うまいわけではない、ダンスも特別にうまいわけではない、私より、スタイルも顔もきれいで、歌もダンスもうまい人がいっぱいいることは分かっている。」 といったものだった。
 マドンナには何があるのか。紳助の「紳竜の研究」ではないが、時代を読む力、セルフ・プロデュース力なんだろう。ありきたりの分析だけど。
 一方、ナイン・インチ・ネイルズは、自分たちの音楽は自分たちにしか作れない、そしてこれはこれからもずっと多数に受け入れられるという自信がある。
 だから、レーベルを離れた。



 日本ではどうだろう。
 平井堅は、何枚目かのシングル「楽園」がヒットし、命拾いしたというのは有名な話。デビューして数年、泣かず飛ばずで、これが売れないともう契約を切るというところまでいっていたらしい。レコード会社との契約を切るということは、もうCDは出せないということ。
 そういう意味では、ポップミュージックの音楽家はその音楽がヒットしてなんぼのものと言わざるをえないのかもしれない。
 一度売れても、また売れ続けないといけない。
 強迫観念にもなるだろう。
 でもまずは売れないと、終わりも何もなく、始まらないままに終わってしまう。別の職業を見つけるかしかない。音楽は、食い扶持にはならない。

 マドンナはライブ・ネーションの力を借りることにしたようだが、日本のレコード会社は、「売り出す」ための仕事としていったいどんなことをしているのだろうか。
 平井堅の楽園が売れたのは、そのPVで三角マキコが出ていたからというのが大きいだろう。話題を作る、ということ。
 
 音楽は、その力だけではなかなか芽が出ない(ヒットしない)んだということを実感した最近の出来事。
 
 女性3人組の noodles というバンドを最近知った。「池袋ウェスト・ゲート・パーク」でデビューした石田衣良がゲイの父親役ということで俳優デビューしていたというのでどんなもんかと思ってみた映画「ラブ・マイ・ライフ」で音楽を担当していた。
 石田衣良の演技力はともかくとして、音楽が格好よかった!(映画も10年前のドイツ映画全盛時のヒット作「バンディッツ」のようで格好良かった。吉井怜がまさに熱演。)。
 最近では、コルネイユ以来のヒット!
 
 どうやらもう10年近く活動しているバンドのよう。
 なのになぜ、あまり知られていない!?
 ブルーハーツやクロマニヨンズが売れている以上、noodlesが売れない理由はない!と思う。シンプルにギター、ドラム、ベースで、ギヨンと格好いいギターのメロディー、ポップな歌詞に、弾むドラムとベース。
 
 思うに、レーベルの力の弱さが一番の原因ではないかと思った。売り出し力の不足。
 noodlesこそレーベルを移籍したらいいのに。一発、当たったら、ヒロトやまーシーのように、息の長い、格好いいグループになると思う。
 応援したい。
 がんばれ、noodles。
 そして頑張れ、マドンナ49歳。女優の途は絶って、女ミック=ジャガー、ローリング・ストーンズのようになって欲しい。60歳になっても体力付けてコンサートをして欲しい。
 希望の星、マドンナ。
 希望の星、noodles。

(おわり)

2007年10月17日 (水)

勝つということと、負けないということ【松井】

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 勝つということが常に最善とは必ずしも思わない。例えば、1審訴訟で勝っても、たいてい控訴される。勝つことが紛争の終局的な解決をもたらすとは限らないことのほうが、たぶんきっと多い。
 勝ってそれで終わりなら、勝つにこしたことはない。しかし、それで終わりではないのであるなら。


 勝つことよりも、負けないことの方がもたらされる利益が大きいことの方が多い。
 負けないカタチで紛争を全面的に終わらせることが出来るのなら、たぶんきっとその方が依頼者の利益に適う。
 勝つことにこだわりすぎない。今回勝っても、次は負けるかもしれない。
 それよりも、勝ちはしないけど、負けもしないということの方が安定性が大きい。


 関連事件を知人にお願いした事件で、1審全面勝訴、2審一部敗訴となり、知人は控訴審判決に納得できず、上告受理の申立てをした。私も見せてもらった控訴審の判決書は確かに矛盾だらけで、ひどいと思わざるを得ないような内容だった。負けた側だからそう見えるのかもしれないとも思ったが。
 先日、最高裁判所から電話があったという。来年2月、弁論を開きます、と。覆る可能性が非常に高い。知人は、申立てをしてよかったと安堵のため息をついていた。
 相手方の代理人、本人は、上告が受理されてさぞ驚いていることだろうと思う。
 勝ったと思っても、それでは紛争は終わらない。


 勝ちはしないけど、負けもしない。紛争の終局的な解決。
 和解の交渉テーブルにつき、和解を成立させる。
 代理人、弁護士の最も重要な能力だと思う。
 交渉に一切応じないという態度は、誰でもとれる。
 私が尊敬する代理人は、交渉能力に長けた代理人である。自分もそうありたい。
 もちろん交渉といっても、泣いたり、脅したりといった感情論に訴えるものではない。法律、判例を踏まえたうえで、相手方の利益に配慮しつつ、こちらが負けることのないよう獲得目標を獲得して、関係当事者の意見の合致点を見いだす作業である。
 タフ・ネゴシエーターというのは、どんな要求にもただ単にNOを突き付けるだけの人のことをいうのではない。
 すぐれた交渉人というのは、膠着状態打開のための、紛争解決のためのアイデアを出せるひと、新局面を切り開くことのできる人間のことだ。
 勝ちはしないけど、決して負けない代理人。その方が依頼者にとって勝つことよりも大きな利益をもたらす代理人だと思う。
 
 まあ、もちろん最後は、依頼者がそのすすむべき道を決断されるんだけど。
 前のエントリーのスズケン対小林製薬にしても、仮処分だから、どっちかが勝っても負けても、それで紛争は終わりじゃない。ありうるのは審尋の場での和解協議だろ。これを小林製薬が自己に落ち度はないと「確信しています。」といった態度で突っぱねると、紛争の泥沼化、長期化を引き起こすだけ。もちろんスズケンの言い分が100%言いがかりというのなら話は別だけど。本当のヤカラ相手の時には絶対に妥協しない。でも、そうとはいえないとき、例え自己の言い分が100%正しいと信じても、相手の言い分に耳を傾け、紛争の終局的な解決を目指す。弁護士の能力が問われるときだと思う。
(おわり)

2007年10月11日 (木)

株式譲渡差止の仮処分【松井】

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10/16追記
小林製薬のHPでコメントが。
http://www.kobayashi.co.jp/corporate/news/0827/index.html
いつも思うことだけど、「確信しています。」と述べたって、その根拠に触れられていないと何ら説得力がない。
このコメントの公表にいったいどんな意味があるのだろう。書類を受け取ったということを公表した以上の意味はない。

1 
 10月10日付けの日経新聞で、
 「スズケン、仮処分申請」
 「小林製薬を相手取り」
 「コバショウ株譲渡中止を」
という見出しの記事を見つける。


 今後、このような争いが増えるような予感がして、気になる記事だった。
 2004年9月に3社、小林製薬、スズケン、コバショウが提携し、その結果、スズケンはコバショウ株を保有することになっという。そのコバショウの大株主たる小林製薬が、保有するコバショウ株をメディセオ・パルタックホールディングスに譲渡する、同社はコバショウを完全子会社化する旨、発表したところ、スズケンがこれに反発したというもの。
 大株主が小林製薬だからこそ、コバショウと提携し、同社の株20%をコバショウへの事業譲渡の代わりにもらっていたというスズケン。きちんとした理由がなければ、そりゃ小林製薬の翻意にスズケンも怒るだろう。


 興味があるのは、当初の提携のときの合意書の内容、また小林製薬がコバショウ株を譲渡することを決めるにあたっての根回し如何。
 事前に交渉を行い、それが決裂し、小林製薬は譲渡の強行を選択、それに対する対抗措置としての仮処分申請なのであろう。
 企業間の「提携」契約のとき、この「提携」の解消のことについてまで十分検討された合意書が作成されていなかったのではないかという推測が働く。
 無意味な紛争、つまり予防できた紛争なのではないかと思う。
 ガルシア=マルケスの「予告された殺人の記録」という小説があったけど、「予告された紛争の記録」だわ。契約書が練れていなかった点でこの紛争は予告されていたに等しいといえるのでは。
 決定は裁判所のホームページに掲載されるか、チェックしなくちゃ。
(おわり)

追記 
 業務提携の経緯について、小林製薬のHPに載っていた。
 http://www.kobayashi.co.jp/corporate/news/0433/index.html
 スズケンにしたら、「騙された!」というところなんだろうか。
 提携をもちかけられ、応じ、業務をコバショウに移してその価値を高めたところ、はしごをはずされるように売りにだされたというところか。

2007年10月 9日 (火)

プロフェッショナルとは【松井】

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 ときどき一緒に遊んでいただきお世話になっている女医さんのお友達で、一度、大阪でお会いしたことのある熊本大学の粂先生。
 その後、「時間の分子生物学」という新書を出版されたりとご活躍です。

2 
 ときどきこの粂先生のブログをのぞきに行き、医学の研究者という視点での意見をかいま見て、自分に揺さぶりをかけていましたところ、今回、「プロフェッショナルとは」として、「警察をもつこと」とされている記事を拝見しました。
 我が身、自身が属する組織を振り返って考えるに、示唆に富んでいました。また、言葉に対するこだわり、というか粂先生の真摯な姿勢も学ばねばと思うところです。


 また、先日、「紳竜の研究」というDVDで島田紳助が吉本の講座として、M-1グランプリという漫才のコンテストで2回戦で負けた若者達を相手に講義する様子をみました。

 まさに「プロフェッショナル」でした。才能の5と努力の5が掛け合わさって、25のトップ状態になる。才能は、残念ながら、あるのかないのかはやってみないとわからない、しかし、努力の5は自分次第である。
 その努力も、何も考えていない単なる「筋トレ」では意味がない。素振りをするなら、一振り一振り、一球一球を五感を総動員してイメージして練習しないと意味がない、といったことを口にしていました。
 また、紳助竜介の漫才には実はアドリブは一切なかったと明かしています。てにをは、言葉の五感すべてにこだわって作り上げた漫才だったと。
 さらには、作り上げるにあたっては、過去、自分が面白いと思った海原千里真里などの漫才を聞きに行き、テープに録って、テープ起こしをし、何が面白いのかを全て研究しつくしたということでした。その中からパターンを読み取ったと。
 そして、お笑いのスターを目指す現在の若者達には、劇場にやってくるきゃーきゃーした女の子達を相手に笑わせて満足していたら終わりだと言ってのけています。そんな学生らを笑わせるのは簡単であって、自分は本当に誰を笑わせたいのか、ターゲットをしっかりと狙って考えてやれということでした。
 昭和50年代のTVのお笑いブームのとき、当時は、子どもからお年寄りまで全ての世代を笑わせるのが良しとされていました。たとえば、たぶん金ちゃんのように。しかしそれが当たり前の時代であっても、紳助は、俺はテレビの向こうの20代、30代の働く男を笑わせるんやという気概でやっていたということです。全ての世代を笑わせるなんてどだい無理な話だと喝破していたと。

 そして売れ続ける芸人というのは、時代の流れをよみ、自分を流れに合わせているといったことも。それは、自分の何が今、いったい受けているのかということを自己分析できているということです。一発屋で終わる芸人は、いったい何故、自分が今、売れているのかを分かっていない、だから時代とマッチすれば爆発的に売れるけど、その後が続かないと・・・。


 プロフェッショナルとは、まさに自律して、考え抜いて、考え続けることの出来る人を意味するのだと思いました。
 紳助の話は、最近聞いた「経営学」の話にそっくりです。ささやかだけど、考え続けたいと思います。そして行動を。

(終わり)

2007年10月 1日 (月)

信用、信頼【松井】

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1 
 交渉を成功させるには、交渉で物事、紛争を解決するには、まずもって交渉相手に信頼される人物たることが大事な要素である、こういった言葉を聞く機会がありました。
 日頃、思っていたことを思わぬ所で他人が言葉にして語るのを耳で聞いてみると、改めて深い真実だと実感しました。



 以前にもブログのどこかで書きましたが、弁護士として働き始めて1年目、弁論準備手続が終わり、相手方のベテラン弁護士が逃げ去るように部屋を飛び出していったあと、その場に呆然と取り残されたような形となった私と裁判官2人の状況で、裁判官が私の方に向かって、憎々しげに吐き捨てるように言った言葉があります。
 「私はもうあの弁護士を信用しませんからっ。」。
 このことがあのベテラン弁護士にとって何を意味するのか、当時はただ、「あぁ、きっと仕事がやりにくくなるんだろうな。でもご本人はこのことが全く分からないままなんだろうなぁ。」といった程度の理解でした。
 裁判官に、相手方の弁護士(私)を前にして、そこまで言わせたその弁護士の所行が何だったのか今となっては思い出せないのですが、確か、人と人としてその態度は失礼ではないかといった態度を裁判官にとったのではなかったかと。



 その後、友人の弁護士からは裁判を和解で終わらせたけど、相手方には和解で約束したことを初めから守る意思がなかったということが分かった、さらには第三者に情報を流し、騙されるはめになったといった話を聞いたこともあります。弁護士同士の交渉、裁判上の和解交渉であっても決して気は抜けない、「弁護士。だから信用できる。」という公式は成り立たない、相手を見極めるようにしようと実感として学びました。
 結局、世の中には、本当に信用できる人物とそうではない人物がいることになります。


 依頼者からの信頼、交渉相手方からの信頼、裁判所からの信頼、検察官からの信頼。
 「信頼」を得られないところで、自分にとっても、依頼者にとっても、弁護士としていい仕事はまずできません。
 刑事裁判所での司法修習中、裁判官の中ではやはり、あの弁護士は信頼できる、あの弁護士は信頼できないという見方がありました。起訴事実について争う弁護人、だから信頼できない弁護士、という見方をしていたわけではもちろん決してありません。
 弁護人の立場で、当たり前のことを当たり前に出来ているかどうか、時間を守るか、提出期限を守るか、法令を熟知しているか、被告人とのコミュニケーションは取れているのか、そういったレベルでの判断だったのではないかと思います。
 弁護士に限らず、他人からの信頼を得るのは、まず、当たり前のことを当たり前に出来るかどうかなのだと思います。そしてこれがたぶん一番難しいこと。時間を守る、口にした約束は守る、返事はだす、感謝の気持ちを伝える、きちんと挨拶をする等々。
 根底は、他人である人と人して、相手への敬意を行動で示せるか否かなのかなと思います。相手を見下したり、馬鹿にしたような態度をとって、その相手や、そのような失礼な姿をとる人間を周りの人間が、「信頼できる人物」などと思うことはまずないでしょう。

 ということは、紛争を解決しようと思ったら、まずもって相手に敬意を示すのが大事だということになります。それが出来ないのなら、最後の一人になるまで、まわりと殴り続けて闘い続けるか。まったく無駄な争いです。
 
(おわり)

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