人を大切にしない経営者~信用できる?~【松井】
1
いつも行く施設の職員の方が、「今日で終わりなんです。」と気のせいか涙ぐみなが言った。
聞くと、あなたが担当する仕事はなくなったということだった。もう1年は働きたかったけど退職を促されたということだった。聞いている方が涙しそうになった。
2
一時的に仕事はなくなったかもしれないけど、大変なときに職場に来て支えてくれた人を「もう要らない」と本人の働き続けたいという希望に反して、そう簡単に切り捨てていいのか。
確かに、経営として赤字のまま何年も走り続けるというのもナンセンスだと思う(日本という国は赤字のまま走り続けているけど・・・。上海、大丈夫か?という不安が不安を読んで市場が簡単に暴落するんだろうな、97年のアジアの通貨危機のように。)。企業が永続性を保つためには、どこかで黒字にしないといけない。でないと市場からの撤退になる。赤字を黒字にするには、収入を上げるか、支出を絞るかしかないので、支出を絞る方策として、やむを得ずにいわゆる「リストラ」(この言葉は好きではない。意味する内容に比して軽い感じがするから。)を行い、「過剰な人員を整理」するというのは避けられないこともあると思う。
だけど、能力もあって周りからの信頼も得ていた職員、貴重な人を辞めさせるというのは最後の手段だろう。最後の手段という意味は、雇い続ける方向でいろいろと模索したうえでの最後の方策ということだ。
どうも、この施設ではそういう模索をした様子がうかがえない。
というのも、人の出入りが激しいところだなという印象を前から抱いていたこともあるのかもしれない。
何よりも、以前出されていた広報誌に心底、驚いたことが記憶に残っていた。その年、新規事業を立ち上げたことが誇らしげに書かれていたが、その理由の一つとして、「職員の高齢化による収益の圧迫」のため新規事業に踏み切ったといったようなことががどうどうと書かれていた。
勤続年数が長い職員の給料が高くなり、その人を遠方の施設においやって暗に退職を促しつつ、従前の職場には給料の安い若い人に置き換えていくということだ。
当の「勤続年数の長い職員」がこの広報誌を読んだらどう思うのだろう。
結局、働く者に対する感謝の気持ちが見えないことに不快感を感じるのだと思う。
経営者としてどうよ。
そんな経営者の下で働きたいなんて思わないし、人に感謝することを知らない人がいったいどんな素晴らしい事業が出来るというのか。
自ずと経営方針が分かるというものであって、この経営者が経営する企業の先は明るくないなと思った。人を大切にしない姿をすぐ横で見せつけられる他の従業員が自身の会社を誇りに思うわけないし。
短期的な支出の抑制に目を奪われて、長期的な利益を取り崩していく姿。
意見する労働組合や適切なアドバイザーがいないんだろう。
3
偽装請負の問題が去年末くらいからマスコミでようやく取り上げられ社会問題とされている。
企業にしてみればいったん正社員となると簡単に解雇できず、仕事量との関係で調整できないので正社員化は避けたいのだろう。「請負」なら、正社員にという途はない。
ただ、体力があり、一定期間正社員としてもおかしくはない仕事内容で働いているのであれば、それは雇用するべきだと思う。
「人権栄えて国滅ぶ」という言われ方がある。それが唯一絶対のように聞こえるからかもしれないけど、正直なところ「人権」や「権利」といった言葉自体はあまり好きな言葉ではない。弱者保護といった視点もあまり好きではない。
だけど、じゃあ反対に企業側の収支の理屈が全てかというとそうとも思わない。
要は、バランスの問題だと思う。やはり近江商人の知恵で、皆がハッピーになる途を模索し、均衡を保つというのが最もよいのではないかと考えている。やむを得ず整理解雇をせざるを得ない場合でも、退職する職員の次の職場を世話する、自分のことだけではなく相手のことを気遣うというのは今後両者にとってプラスになることだと思う。
こういった働く人に対する配慮すら出来ない企業の経営者がいくら広報誌でいいことを言っていても、信用できないし、この企業の利用を止めようかなと真剣に考える。
先のない企業。沈んでいく船を見ているよう。
今回はちょっと個人的に怒ってる!
(おわり)
« 遺言・相続 個別相談会 実施のお知らせ 【松井】 | トップページ | NPO建築問題研究会~専門性~【松井】 »
「労働」カテゴリの記事
- 年齢差別禁止法~法律の必要性と影響力~【松井】(2006.10.02)
- 従業員の解雇~労働市場の流動化、「弁護士」の流動化、あるいは考えの迷走か?【松井】(2006.11.18)
- 人を大切にしない経営者~信用できる?~【松井】(2007.03.01)
- 「中小企業に配慮」~外国人研修・実習制度~【松井】(2007.05.17)
「松井」カテゴリの記事
- マンション管理~新たな流れがやってくる。行動こそ全て~【松井】(2006.08.19)
- 「ハリウッド」~資金調達と回収、利益獲得~【松井】(2006.08.23)
- 所長講話~平成11年1月5日~【松井】(2006.08.28)
- エンターテイメント・ロー【松井】(2006.09.13)
- 恐怖心~刑事裁判というもの~【松井】(2006.09.16)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント