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2006年12月

2006年12月15日 (金)

事業承継の問題~弁護士のこれからの責務~【松井】

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1 
 「一代目が築き、二代目が拡げ、そして三代目が潰す」という言い回しがあったように思います。何のことかというと「商売」のことです。
 「商売」といっても個人商店名でやっている場合もあれば、「会社化」している商売の場合もあります。もちろんここでイメージしている「会社」は、いわゆる「オーナー経営者」が経営している会社です。私の実家のはんこ屋さん、「有限会社成美堂」もまさにその一例です。
 一代目のおじいちゃんが築き、二代目の父が拡げ、そして三代目の兄が・・・きっとさらに拡げてくれることを祈っていますが、ここでは一代目、二代目、三代目の引き継ぎそのものについては何の問題もありません。


 と、いいたいところですが、果たしてそうでしょうか。例えば、父や兄は当然、私がはんこ屋の経営に名乗りでるなどとは夢にも思っていないかと思いますが、もし父に何かがあったとき、遺言もなくって、遺産分割協議で私が会社の権利の相続を希望し、自身が経営に乗り出したいと言い出したら?!
 また、実際、父が二代目となるかどうかというときには、生臭い話ですが、父とその兄弟との間での確執があったということを後から聞きました。この二代目問題を機に、その兄弟と父あるいは祖父母との間では実の親子あるいは兄弟でありながら、消えない溝が出来てしまったということです。
 全く不幸なことです。


 こうしたいわゆる「事業承継」の問題は、実はかつてなく切迫した状態にあるというデータが示されました。
 写真にある、中小企業庁が作成した「事業承継ガイドライン20問20答~中小企業の円滑な事業承継のための手引き~」では、「中小企業の経営者の平均年齢は57歳、この20年間で約5歳も上昇」一方、シビアな話ですが男性の生存率表が示され、57歳から72歳の間で急激に男性の生存率が下降しているというデータが示されています。つまり一代で会社を築き上げた経営者の高齢化が進んでいるというのです。
 また、近年、会社の廃業率も上昇しているデータがあり、その理由としては経営者が高齢化し、事業承継が行われずに廃業に至ったというケースも相当数あるようです。

 「団塊の世代」というと、勤務の人についてはその退職金を狙ったビジネスが、またあるいは団塊の世代の勤務の人の専業主婦の妻における年金分割制度と「熟年離婚」が話題になりがちです。
 だけど、もちろん自営業、というかオーナー会社で頑張ってきた方々もいるわけです。こういった多くの中小企業での経営者の高齢化、そして事業承継の問題がまたひとつ、多くの注目を浴びているようです。
 

 というのも、昨日、大阪弁護士会主催で、「事業承継研修」という研修が実施され、これを受講してきました。写真のパンフレットはその際に配布されたものです。
 講師の弁護士の話を聞きながら、いろいろな言葉がスパークするように頭に浮かんできました。
 せっかくなので今後、このブログで改めて自分の考えなどをまとめて整理していきたいと思います。
 確かに自身のこれまでの経験でも、親と子あるいは兄弟間、あるいは親族間、あるいは後継者がおらず事業の承継がうまくいかなかったために起こった紛争に関わってきていました。
 ありがちなのは、多数派株主となった者に追い出されて、退職慰労金も全く出されなかった、高齢の経営者が第三者に騙され知らない間に第三者が取締役と登記され乗っ取りにあいそうになった、あるいは自分は引退したいが後継人が見あたらない、会社の借入金を個人で連帯保証しており辞めるに辞められないなどなど。


 以下、ひとまずつれづれに。

□ 経営者の気持ちになってみると、元気なうちに譲ったらいいという意見に対しては、譲り切ってしまうと自身がその後、疎外されてしまうのではないかという不安。これは、個人の通常の相続の場合も同じ。
□ また、事前に譲るということは、生前贈与の問題が出てきてしまう。
□ そもそも会社は誰のものかという問題が去年、話題になったけど、法律的には明らかに株主。最後は株式での多数決原理が会社の運営を決める。
 オーナー企業をどう承継するかは、結局、株式をどうやって譲るのかの話に集約。
□ ただ、従業員や他の親族の反発に注意する必要がある。
  最悪の例は、京都の一澤帆布の例。遺言で株式が、まったく事業に関わっていなかった長男に相続され、職人は離反する。
  遺言を作ればそれでOKというわけでは決してないということ。
□ 遺言にあたっては、「遺留分に気をつけて」ということがよく言われるが、「贈与税」の問題を別にすれば、生前の贈与について「相続分の前渡し」としてある程度、実は対応可能なことが見過ごされていないか。
□ 株式については、初めから経営者に集約されていればそれはそれでよいが、例えば、国土の西武の堤一族のように、他人名義を多用していた場合はどうか。そうでなくても、実質、分散されていた場合はどうするのか。買い集めるのか。誰が?
 株式の問題については、種々の会社法上の規制が登場してくる。
 一方で、2006年の会社法制定によって、種々の株式の発行が可能となっている。この仕組みをうまく実効的に使えるものはあるのだろうか。

□ 今後、相続法の知識・技術のみならず、会社法、税法の知識・技術が問われることとなる。
□ 起こってしまった相続後の問題への対応ではなく、事後のあるいみ失敗例を教訓として、「事前のクリエイティブなアドバイス」を行っていく責務がある。

 ひとまず自分用のメモとして。
(おわり)

2006年12月 8日 (金)

弁護士の品格と戦略【松井】


 11月28日付けの日経夕刊「法化社会日本を創る」で紹介されていたエピソードでは、先日和解した旧UFJホールディングスと住友信託銀行との事業売却交渉決裂を巡っての訴訟の控訴審第1回期日でのこと、裁判所は住信側に言ったそうである。
 「また大風呂敷を広げましたね。一流企業なら品格があるでしょうから、主張をしぼってください。」
 住信側は一審で敗訴し、控訴にあたり賠償請求額を数百億円まで引き下げていたにもかかわらずということである。

 同じく日経夕刊の追想録では、10月に亡くなられた、東京の大手弁護士事務所西村ときわ法律事務所の創業者の西村利郎弁護士の言葉を紹介している。
 「知識が豊富でミスがないのは当たり前。重要なのは戦略があるかどうか。」


2 
 先日、C型肝炎集団訴訟の弁護団に加わっている友人の弁護士から、大阪地方裁判所での一部勝訴に至る訴訟活動の内容について聞くことがあった。
 まさに「品格と戦略」を感じさせる訴訟活動と評価されるべきものだったんだろうとの印象を受けた。
 
 自省の意味を込めて思うことは、弁護士としての業務活動において、時に、いったい何を目的としているのか、着地点をどのように考えているのか掴めない場当たり的とも思われるような活動、あるいはまさに単なる罵詈雑言、口にした言葉に責任を感じていないとしか思えない言動があるといったことを見聞きすることがある。その弁護士が相手方となったとき、決して信用されることはない振る舞い。そのことでどれだけの利益を失っていることか。

 弁護士1年目のとき、裁判所の弁論準備室において、相手方の弁護士が足早に部屋を去ったあと、ぽつんと残された裁判官が私に対して、怒りを抑えつつ呟くように言った言葉。「私はもうあの弁護士を信用しませんから。」この経験があったから、信用されるに足る振る舞いがいかに重要なのかということ、逆にいかに多くのものを弁護士として失うことにつながるのかを身に染みて分かった。悪い例は人のふり見て我がふり直せではないけど、分かりやすい。
 しかし、品格と戦略を兼ね備えた弁護士活動とはいかなるものか、これも当然、「見て真似よ」しかあり得ないが、真似するのは本当に難しいと思う。
 なぜなら、自分のことは自分ではなかなかよく見えないから。

 相手方の弁護士の準備書面あるいは、法廷での振る舞い、あるいは和解での振る舞いを見て、感動したことはもちろん何度もある。
 ある弁護士は、法廷から出て行くとき、誰も見ていなくても常に「法廷」に敬意を表し一礼をしていた。
 またある弁護士は、手形訴訟での反対尋問において、証人に対してくらいつき、事細かに質問を重ね、証人が言葉をはぐらかさざるを得ないようにもっていき、その信用性をぐらつかせることに成功し、見事に和解にもっていった。なるほど、手形訴訟ではこのような尋問が効くのかと非常に勉強になった。
 またある弁護士は、にこやかに反対尋問を行い、証人を油断させつつ、見事にその矛盾点を法廷でさらけ出させた。
 
 当たり前だけど、自身が学ばないといけないこと、反省しないことはまだまだいっぱいある。
 自分の準備書面はいたずらに言葉を浪費しているだけではないか、選んだ証拠は適切だろうか、相手方に対する反論は「罵詈雑言」に終わっていないだろうか。
 こちらの弱点、相手の弱点を「鳥の視点」をもって検討出来ているのだろうか。依頼者の言い分を繰り返しているに過ぎないのではないか。効果的な活動、裁判官を説得するに足る活動が出来ているのか。

 買ってまだ読んでいなかった「民事訴訟実務と制度の焦点ー実務家、研究者、法科大学院生と市民のためにー」(判例タイムズ社)という現役裁判官の瀬木比呂志判事が判例タイムズに連載していたものをまとめた本を読んでいる。
 第10章 事実をどのように把握するか?
     一 当事者本人の話をどのように聴くか?
     二 距離をとって事実をみること(鳥の視点、虫の視点)
     三 相手方の視点から事実をみること
     四 主観的な確信の検証、法律家の常識・社会的常識との各照合
 第11章 準備書面の書き方等
     一 書面と口頭のプレゼンテーション、また、法廷におけるやりとりのわかりにくさについて
     二 一般的な主張のあり方
     三 準備書面作成のあり方
       1 一般的留意事項
       2 っまとめ準備書面の効用と最終準備書面
     四 裁判官の主張整序のあり方と手控えの作成方法
    
 
 意識しないと、何の根拠もない「経験」だけで仕事をしてしまいがちなところ、改めて自身を「検証」したいと思う。

(おわり)
 

2006年12月 1日 (金)

「取引のまとめ屋さん」たち~節税スキームで皆がハッピー?~【松井】

1 
 日本語文庫版は2003年11月に出た古い本だし、元は1997年6月にアメリカで出版された本だけど、今改めて「クルーグマン教授の経済入門」(ポール=クルーグマン、訳山形浩生、日本経済新聞社)を読んでいる。
 10年以上前のアメリカの経済を分析した本だけど、なかなか面白い。というのも読んでいると、まさに日本がアメリカの状況の10年遅れなのかなといったことを実感するから。

2 
 例えば、「企業ファイナンス」の章。アメリカではこの章は第三版からは削除されているとのこと。訳注では、「最近はアメリカでじゃLBOとか下火だからだろうと思う」と書いてある。まさにそのとおり。しかし続いてこう書いてある。
 

「でも、ヨーロッパでは今LBOとか買収が増えてきてる。たぶん、日本にそれが飛び火するのも時間の問題だろう。21世紀初頭ってとこじゃない?金利も安いし、株が暴落してるし、そろそろやりやすい時期だと思うよ。それに某お役所は、M&Aを促進しよう!なんてことをマジに言い出しているし。」

 そして、最後、「くわばらくわばら」と(前281頁)。
 
 またアメリカの財政赤字と貿易赤字の問題について。日本に関しては、特に財政赤字について考えるとなかなか興味深い。
 40年ものの国債なんかを発行しようとしているようだけど、まさに「先送り」??? アメリカで、いろいろな問題を先送りした結果がどうなったかなどが書かれている。たとえば、責任のない自由を意味した「規制緩和」によってどんなことが起こったか。
 古い本だけど、読み直しても興味が尽きない。
 

 そんな中出てきた言葉が、「取引きのまとめ屋さんたち」(前282頁)。
 
「80年代は、企業ファイナンスですさまじい財産が築かれた時代だった。この時代の英雄は、アップルのスティーブ・ジョブスとか、ロータスのミッチ・ケイパーとかいった事業家たちだった。でもホントにでかい金をかっさらったのは、取引のまとめ屋さんたちのほう。19世紀末は強盗貴族たちの時代だったけど、80年代はそれ以上の意味でファイナンスの魔術師どもの時代だった。」(前同)。

 思い出したのは、今年の判例時報7月11日号(1929号)で紹介されていた法人税法に関する最高裁判決だった(最判三平成18年1月24日判決、法人税更正処分取消等請求事件)。

 判決文によれば事実関係は、ざっとこんな感じ。

Photo_2


 始めにメリルリンチさんが、不動産業者さんにこの取引き、スキームの勧誘を行った。節税になるよって。利用するのは、法人税法の31条、減価償却費の損金算入。映画は固定資産と扱われるけど、減価償却期間は2年。そこで、多額の黒字が出た事業年度において、減価償却費の損金算入を行い、利益を圧縮して法人税を節税しようとするもの。

 出来たスキームはどんなもんか?
 1 日本の投資家から、26億円を集める。
   こでれ「エンペリオン」という民法上の組合を作る。
 2 エンペリオンは、オランダ銀行から63億円を借り入れる。
 3 エンペリオンは借入金と合わせた金額のうち、85億円をジェネシスという海外の会社に支払い、
  映画を購入。
 4 このとき、エンペリオンは、オランダ銀行とメリルリンチさんに合計4億円あまりを手数料としてお支払い。
 5 そしてエンペリオンは、これまた海外の映画配給会社IFDというところに映画配給権を付与する。
 6 もちろんこれで終わりではなくって、エンペリオンは、IFDとの配給契約の際、「本件映画につき、
  題名を選択し又は変更すること、編集すること、全世界で封切りすること、ビデオテープ等を作成すること、
  広告宣伝をすること、著作権侵害に対する措置を執ることなどの権利を与えており、
  このようなIFDの本件映画に関する権利は、本件配給契約の解除、終了等により影響を受けず、
  IFDは、この契約上の地位等を譲渡することができ、また、本件映画に関する権利を取得することができる
  購入選択権を有するとされ、
  他方、本件組合は、IFDが本件配給契約上の義務に違反したとしても、IFDが有する上記の権利を
  制限したり、本件配給契約を解除することはできず、また、本件映画に関する権利をIFDの権利に
  悪影響を与えるように第三者に譲渡することはできないとされ」といったものだった。
 7 またエンペリオンとIFDとの間におけるIFDのエンペリオンに対する支払債務については、
  なんとこれまた海外のHBU銀行が保証してくれている!

  これはどういうことか!?
 

 「本件組合は、本件売買契約により本件映画に関する所有権その他の権利を取得したとしても、本件映画に関する権利のほとんどは、本件売買契約と同じ日付で締結された本件配給契約によりIFDに移転しているのであって、実質的には、本件映画についての使用収益権限及び処分権限を失っているべきである。」
と最高裁は判断してしまった。

 8 では、お金の流れはいかように?
 エンペリオンがジュネシスから86億円で買った映画は、CPIIという映画製作会社が制作するものであったけど、CPIIがジュネシス経由で86億円を受け取った。  
 そしてCPIIは、IFDとの間で本件映画に関する第二次配給契約を結んで、CPIIはIFDに対して、エンペリオンがオランダ銀行から借り入れた63億円相当額である6000万ドルを支払い、エンペリオンがIFDに許諾した映画配給権をCPIIが手に入れた。
 つまり、映画製作会社であるCPIIの手元に、86億円ー63億円=23億円が残った状況。そしてこのCPIIが自分が作った映画の配給も行う。
 IFDのもとに入った6000万ドルは、エンペリオンに対して、映画配給契約に基づくお金として支払ったもの。
 そして何と、

「本件組合が本件借入契約に基づいてオランダ銀行に返済すべき金額は、IFDが本件配給契約に基づいて購入選択権を行使した場合に本件映画の興行収入の大小を問わず本件組合に対して最低限支払うべきものとされる金額と合致し、また、IFDによる同金額の支払債務の大部分については、本件保証契約によりHBU銀行が保証しており」
という状況。

 こんなスキームを考えた、「取引のまとめ屋さん」メリルリンチさん、ご苦労様といった感想です。
 
 こんなスキームに対して、税務署のみならず最高裁の判断はというと、次のとおり。
 さっきの組合が映画の所有権を取得しているとはいえないという判断に続き、

 

「このことに、本件組合は本件映画の購入資金の約4分の3を占める本件借入金の返済について実質的な危険を負担しない地位にあり、本件組合に出資した組合員は本件映画の配給事業自体がもたらす収益についてはその出資額に相応する関心を抱いていたとはうかがわれないことをも併せて考慮すれば、
  本件映画は、本件組合の事業において収益を生む源泉であるとみることはできず、
  本件組合の事業の用に供しているものということはできないから、
  法人税法(平成13年法律第6号による改正前のもの)31条1項にいう減価償却資産に当たるとは認められない。」

  ちゃんちゃん。
  
  「過ぎたるは猶及ばざるが如し」
  誰だ、こんなスキームを考えたのは?!
  で、誰が儲けたの?

(おわり)

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