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2007年8月31日 (金)

経営者倫理と会計【松井】

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「本来、企業経営者は、誤った経営判断や経営環境の激変によって財務状態が悪化した場合、公正妥当な企業会計原則(ママ)の基準に従った決算を実施して企業の財産の維持、管理に努める一方、債権者、取引先、金融機関等の理解と協力の下に、経営方針の転換やリストラ等の徹底した経営努力を行い、この危機を乗り切るべきものである。」
「ところが、被告人は、グループ代表である一郎の積極的拡大主義の経営戦略を無批判に受け入れ、自己保身もあって、経営上の問題点の抜本的解決を先送りし、社会的存在である会社を甲野家の私物のように扱い、企業経営における麻薬ともいうべき粉飾決算に手を出し、ヤオハンジャパンとグループの当面の維持存続のみに汲々としていたのであって、その動機は、経営者倫理にもとる自己中心的で身勝手なものであるというほかない。」

「また、証券取引法違反事件をみると、、前記粉飾決算を基に、実態とは約128億8700万円も乖離した内容虚偽の有価証券報告書を提出、公表した事案である。不特定多数の投資家、一般債権者等の利害関係者を欺罔し、その判断を誤らせただけでなく、企業の経営内容を開示する有価証券報告書の意義を著しく害し、更には、証券の安全円滑な流通によって経済全体の発展を図る証券市場制度や株式会社制度の信用をも失墜させた。」
(静岡地裁平成11年3月31日判決(確定))。

 懲役3年、執行猶予5年。


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 粉飾決算等により、商法違反、証券取引法違反で起訴されたヤオハンジャパンの社長の判決文の一部です。
 カネボウ、ライブドア、日興コーディアル、そしてヤオハンジャパンの過去の粉飾決算事件の概要を学ぶ機会がありました。その際、配られた資料が上記の判決文です。
 公認会計士の方が上記判決文を読まれても、前記の裁判所の指摘はしごく全うだとうなずいておられました。

 企業経営者、特に上場を目指す会社、あるいは上場企業においては、経営者の責務として会計に対する理解は必須、最低限の素養なのだと思います。
 
 話は飛ぶようですが、新書本で「いつまでもデブと思うなよ」という本が出ており、興味深く読みました。
 基本は、「レコーディング」。現状の記録です。正確な状態を日々、記録し、数値化・文字化する。
 そうすれば自ずと、自己が直視するのがイヤであった現状の問題点が見えてくる。
 現状を受け入れたうえで、目標を定め、実現の方策を具体化し、日々、改善を図っていくというものです。
 著者は、この「レコーディング・ダイエット」で1年間で50キロを健康的に痩せたと述べています。


 企業経営者と会計というのも、このような関係なのではないかと思います。
 経営の現状を、日々、レコーディングして、数値化する、そのうえで問題点を改善していく。
 この問題点に直面したとき、売上げが少ない、利益が足りない、不良債権を抱えすぎている、在庫が多すぎ、上場出来ない、あるいは上場廃止になっちゃう、といった時、粉飾の誘惑を堪えて、改善策を打ち立てられるかどうか。
 現状に目をつぶり、粉飾することで、問題を先送りして、最後は手遅れになって会社ごと消滅してしまうのか否か。
 この決断力と判断力は、経営者の責任として試されるところだと思います。

 相談者、依頼者の方によく言う言葉があります。
 「嘘は、必ずバレる。嘘に限ってバレる。そういうものと思っておいた方がいいですよ。また、自分の弁護士に嘘をついてもいいけど、最後に不利益を被るのは貴方自身ですよ。」

 虚偽の事実を隠しとおしたいといった誘惑にかられるとき、そんなときこそ、現状をさらけ出しましょう。そのうえで改善策を一緒に考えましょう、と。
 「白」、「灰色」、そして「黒」、とあったとき、黒は論外としても、灰色に身を置くことなく、常に白の部分に身を置きましょう、と。
 「企業経営における麻薬ともいうべき粉飾決算」。 まさに「策士策に溺れる」。

 「経営者倫理」というよりも、経済的合理性で考えても、以前も書いたことがあるように思いますが、目先の利益に走って長期的に大損するという点を予測して、合理的な判断、決断が出来るかどうかのように思います。傷口は浅いうちに手当をする。痛いけど、放っておいてもう取り返しがつかなくなるよりは、まだましという発想。
 惰性、感情、欲求をコントロールできるかどうかという点では、ダイエットと同じか。

 ちょっとまとまりのない文になりましたが、粉飾事例をみて思ったことをつらつらと。

(おわり)
 

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