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2007年7月27日 (金)

専門家の仕事~心意気~【松井】

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 ロースクールに入学し、弁護士になることを目指すという若い方々とお話する機会がありました。お二人とも、単に弁護士になりたいというのではなく、弁護士になってこういうことがしたいという明確な目標をお持ちのしっかりとした方々でした。
 いろいろと質問を受けしましたが、こういうこともたまにはいいなと思います。自分で自分に問いかけるよい機会になるからです。

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 お二人とお会いした後、依頼者の企業経営者の方とお会いしました。メープルシロップなどのカナダ製品を輸入販売する仕事をされています。
*写真は、頂いたメープルゼリージャム。自然な甘さで美味でした。

 午前中お会いした若者の一人は、企業側で労働問題をやっていきたい、自身が会社勤務したときの経験に基づき、企業に法令遵守をアドバイスし、企業を、社会を変えていきたいという志を語っておられました。

 私自身も、企業を経営されている方を応援したいという思いを持っています。「企業」というか、もっとベタな表現をすれば、商売する人を応援したい、その役に立ちたいという思いです。
 役に立ちたいということは、言いなりになるとか、使われるということを意味するわけではもちろんありません。残念ながらそういう方もこの世間にはいらっしゃいますので、そういう場合はお断りしています。独立した弁護士として、相談者の方の商売がよりうまくいくように法的なアドバイスをして、役に立てたらという思いです。

 困難な状況に陥ってしまったとき、アドバイスしあるいは代理人活動するなどして苦境を乗りきり、その事業が軌道に乗ったときの喜びは、自分の商売が成功したような喜びを感じます。商売の基本は、お客様の喜ぶ顔を見ることにあると思います。
 これは弁護士の仕事も同じです。
 もちろん商売人の方でなくても、個人の依頼者の方であっても、苦境や困難な状況に直面しながらも、まわりのサポートを受けて自ら道をきりひらいていこうと努力されている方がいたら、その人が助力を求めてきたら、その人のチカラになりたいとの思いで仕事をしています。
 

 今日、若者から、「弁護士の仕事をしていてどういうときが一番よかったなと思いますか。」と質問されました。
 依頼を受けた仕事が終わり、依頼者の方と笑顔で別れるとき、そのとき、この仕事をしていて良かったなと思います。ほんと、ベタですけど。
 多分、仕事は皆、そうだと思います。人の役に立っているという実感が、自分が存在する、自分が生きる喜びに結びつくのだと思います。


 と、話がここで終われば今回は美しい話で終わるのですが、また一方でこういう質問も受けました。「依頼者、相談者が不法なことをしているとき弁護士として何が出来ますか。」
 答えは、「辞任する」です。相談者、依頼者の方に、それは違法である、責任を問われる可能性が高いといったリスクを説明します。あるいは違法とまではいえなくても、そういったことは弁護士倫理に反し、このままでは対外的に弁護士代理人としては活動できない旨を伝えます。行動の是正を求めます。
 しかし、最後は、経営者あるいは個人の方の判断です。それが、弁護士はあくまで代理人であって本人ではないということです。
 最後、自分のこと、会社のことをどうするかは、ご本人、経営者が判断・決定します。
 そしてそのとき、弁護士として辞任します。きっぱりと関係を絶ちます。
 「じゃあ、残された従業員たちはどうなるのですか。」という質問を受けました。残念ながらそこが弁護士の限界だと思うと答えざるを得ませんでした。当事者ではないから。
 同じような話を監査法人に勤められていた公認会計士の方から聞きました。社長に泣きつかれても、会計士として適正だとの書面にハンコは押せない。しかし、監査法人としてはハンコを押すことを求められた。どうしたのか。監査法人を辞めた、ということでした。

 専門家としてのこういう心構えが「倫理」というのだと思います。そこで辞められない場合、不正に荷担した者として粉飾決算の責任を負ってしまう。何を潔しとするかの問題かと。
 以前、依頼者の経営者からは、それは違法行為にあたる、どういうことになるのかというリスクを説明し、止めようとしたところ、「誰の味方なのか?!」、「弁護士が依頼者を脅すのか!?」と言われ、怒鳴りあいになったことがありました。結局、辞任しました。
 確かに弁護士は依頼者の利益のために活動しますが、それは「正当な利益」のためです。「不正な利益」のために動くのは、専門家責任を放棄したに等しいものです。こういった自負がなくなったとき、悪徳弁護士と呼ばれ、最終的には資格を失うこととなるのでしょう、きっと。
 大阪地方検察庁特捜部に所属して弁護士になった田中森一氏の本が面白いらしい。読まねば。
(おわり)
 

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