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2007年8月22日 (水)

「GMO、金融事業から撤退」の不思議【松井】

Shita
*8/22  追記あり。
1 
 8月21日の日経の朝刊、夕刊で興味深い記事があった。
 朝刊 「GMO、金融事業から撤退」、「誤算続き『ネットと融合不発』」として、2005年8月に買収した消費者金融のオリエント信販をGMOは売りに出すことにしたという記事だった。
 記事では、「『こんな不条理があっていいのか。』十六日に開いた決算説明会で、熊谷正寿会長兼社長は語気を荒げた。いら立ちの原因は、消費者金融撤退の引き金を引いたのが、超過金利返還に対する引当金の積み増しだった点だ。」とある。

 夕刊 「M&Aの成否握る」として、企業価値評価の会社、責任者に関しての記事。「『不確定な将来』から算定」とある。



 オリエント信販の買収が2005年、2年前の平成17年といえば、弁護士らがいわゆるグレーゾーン金利について法規制等を求める動きを活発化していたとき、さらにはグレーゾーン金利について、利息制限法の定めを超える金利については、貸金業法の要件を厳格に充たさない限り、不当利得であるとして返還請求が行われて当然だったころだ。

 過払い金返還に対する引当金の積み増しくらい、平成17年当時、当然に予想できたことがらではないのだろうか。おそらくこの点の評価が適切に行われずに、「オリエント信販」という会社の「企業価値評価」がなされたものだと思う。

 買収の際は、デュー・デリジェンスなども行われ、適切な企業価値が算出される。この企業の価値の評価は、会社外部の「専門家」にそれなりの費用を支払い、外注されているだろう。
 いったい誰が「オリエント信販」の評価を行ったのか。

 成功した経営者として著名な熊谷社長であっても、間違った情報が届けられた場合、間違ったことに気づかずに、間違った判断をしてしまうことがあるということだろうか。


 価値算定の専門会社を紹介した夕刊記事では、次のような一文もあった。
 「すかいらーくのMBOの時には価格の妥当性を第三者として保証する意見書の作成を依頼され、安達さんを中心に短時間での作業に追われた。」

 えええっっ!!!????
 「価格の妥当性を第三者として保証する意見書」なんてものの作成の依頼を引き受けたの!?

 GMOの失敗例という記事を見て思ったのは、「第三者」というのは「門外漢」を意味することもあり、平成17年当時の「消費者金融」業界について、同業界にちょっとでも関わったものからしたら、「超過金利返還に対する引当金の積み増し」なんて当然、予想できたこと。しかし、そんなリスクすら含みで買収できずに「誤算」という空しさ。驚くばかり。
 評価を依頼された企業の価値の算定について、どうやって確実なその「業界」の情報を収集、分析しているのだろう。
 記事では次のような点しか触れられていない。
 「価値算定はまず対象企業の貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書などの財務資料を分析する。大きな工場や機械装置など価値算定に重要だと思うものがあれば直接現地まで行って実物を確認することもある。それらの分析をもとに『一番大事にしているプロセス』である経営者との面談に進む。」「安達さんが価値を決める際に重視しているのは『みんなを納得させられる一貫した整合性のある論理構成にすること』。」


 なるほど。にしても、この「企業価値評価」というのはまったくリスキーな仕事だと思った。「保証する意見書」を作成するなんて。保証料分としての費用ももらわないとやってられないだろう。

 「オリエント信販」については、誰が、どのような評価をしていたのか、興味のあるところ。
 GMOは、「誤算」だったようだから、説明を受けていなかったのだと推測できる。自分の所で評価して判断していたのだったら単に自己責任だけど、外注する意味はそのリスクを費用を払って外部に転嫁する点にある。
 そうだとしたら、「オリエント信販」の価値を評価した第三者企業に対して損害賠償を請求するに値するのでは。どうするGMO。

(おわり)

追記
 ふと思うに、もしかしたら過払い金返還分の引当金の計上について、つい最近にいたるまで、監査法人の監査も甘かったことが一因かもしれないと思った。平成15年度ではOK、というか容認されていた会計処理が今年度、厳しくなったということなのかもしれない。とすれば、そもそも会計処理が甘く、その点についての見通しが甘かったということか。会計処理についても、先を見通す力なしではここ数年、立ちいかない状況に上場企業はあるんだろう。日本の会計基準がふにゃふにゃしているし・・・。ようやく世界基準に合わせる決心がついたようだよ、ASBJ。
 NOVAも、平成19年4月の最高裁判例を受け、途中解約のときの精算金の返戻について、引当金の積み増しを行っている。自社で判断した会計処理か、監査法人からの指導を受けたものと思われる。あ、ちなみにNOVAの監査法人が今年度、変わっていた。

さらに追記
結果論かもしれないけど、やっぱり会計基準の実務が、実態に合っていなかったというのが一因のよう。
http://ir.gmo.jp/irlibrary/pdf/20070813_01.pdf

M&Aなどで企業の価値を評価するなら、計算書類を読むにしても、会計基準に対する深い知識、世界レベルでの知識が不可欠の一例か。現状でよしとするのでなく、現状に対する問題意識をもつ能力が不可欠なんだろう。

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