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2007年2月26日 (月)

まねきTV事件~事実を尊重せよ~【松井】

Tv

 まねきTV事件というものがあります。去年の8月、仮処分決定が出たときは裁判所のホームページでも速報でその却下決定が公開されていました。
 判例時報18年12月11号でもその決定が掲載されています。
 また事件当事者のまねきTV側ではそのホームページで、抗告審の決定も載せています。
 申立人である債権者、テレビ局側が全面的に負けた事件です。

 

 
 先日研修の際に聴いた、元最高裁判所判事であった滝井弁護士の弁でも印象に残っていたのは、「最高裁判例を変えるのであれば事実を変えないといけない」ということでした。
 つまり「事実」が裁判の基礎、要であるということです。
 事実を法律に当てはめる、法律に当てはめるために事実を歪曲することは出来ません。まぁ、確かに事実といっても証拠によって認定できる事実に限られますがもちろん。

 事実認定のための手続きとして、尋問という制度があります。

 先日、「ゆれる」という西川美和監督の映画をDVDで観ました。オダギリジョーと香川照之が兄弟役で出演している映画で、昨年公開され絶賛されていた映画です。
 観てみると、被告人となった香川照之や、弟のオダギリジョーが法廷で尋問を受ける場面がありました。
 弁護人からの質問、それに対する検察官からの質問。

 「事実」はいろいろな角度から光りを浴びせて初めてその立体像が浮かび上がる(完全でないにしても)。尋問手続きにおける反対尋問というものはそういう意味があります。
 かかる手続きを経て、裁判官によって「事実」が認定されます。
 芥川龍之介の小説「藪の中」のように、死霊となって被害者が証言することがあれば別ですが、生きている者、人間の証言はとかくうさんくさいということでしょう(もちろん、死霊の証言も本当かどうか、裏付けはありません。)。
 
 このように裁判は様々な証拠から「事実」を認定し、それを法律に適用して、裁判結果を出します。すなわち、原告の主張に理由があるのか、ないのかです。基本は二つに一つです。


 まねきTVの仮処分事件では、まねきTV社のビジネス行為は、地上波放送の送信可能化行為であって、これはTV局の送信可能化権等の著作隣接権を侵害しているので止めろといった申立てがなさたものでした。

 これに対して、裁判所は事実認定のレベルで決着をつけたといえます。もちろん、法律解釈について、債権者のほうは、かっなぁり無理な解釈を展開していますが、これはもちろん独自の見解であって、裁判所は事実をもって、侵害行為なしと判断しました。

 判例時報の方で改めて決定の全文を読んで驚いたのは、債権者側がいろいろな点で本当に、あぁ、無理な事実主張、法解釈を展開しているなぁという点です。何としても差し止めしたる!という強い意図を感じます。
 そして、事実、法解釈としては、裁判所の認定、解釈の方がやはり自然、経験則に適うと言わざるをえません。
 
 テレビ局側は、「事実」を直視して対応したらいいのにと思います。

 が、しかし、何と、仮処分も認められなかったのに、本訴を提起することにしたようです(まねきTV訴訟代理人の小倉弁護士のブログ 、WINNY訴訟で著名な壇弁護士のブログ  )。
 
 意地?ですかね・・・。
 
 訴訟でバンバン対応するという正攻法でもって邪魔者を排除していくという手段は、以前のエントリーでも触れたように、元シンガポール首相のリー・クアンユー(もともと弁護士でした。)が得意とし、効果を発揮した手法のようですが、これは大企業が小企業に対して行うときは過剰な嫌がらせでしかないと思うのですが(まぁ、シャネルが日本の片田舎のスナック、シャネルを訴え、ディズニーやコカコーラが訴訟でバンバン対応して、ブランドイメージを守っていることからすれば、あながち不当とまではいえないのかもしれませんが。)。
 しかし今回の件は、仮処分で権利がないって言われているのに、なのに本訴。不当訴訟で反訴してしまったらどうでしょ。

 がんばれ、まねきTV。
 創意工夫をしてビジネス、商売を展開する人を押さえ込む動きは、やはりどうしても基本的に好きになれません。需要があるわけだから、双方が利害を調整してハッピーになれる途を模索するのが建設的な考え方、解決の仕方ではないかと思います。もっとベターな対応があるのではないかと、何にしても。

(おわり)

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