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2007年8月 3日 (金)

準備書面とビジネス感覚【松井】


 ファイルの整理をしながら目に付いた一文。法曹在職40年のベテラン弁護士が、在職40周年にあたって会派の広報誌に載せた一文。心すべきものとして保存していたもの。


2 

「 リーガルマインドとビジネス感覚 」

「 弁護士時間という言葉すらあるように、準備書面等の提出期限も守られることの方が少なかったというのが私の実感であり、私はそうしたことにずっと抵抗、抗議して煙たがられてきました。
 相手が約束の日に書面を出さなかったため、反論のための時間が削られることが容認できないとして、相手方の責任において期日変更の申立をすべきであるとしたこともありました。
 ある簡裁の法廷で、私の前の事件の原告本人が被告代理人弁護士の提出期限に遅れた書面について、裁判官に必死になって抗議し、却下を求めていた姿を見て、法曹と市民感覚のずれを感じていました。
 法曹に求められるリーガルマインドは、係争事案についての筋道の正しい判断という意味では、我国の法曹は欧米の法曹と遜色なくむしろ我国の醇風美俗の風土の下で優れているとも思うのですが、事務処理のビジネス感覚という点ではギルド社会の温床の下でまだまだ劣っている部分が多いと思います。 」



 肝に銘じる。
 最近びっくりしたことがあった。原告訴訟代理人の立場で、いきなり第1回期日から、原告訴訟代理人の都合で、復代理人も選任せずに、期日を2か月先の指定を求める、さらに条件として自ら提案した、期日間の3週間以内に書面を提出するということすら守れず、締切から1か月以上過ぎての書面提出。それも裁判所が督促を重ねたうえでの結果。
 訴訟指揮権は裁判所にある。国家機関たる裁判所にその判断を任せるしかない。

 訴訟手続きを守るために訴訟活動を行うわけではない。判決をもらうためである。それも勝訴判決を。判決をするのは裁判所である。どうしても看過できないというものでない限り、裁判所に権限があるものは裁判所の権限を尊重する。
 相手方に対しても、相手方のミスをことさらにあげつらい面子を潰してしまった場合、反対尋問での必要以上の巻き返しを招く結果に過ぎないことがある。もっとも、完全に時機に後れた攻撃防御方法の提出については猛然と却下を求める。
 しかし準備書面の提出の遅れに対しては、訴訟進行の迅速が妨げられたという以上の不利益は判決に至る過程という点では現実的にはない。むしろ相手方のやる気のなさ、能力のなさの現れともいえる。
 訴訟手続きの迅速、判決の迅速を求めすぎると、結果、判決の内容によって得る利益が損なわれることがあることは、刑事裁判で一度、身をもって学んだ。
 この時の経験を生かし、数ヶ月に及ぶ度重なる裁判所の判決言い渡し期日の延期に対して、焦る依頼者を説得し、じっと待ったことがあった。結果は、和解の際に披露された裁判官の心証たる完全敗訴(遺言無効)とはまったく逆の完全勝訴(遺言有効)だった。

 待つことにも意味があるときがある。今回もそう思いたい。
 とはいえ、原告として訴訟提起しながらのことなので、まさに「事務処理のビジネス感覚」という点では全くひどい出来事。
(おわり)
 

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